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第339話。祝福。

名前…シメネーラ・ビョルルンド・シエンツァ

種族…【ダーク・エルフ】

性別…女性

年齢…50歳

職種…【呪医(カニング・フォーク)

魔法…【闘気】、【回復(リカバリー)治癒(ヒール)】、【収納(ストレージ)】、【鑑定(アプライザル)】、【マッピング】など。

特性…【才能(タレント)……調合(プレパレーション)回復(リカバリー)治癒(ヒール)

レベル…23


ソフィア・フード・コンツェルンCOOであるジリオの妻。

薬学の知識と【調合(プレパレーション)】の素養があるので、アブラメイリン・アルケミーで働き始める。

【ダーク・エルフ】の国【スヴァルトアールヴヘイム】の名家出身。

 ゲームマスター本部。


 夕食後。

 遺跡(ダンジョン)攻略組の報酬の確認を行いました。

 獲得したアイテム類の分配に関しては事前に済んでいましたが、一部、()()()、やり取りが行われています。


 特殊な、やり取りとは?


【ムームー】のチェレステ女王にプレゼントした【王族の馬車】に搭載された武装である【魔導砲(マジック・カノン)】は、今回【遺跡(ダンジョン)】で入手した物です。

 これは分配によって、クイーンに所有権が譲渡されていました。


 しかし、私は、その【魔導砲(マジック・カノン)】を流用し、チェレステ女王の馬車に取り付けてしまったのです。

 ご心配なく……これは、事前にクイーンから許可を得た上での予定通りの行動でした。


 あの【魔導砲(マジック・カノン)】は、()()()、一旦クイーンに譲渡され、クイーンから再度私が預かり、チェレステさんのプレゼントである馬車として渡したのです。

 クイーンには、その対価として、後日、私から【タナカ・ビレッジ】の都市開発を行う事で了承を得ていました。


 何故このような回りくどい事をしたのかと言うと。

 まず、チェレステ女王に譲渡する【王族の馬車】には武装がありませんでした。

 なので、武装を付けてあげるつもりでしたが……ゲームマスターは、1党1派1国に(くみ)しない……という遵守条項がある為、ゲームマスター本部で生産された兵器類を、【ムームー】の女王であるチェレステさんに寄贈する【王族の馬車】には装備してあげる事は出来ません。

 なので……私がプライベートで入手した【魔導砲(マジック・カノン)】を、一旦クイーンに譲渡して、所有権者を迂回してチェレステさんにあげる……という手順を踏んだのです。


 オフショアのペーパー・カンパニーを経由してマネー・ロンダリングを行う犯罪手法に酷似していますが……これは、ミネルヴァ的にセーフ。

 ならば、私としても何ら問題ありません。


 そして、今日の昼頃、商業ギルド・王都【アトランティーデ】支部から……買取査定の完了……が連絡されました。

 商業ギルドは、膨大な量の素材を持ち込んだのにも拘わらず、猛スピードで査定を完了させてくれています。

 例の……レジョーネ、対、【天使(アンゲロス)】選抜による団体対抗戦……が全世界に中継生放送された結果、レジョーネは……守護竜と【調停者】が所属するパーティだ……と認知されてしまったからでしょうね。

 以前から、商業ギルドを始めとする主要ギルドは、その事を知っていましたが、今では世界中の一般市民も、それを知る事になったので、各ギルドはレジョーネの案件を最優先で処理せざるを得ない状況になっているのだと思います。

 レジョーネを待たせている、などという風評が立てば、各ギルドは市民からの激しい突き上げを食らってしまいますからね。

 彼らも必死です。


 私は、特別待遇を求めたりはしませんが、市民からのプレッシャーでレジョーネに最優先で対応しなければならない、というのは、先方の事情。

 レジョーネが圧力をかけている訳ではないので、私には、各ギルドの対応をコントロールする事は出来ません。


 一言だけ……査定に関して、レジョーネだから、と甘くする事なく厳密にして下さい……と依頼してあります。

 それは、私やソフィアの望むところではありませんし……そういった不公正な便宜を図ろうとするなら、贈賄と見做して逆に取り締まりますよ……と脅しつけてありますので、レジョーネが持ち込んだ素材だからといって、高く買い取るような不正は行われてはいません。


 実際に査定結果は、私の【鑑定(アプライザル)】と、ほぼ同じでした。


 私は、その金額に納得して、今回の受け取り資格を持つメンバー全員の口座への振込を依頼します。

 報酬を受け取るのは……つまり、レジョーネ、ファミリアーレ、ディーテ・エクセルシオール、フェリシアとレイニール。

 私とグレモリー・グリモワールは、魔物から取れた【魔法石】や血液などの現物、または、竜鋼(ドラゴニウム)などの資源という形で報酬を受け取ったので、現金での報酬はもらいません。


 ……で、今回、遺跡(ダンジョン)攻略に参加したメンバーのギルド・カードに振込が完了した訳ですが……。


 その天文学的金額に、ファミリアーレのメンバーが、激しく取り乱してしまいました。

 グロリアは、ギルド・カードに浮かび上がる現預金残高を見てガクガク震えていますし……リスベットは白目を剥いて卒倒しかけ……ティベリオは既に泡を吹いて倒れています。


 おや?

 予想金額を事前に伝えていませんでしたっけ?


 1人頭147万金貨(1470億円相当)ですが、何か?


 もはや、一生食べて行くのに困らないでしょうね。


 一応、ファミリアーレの子達の金銭感覚がおかしくなって身を持ち崩さないように、銀行ギルドに信託財産という形で運用してもらい、毎月、元本から1万金貨(10億円相当)と、運用利息が、ファミリアーレの普通預金口座に移され、一度に全額を引き出せないようにはしてあります。


 まあ、金額が莫大過ぎるので、こんな事をしても、焼け石に水、かもしれませんが……。


「この資金を【ドラゴニーア】で投資すれば、保護観察処分を受けているジェシカ以外は、ファミリアーレ全員【ドラゴニーア】国籍を取れるはずです。そして、収入の事だけを考えるならば、今後、働く必要もありません。つまり、冒険者を続けなくても良いのですが……みんなは、どうしますか?」

 私は、一応、ファミリアーレの意思を確認します。


 全員、ファミリアーレを継続するつもりだと言いました。

 ロルフとリスベットは、一瞬、迷ったようですが、最終的には、当初の予定通り1年間は、ファミリアーレで活動する決心をしたようです。

 私としても、弟子達の指導が中途半端になるのは本意ではないので、彼らが1年私の元にいてくれる事は望ましい事でした。


 さてと、次にやるべき事は、と。


「レジョーネ、ファミリアーレ、グレモリー、ディーテさんには、私から【祝福(ブレッシング)】を与えます」

 私は、言いました。


「あのチェレステ女王陛下に与えていた、規格外の【祝福(ブレッシング)】?」

 グレモリー・グリモワールが訊ねます。


 さすがは、グレモリー・グリモワール。

 私がチェレステさんに与えた【祝福(ブレッシング)】が()()()()()()事に気付いていたようです。


「はい。私の【神位祝福(ブレッシング)】です。おそらく、人種に使用すると【聖格】に昇華するはずです」


 ディーテ・エクセルシオールが、えっ!、というリアクションを見せました。

 グレモリー・グリモワールは……腑に落ちた……というように頷いています。

 ファミリアーレは、ピンと来ないのか、キョトンとした表情ですね。


「それってさ、もう【聖格】に昇っている私やディーテにも効果があるモンなの?」

 グレモリー・グリモワールが訊ねました。


「はい。【聖格者】もブーストされます」


「へえ、あんがと。で、その凄い【祝福(ブレッシング)】をしてもらえる対価で、私らは何をしたら良い訳?」

 グレモリー・グリモワールは眉間にシワを寄せて訊ねます。


「特にありません」


「いーや、それだと困るよ。世の中にタダより高いモンはない。特に、相手がゲームマスターの場合はね」

 グレモリー・グリモワールは言いました。


「なら、レジョーネが【魔界(ネーラ)】のスタンピードを止める作戦時に、グレモリーとディーテさんも手伝って下さい。前線はレジョーネが受け持ちますので、2人は後方支援任務です」


「うーん。そいつは、ちと面倒いね」

 グレモリー・グリモワールは難色を示します。


「グレモリーちゃん、受けるべきよ。もう人種として限界まで強化されているグレモリーちゃんが、さらに強くなれるチャンスなのよ」

 ディーテ・エクセルシオールは言いました。


「うん、やるには、やるよ。でも、面倒いのは確かだから」

 グレモリー・グリモワールは言います。


「では、良いのですね?」

 私は、最終意思確認をしました。


「はいよ……あ、フェリシアとレイニールも、お願い出来る?」

 グレモリー・グリモワールは言います。


「構いませんよ。ただし、2人については、グレモリーが責任を持って下さいね」


 つまり、フェリシアとレイニールが、【祝福(ブレッシング)】で強化された力で、何か善からぬ事をしたり、しようとしたら……グレモリー・グリモワールが、あらゆる手段を講じて阻止する……という事。

 あらゆる手段の中には、()()する事も、当然、含まれていました。


 これは、ファミリアーレにも同じ条件が科されます。

 ファミリアーレが、世界(ゲーム)(ことわり)に反するような事をして看過出来ない事態が発生する場合、私はファミリアーレであっても、必要な措置を講じなければいけません。

 その時には……私は、ゲームマスターとして、それをするでしょう。


「オッケー。2人とはパスが構築されているから、ノヒトが心配するような事は私が絶対にさせないよ」

 グレモリー・グリモワールは言いました。


「では、やりますよ?」


「お、頼むよ」

 グレモリー・グリモワールは、両手でフェリシアとレイニールの手を握ります。


「お願い致します」

 ディーテ・エクセルシオールは言いました。


 ファミリアーレは、私を信用しきっているので、初めから受け入れ体制。

 フェリシアとレイニールも、グレモリー・グリモワールが言うのなら、と、無条件で受け入れます。


 あ……イフォンネッタさんは、どうしましょうか?


 レジョーネやファミリアーレやグレモリー・グリモワールやディーテ・エクセルシオールと違い、イフォンネッタさんの人格は、まだ、よく知りません。

 彼女の過去ログを調べ、犯罪や違法行為をしていない事はわかっていますし、チュートリアルに際してプリンシプルを【契約(コントラクト)】して、おかしな行動は取れなくなってはいますが……。


 人生に関わるような事を、知り合って間もないイフォンネッタさんにしても良いのか……という私の側の躊躇があります。


 イフォンネッタさんの両親であるジリオさんとシメネーラさんに確認すると……もはや娘の事は、ソフィア様とノヒト様に、お預けしたので、娘が望むならば構わない……との事。

 イフォンネッタさんは、場合によっては、私に滅殺される可能性がある事を承知した上で【祝福(ブレッシング)】を受ける事を望みました。


 あ、そう。

 ならば良し。


 そもそも、【祝福(ブレッシング)】を受けても受けなくても、世界(ゲーム)(ことわり)に反すれば、ゲームマスターである私に滅殺される可能性は同じですからね。

 本人の意志と理性の問題だけなのです。


「【祝福(ブレッシング)】」

 私は、レジョーネ、ファミリアーレ、グレモリー・グリモワール、ディーテ・エクセルシオール、フェリシア、レイニールに【神位祝福(ブレッシング)】を与えました。


 ソフィアには変化なし……守護竜の能力は微増……それ以外のメンバーは2割ほどの能力が底上げされました。

 ファミリアーレは、全員、【聖格】に昇華しています。


「ふむふむ、強化率2割ってとこか?ノヒト、これは、あれだね。【調伏(テイム)】時の名付け(ネーミング)による強化と、ほぼ同じだね?」

 グレモリー・グリモワールは、自分のログを拾ってステータスを確認しながら言いました。


 私も同じような感想を持ちましたが、守護竜の場合は微増に止まっています。

 やはり【神格者】は例外的な扱いなのかもしれません。


 そして、ソフィアは変化なし。

 事前にミネルヴァから言及されたように、私とソフィアの位階が同じ為に【神位祝福(ブレッシング)】が無効化されたのだと思います。


 私の【祝福(ブレッシング)】は、ソフィアには効果を及ぼせません。

 これは、【祝福(ブレッシング)】が、下の位階の対象にしか効果を及ぼせない仕様だからです。

 私と【神竜(ソフィア)】は同位階でした。


 ただし、一応、ソフィアにも【祝福(ブレッシング)】は与えています。

 仲間外れは可哀想ですし、ソフィアから……やってみなければ、わからないのじゃ……と言われましたので。


「うむ。何やら強くなった気がするのじゃ」

 ソフィアは、両腕をブンブン回しながら言います。


 いやいや、ソフィアだけは、全く変わっていませんから。


 厳密に言えば、ソフィアの脳に共生する知性体のフロネシスは、【神位祝福(ブレッシング)】の影響で能力が微増していますので、結果的に、ソフィアも僅かに能力が上がっている、と見做す事が出来ます。

 しかし、ソフィアが自覚出来るような形でのブーストにはなっていません。


「さてと、そろそろ、お開きにしましょう」

 私は、場を締めました。


 特に農家のコンタディーノ家は、朝が早いですからね。


転移能力者(テレポーター)】達が手分けをして、各自を家まで送り届けました。


 ・・・


 ゲームマスター本部。


 皆が、それぞれ帰還して、私とトリニティだけが、残りました。


「トリニティ。これから【超神位(運営者権限)】の【祝福(ブレッシング)】を与えます。これは、ゲームマスター代理である、トリニティにしか行えません」


「【超神位(運営者権限)】の……仰せのままにして下さいませ」

 トリニティは、刹那、思考した後に、すぐ了承します。


「これによって、トリニティの魔力量や各種ステータスなどはファヴやリントに匹敵するレベルにまで上昇します」


「何と……」

 トリニティは、目を見開きました。


「ただし、【神位】級の魔法などは使えません。ミネルヴァによると、【神位】というモノは、【低位】、【中位】、【高位】、【超位】の位階とは、別次元の……いわば生まれ持った権能に等しいモノ。つまり、私のゲームマスター権限と同じようなモノなのです。つまり、戦闘力や位階において、トリニティが守護竜であるファヴやリントと同格となる事はありません」


「わかりました」

 トリニティは頷きます。


「では、やりますよ」


「お願い致します」

 トリニティは、跪くような姿勢を取りました。


 トリニティの下半身は、蛇なので厳密には上半身を低く屈めただけなのですが……。


「【超神位(運営者権限)魔法……祝福(ブレッシング)】……。トリニティ、どうですか?」


「はい。身体に変調はありません」

 トリニティは、やや紅潮した顔で言いました。


 パスを通じて、トリニティからは、歓喜、の【思念】が伝わって来ます。

 喜んでいるのならば良いでしょう。


 トリニティの戦闘フォーマットに関係する各種ステータスは、カンストしています。

 また、非戦闘ステータスも、相当に強化されました。

 トリニティは、【神位】級の魔法や【能力(スキル)】を行使出来ない事の他は、ファヴやリントと同等のスペックを身に付けています。


「では、今日は、もう休んで下さい。明日もゲームマスターの業務で出動しなければならないので、忙しいですからね」


「仰せのままに致します、マイ・マスター」

 トリニティは、恭しく礼を執って、下がって行きました。


 さてと、私は、これから内職をしなければいけません。

 イーヴァルディ(アンド)サンズと、ダビンチ・メッカニカと、ニュートン・エンジニアリングによる三社合弁事業の為の【プロトコル】を造らなくてはいけませんし、グレモリー・グリモワールに納品する【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションも、まだ300体必要です。

 私が使役する【自動人形(オートマタ)】・シグニチャー・エディションも造らなくては……。


 はあ、忙しいですね。

 ゆっくりと読書をして過ごしたり、目的もなく街を散歩したり出来るような日は訪れるのでしょうか?

 当分、無理なのでしょうね。


 私は、内職を始めました。

お読み頂き、ありがとうございます。

ご感想、ご評価、レビュー、ブックマークを、お願い致します。

活動報告、登場人物紹介&設定集も、ご確認下さると幸いでございます。


・・・


【お願い】

誤字報告をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

心より感謝申し上げます。

誤字報告には、訂正箇所以外の、ご説明ご意見などは書き込まないよう、お願い致します。

ご意見などは、ご感想の方に、お寄せ下さいませ。

何卒よろしくお願い申し上げます。

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