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第393話。グレモリー・グリモワールの日常…88…領主解任・軍権剥奪。

チュートリアル終了時点。


名前…イエーツ

種族…【(ヒューマン)

性別…男性

年齢…66歳

職種…【剣士(ソード・マン)

魔法…【闘気】、【収納(ストレージ)】、【鑑定(アプライザル)】、【マッピング】

特性…【グレモリー・グリモワールの使徒】、【才能(タレント)…剣技】

レベル…30


【サンタ・グレモリア】副衛士長。

【ノースタリア】の領主屋敷。


 窓から見える【ノースタリア】の街並みは、陽が傾き、影が長く伸びている。

 早めに夕ご飯を食べたから、まだ、実は夕刻よりは早い時間だった。

 戦時下では、ご飯は、食べられる時に食べておかないと、食べそびれるからね。

 なので、時刻は、まだ午後の5時前だったりする。


【ノースタリア】は辺境伯領だ。

 この地を統治するのはランドルフ・ノースタリア辺境伯。

 辺境伯という爵位は、【ブリリア王国】では、伯爵より上で、侯爵よりは下。

 つまり結構偉いらしい。


 という事は、この辺境伯より偉い侯爵のリーンハルトは凄く偉い、という事になる。

 私は、過去リーンハルトを相当ぞんざいに扱って来た。

 これからは、多少、リーンハルトの事も立ててやらなくちゃならないのかもしれない。


 いや、やっぱ、別にいーや。


 リーンハルトは、経済が、からっきしで、私が嫌いなタイプの……民の暮らしを豊かにしない為政者……だからね。

 為政者は、まず初めに経済が出来なくちゃならない……と私は思うよ。

 ま、私は政治には興味がないから、どうでも良いけれどね。


【ウトピーア法皇国】との最前線を守るランドルフ・ノースタリア辺境伯は、代々、軍事を最重視する武人貴族。

 領内の(まつりごと)は、ほとんど無視して、ひたすら精強な軍を維持している。

 それは、国王のマクシミリアンからも期待されている事だ。

 なので、【ノースタリア】の農業や工業は遅れ、内政面は(もっぱ)ら【アヴァロン】や【ブリリア王国】の他領からの援助で賄っていた。


 つまり、ここの領主も、私が嫌いなタイプの脳筋領主だね。

 領主が経済オンチだと、領民は苦労する。


 極論を言えば、民にとって、領主なんか誰でも良いのだ。

【ウトピーア法皇国】が仮に経済的に【ノースタリア】の民を豊かにしてくれるなら、【ノースタリア】の民は喜んで、【ウトピーア法皇国】に自分達の統治権を与えるだろう。


 ま、実際は【ウトピーア法皇国】は、(ヒューマン)至上主義の独裁国家で、【ノースタリア】の半数を占める【(ヒューマン)】以外の種族や、混血(ミックス)の人達は、全員、奴隷にされちゃうだろうから、【ウトピーア法皇国】に統治されるのは地獄みたいな事だけれどね。


 私は、応接室に通されていた。

 かれこれ、45分ほど待たされている。


 ま、いきなりブチキレたりはしないよ。

 私は、丸くなったからね。


 執事と思しき初老の男性が、私に、お茶などを給仕してくれていた。


 私は、待たされている間中、スマホで関係各所とやり取りをしながら、情報を受け取り、指示を飛ばしまくっている。

 また、輸送艦フリングホルニから、無数のドローンを出動させ、【ウトピーア法皇国】の警戒と索敵を開始していた。

 私は、戦闘のエキスパート。

 時間を無駄になんかしない。


「ねえ、まだかな?私、忙しいんだよね」


 私は丸くなったから、待たされたくらいで腹を立てたり、いきなり魔法をブッ放したりはしない。

 でも、幾ら何でも、45分は待たせ過ぎだ。

 多少の催促や嫌味の1つくらいは、言ってやっても良いだろう。


 多少丸くなったとはいえ、私は、(なまくら)じゃないんだよ。

 剣の切っ先が丸くなっても、私の刃は相変わらず鋭くて切れ味は抜群だ。


「申し訳ありません。もうしばらく、お待ち下さいませ」

 初老の執事さんは困り顔で言う。


 もう、この、やり取りは、10回目。

 そろそろ、怒っても良い頃だ。

 堪忍袋の緒ってモノがある。


「ランドルフ辺境伯は、何をしているの?私は、マクシミリアンの全権委任者なんだよ?私を待たせるって事は、マクシミリアンを待たせるって事なんだよ。そこんとこ、ランドルフ辺境伯は、わかってんのかな?」


「旦那様達は、ただ今……軍議を開いておりまして……」

 初老の執事さんは言った。


 ピキッ……。


「軍議なら、マクシミリアンから、対【ウトピーア法皇国】戦の最高指揮官に任命された、私の前でやるのが筋だろう?ランドルフ辺境伯達を、すぐ呼んで来いや」


「いや、あの、それが……」

 初老の執事さんはオロオロする。


 私は、この、対【ウトピーア法皇国】戦では、国王マクシミリアンから全権を委任されていた。

 私の指示は、即ちマクシミリアンの指示だ……と国中に厳命されている。

 それなのに、私を待たせるとは……。


 いや、別に待たされているからって、腹を立てている訳ではない。

 それは、時と場合による。

 平時の暇な時に、こっちから頼んで何かを、お願いする場合なんかは、私だって相手を待つ。

 それが礼儀だ。


 でも、この状況は、逆だよね?

【ノースタリア】の防衛を、私がやってやる、って状況だ。

 それに、私は、国王マクシミリアンから全権を委任されている……つまり、国王と同等の権限を持っている。


 状況と立場を考えろ……って話だ。


 今にも【ウトピーア法皇国】との戦争が始まろう、としている時に、戦争の最高指揮官の権限をマクシミリアンから移譲されている私の時間を無為に過ごさせて良い筈がない。

 今、この状況で、私と会って話すより重要な事なんか何もないだろ?

 ランドルフ辺境伯は、一体何を考えているのか?


「呼んで来い。この言葉は、マクシミリアンの命令と同義だ。それとも、王命に反逆するつもりか?事と次第によっては、私には、あんたを処刑する権限もあるんだぞ」


「申し訳ありません。私は、旦那様より……お客人は、いつまでも待たせておけば良い……と命令されているだけなのです。どうぞ、お許し下さい」

 初老の執事さんは、跪いて謝罪する。


 プチッ!


「あのさ。もう、良いや。【ノースタリア】の辺境伯は、現時点で解任する。軍権は剥奪ね」

 私は、初老の執事さんに言った。


「え?」

 初老の執事さんは驚いている。


「【ノースタリア】の領軍指揮官と副官、及び、騎士団長と副騎士団長を、今すぐ、ここに出頭させろ。これは、国王マクシミリアンから全権を委任された、対【ウトピーア法皇国】戦争の最高指揮官としての命令だ。従わないなら、国王マクシミリアンへの反逆罪を問責する。5分だけ待つ。すぐ、伝えて来い」


「は?」

 初老の執事さんは、みるみる顔が青()めて行った。


「二度同じ命令を言わせんな。すぐ、領軍指揮官と副官、騎士団長と副騎士団長を呼んで来い。5分後に()()()軍議を始める。すぐ、動け!」


「は、はいっ!」

 初老の執事さんは、走って応接室を出て行く。


 丸くなったなんて、柄でもない。

 初めから、こうしておけば良かったんだよ。

 私の、いつものスタイルだ。

 これが、一番わかりやすい。


 ・・・


 3分後。

 ランドルフ・ノースタリアと、【ノースタリア】領軍指揮官と副官、【ノースタリア】騎士団長と副騎士団長は、出頭した。

 ダッシュでやって来たよ。

 ランドルフは、もう解任しているから別に来なくても良いんだけれどね。


「ランドルフ、領軍指揮官、騎士団長、現時点をもって、オマイらは王命により解任。【ノースタリア】領主は私が代行する。そんで、領軍副官と副騎士団長を、それぞれ領軍指揮官と騎士団長に昇格させる。()領軍指揮官、()騎士団長。最初の仕事だ。ランドルフと、オマイ達の前任者を逮捕して、牢屋にブチ込んでおけ。私は、仕事をしないヤツは、いらん」


「「「えっ?」」」

 ランドルフ()辺境伯と、()【ノースタリア】領軍指揮官と、()【ノースタリア】騎士団長は、唖然とする。


 解任された3馬鹿トリオは……いきなり解任されて、逮捕されるなんて予想外……って表情をしていた。


 知るか!

 私は、禁酒中の【ドワーフ】より気が短けーんだよ。


「あ、あの……」

 領軍副官は困惑していた。


「どうした?私は、国王マクシミリアンから全権を委任された、対【ウトピーア法皇国】戦の最高指揮官だ。その命令に背く事は、即ち、国王マクシミリアンへの反逆罪だぞ?」


「は、はいっ!」

 領軍副官……もとい()領軍指揮官は、ただちにランドルフ()辺境伯と、()【ノースタリア】領軍指揮官と、()【ノースタリア】騎士団長を逮捕・拘束する。


 私がシツコいくらいに何度も何度も、マクシミリアンから付与された権限を強調するのには意味がある。

 私は、別にマクシミリアンの威光なんかに頼らなくても、誰に対しても自分の影響力を発揮出来た。

 誰かの威を借りて威張りくさるのなんて、本来の私のスタイルじゃない。


 でも、私が誰の威も借りずに自前の影響力を行使する事……それ即ち……暴力装置としてのグレモリー・グリモワールを全開にして暴れ回る……という事だ。

 マクシミリアンから……【ブリリア王国】の臣民を相手に、それは何卒ご勘弁下さい……と、懇願されている。

 だから私は、自分のじゃなくて、マクシミリアンの威光を強調しているのだ。


 私が、シンプルに暴力を行使すれば、話は早い代わりに、ランドルフ辺境伯は酷い目に遭うからね。

 これは、私からの温情なんだよ。


「シルヴェスターっ!貴様を拾ってやった恩義を忘れたのか?この儂を裏切って、こんな、どこの馬の骨ともわからない、面妖な風体の魔女の言う事を聞くのか?」

 ランドルフは、叫んだ。


「グレモリー・グリモワール様の任命状は間違いなくマクシミリアン王陛下の勅書。王命には逆らえません。ランドルフ様、ご容赦を……」

 シルヴェスター()領軍指揮官は、部下に命じてランドルフ()辺境伯と、()【ノースタリア】領軍指揮官と、()【ノースタリア】騎士団長を牢屋に連行させる。


【ブリリア王国】の国家体制は、絶対王政だ。

 つまり、【ブリリア王国】の各領主は、封建領主という訳ではないし、不輸不入権も持たない。

 つまり、ランドルフの権限は、マクシミリアンによって裏書きされた限定されたモノでしかないのだ。

 ランドルフの軍権も軍隊も、全てマクシミリアンから与えられたモノ。

 マクシミリアン(マクシミリアンから全権を委任された私)の命令で、解任された領主には、もはや何の法的権限もない。


「さてと、役立たずは掃除した。シルヴェスター指揮官、それから……()騎士団長、あなたの名前は?」


「トバイアスで、ございます」

 トバイアス騎士団長は答えた。


「シルヴェスター指揮官、トバイアス騎士団長。私は、グレモリー・グリモワール。よろしく頼むよ」


「「はっ!」」

 シルヴェスター指揮官とトバイアス騎士団長は、直立不動となって敬礼する。


 この2人は【ノースタリア】現地採用で、平民出身者からの叩き上げだ。

【ブリリア王国】の慣習では、領軍指揮官と騎士団長は、貴族が、お飾りで任命され、本当に有能な人材は副官と副騎士団長なんだよ。

 元【イースタリア】の副騎士団長だったスペンサー爺さんも、そうだしね。

 お飾りで指揮官や騎士団長をしている貴族連中は、身分だけで高官に祭り上げられているだけで仕事は出来ない。

 実質、軍と騎士団を差配している現場責任者は、副官と副騎士団長なんだよ。


 私は、それを知った上で、お飾りの名誉職連中を解任した。

 領軍も騎士団も、副官と副騎士団長がいれば問題なく回る。

 邪魔者は排除した。


「シルヴェスター指揮官、トバイアス騎士団長、着席して。軍議を始めるよ」


「グレモリー様。でしたら、【ノースタリア】衛士隊長のユニアックも同席させましょう。民の誘導や秩序の維持には、衛士隊の協力も不可欠です」

 シルヴェスター指揮官は言う。


 なるほど。

 衛士隊は全員が現地採用組だ。

 つまり、衛士隊長も平民出身の叩き上げで、実務に長けた者が任命されている筈。

 うん、妥当な判断だね。


「シルヴェスター指揮官、真っ当な意見具申だね。採用するよ。ユニアック衛士隊長を招聘しなさい」


「はっ!」

 シルヴェスター指揮官は、部下に命じて、衛士隊長のユニアックを呼びに走らせる。


 ・・・


 私と、シルヴェスター指揮官と、トバイアス騎士団長と、ユニアック衛士隊長は、軍議を行った。


 決定した事は、というと。


 その1……現状【ウトピーア法皇国】が【ブリリア王国】の交戦の意思に気付いていないので、敵が攻撃して来るまでの間に、出来る限り迎撃準備をする。


 具体的には……。

 私が魔法で都市城壁を強化し、国境付近に地雷を埋設する。

 領軍と騎士団は、都市城壁の外に対戦車障害を構築する。

 衛士隊は、【ノースタリア】領民の避難準備を行う。


 その2……【ウトピーア法皇国】軍が動き始めたら、領軍、騎士団、衛士隊で協力して、ただちに【ノースタリア】の領民を【アヴァロン】に向けて避難させる。

 傷病者、子供、お年寄り、妊婦さん……など自力での避難が困難な者は、【ノースタリア】の商船と、病院船ナイチンゲールと、輸送艦フリングホルニで輸送する。

 その他の領民は、徒歩で移動し、領軍、騎士団、衛士隊で護衛する。


 当初、私は、病院船ナイチンゲールと輸送艦フリングホルニは、私とヒモ太郎の座乗艦として戦闘に利用するつもりだったけれど、【ノースタリア】には、避難民の輸送に使える商船が少ない事がわかった。

【ノースタリア】は軍事都市だから、自前の商船は、あまり必要がないのかもしれないね。

 で、避難民輸送には、病院船ナイチンゲールと輸送艦フリングホルニも駆り出される事になった。

 同じ理由で、大半の領民は、徒歩での避難になる。

 ま、私とヒモ太郎で前線を保てば、領民を逃がすくらいなら、何とでもなるだろう。


「そんじゃ、ま、諸々よろしく頼むよ。【ウトピーア法皇国】をブッ飛ばすのは、私がやるけれど、【ノースタリア】の領民を守るのは、あなた達の使命だ。良いね?」


「「「はっ!」」」

 シルヴェスター指揮官と、トバイアス騎士団長と、ユニアック衛士隊長は、敬礼した。


 ならば良し。


 ・・・


 私は、輸送艦フリングホルニに艦載されていた対戦車障害用の組み立てキットを運び出した。

 これを領軍と騎士団に渡して都市城壁の外に対戦車障害を構築してもらう。


 私は、【ノースタリア】の都市城壁を、各種【超位バフ】で強化した。

 ナカノヒトから大量に買った【ハイ・エリクサー】のおかげで、魔力には余裕がある。


 都市城壁の強化が済むと、私は、輸送艦フリングホルニの荷を降ろして行った。

 フリングホルニの主な荷物は兵器類。

魔導砲(マジック・カノン)】、重砲、榴弾砲、高射砲、地対空ミサイルポッド、対戦車ミサイルポッド……などだ。

 私は、フリングホルニに積んであった火砲類を、【ノースタリア】の都市城壁の上に設置して行く。

 砲兵隊として、私の【スケルトン】達を投入。


 頼むよ、スケさん達。


 その後、フリングホルニを国境付近に進出させ、上空から対戦車地雷を投下する。


 この地雷は、儀式魔法発動式の高価で高性能な地雷だ。

 人種など生体には無害だけれど、【魔法装置(マジック・デバイス)】の【コア】をピンポイントで破壊し兵器類を無力化する。

 生物への殺傷力はない、いわゆる人道兵器の(たぐい)だね。


 ・・・


 10月16日。


 日をまたいで、朝、作業は終了。

 私が【ノースタリア】の都市に戻って来ると、領軍と騎士団の方も予定の作業は終了していた。


 これで良し。


 私は、朝食のクルミ入りの白パンを食べながら、空から【ノースタリア】の様子を見下ろす。


 巨大な堀を掘ったりしようかな。

 防御陣地を構築して、砲塔を、あっちとこっちに築けば、この【ノースタリア】までの原野は、全て十字砲火エリアに出来るね。


 ま、今は、このくらいにしておこう。

 後の作業は、午後からだ。


 私は、領主屋敷の執務室のソファで正午まで、仮眠を取る事にした。


 おやすみなさいよ、っと。


 ・・・


 緊急警報で目が覚めた。


 索敵に飛ばしたドローンが、敵を発見したらしい。


 ちっ、もう来やがったか。

 今、何時だ?

 午前11時30分。


 ディーテとヨサフィーナさんからも、次々に通信が入る。

【イースタリア】方面も【ウトピーア法皇国】軍が動き始めたようだ。


 私は、シルヴェスター指揮官と、トバイアス騎士団長と、ユニアック衛士隊長を緊急呼集する。


 ・・・


「大変です、グレモリー様。ランドルフと、ヴィンセントと、ウィンストンが、脱獄しました」

 ユニアック衛士隊長が開口一番に報告した。


「あっ?」


 ヴィンセントとウィンストンというのは、私が解任した、()【ノースタリア】領軍指揮官と、()【ノースタリア】騎士団長。


「ランドルフは、領軍と騎士団の大半を連れて、軍艦と商船団を奪い、南西に向かって飛び立ちました」

 シルヴェスター指揮官は報告する。


 どゆこと?

 意味不明なんだけれど?


「ランドルフと、奴の配下だった貴族官僚達が、王の勅書を偽造したようです。それで、騙されて、半ば強制的に、領軍と騎士団が連れ去られました」

 トバイアス騎士団長が報告した。


 えー……こりゃ、不味いね。


「グレモリー様。通信記録が残っていました。ランドルフは、【ウトピーア法皇国】に……【ブリリア王国】に交戦の意思あり。ただちに総攻撃を開始すべし……と通信しています」

 ユニアック衛士隊長が最悪の報告をする。


「何だと?」


 つまり、ランドルフは、私から解任された腹いせに【ブリリア王国】を、【ウトピーア法皇国】に売ったのだ。

 いや、【ウトピーア法皇国】軍の動きが早過ぎる。

 敵国である【ブリリア王国】側からの通信で、【ウトピーア法皇国】の軍隊が、こんなに迅速に反応するのは、おかしい。


 つまり、ランドルフは、元々、【ウトピーア法皇国】に寝返っていたのか?


 その可能性が高いね。

 何故なら、ランドルフは、南西に逃げている。

【ノースタリア】の南西は、裏切り者のバーソロミューの領地【ウエスタリア】だ。


 ランドルフは、バーソロミューと合流して、マクシミリアンに対して謀叛を起す気だよ。


 裏切り者め〜っ!


 いや、待て。

 ランドルフが裏切っていたなら、何で、もっと早くに、【ウトピーア法皇国】にコッチの情報を垂れ込まなかったのだろう?

 少なくとも、一昨日(おととい)の時点では、マクシミリアンから、ランドルフには……【ブリリア王国】は【ウトピーア法皇国】に対して徹底抗戦に及ぶ。その最高指揮官は、グレモリー・グリモワールだ……という勅命が出ていた筈だ。


 うーむ、ランドルフの野郎、日和見をしていたのか?


 ま、ランドルフの意図なんか、どうでも良いし、興味もない。

 今は、このヤバい現状を何とかせねば。


「シルヴェスター。マクシミリアンに状況を報告しろ」


「はっ!」

 シルヴェスター指揮官は言った。


「領軍と騎士団の残りは、どのくらいいる?」


「両方を合わせても、200人に満たないかと」

 シルヴェスター指揮官は報告する。


「衛士隊は?」


「衛士隊は全員健在です。総数500人」

 ユニアック衛士隊長が答えた。


 ダメだ。

 その人数じゃ、領民を護衛して避難させられない。

 ましてや、商船団は、全て、ランドルフ達に奪われた。

 船も足りない。

 クソっ!


「仕方がない。私は打って出る。お前達は、傷病者、子供、年寄り、妊婦だけでも、病院船ナイチンゲールと輸送艦フリングホルニに誘導して、【アヴァロン】に逃がせ。その他の領民は、地下室か、なるべく堅牢な建物に全員退避させろ。私が戦っている間に何か決断しなければならない事があれば、私の指示を待たずにシルヴェスターが……シルヴェスターが死んだら、トバイアスが……トバイアスが死んだら、ユニアックが意思決定をしろ。領民の生命を守る事を最優先に行動しろ。さあ、動け」


「「「はっ!」」」

 シルヴェスター指揮官と、トバイアス騎士団長と、ユニアック衛士隊長は、行動を開始した。


 私は、【収納(ストレージ)】から、【魔法のホウキ(ブルーム・スティック)】を取り出して、領主屋敷の窓から、【ノースタリア】の上空に舞い上がる。


 ちょっと、予定が狂ったけれど……戦場では、私がルールだ。

 超絶最高な魔法の天才、グレモリー・グリモワールを舐めんな。

 ギッタンギッタンにブッ飛ばしてやんよ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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・・・


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