第336話。ドライアド達のチュートリアルの結果。
名前…イオフィエル
種族…【天使】
性別…男性
年齢…185歳
職種…【魔法弓師】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…飛行、【超位回復】、【自己再生能力】、【才能…攻撃力A、強弓】など。
レベル…99
ルシフェルとラファエルの息子。
ゲームマスター本部の会議室。
「では、ペネロペさん達は、もう結構ですよ。【ワールド・コア】ルームから出なければ、夕食までは、お好きな店や施設に行って過ごしていて下さい。夕食は6時からです。店は、ミネルヴァが、ご希望を伺います」
「あ、そうですか?なら、お言葉に甘えて……」
月虹のリーダーであるペネロペさんは、立ち上がりました。
「ペネロペ、待って」
月虹のサブ・リーダーであるルフィナさんがペネロペさんを制します。
「ん、何?」
ペネロペさんはルフィナさんに訊ねました。
「ノヒト様。出来れば、最後まで、お話を聴いていてもよろしいでしょうか?」
ルフィナさんが、私に訊ねます。
「別に構いませんよ」
「へ?何でさ?私らの説明は終わったじゃんか?」
ペネロペさんは言いました。
「ペネロペ。ノヒト様のお話しになる情報の価値に気が付かない?ノヒト様が説明された、魔法や能力の説明は、私達が経験的に知っている……こうじゃないかな?……とか……おそらく、こうだ……という類の仮説ではないのよ。全ては、この世界を、そのようにして、お創りあそばした【創造主】様の言葉と同じ、確定した事実なのよ。たった今聴いた話の中にも、画期的な発見が幾つもあったわ。もしも許可を頂けたのなら、私達以外の方々の説明も是非聴いておくべきよ」
ルフィナさんは、言います。
「そうだぞ。こんな価値がある情報を聴ける機会はない。冒険者稼業は、情報が命だ」
月虹の代理人であるキトリーさんも言いました。
「そっか。2人が、そう言うなら聴いておこう」
ペネロペさんは、再び着席します。
では、と。
私は、私の寄子である6人の【ドライアド】のチュートリアル後のステータスを確認して行きました。
植物の生体機能や特性を持つという極めてユニークな人種……それが【樹人】達です。
代表的な【樹人】として【ハマドリュアス】が知られ、【聖格】を得た【ハマドリュアス】の個体は【ドライアド】に昇華しました。
【ドライアド】は知性と魔法の能力では全人種中トップ・レベルですが、平和主義者なので基本的に争い事を忌避します。
【樹人】は長命でした。
また、【樹人】達は、光合成を行えば、水だけで生きる事が可能です。
種族の全員が穏当な性格で、怒ったり急いだり慌てたりする事もなく、時間の流れに身を任せて、ゆったりと暮らしているような人達でした。
そして、【樹人】達は、孤独を苦にしません。
むしろ人混みを苦手としていました。
なので、【樹人】達は、他の【人】や【エルフ】や【ドワーフ】などの人種とは違い、生き馬の目を抜くような都市生活には、なかなか順応出来ないのです。
端的に言って、ノルマだとか、成果だとか、時間当たり生産性だとか……そう言うモノを要求される都市生活には、向いていません。
それから、【ドライアド】は、例外なく強力な魔法を使いますが避戦的な性格から、戦闘も好みません。
もちろん、自らや家族を守る為には戦いますが……。
【樹人】達の性格を一言で表現する良い言葉があります。
それは……生き急がない。
これは、オリジナル・6さんが言っていたのです。
上手い事を言います。
年季が入った自宅警備員であるオリジナル・6さんにとって、【樹人】達の生き方は、正に理想なのだそうです。
いやいや、多少は働いたら、いかがですか?
実は、私は、オリジナル・6さんの中の人に私の会社の下請けのデバッガーの仕事を紹介する約束をしていました。
私が、ゲームマスターの中の人である事は伝えてはいません。
自宅にいながら、在宅で仕事が出来ますし、大好きなゲームに関われるのですから、オリジナル・6さんも乗り気でした。
あの話、放置されたままだなぁ……。
オリジナル・6さん……大丈夫だろうか?
まあ、オリジナル・6さんの、ご実家はアパートや駐車場経営を生業とする地主さんでしたから、最悪働かなくても食べて行くくらいは何とかなるそうですが……。
話が横道に逸れました。
【ドライアド】や【ハマドリュアス】などの【樹人】は種族の性質として……庇護してくれる者に自らの運命を委ねる……という受動的な思考を示す傾向がありました。
庇護・被庇護の関係が相互受容の元に形成されると、庇護者は寄親と呼ばれ、庇護される【樹人】達は寄子という立場となるのです。
つまり、私は寄親、6人の【ドライアド】達は、私の寄子達という訳ですね。
私は、彼らを、戦闘や冒険に連れ出すつもりはありません。
農場で穏やかに過ごさせてあげたいと思います。
ならば、チュートリアルなんか受けさせる必要はないのでは?
いいえ、生存競争を無視するかのように、ゆったりと穏やかに暮らすのなら、ちょっとやそっとでは脅かされない強者でなければいけません。
攻撃を加えてこようとする外敵に簡単に負けたり、搾取しようとする者達に簡単に騙されたりするようなら、その者は……穏やかに暮らしたい……などと悠長な事を言っていたら、呆気なく滅ぼされてしまいますので。
一歩都市を出れば、魔物がスポーンするようなエゲツない弱肉強食の世界である、この世界の中で、浮世俗世を離れて隠者を気取りたいなら、最低でも【超位】級の戦闘力は持っていなければ、お話になりません。
名前…カスターニョ
種族…【ドライアド】
性別…男性
年齢…296歳
職種…【魔導師】
魔法…【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…光合成、植物使役、【才能…洞察力、経営】
レベル…99
カスターニョは、栗の木の樹人。
私の寄子となりソフィア農場の果樹園で働いています。
個体によっては数千年生きる事もある【ドライアド】にあって、数百歳という年齢は、ほんの子供ですね。
【樹人】の種族特性として【洞察力】などの思考系の【才能】を持つ事が多く、逆に【勇敢】だとか【鼓舞】だとか、という好戦的でマッチョな【才能】は、ほとんど発現しません。
カスターニョも、元来持っていた【洞察力】に加えて、チュートリアルの結果【経営】の【才能】が発現しました。
名前…メロ
種族…【ドライアド】
性別…女性
年齢…165歳
職種…【魔導師】
魔法…【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…光合成、植物使役、【才能…気品、看護】
レベル…99
メロはリンゴの木の樹人。
私の寄子となりソフィア農場の果樹園で働いています。
チュートリアルを経て【聖格】の【ドライアド】に昇華しました。
元来の【気品】に加えて、チュートリアルで新たに【看護】の【才能】を得ています。
【気品】も【樹人】に多く発現する【才能】の1つでした。
穏やかな性格で、せかせかとしない【樹人】らしい【才能】でしょう。
名前…ペロ
種族…【ドライアド】
性別…女性
年齢…174歳
職種…【魔導師】
魔法…【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…光合成、植物使役、【才能…洞察力、祝福】
レベル…99
ペロは梨の木の樹人。
私の寄子となりソフィア農場の果樹園で働き、チュートリアルを経て【聖格】の【ドライアド】に昇華しました。
ペロには、【祝福】の【能力】が生えています。
【祝福】も【樹人】に多く発現する【才能】でした。
【祝福】は、守護竜や【妖精】や【精霊】が持ち、人種に発現する事は稀です。
なので、かつては、生物学的に、【樹人】を【妖精】や【精霊】の一種だと誤解されていた時代もありました。
【樹人】達が、あまり他の人種とは交流しなかったせいで、その誤解は長らく信じられていたのです。
名前…オリーヴォ
種族…【ドライアド】
性別…男性
年齢…206歳
職種…【魔導師】
魔法…【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…光合成、植物使役、【才能…洞察力、風格】
レベル…99
オリーヴォは、オリーブの木の樹人。
私の寄子となりクイーン農場の果樹園で働いています。
オリーヴォには、チュートリアルを経て【風格】の【能力】が生えました。
この【風格】も【樹人】に発現しやすい【才能】です。
泰然自若としている【樹人】に相応しい【才能】と言えるでしょう。
名前…ペスコ
種族…【ドライアド】
性別…女性
年齢…99歳
職種…【魔導師】
魔法…【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…光合成、植物使役、【才能…祝福、調整】
レベル…99
ペスコは桃の木の樹人。
私の寄子となりクイーン農場の果樹園で働き、チュートリアルを経て【聖格】の【ドライアド】に昇華しました。
チュートリアルで、ペスコに発現した【才能】は【調整】です。
名前…チリエージョ
種族…【ドライアド】
性別…女性
年齢…139歳
職種…【魔導師】
魔法…【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…光合成、植物使役、【才能…洞察力、優美】
レベル…99
チリエージョは、サクランボの木の樹人。
私の寄子となりクイーン農場の果樹園で働き、チュートリアルを経て【聖格】の【ドライアド】に昇華しました。
チリエージョがチュートリアルで得たのは【優美】。
これも【樹人】に多い【才能】でした。
因みに、栗の木の【樹人】やサクランボの木の【樹人】などと果樹の【樹人】がいますが、彼ら(彼女達)は、雌雄に関わらず果実を成す事が出来ます。
雄樹も実を成せるのですよ。
不思議です。
しかし、果実の中にある種を植えても、【樹人】には育ちません。
【樹人】達の繁殖は動物と同じです。
大人の事情で詳しくは説明しませんが、男女の【樹人】が何やかんやすると、何やかんやあって、苗木(赤ちゃん)という状態で女性の【樹人】から子供が産まれました。
苗木は、親木の足元の地面や、場合によっては親木があらかじめ用意しておいた植木鉢などの土に根っこ(下半身)を埋めた状態で幼生期を過ごし、ある程度育つと、ズボッ、と足を抜いて、トコトコ歩き始めるのです。
【樹人】の赤ちゃん達も、他の人種の赤ちゃん同様に可愛いですよ。
私は、ラピュータ宮殿にいる【ドライアド】達の幼生期を知っていますが、しばらくの間、毎日、ただ彼らの事を見守って過ごしていた時期がありました。
彼らは、私にとって、子供みたいな存在なのです。
しかし、冷静に考えてみると、【樹人】達が果実の中にある種子によって子孫を残すのではなく、胎生で子供を出産する事も、地球人的常識から言うと、かなり不思議なのですよね……。
私も常々……変だな……と思っています。
植物学の常識では説明出来ない現象ですが、それはそれ。
ゲーム会社の社員という立場では……そういう仕様だから……としか説明のしようがありません。
もしも、私が、【樹人】の設定を決定するチームにいたら、このような仕様には、しなかったでしょう。
まあ、会社の同僚達の仕事にケチをつけるべきではありませんね。
この世界の全ての世界観を最終決定したのは、プロデューサーのフジサカさんです。
この世界は、フジサカさんのモノ。
私は、単なるサラリーマンですからね。
ノヒトよ……そっちに行っても良いか?
ソフィアから【念話】が伝わって来ました。
構いませんよ……ケーキ・バイキングは、どうしたのですか?
私は、【念話】で伝えます。
グレモリーが、晩ご飯の前だからケーキを食べすぎないように、と言って、フェリシアとレイニールは、2つしか食べないのじゃ……我慢している2人の前で、我とウルスラだけが、たくさん食べるのは気が引けるのじゃ。
ソフィアが【念話】が言いました。
あ、そう。
ソフィアにしては、珍しく空気を読んだのですね。
まあ、ソフィアは、子供に優しいので、子供がケーキを食べたいのを我慢している前で亜空間胃袋を全開にしてバクバク食べるのは、さすがに可哀想だと思ったのでしょう。
それに、グレモリー・グリモワールの養子2人に対する接し方も意外な感じです。
しっかり母親役をしていますね。
何だか、微笑ましい感じです。
元は、私と同一自我だったグレモリー・グリモワールですが、母性に目覚めているようで、何となく不思議な感覚ですよ。
どうでも良い話ですが、グレモリー・グリモワール達は、ケーキ・バイキングでカット・ケーキ2個だけしか食べないのですか?
贅沢ですね。
私は貧乏性なので、それは出来ません。
グレモリー・グリモワール達は、巨万の富を持っていますから、そういう贅沢も、どうという事はないのでしょうが……。
問題はそこではありません。
つまり……グレモリー・グリモワールは、私と自我が分離して以降、性格が私とは少しずつ変わって来ているのではないでしょうか?
養子とはいえ自分の子供を育てていたり、女性のキャラ・メイクで生活している内に、あるいは肉体上の性別に性格が寄って行っているような気がします。
と、いう事は、私も、無自覚な内に、ゲームマスターとしての職業意識に性格が寄って行っている可能性もあるのでしょうか?
益体もない考えですね。
だとしたら、どうだ、という話です。
人間は、経験を積んで、生き方や、ものの考え方が変わる生き物ですからね。
変わる事の方が自然です。
そんな事は、些末な話ですよ。
私とグレモリー・グリモワールは、現在は完全に別人格なのです。
私とグレモリー・グリモワールの性格が乖離して行ったから、といって悪い影響など何もありません。
なら、私達は、会議室にいますから、来たければ、お好きにどうぞ。
私は、【念話】でソフィアに伝えました。
ならば、今から、そっちに行くのじゃ。
ソフィアが【念話】で伝えて来ます。
程なくして、会議室にソフィア、ウルスラ、オラクル、ヴィクトーリア、グレモリー・グリモワール、ディーテ・エクセルシオール、クイーン、ヴァレンティーナさんがやって来ました。
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