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第379話。グレモリー・グリモワールの日常…74…剥製。

【ブリリア王国】と【ウトピーア法皇国】の戦争前の時点。


名前…バーソロミュー・ウエスタリア

種族…【(ヒューマン)

性別…男性

年齢…64歳

職種…【貴人(アリストクラット)

魔法…なし

特性…なし

レベル…24


【ブリリア王国】公爵で、マクシミリアンの叔父(姉がマクシミリアンの母親)。

妻をエインズリー家から娶っている。

政治的にマクシミリアンとは立場を異にする。

 私とディーテは、【ラピュータ宮殿】に戻った。

 ルシフェルに隷属を強いられているシャルロッテ達の不当な【契約(コントラクト)】を解除させ、竜之介の死亡に関する【天使(アンゲロス)()政府の無法を抗議して、ついでに、特大のクレームを言ってやる為にね。


 本来なら、ルシフェルを始めとする不法行為の当事者には、キッチリと落とし前をつけてもらいたいところだけれど、それは、後でナカノヒトにやって貰えば良い。

 傍若無人、悪逆非道で知られた、私も、もう今は人の親。

 手当たり次第に喧嘩を買って歩くのも、そろそろ卒業しても良い頃だ。


 ま、ルシフェルのクソ野郎が、この事に反省の意思を見せず舐めた口を利くようなら、一発、お見舞いしてやる事も(やぶさ)かではないけれどね。

 それは、相手の態度と心がけ次第だ。


 私とディーテは、さっきと同じ応接室に通される。


 ・・・


 待たされた。


 ふざけるな!

 ルシフェルのクソ野郎は、私がシャルロッテ達と会って話して、ルシフェル達の悪業の事実関係を(つまび)らかに聴いて来た事を理解しているはずだ。

 何故、謝罪の為に、私を待ち構えていない?

 跪いて平伏して出迎えていてもおかしくはないだろう?

 何様のつもりだ?

 私を舐めきっているのか?

 それとも頭が空っぽなのか?


 この瞬間、私は、ルシフェル達を厳罰に処してもらうよう、ナカノヒトに依頼する事を決めた。


 ディーテ……一戦に及ぶ可能性もあるよ……油断しないでね。


 私は、ディーテに対して【念話(テレパシー)】で伝える。


 わかっているわよ……私だって怒り心頭なんだから……最高レベルの戦闘態勢よ。


 ディーテは【念話(テレパシー)】で言った。


 あ、そう。

 止められるかと思ったら、ディーテもやる気満々だね。


 程なくしてルシフェルが複数の取り巻きを連れて応接室に現れた。

 ルシフェルの背後に付き従うベルフェゴールさん……いや、もう呼び捨てで良いや……ベルフェゴールは、何だか大きな箱をワゴンに乗せて運んでいる。


 謝罪の品のつもりか?

 ふーん……賄賂で有耶無耶にする気?

 人を馬鹿にしやがって……。

 私は、金品なんかじゃ、釣られねーぞ!


「お待たせ致しました。内戦の事後処理と、政府人事などの懸案を決裁しなければならず、大忙しなのですよ」

 ルシフェルは言う。


 オマイの事情は知らねーんだよ。

 コイツは、アレだな。

 いや〜、トラブっちゃいましてね〜……が口癖のバブル期のヤンエグみたいだ。

 土地転がしで一山当てた成金の不動産屋の親父の馬鹿な(せがれ)で、DCブランドに身を包んで青年実業家を気取ってはいるけれど、軽薄で頭が空っぽで仕事も出来ないニュー・リッチのボンボンにソックリだ。

 こういう手合いはバブル崩壊の後で全員破産して、高級スーツを脱いで、作業着でドサ廻りをする羽目になったんだよ。


 クッソ下らなねー奴だな……死ねば良いのに。


「とりあえず、言いたい事だけ言わしてもらう。まず、今この場でシャルロッテ達の隷属を解除しろ。この件でのオマイの世界の理(ゲーム・ルール)違反は明白だ。こいつは重犯罪だぞ、ルシフェル。【調停者(ゲームマスター)】にキッチリ告発させてもらうから、覚悟しておけ……」

 私が、言い放つと、その場は、ピリッ、と空気が固まった。


「次に、私の従魔である竜之介の死に関して責任を負う立場にある者を器物破損、及び、英雄(ユーザー)の動産資産の完全な保全をうたった国際条約違反の罪で告発する。当該責任者がいないのならば、この罪もルシフェル……オマイが償え。ま、複合罪で、極刑は免れないだろうけれど、精々、自分の罪を天国の竜之介に懺悔するんだな。あ、いや、オマイは、地獄に落ちるから、竜之介には会えないか?ま、どっちにしろ、オマイは終わりだ。ろくでなしのクソガキ」

 私が畳み掛けると、その場は、剣呑(けんのん)な雰囲気が漂う。


 おっ?

 やるか?

 コッチは一戦に及ぶ覚悟もあるぞ!


 ルシフェルは足を組んで座ったまま、気持ち悪い微笑みを浮かべている。

 余裕をかましてスカした態度をしやがって、実に気に入らん。

 私は、怒りで、魔力が溢れ出すのを感じた。

 こちとら今にも爆発寸前なんだぞ。


「あなたの従魔の件は申し訳ない事をしたと思います。お許し下さい。直接手を下したのは部下ですが、責任は当時最上席者であった僕にあります。あなたの【樹人】達に関しては、確かに額面通りに解釈するなら、僕が隷属したのは間違いありません。しかし、これには理由があるのです。彼らを守る為の措置だったのですよ。僕の説明を聞けば、きっと、グレモリー殿も、ご納得頂けると思います」

 ルシフェルは言った。


「どんな言い訳を聞いたって、納得なんか出来る訳はないだろ?オマイは、救いようのない馬鹿だな?シャルロッテ・メリアスから話を聴いたんだけれど、オマイさん達に取引を持ちかけられ……配下の【ハマドリュアス】達の生命を奪う……と脅迫されて……【ハマドリュアス】達の生命を救う代わりに、命令を聞くように……と持ちかけられて、不当な【契約(コントラクト)】を結ばされたらしいね。ウチの可愛いシャルロッテは、健気にも【ハマドリュアス】達を守る為に、オマイさん達に従ったらしいんだけれどさ。どういう了見だ!オイ、ルシフェル。オマイは、私と戦争をしたいのか?」


(いささ)か認識に誤解があるようですね。僕は、確かにグレモリー殿の庇護していた【樹人】達を、便()()()、隷属しましたが、それは、あの【樹人】達を守る為には致し方なかったのです。【知の回廊】から守る為です。【知の回廊】は……知性の高い人種を絶滅させろ……と命じました。あなたの【樹人】達も、その対象だったのです。しかし、【知の回廊】は、僕との取り引きで……僕の奴隷には手を出さない……と【契約(コントラクト)】していました。あなたの【樹人】達を守るには、隷属する以外に手立てがなかったのです。それとも、グレモリー殿は……かの【樹人】達が滅んだ方が良かった……とでも?」

 ルシフェルは、嘲笑するような態度で言う。


 ムカつくね。


「そんな愚にもつかないオマイらの都合なんか、私やシャルロッテ達には一切関係がない。【知の回廊】から守る?なら、オマイが身体を張って、【知の回廊】に立ち向かえば良かったんじゃねーのか?それをしないで、オマイは自分の保身を維持した上で、結果のシワ寄せを全部シャルロッテ達に被せたんだから【知の回廊】と同罪だ。1mmも罪は軽くならねーんだよ。それに、責任の所在なんか、オマイらの側の言い訳でしかない。そんな戯言は、裁定の時に【調停者(ゲームマスター)】の前で言え。因みに、私は、被害者の立場として、【調停者(ゲームマスター)】に……当該責任者の厳罰を望む……と意見陳述するつもりだからな。ま、厳しい裁定が下る時までは、精々、そのクッソいけ好かない気色悪い笑顔で余裕をかましておけよ、ルシフェル。私は、そもそも、そんな、どうでも良い事は聞いてないんだよ。さっさと、シャルロッテ達を解放しろ。これ以上、罪を重ねると、ギロチンにかけられるオマイら側の人数が増えるだけだぞ。ちっとは頭を働かせろよ、無能が!」


 ルシフェルは、気色悪い微笑みを浮かべたままだったが、焦燥感に(さいな)まれ始めているのが見て取れた。

 ルシフェルのコメカミの辺りから、汗が筋を作りながら、流れている。


 グレモリーちゃん……気付いている?


 ディーテが【念話(テレパシー)】で注意喚起した。


 うん、【マッピング】で見えているよ。


 私は【念話(テレパシー)】で伝える。


 応接室の入口からは、姿の見えない何者かが入室して来ていた。

 でも、【マッピング】で丸裸。

 ベリアル、っていう名前までバッチリ表示されているよ。


 つまり、【完全(パーフェクト)認識阻害(・ジャミング)】系の【神の遺物(アーティファクト)】を装備しているんだろう。


 ベリアルなる侵入者の光点(マーカー)反応は、ピンク。

 中立色と、交戦色の中間色だね。

 いきなり攻撃はして来ないとは思うけれど、油断は禁物だ。

完全(パーフェクト)認識阻害(・ジャミング)】系のアイテムを装備している相手からは、魔力反応が探知出来なくなる。

 つまり、相手が攻撃魔法を放とうとして、魔力を練っていたとしても、こちらにはわからないのだ。


 私とディーテは、既に、【防御(プロテクション)】と【魔法障壁(マジック・シールド)】をフル・パワーで張っているけれど、警戒は厳にしなければ、足元をすくわれるからね。


「わかりました。ともかく、かの【樹人】達を解放するという、ご要望は、その通りに致しましょう。しかし、僕が、かの【樹人】達を隷属したのは、あくまでも【知の回廊】から守る為であった事は事実です。その事は【調停者】の前でも主張致します」

 ルシフェルは眉間にシワを寄せて言った。


「竜之介の殺害に関わった当該責任者は、誰だ?」


「それは、私の直臣です。実は、かの【ドラゴネット】の亡骸(なきがら)()()されておりました。なので、お返し致します」

 ルシフェルは言う。


 ベルフェゴールが、運んで来た箱の蓋を開けて、数人に手伝わせて、()()()取り出した。


 !!!


 それは、変わり果てた……竜之介だった。


 何て、(むご)い事を……。


 竜之介は、剥製にされていたのだ。

 竜之介の表情は、生前の愛嬌のある顔付きではなく、口を開け牙を剥き出し苦悶に満ちたモノ……。


「あ、ああ……竜之介……」

 私は、無意識の内に、竜之介の剥製に向かってフラフラと歩き出していた。


「グレモリーちゃん、気を確かにっ!ここは、敵陣の、ど真ん中よっ!」

 ディーテの鋭い声が、私を辛うじて正気に戻す。


「むぎぎぎ……ルシフェルぅっ!テメェ、私の竜之介になんて事をしてくれたんだぁ〜っ!」

 私は、魔力収束を全開にして叫んだ。


「グレモリー殿……落ち着かれよ。この【ドラゴネット】は、希少な種でしたので、研究の為に……」

 ルシフェルは、焦りの表情を浮かべて、慌てて取り繕う。


「がぁあああーーっ!私の家族を殺した上に、その死体を(もてあそ)びやがってぇえええーーっ!テメェには、血が通っているのか?このケダモノがぁあああーーっ!」

 私は、慟哭(どうこく)しながら、必死に叫んだ。


「グレモリー殿、どうか、お許し下さい」

 ルシフェルは頭を下げて言う。


「許さねぇえええっ!テメェだけは、絶対にっ!竜之介と同じように、テメェの家族も殺して剥製にしてやろうかぁあああーーっ?!」


 その時。


「怨嗟よ、敵を呪え……【(カース)】……」

 誰かが魔法を詠唱する。


 刹那!


 巨大な魔力反応を感じた。

 ベリアルという姿の見えない奴が魔法を放ったのだ、と、私は理解する。


 私の脳は脊髄反射的に冷静になり、瞬時に戦闘フォーマットを起動する。


 撃って来やがった。


 私は、コンマ・マイクロ秒の間に、高速演算して魔法の種類を特定して、射線を計算する。


 ヤバい。


 魔法は、【超位】の【呪詛魔法】。

 それも、何らかのアイテムを使い捨てにして触媒にしたらしく、威力が、かなりブーストされていた。


 私は【転移(テレポート)】すれば問題なく避けられる……。

 でも、私が避ければ、射線の指向線上にはディーテがいた。

 ディーテも魔法が放たれた事は、わかっているだろうけれど……回避行動が間に合うか?

 ……わからない。


 私は、瞬時に……ディーテを守る為に避けない……という決断をした。


 私はユーザー。

 死んでも復活出来る……と思う……たぶん。

 異世界転移後には、まだ死んだ事はないから、もしかしたら復活出来ないかもしんないけれど、そん時は、そん時だ。

 少なくとも、NPCのディーテは、死んでしまったら復活なんかしない事が確定している。

 ディーテを死なせる訳にはいかないからね。


 それに、ナカノヒトがいる。

 最悪、即死を免れれば、ナカノヒトが駆け付けてくれるに違いない。

 ナカノヒトなら、どんな酷い怪我でも丸っと治せるはずだ。

 ここは、私が壁役になるべきだね。


 ズガーーンッ!


 ベリアルの放った【呪詛魔法】は、私に直撃した。


 くっ!

 威力値は、【()・超位】……。

 どうやら、ベリアルが使い捨てにしたのは、【神の遺物(アーティファクト)】だったらしい。


「我が名はベリアル。ルシフェル様の忠実なる(しもべ)。我が究極魔法が直撃したのだ。もはや、死は免れまい」

 ベリアルが【認識阻害(ジャミング)】を解除して、姿を現した。


「ベリアルっ!貴様、何という事をしてくれたっ?!」

 ルシフェルが言う。


「何故です?私は、ルシフェル様を、お守りしようと……」

 ベリアルは言った。


「愚か者がっ!」

 ルシフェルがベリアルを叱責する。


 私の【防御(プロテクション)】と【魔法障壁(マジック・シールド)】は一気に剥がされて、右腕を肩の付け根から持っていかれた。

【漆黒のローブ】の防御力も抜かれて、右半身の胸部と腹部にもダメージが入っている。

 ヒット・ポイント(HP)は、86%も削られた。

 私は、防御力が()だから、次は、【高位魔法】を一発でも食らえば保たない……。


「【壊死(ネクローシス)】」

 私は、ベリアルに対して迎撃した。


壊死(ネクローシス)】を食らったベリアルは、瞬時に無力化される。

 ベリアルは辛うじて生きているようだけれど、【壊死(ネクローシス)】は人種には治療不可能。

 ベリアルは、死亡確定。


 相手から先に手を出した。

 これは正当防衛。

 つまり、開戦だ。


 でも……こいつは、ちと不味いね。

 ベリアルの魔法を避けないと決めた時点で、ダメージを食らうのは織り込み済だ。

 この状態でも、私は、ここにいる全員に勝つ自信がある。

 不味いのは、勝敗云々ではない。


 私は、【呪詛魔法】を食らった。

【呪詛魔法】は【治癒(ヒール)】無効。

 でも、私は、すぐナカノヒトを呼べば、即死さえ免れれば、ダメージなんかは問題にならない、と高を括っていた。


 でもね……不味い事になったよ。

 ナカノヒトから、持たされていた【ビーコン】は右側のポッケに入っているんだ。

 右腕がなくなっちゃったから、【ビーコン】のボタンを押せないじゃないかよ……。


 その時、ベリアルが私に倒されたのをキッカケにして、ルシフェル陣営からの一斉攻撃が始まった。

 おっと、飽和攻撃。

 (さば)ききれない。


 ナカノヒトに【念話(テレパシー)】……いや、この際どい魔法戦闘の最中に【念話(テレパシー)】をする余裕がね〜……。


 ディーテも防戦で手一杯。


 ちょっ、タンマ、ヤバッ、くそっ……こいつは、鬼畜難易度だ。

お読み頂き、ありがとうございます。

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・・・


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[一言] こうみると犯罪者を見つけたあと通報せずにこっそり尾行したのと同じくらいの愚行では…まあ気持ちはわからないでもないけど
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