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第383話。グレモリー・グリモワールの日常…78…信念を貫き通すには力が必要。

チュートリアル終了時点。


名前…グレース・シダーウッド

種族…【(ヒューマン)

性別…女性

年齢…39

職種…【暗殺者(アサシン)

魔法…【闘気】、【収納(ストレージ)】、【鑑定(アプライザル)】、【マッピング】

特性…【暗器(ヒドゥン・ウェポン)】、【グレモリー・グリモワールの使徒】、【才能(タレント)潜入(スニーキング)

レベル…35


子爵位を陞爵しシダーウッドの家名を与えられた。

アリスの重臣。

元リーンハルト・イースタリア家に仕える間者。

【ラピュータ宮殿】の敷地内の森。

【樹人】達の集落。


 シャルロッテは、村の真ん中にある広場に村人さん達を集合させた。

 大半は知らない顔だけれど、半数以上は、私が庇護していた【樹人】達の子孫らしい。

 うん、何となく面影がある。


 子供が多いけれど、老人は少ない

 ゲーム設定上、【樹人】達は【(ドラゴン)】族に次いで長命な種族だ。

【樹人】の感覚で言えば……100歳や、そこいらは鼻垂れ小僧……300歳をこえて、ようやく一人前……という種族だからね。


 私が庇護していた第一世代の【樹人】達の半数は亡くなっていた。

 皆、私に会いたがっていたらしい。

 彼らの最期は、全員、家族に看取られて安らかに旅立ったそうだ。

 それだけは救いだね。


「この人は、ゲームマスターのナカノヒト。あなた達を助ける為に、物凄〜く、力を貸してくれた人だからね。よくよく、お礼を言っておいてね」

 私は、ナカノヒトを皆に紹介した。


 村で中心的な役割を担っていたのは、全員、私が庇護して育てた子達。


 村長(むらおさ)は、【ドライアド】の、シャルロッテ・メリアス。

 シャルロッテを支えて村を運営していたのが、【ハマドリュアス】の8人。

 カリュアー、バラノス、クラネイアーは、ハナミズキ、モノアー、アイゲイロス、プテレアー、アンペロス、シュケー。


 その他の村人さん達は、【ラピュータ宮殿】以外からシャルロッテが保護したり、シャルロッテを頼って集まった【樹人】達も含めて総勢100人以上。

 増えたね〜。


【樹人】は繁殖の頻度が高くない。

 長命で環境変化に強い事もあるけれど、おそらく種族の習性なのだと思う。


【樹人】は光合成を活用すれば、食料の確保に汲々(きゅうきゅう)としなくて済む。

 なので農耕などをしなくても生きていけるのだ。

 つまり農作業の労働力としてコミュニティの子供を増やす必要に迫られない。

 そもそも、【樹人】同士が、あまり密集して暮らさないという事情もある。

 彼らは、孤独を恐れないからね。


 それが、シャルロッテ達は、ルシフェルとの奴隷契約によって一か所にまとまって生活する事を強制されていた。

 そのせいで、と言うべきか、そのおかげで、と言うべきか、とにかく、年頃の男女の【樹人】達が狭いエリアに密集して生活していた訳。


 そうなると、ゴニョゴニョ……色々とある。

 で、【樹人】達の平均から言うと、非常識なくらいに子供が増えた、と。

 ま、食料問題が生じないのならば、子宝に恵まれるのは良い事だ。

 不幸中の幸いと素直に喜べば良い。

 私には、この集落の全員を完全に養えるだけの資産があるし、種族の区別なく子供達は、皆、可愛いからね。


「実は、この集落で生まれた者達は、皆、名前を持ちません」

 シャルロッテは言った。


「ん?何で?」


「げん担ぎと申しますか、願掛けと申しますか……いずれグレモリー様が、お戻りになったら名を頂こうと」

 シャルロッテが言う。


「それじゃあ、不便だったんじゃないの?」


「親の名前と生まれ順で……カリュアーの長男や、バラノスの次女の長女……などと呼んでおりました」

 シャルロッテは言った。


 どう考えても不便じゃね?


「あ、そう。なら名付ければ良いんだね?」


 私は、名付けを開始した。


「はいはい種類ごとに並んで……。あんた達は【ブドウ果樹人】か……カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、シラー、ピノ・ノワール、マスカット、デラウェア、ピオーネ、巨峰、甲州……。はい、次は、【イチジク果樹人】……イチジク?わっかんないね〜。あー、もう適当で良いや。イチ郎、イチ子、イチの助、イチ美、イチ衛門、イチ江……」


 途中からグダグダになった……。

 でも、名前をもらった子達は、皆、大喜びだから、結果オーライ。


 それと前後してナカノヒトが、シャルロッテ以下、全ての【樹人】達にルシフェルから強制されていた奴隷契約を解除してくれる。

 七面倒臭い儀式とかはなく、ただ【契約(ターミネーション・)解除(オブ・コントラクト)】と詠唱しただけ。


 同じ事は、ソフィアちゃん達、守護竜も出来る。

 これって、ゲームの時には当たり前の仕様として受け入れていたけれど……つまり、ナカノヒトや守護竜は、【契約(コントラクト)】を自由に踏み倒せるって事だよね?


【神格者】は、【契約(コントラクト)】を守らせるのが仕事で、守る立場ではない……と。

 あ、そう。

 ま、良いけれどね。


 ナカノヒトが【樹人】達を解放した瞬間……第一世代の【ハマドリュアス】達8人が、全員、【聖格】を得て【ドライアド】に昇華を果たしてしまった。


「どゆこと?」


「たぶん、8人の【ハマドリュアス】達は、元々、【聖格】に昇る条件を満たしていたのでしょう。しかし、ルシフェルとの奴隷契約によって、それが半ば(くびき)となって【聖格】への昇華を阻害していたのでは?グレモリーの完全な庇護下に戻った事で、その(くびき)から解放され、【聖格】に昇ったと思います」

 ナカノヒトは言った。


 あ、そう。

 ま、【聖格者】に成るのは良い事だ。

 素直に喜んでおこう。


 ナカノヒトは、私との再会を果たし、奴隷から解放され、名を得て、新たな【聖格者】も増えて、歓喜しているシャルロッテ達を優しい目で見つめていた。

 私とナカノヒトは、元同一自我だったんだよね。

 つまり、シャルロッテ達は、ナカノヒトにとっても家族なのだ……。


 まだ、名付けが終わっていない【樹人】に、シャルロッテを頼って移住して来て、この集落に住み着いた孤児が6人いる。


「ねえ、ノヒト。この孤児の子達には、ノヒトが名前を付けてあげてくれない?」

 私は、ナカノヒトに依頼した。


「グレモリー・グリモワールの所有地の敷地内に住み着いた【樹人】達なのですから、グレモリー・グリモワールが名付けるべきではないでしょうか?」

 ナカノヒトは言う。


「良いから、ノヒトがやってよ」


「ならば……わかりました」

 ナカノヒトは困惑気味に名付けを承諾した。


 6人の名前は、【ドライアド】のカスターニョとオリーヴォ……【ハマドリュアス】のメロ、ペロ、ペスコ、チリエージョと決まる。

 全員、栗の木、オリーブの木、リンゴの木、梨の木、桃の木、サクランボの木という意味。


 ナカノヒトも安直なネーミング・センスは、私と一緒だったよ。

 当たり前だけれどね。


「この6人は、ノヒトが庇護してあげて」


「何故ですか?」

 ナカノヒトは訊ねた。


「シャルロッテ達を、私が譲ってもらっちゃったから。あの子達は、ノヒトの友達でもあったのに」


「良いのですか?」

 ナカノヒトは確認する。


「シャルロッテ達は、私に対する忠誠心が強く根を張っているから、渡せないけれど、こっちの6人は、まだ若いし、私との絆もないからね。本人達も、誰か庇護者の下に帰属したいと望んでいるようだし、大切にしてあげてよ」


「私と共に来て、私の拠点に根を下ろしてくれますか?」

 ナカノヒトは、6人に意思を確認した。


 6人の【樹人】達は、ゆっくりと、お互いの顔を見て頷き合い……それで構わない……と返事をする。


「そうですか。私は現在、空と土がある拠点を持ちませんので。なので当面の間、あなた達には【ドラゴニーア】のソフィア農場と、【パラディーゾ】の【タナカ・ビレッジ】のクイーン農場で、それぞれ果樹園の管理人をしてもらいましょう。どちらも信頼の置ける者達が運営している農場ですし、美しくて過ごしやすい場所です。それで構いませんか?」


 6人は、また、ゆっくり互いの顔を見合って頷き合い、ナカノヒトの申し出を受け入れた。


【樹人】達は、あまり自己主張が強くない。

 周囲の環境に逆らわず、自然の移ろいに身を任せて生きる性質がある。

 だから、簡単にルシフェルから隷属されてしまったのだ。

 でも、逆に言えば、シャルロッテ達は、争いを好まず、流されやすい性質のおかげで生き延びられた、という面もある。

【樹人】達が、竜之介と一緒にルシフェル達と戦っていたら、彼らも全滅していたはずなのだから……。


 そう考えると、複雑な気持ちになる。

 竜之介は、私への愛情と忠誠が高過ぎたから、死んでしまったのかもしれない。

 もしも、竜之介が……【ラピュータ宮殿】と【樹人】達を守れ……という私の指示を破って、ルシフェル達の軍門に下っていれば、あの子は、まだ元気に生きていたんじゃないだろうか?


 私の脳裏には、在りし日の竜之介の愛くるしい様子がフラッシュバックする。


「グレモリー。何を考えているのか大体わかりますよ。竜之介の死の責任は、あなたにはありません。竜之介は、あなたが良い主人(あるじ)だったから、生命をかけて、あなたの指示を守ったのです。従魔が【命令(コマンド・)強要(インシステンス)】に拠らず、自発的に主人(あるじ)の意を汲んで行動するのは、主人(あるじ)を信頼しているからこそです。竜之介は、あなたの意思を一生懸命に成そうと奮闘したのですから、褒めてあげなければ気の毒ですよ。私は、そう思います」

 ナカノヒトが、優しい声で、そう言った。


「そうだね。竜之介は……あの子は良くやった……。私の自慢の子だよ」


「はい。立派でした」

 ナカノヒトは頷く。


 私は、ナカノヒトの胸を借りて、大声で泣いた。


 しばらく泣いたら、スッキリしたよ。

 取り返しのつかない事で、クヨクヨするのは、私らしくない。

 こんな湿っぽい私を竜之介も喜ばないだろう。

 泣くのは、もう、やめだ。

 シャルロッテや【樹人】達の、これからの事を考えなくっちゃね。


 私とナカノヒトは、森の中にいた【樹人】達を全員連れて、【ラピュータ宮殿】に戻った。


 ・・・


【ラピュータ宮殿】に私達が戻ると、ミカエルが待っていて、銀行業務担当者だという【天使(アンゲロス)】を紹介した。

【シエーロ】にはギルドがないから、【天使(アンゲロス)】の公務員が、それを代行しているんだよ。


 銀行業務担当者が目の前で手続きをして、私のギルド・カードには、間違いなく【シエーロ】政府から、非課税の賠償金が振り込まれていた。


「へ?10億金貨も振り込まれているんだけれど?一桁間違えているんじゃない?」


「それは、ルシフェル以下、グレモリー様が【眷属】となさる者達の私有財産を換金した金額を上乗せしてあります。【眷属】には、もはや私有財産は必要ないでしょうし、さりとて、【シエーロ】の公人として与えられていたルシフェル達の特権や資産は、いわば領地などの国家に帰属する事が望ましいモノも多いのです。この【ラピュータ宮殿】があるルシフェルの領地【白の庭園】などがそうです。この【白の庭園】をグレモリー様に、そのまま、お渡しする事は出来ませんでした。なので、換金して振り込ませて頂いた次第です」

 ミカエルが言う。


「あ、そう。なら、もらっとく」


 スマホでディーテに確認したところ、彼女のギルド・カードも間違いなく1億金貨の賠償金が振り込まれているそうだ。


 それにしても、10億金貨……日本円に換算すると、大体100兆円だよ。

 口座に塩漬けしておくのは、どう考えても良くないよね。

 お金は市井に回してこそ経済が回るのだから。

 何か、お金を使って事業でも始める事を真剣に考えなくては。

 シャルロッテ達にも何か仕事を与えてあげたい。

 私の施しだけで生きるような状態は、シャルロッテ達にとっても健全ではないからね。


 ナカノヒトは、ルシフェルが穿(うが)った【ラピュータ宮殿】の壁の穴を魔法で塞いだ後、ミカエルと少し話をしていた。

 どうやら、シャルロッテ達以外にも無数の人種がルシフェルの奴隷となっているらしい。

 その奴隷達の処遇を、どうするか、とミカエルが、ナカノヒトに訊ねている。


 狂気に走った【知の回廊】は、全世界に秩序と調和をもたらす為に、【知の回廊】に従わない知性ある種族を全て絶滅させようとした。

 ルシフェルと【知の回廊】は……【知の回廊】はルシフェルの奴隷には手を出さない代わりに、ルシフェルは【知の回廊】の手足となって働く……という取引をする。

 これによって、ルシフェルの私有地である【ラピュータ宮殿】を含む広大な領域である【白の庭園】や、【魔界(ネーラ)】に住む、ルシフェルに恭順した人種や【魔人(ディアボロス)】は……【知の回廊】による虐殺(ジェノサイド)を免れた訳だよね?

 ……って事は、ルシフェル本人が主張していたみたいに、ある意味では……知的生命体をルシフェルに隷属させる事で、シャルロッテ達を含む知的生命体を【知の回廊】の虐殺(ジェノサイド)から守っていた……と解釈出来なくもない訳だ。


 うーん、もしかしたら単純に……ルシフェルが悪い……とばかりは言えないのかもしれない。

 もちろん、ルシフェル達が、竜之介を殺したり、シャルロッテ達を隷属したのは絶対に許せないけれどね。

 でも……シャルロッテ達が【知の回廊】に全員殺されるよりは、例え奴隷であっても生きていて欲しい……と思う気持ちが、私には全くないのか、と言われれば、答えに困る。

 現実主義に徹するなら、ルシフェルの行動を擁護する人も世の中には、いるのかもしれない。


 ナカノヒトによると……ルシフェルは人種の庇護を第一とする【存在意義(レゾンデートル)】を持っている……らしい。


 ルシフェルは、彼なりに精一杯、人種の庇護をしていたのかもしれない。

 その手段が奴隷契約だとしたら?


 うーむ、単純に善悪二元論では片付かない、複雑な問題だよね。


 その点、ナカノヒトの価値基準と行動原理は極めてシンプルだ。


 誰かが世界の理(ゲーム・ルール)に違反したら……。

 はい、有罪。


 神様の思考は、とても、わかりやすい。


「ミカエル。【白の庭園】、及び、全【シエーロ】内の人種は、私が庇護します。【シエーロ】において人種差別などの許しがたい事例を発見した場合。私は【シエーロ】の人種を【知の回廊】の委託管理者にして、【天使(アンゲロス)】達は、【シエーロ】から、永久追放します。それを全【天使(アンゲロス)】に周知徹底、厳命しなさい」

 ナカノヒトは言った。


「はっ!わかりました」

 ミカエルは、跪いて答える。


 ナカノヒトは、正しい道を最短距離で進む事が出来る。

 ルシフェルのように、誰かを守りたいが為に望まない政治取引を強いられる事もない。

 それは、ナカノヒトが最強だからだ。

 もしもルシフェルに、ナカノヒトと同じ戦闘力があれば、彼は【知の回廊】と戦って倒せたのだから。

 つまり、自分の理想を妥協なく追求する為には、誰にも屈さない最強の戦闘力が必要なのかもしれない。


 ナカノヒトみたいにね。


 そう考えると、ルシフェルは……守りたいモノを一生懸命に守ろうとして、でも力がなくて守りきれなくて……悲しくて、悔しくて、力がない自分が不甲斐なくて、弱い自分が腹立たしくて、惨めで、虚しくて……。

 私は、ルシフェルが、少しだけ気の毒に思えた。


 ま、少しだけだけれどね。

 ルシフェル達は、竜之介とシャルロッテ達に酷い事をした。

 だから、ブッ飛ばした。

 それに関して、私には1mmも呵責(かしゃく)はない。


 私は、ナカノヒトみたいな神様でもなければ、ルシフェルみたいな為政者でもないからね。

 好きなように生きられる。

 (しがらみ)のない身分てのは、気楽で良いよね〜。


 ・・・


 ナカノヒトとミカエルの()()()()同士の会議が終わって、私は、ルシフェルを始めとする9人の【改造知的生命体(バイオロイド)】達を順番に【眷属】にする為の儀式に着手した。

 対象の額に人差し指を、ズボッ、と突き刺して、脳ミソを、引っかき混ぜる。


 グリグリグ〜リ……。


 ナカノヒトが手伝ってくれたので、【眷属化】への【抵抗(レジスト)】は不可能。


「さーて、【眷属化】したは良いけれど、こいつらは、どうすっかなぁ〜。とりあえず、【サンタ・グレモリア】の警備員にでもしとくか……」


「グレモリー。この者達の身柄と処遇は、私に預けてもらえませんか?」


「構わないけれど、私の取り分は?」


「グレモリー。これは、あなたに対する損害賠償や慰謝料ではありません。あくまでも、シャルロッテ達にルシフェルがした非道な行為に対する懲罰です。つまり、ルシフェル達を【眷属】にする、という行為そのものが罰で、それをグレモリーが恣意的に利用する事を担保したモノではありません」


「つまり、【眷属化】は、懲罰を与える事が目的で、私への、ご褒美じゃないって事だね?何か損した気分だよ」


「そうです。グレモリーの取り分、という意味では、賠償金の10億金貨と別荘2軒の所有権が、そういう意味合いを持ちます」


「あ、そう」


「でも、一応、ルシフェル達の身柄と処遇を私が預かる対価として、艦隊クルー用の【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションを総数500体まで追加で渡しましょう。現在ストックがないので、これから造る度に順次譲渡という形ですけれど」


「オッケー。こいつら、頭が悪そうだから、別にいらないし。正直、【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションの方が嬉しいよ。それも500体まで増やしてもらえる。これは、艦隊をもう1つ造れるんじゃないかな。確か、ナイアーラトテップさんが描いた図面が、まだあるんだよね。資金的に諦めた【超級飛空航空母艦(スーパー・キャリアー)】とか、【飛空(フライング・)要塞(フォートレス)】とかがさ……」


 もはや、私には、それを可能とする資金力があるからね。


「グレモリー。【超級飛空航空母艦(スーパー・キャリアー)】はともかく、【飛空(フライング・)要塞(フォートレス)】は目的から言って、不経済ですよ」


「重厚長大、大艦巨砲は、ロマンなんだよ。無用の長物であっても、良いのっ!」


 ま、ナカノヒトが言う通りなんだけれどね。

 今の私には、色々と守るべきモノが出来た。

 軍事力も、ロマンより費用(コスト・)対効果(パフォーマンス)を優先しなければいけないのかもしれない。


「【超級飛空航空母艦(スーパー・キャリアー)】や【飛空(フライング・)要塞(フォートレス)】を造るかどうかは、さて置き、【マジック・カースル】の格納庫(ガレージ)とヤードを活用すれば、造船は出来ますね。施設を遊ばせておくのは勿体ないですから、造船所にしてみてはどうですか?」


「そだね。ま、お金には困っていないけれど、社会の役に立つ産業の一翼を担うのも生き方としては、アリだね〜」


「高速の【飛空貨客船】などは需要がありますよ。鉄道や高速バスや高速トラックなどをイメージした交通インフラとしてです」


「ノヒトがやれば良いじゃん。私は、もっと、こうロマン溢れるヤツをだね〜……」


「私は、軍艦の建造や改造で忙しいのですよ。民政品の船舶までは、まだ当分の間、手が回りきらない状況です」


「あ、そう。ま、考えとく。私も暇って訳じゃないからね〜」


 ま、私なりに多少は考えもあるんだよ。

 現代地球では、代表的な巨大産業と言えば、自動車だ。

 でも、異世界の自動車に相当する【乗り物(ビークル)】は、ダビンチ・メッカニカや、ドワーフ・インダストリーみたいな機械工業系の企業コングロマリットが、一部門として手がけているだけで、異世界に【乗り物(ビークル)】専門の大企業というモノはない。

 これは、飛空船技術により現代地球より航空産業の発展が進んでいる事と、道路などの地上の交通インフラ整備が遅れている為だと思う。


 私は、この【乗り物(ビークル)】での起業を考えている。

 名前は……リューノスケ(竜之介)・乗り物(ビークル)……RVってのは、どうかな?

 フロント・ノーズには、ピッカピカの竜之介のエンブレムを飾ってさ。

 悪くないと思うんだよね。


「それは、そうと、お腹が空きましたね」

 ナカノヒトは言った。


「そだね〜」


「一旦、夕食を食べに行きましょうか?」


「そうしようか」


 私は、シャルロッテ達にギルド・カードを発行してもらい、とりあえず食事に向かう事にする。


 シャルロッテ達の食事は、ミカエルから……【ラピュータ宮殿】に備蓄してあった食材などを、そっくり使って良い……と言われたから、それで適当に食べてもらう事にした。

 1年分くらいは、食料備蓄があるのだ、とか。

 ま、この【ラピュータ宮殿】は、ルシフェル側の、内戦の最前線基地だったみたいだから、さもありなん、という話だよね。


 私とナカノヒトは、夕ご飯を食べに、ゲームマスター本部に【転移(テレポート)】した。

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・・・


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[良い点] やっと一段落?毎度思うけど【眷属】の儀式考えたやつもうちょいレーティングに優しい仕様にしろよ!?いや理屈はわかるけどさ! [一言] へー乗り物の大企業がないのは意外だな…ユーザーとか絶対バ…
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