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再転移編1:元事務職員、再転移してしまう

全5話、1日ごと掲載します

松本氏・・・


松本氏・・・!!


そう呼ぶ声に、微睡から醒める。


甲高さを感じさせる声はともかく。

最初に感じたのは「空気が濁っている」だった。今まで過ごしていた異世界とは異なるその一呼吸の味は、この目覚めが地球に戻ってきたのかもしれないと推測させるには十分だった。


「む」


そこは公園だった。

俺は公園の一角の芝生で寝ていたようだ。

更には背広を着ている。もはや異世界転移してから何年経ったかも定かではないが、間違いなくこれは俺が脳梗塞を起こした日に着ていたものだ。


考えが纏まりきれていないが、横の小学生くらいの女の子が俺に声をかけていた。転移前の世界で俺を名前呼びする幼女に心当たりはないが、その顔立ちには心当たりがある。


「君は、女神の端末のひとつ・・・か?」


「起きましたか。ええ、そうです。あなたが極めてイレギュラーな転移に巻き込まれたので、急遽手配しました。こちらの管理者も把握はしているようですが、いかんせん彼は傍観の立場を崩さず・・・」


「こちら、というのは、ここは地球・・・というか、俺が元々居た世界なのかな」


「ご推察のとおりです」


違和感のある、幼女らしからぬ言葉遣い。確かにこの子は女神の端末だ。


そして、


成程。

あくまでこれは異世界転移。

何故、死んだ日に着ていた背広を着ているのかはわからないが、事態を収拾させるためにあちらの女神は端末を派遣し、あちらに戻るための条件を探る、というところか。


幼女という急遽仕立てた端末に、最低限の権能を込めたのだろう。それでも、並の成人よりもステータスは高いのだろうが。


「服を着せたのはこちらの管理者の手配です。あなたが亡くなった日の持ち物を再現しています。持ち物も同様のようですが・・・」


「うん、ありがとう。とりあえず、分かる範囲で構わないので今の状況を教えて欲しい」


聞くと西暦は202x年。俺が死んでからx年後か。

持ち物の中にはスマホがある。確かに俺の持ち物だ。少し弄ってみたが、通話機能は無くなっているもののインターネットは使えるようだ。日付は3/31。年度末かよ。


驚いたことに、使い古したキーケースに入れているクレジットカードも使えるようで、試しに自販機でクレジット払いが出来るかやってみたところ、使えてしまった。

まさかこちらでは亡くなっている判定をされているであろう俺の口座から引き落とされるのか。ともかく、おかげでこれも何年振りか分からないが微糖の缶コーヒーを飲みながら状況確認を進める。


「こちらの管理者は傍観、と言ったが、これから俺はどうなる?向こうに帰れる目処はあるのか?」


「はい、こちらの管理者は動く気配がないので、再転移の手配を我々で進めています。が、偶発的でない異世界転移には膨大な準備が必要で、転移できるようになるまでには時間を要します」


異世界転移そのものは世界の理に直接アクセスするもの。なので、そうそう意図的に起こすものではないセンシティブなもの、と聞いている。

稀に起こる偶発的な異世界転移は、何かしら本来経るべき手順を省かれてしまっているのでどうしても不具合が生じる。

・・・それこそ、あちらの世界では転移した者が変貌して魔王案件になってしまうような。何度か俺も関わったが、異形化してたり精神に異常をきたしていたり・・・あまり気分の良いものではない。


ということは、偶発的な異世界転移をした俺にも何かしらの不具合があるかもしれないと思ったが、気を失っている間に端末がスキャンしたところ大丈夫そうだとのこと。


つまり、有体に言えば


「異世界転移の手配が終わるまで、こちらの世界で自由時間か」


「目立つ行動は謹んでいただきたいですが、およそ11時間後に手続きが完了しますので、その間に」


約半日の里帰りだ。

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