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第372話。グレモリー・グリモワールの日常…67…異世界の管理者。

チュートリアル終了時点。


名前…ロヴィーサ・グランフェルト

種族…【ハイ・エルフ】

性別…女性

年齢…799歳

職種…【魔法弓士(マジック・アーチャー)

魔法…【闘気】、【風魔法】、【収納(ストレージ)】、【鑑定(アプライザル)】、【マッピング】など多数。

特性…【才能(タレント)…風魔法、伏兵(アンブッシュ)】、【グレモリー・グリモワールの使徒】

レベル…99


元【エルフヘイム】の近衛隊長。

 10月4日の早朝。


 私は、フェリシアとレイニールに起こされた。

 見慣れない部屋とベッドに一瞬だけ混乱する。

 すぐ、思い出した……ここは竜城。

 ……と、それはともかくとして……。


 超、頭が痛え〜。


 完璧な二日酔い。

 どうやって、昨晩この部屋まで戻って来たのかすら記憶がない。


「フェリシア。ちょっと、解毒して欲しいんだけれど……」

 私は、二日酔いの頭痛と気持ち悪さの解消を頼んだ。


「はい、【治癒(ヒール)】」

 フェリシアは治療をしてくれる。


 すぐに効果が出て、具合の悪さは消えた。


 さすがは私の娘……天才だね。

 そして娘に二日酔いの介抱をされる母親って、恥ずかしい。


 でも、私は、ある程度毒に耐性を持つ【聖格者】……つまり【ハイ・ヒューマン】だ。

 その私が、これだけ具合が悪くなるのだから、どれだけ多量のアルコールを摂取したのか、って話だよ。

 昨晩は女子会に参加して、調子に乗って飲んじゃったからなぁ〜。

 美味しいワインだった。

 私は、記憶にある限り、最低でもワインをボトル3本以上は一人で消費している。

 途中からは、グラッパ(蒸留酒)もチャンポンしちゃったしね。

 明らかに飲み過ぎた。


「お母さん、病気なの?」

 レイニールが心配そうに私の顔を覗き込む。


「大丈夫だよ。昨日お酒を飲み過ぎてね。2人は大人になって、お酒を飲んでも、具合が悪くなるまで飲み過ぎてはダメだよ。これは、ダメな大人の見本だからね」


 フェリシアは、深酒をする大人の悪癖を、ある程度理解しているので苦笑した。

 レイニールは、まだ意味がわからないのか、キョトン、とした表情をする。


 竜城の【女神官(プリーステス)】さんが、私達に朝食の時間を伝えに来た。

 私達は、移動する。


 ・・・


 竜城の大広間に着くと、もう、ディーテやアルフォンシーナさんやナカノヒトは起きていた。


「おはよう。スッゴイ部屋で快眠だったよ。予約していたホテル・ドラゴニーアのスウィートより、こっちに泊めてもらって良かったね。ありがとう、アルフォンシーナさん」


「おはようございます、グレモリー様。お気に召して頂けたなら何よりです」

 アルフォンシーナさんは微笑む。


 アルフォンシーナさんは、昨日、10本以上のワインを1人で空けていた。

 あれだけ飲んだのに、全く、お酒が残っている様子がない。

 どんな肝機能をしているんだろう?

【ドラゴニュート】の種族特性なのか、はたまたアルフォンシーナさんの体質なのか?


 ワイン5本以上を飲んでいたはずのディーテも、いつもと変わりがないね。


 ソフィアちゃんとウルスラちゃん、オラクルさんとヴィクトーリアさんが現れて朝食を同席するメンバーは全員集合。


「おはようございます、ソフィア様」

 アルフォンシーナさんが挨拶した。


 みんなも揃ってソフィアちゃんに丁重な礼を執る。

 竜城はソフィアちゃんの家。

 彼女が、この城の主人なのだ。


「おはようなのじゃ……あわぁ〜……むにゃむにゃ……」

 ソフィアちゃんがアクビをすると、ソフィアちゃんの頭の上で眠っていたウルスラちゃんが、ずり落ちそうになる。


 あっ……。


 ソフィアちゃんの背後に控えるオラクルさんがウルスラちゃんを優しくキャッチ。


 ほっ。


 私達は、テーブルに着いた。

 今朝のメニューはパンケーキ。


 私は、パンケーキにはバターたっぷり派。

 親の仇のようにバターを塗りたくって食べる。

 コレステロール?

 ふふ、ユーザーはラッキーな事に生活習慣病には、ならないんだよ。

 付け合わせはベーコンとスクランブルエッグ……それにサラダをチョイス。

 日本で売られているベーコンは食品衛生法上、加熱されたモノだけれど、このベーコンは()()の非加熱ベーコン。

 だから、焼くとカリッカリになる。

 西部劇とかで、お馴染みのカリカリ・ベーコンとは、これの事を指す。

 美味しいね。

 サラダも、みずみずしい。


 フェリシアとレイニールは、パンケーキに大量のメープルシロップをかけてアイスクリームとフルーツを乗せていた。


「レイニール。お皿を舐めない。お行儀が悪いよ」

 私は、隣に座るレイニールに注意する。


 最近、私は、こうしてフェリシアとレイニールに食事のマナーとかを注意するようになった。

 自分でも意外な心境の変化だね。

 以前の私は、マナーなんか糞食らえ、と思っていたけれど……フェリシアとレイニールを育てながら考えが少し変わった。


 大人になって私みたいにマナーに頓着しないのは個人の自由意思の問題だけれど……フェリシアとレイニールに私がマナーを教えなかったが為に、2人が無自覚で周囲の人達に迷惑をかけるのは意味が違うからね。


 やはり、親や保護者は、子供にマナーという社会通念を最低限は身に付けさせる責任があるんじゃないか……なんて常識人みたいな事を、私は、最近考えている。

 その上で、フェリシアとレイニールが大人になって、マナーを守るも守らないも、それは2人の生き方の問題だから、好きにしたら良い。

 でも、私が自分の価値観を全て子供に強制するべきじゃない、と、なんとなく思ったんだよね。


 子育てって、親や保護者が、子供に、なるべく多くの選択肢を与えてあげる事なんじゃないかな?


 フェリシアとレイニールが、社会通念としてのマナーを知らなければ、将来、マナーを守る、という選択を選びたくても選べないからね。

 それを当人達に選べるようにしておいてあげるのが、親の役割だ……と、私は個人的に思った訳。


 私が、みんなの前でレイニールを注意したら、お皿をペロペロしていたソフィアちゃんも、ビクッ、として姿勢を正した。


 ソフィアちゃんに注意した訳じゃないんだよ。

 ソフィアちゃんは、現世最高神。

 人種ごときが決めたマナーなんかに行動を縛られる事はない。


 でも、ここで……ソフィアちゃんは神様だから、マナーを守らなくても良い……なんて私が言えば、レイニールを叱った手前、整合性が取れなくなる。

 二重規範(ダブル・スタンダード)は、子育てでは痛恨事となるからね。

 フェリシアとレイニールが大人に失望してグレるかもしれない。

 なので、私は、ソフィアちゃんにも頷いて見せた。

 人の親をするのも色々と難しい。


「ノヒトよ。今日の予定は、どうなっておるのじゃ?」

 ソフィアちゃんが訊ねた。


「まず、私の【シエーロ】の本拠地に寄って午前中は、中を見て回ってもらいます。昼食を食べて、午後はグレモリー・グリモワールの自宅に行きます。私は午後一で【サンタ・グレモリア】にグリモワール艦隊を運んでしまいますよ。皆は、基本的に自由時間ですね」

 ナカノヒトは言う。


 ナカノヒトの本拠地?

 いや、ゲームマスターの本拠地かもしれない。

【シエーロ】に、そんな場所があるんだね。

 知らなかった。


「昼食は、昨日入り損ねた飲食店街じゃな?」

 ソフィアちゃんは言う。


「【知の回廊】の飲食店街より数段レベルが高いレストランや料理屋が、私の本拠地には、たくさんありますよ。おそらく、どれも世界最高水準の料理だと思います。昼食は、そこで食べるつもりです」

 ナカノヒトは言った。


「なぬーーっ!世界最高水準じゃと?それは、そのレストランに何としても行かねばなるまい」

 ソフィアちゃんは、身を乗り出して言う。


「艦隊の輸送が終わったら、私達は【シエーロ】の観光でもしますかね。グレモリーは、午後どうしますか?」

 ナカノヒトが、私に訊ねた。


「別荘の方を見て来るよ。あっちは、たぶん接収されているだろうけれど、庭のどこかに竜之介達がいるかもしれないしね」


 竜之介とは、私のペット……【ドラゴネット】の従魔の名前。

 寿命から言えば、生きている可能性がある。

 あの子は、賢いし、放し飼いにしていた【ラピュータ宮殿】の敷地は広大で自然も豊かだ。

 動物も多いから餌には困らない。

 生きていてくれたら良いな。


「そうですか。おそらく別荘は接収されているでしょう。動産の引き取りは、どうしますか?」


 ユーザー大消失後の国際条約で、ユーザーの私有財産は原則保全が取り決められているらしい。

 なので、私の資産は【知の回廊】の亜空間倉庫に保管されているはず。

 ただし、不動産に関しては、各国の政府がユーザーの口座に適正な金額を振り込んだ上で、接収する事が認められているのだ、とか。


 私の銀行ギルドの預金残高は、とんでもない桁数。

 あの莫大な現金は、私のゲーム時代の現預金と900年分の金利、それから著作物の印税、そして【ラピュータ宮殿】と【ドラキュラ城】という私の2つの別荘の接収対価によってもたらされたモノだという事が、昨晩わかった。

 これは、ディーテの孫娘で、世界銀行ギルド頭取のビルテさんが丹念に古い資料を調べてくれて判明した事である。


「家具とか調度とか備品類が全部、となると、回収が大変そうだね。後日に輸送艦を【知の回廊】まで持って行くしかないかなぁ〜」


 正直、面倒臭いね。

 トランクルームみたいに、亜空間倉庫に入れっぱなしにしておいて、必要な物だけを必要に迫られた時に受け出すんじゃダメかな?


「私が代わりに引き取りに行きましょうか?」

 ナカノヒトが言った。


「良いの?」


「はい、構いませんよ」


「助かる。なら、頼むよ」


 おっし、ラッキー。

 あ、でも、またゲームマスターに借りを作る事になるね。

 相当な見返りを用意しないと、いよいよ、これは不味い事になるかも……。


「わかりました。フェリシアとレイニールとグレースさんは、どうしますか?」


「【シエーロ】は内戦が終わったばかりだからね。万が一があると嫌だから、竜都において行くしかないね。竜都観光でもしていてもらうよ」


「そうですね。それが良いでしょう」


「我は、やはり、飲食店街でも食べ歩きをしたいのじゃ」

 ソフィアちゃんが言った。


「世界最高水準のレストランは、本拠地に何軒もありますよ。【知の回廊】の飲食店街は、本拠地のレストランはもちろん、たぶん【ドラゴニーア】の店にも劣ります」

 ナカノヒトは言う。


「食べてみるまでは、わからないのじゃ」


「わかりました。では、そうしましょう」


「うむ。【シエーロ】は何が名物なのじゃ?」


「うーん、【ドラゴニーア】で食べられない物は、特にないね」


「【シエーロ】の名物……あっ、あれは?【黄金のリンゴ】」

 私は、ナカノヒトとソフィアちゃんに言った。


「【黄金のリンゴ】とは、何じゃ?」

 ソフィアちゃんが興味を示す。


「回復アイテムですよ。体力と魔力とダメージを回復します。【回復(リカバリー)】と【治癒(ヒール)】の効果を兼ねる優秀で高価なアイテムですね」

 ナカノヒトが説明した。


「味はどうなのじゃ?」


「味は、わかりません」

 ナカノヒトは、困り顔で、私の方を見る。


「わからないね〜」

 私も同意するしか出来なかった。


 900年前の私には、味覚がなかったからね。


「文献によると、天上の美味とされています」

 ファヴ君が言った。


「そうよ。とっても美味しいわよ。最近では、全く見ないけれど、900年前は英雄達から、【黄金のリンゴ】を買えたのよ。とんでもなく高価だったけれどね」

 ディーテが言う。


 ま、【黄金のリンゴ】って、いわゆる()()()()()()だからね。


「食べてみたいのじゃ。ついでに苗木を手に入れて、我の農場や、クイーンの農場でも育てて増やせば良いのじゃ」

 ソフィアちゃんは言った。


「それが、【シエーロ】でなければ育たないんだよ」

 ナカノヒトは言う。


【黄金のリンゴ】は【シエーロ】以外の場所に苗を植えたり接木しても枯れちゃうし、成木を移植しても根付かないんだよね。


「試してみなければ、わからないのじゃ」

 ソフィアちゃんは言った。


「なら、苗木を、もらって来たら良いよ」

 ナカノヒトは頷く。


「うむ。我と、ウルスラの祝福を二重かけすれば、あるいは育つ可能性があるのじゃ」


「祝福なら、まっかせといて〜っ!」

 ウルスラちゃんが言った。


 ナカノヒトは、ソフィアちゃんが、やりたい、と言った事は、ほとんど拒絶しないんだよね。

 ナカノヒトは、ソフィアちゃんと接する時、情報とナカノヒト自身の意見を伝えた上で、最終的にはソフィアちゃんの意向を最大限汲んでいた。

 随分と大人の対応。

 私だったら、もっと我を通そうとするんじゃないかな?


 ・・・


 朝食後、私達は【シエーロ】訪問組と、竜都観光組とに分かれて行動を開始した。


「グレモリーお母さんに、お土産を買ってくるね〜」

 レイニールが言う。


「私も、グレモリーお母さんに何かプレゼントを探します」

 フェリシアも言った。


「楽しみだね〜。私も、2人に、お土産を持ってくるからね」

 私がフェリシアとレイニールの頭を撫でる。


 竜都に繰り出すフェリシアとレイニールとグレースさんには、ナカノヒトが【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションを6体も護衛として付けてくれた。

 ま、竜都は安全だし、チュートリアルを経たフェリシアとレイニールとグレースさんなら、そこら辺の賊なら簡単に制圧出来る。

 それに、もしも3人に何か危険があれば、ナカノヒトが【転移(テレポート)】で駆け付けてくれるらしい。

 セキュリティは万全だね。


【シエーロ】に向かう私達は、【転移(テレポート)】した。


 ・・・


【シエーロ】の【知の回廊】最深部。


 私達は、【メイン・コア】部屋にやって来た。

 すると、部屋の奥に昨日はなかった通路が出来ている。

 私達は、通路の入口で、魔力を登録した後、その奥に進んだ。


「何じゃ〜、この巨大な【魔法石】はっ!」

 ソフィアちゃんが叫ぶ。


 私は、驚き過ぎて声が出なかった。

 何、コレ?


 見上げると、推定直径1kmの巨大な【魔法石】が空中に浮かんでいた。


「これが【ワールド・コア】……ミネルヴァです」


「皆様、どうぞよろしく。世界(ゲーム)の管理をしております。ミネルヴァで、ございます」

 どこからか、声がしてミネルヴァという()()が自己紹介をする。


人工知能(AI)?」

 私は呟いた。


「知性体です。【ワールド・コア】の演算能力そのものに【創造主(クリエイター)】によって自我と感情が付与されています。一応、生命ある存在なのですよ」

 ミネルヴァが言った。


 知性体……なるほど。

 このゲームには、肉体を持たず、知性そのもの、という種族がいる。

 高次元の知性生命は、強力な魔法触媒や【魔法石】に宿る事が出来る……という設定だ。

世界樹(ユグドラシル)】や【ダンジョン・コア】が、その代表例。


 でも……この、理解の範疇を超える巨大さの【魔法石】に宿る生命体は……どれほどのスペックなのか、もはや想像すら出来ないね。


 みんな、しばらく呆然としていた。


「我は、これが【創造主(クリエイター)】の本体じゃ、と紹介されたら、信じたじゃろうな」

 ソフィアちゃんが言う。


 まったくだね。

お読み頂き、ありがとうございます。

ご感想、ご評価、レビュー、ブックマークを、お願い致します。

活動報告、登場人物紹介&設定集も、ご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告には、訂正箇所以外の、ご説明ご意見などは書き込まないよう、お願い致します。

ご意見などは、ご感想の方に、お寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

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[一言] 竜之介…そろそろあの回か…(´Д`)
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