第335話。ムーンボー(月虹)のチュートリアルの結果。
名前…アズラエル
種族…【天使】
性別…男性
年齢…183歳
職種…【魔法銃師】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…飛行、【超位回復】、【自己再生能力】、【才能…照準、早撃ち】など。
レベル…99
ルシフェルとガブリエルの息子。
【シエーロ】中央都市【エンピレオ】。
【知の回廊】最深部【ワールド・コア】ルーム。
午後。
私、ソフィア、ウルスラ、グレモリー・グリモワール達一行は、【ワールド・コア】ルームにやって来ました。
ソフィアとウルスラとグレモリー・グリモワール達一行は、すぐにケーキ・バイキングに向かいます。
私達は、チェレステさんの即位・戴冠式の後の晩餐会を途中までで切り上げて、お暇したので、1回目のデザートを食べ損ねましたからね。
精一杯のもてなしをしてくれようとしていたチェレステさん達には申し訳ないのですが、8時間も続く晩餐会など正直言って付き合っていられません。
せっかくの料理が勿体ない?
気持ちは、ありがたく頂きました。
また、こちらの世界には、【収納】アイテムがあるので、誰かが手を付けた残り物でなければ、料理は全て出来たての状態で保存しておけますので無駄になる心配もありません。
アルフォンシーナさんとゼッフィちゃんは、【トゥーレ】神殿長のエクストリアと、司祭のアンネリーセさんを連れて、竜都【ドラゴニーア】に帰還しています。
レジョーネの他のメンバーも、手分けして人員輸送をしてくれていました。
ファヴとウィルヘルミナは、サウス大陸組を担当。
ローズマリー大巫女とスカーレット巫女長を【パラディーゾ】に……【アトランティーデ海洋国】のゴトフリード王と王家の面々、それから冒険者ギルドのフランシスクスさんを王都【アトランティーデ】に、それぞれ送り届けてくれています。
リントとティファニーはウエスト大陸組を担当。
ディオクレスタさんを【サントゥアリーオ】に、イゾルデさんとツェツィーリアさんの両司祭を【トゥーレ】に、それぞれ送り届けてくれています。
チェレステさんの即位・戴冠の祝賀は【ラニブラ】で数日続きますが、国家元首が即位・戴冠式の本番に出席して、後の祝賀行事は特命全権大使などに代理させておけば、外交非礼にはならないのだ、とか。
まあ、各国の元首クラスは、皆、忙しいですからね。
ソフィア復活の式典・祝賀の時は、各国元首級が、何日も竜都に滞在して公式行事に参加していましたが、あれは、現世最高神である【神竜】の復活という歴史的な出来事だったので、あくまでも特例だった訳です。
閑話休題。
レジョーネの【転移】輸送は、送り届けるだけではなく、迎えに行く者もいました。
トリニティは、竜都からファミリアーレと月虹のメンバー6人、それからソフィア農場から私の寄子である【ドライアド】の6人、コンタディーノ家の6人を連れて来ました。
【ドライアド】達は、【ドラゴニーア】のソフィアの私有地の庭園で今日の午後はユックリと過ごしたのです。
【樹人】達は、日向ぼっこが大好きですし、竜城内のソフィアの庭園は素晴らしい場所でした。
彼らにとっては、あたかも絶景の露天風呂に入ったような最高の息抜きとなったでしょう。
オラクルが【タナカ・ビレッジ】からクイーンを連れて来てくれます。
ヴィクトーリアは、ソフィア・フード・コンツェルンのCEOのヴァレンティーナさんと、COOのジリオさん一家3人……計4人を連れて来てくれました。
私の陣営には、強力な【転移能力者】が揃っているので楽チンです。
ファヴとウィルヘルミナ、リントとティファニーが【ワールド・コア】ルームに戻って来ました。
4人は、夕食までしばらく時間があるので、図書館で、調べ物をしたり、スマホ会議などをするそうです。
どこかの守護竜さんとは、大違い。
まあ、ソフィアは大昔に頑張って統治システムを確立し、セントラル大陸をソフィアの手が離れても問題ない状態にまで成熟させたので、堂々とサボれる訳ですが……。
オラクルとヴィクトーリア、クイーン、ヴァレンティーナさんは、ソフィア達に合流しました。
私、トリニティ、ファミリアーレ、月虹のメンバー6人、ソフィア農場所属の【ドライアド】3人、コンタディーノ家の6人、クイーン農場所属の【ドライアド】3人、ジリオさん一家3人は、夕食まで、昨日のチュートリアルの結果を踏まえての説明会を行います。
私達は、ゲームマスター本部の会議室に向かいました。
・・・
会議室。
さてと、まずは月虹のメンバー6人からステータスを確認して行きましょう。
冒険者パーティ、月虹。
女性だけで編成された、【ドラゴニーア】所属のエース冒険者パーティです。
先の【神竜】復活記念武道大会で、リーダーのペネロペさんが並み居る強豪を撃破して優勝したので、ペネロペさん個人は竜鋼級に昇級しました。
竜鋼級冒険者が所属するパーティという事で、月虹は、竜鋼級冒険者パーティと見做されます。
チュートリアルを経た月虹は、名実共に【ドラゴニーア】最高の冒険者パーティでしょう。
私としても、ファミリアーレの4人の獣人娘達の境遇を心配して、色々と目をかけてくれていた月虹の皆さんには心から感謝していました。
名前…ペネロペ
種族…【人】
性別…女性
年齢…30
職種…【魔法剣士】
魔法…【闘気】、【攻撃魔法】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…鼓舞、操作】
レベル…50
ペネロペさんは、月虹のリーダーで竜鋼級冒険者。
職種の【魔法剣士】は、ファミリアーレのハリエットの職種【魔法剣士】と同位階ですが、剣よりも魔法による戦闘の比重が大きい事を意味します。
ペネロペさんには、チュートリアルを経て、新たに【操作】の【才能】が生えています。
これは、【神竜】復活記念武道大会の賞品として獲得した9本に分かれて飛翔する【神の遺物】の魔法剣【クラウ・ソラス】を主武装として使っている為に発現した【才能】でしょう。
改めてペネロペさんのステータスを、熟練値なども含めて詳細に見てみると、全体的にスペックが高いですね。
チュートリアルによる強化以前に、ペネロペさんは生まれながらの潜在能力が相当に高いのです。
意外と言っては失礼ですが、ペネロペさんは、知能も高く弱点らしい弱点は見当たりません。
魔法戦、近接戦、どちらも苦にせず、攻守両面で高いレベルを発揮する万能タイプでしょう。
いわゆる天才ですね。
名前…ルフィナ
種族…【人】
性別…女性
年齢…30
職種…【司祭】
魔法…【闘気】、【回復・治癒】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…回復・治癒、看護】
レベル…51
ルフィナさんは、月虹のサブ・リーダーで、オリハルコン級冒険者。
【回復・治癒職】、兼、パーティの戦術・戦略面を担っており、戦闘指揮を執っているのもペネロペさんではなく、ルフィナさんなのだ、とか。
ファミリアーレでもリーダーのグロリアではなく、ロルフやティベリオがパーティ(クラン)全体の指揮官ですから、リーダーと指揮官が別々という事は珍しくありません。
まあ、役割分担の範疇でしょうね。
ルフィナさんは、チュートリアルを経て、【看護】の【才能】が発現しました。
純粋【回復・治癒職】であるルフィナさんの特性と相性が良い【才能】でしょう。
名前…セーラ
種族…【人】
性別…女性
年齢…29
職種…【魔道士】
魔法…【闘気】、【攻撃魔法】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…攻撃魔法、攻撃力B】
レベル…40
セーラさんは、パーティの範囲攻撃担当魔法職で、アダマンタイト級冒険者。
ステータス的には、攻撃特化。
しかし、ユーザーの感覚で言えば、竜鋼級パーティの専従攻撃魔法職としては、やや火力が心許ない気もします。
まあ、ペネロペさんとの併用によって、問題にはならないのだと思いますが……。
セーラさんには、チュートリアルを経て、新たに【攻撃力B】の【才能】が発現しました。
正直微妙な【才能】ですが、【才能】は成長する場合がありますので、今後、【攻撃力A】や【攻撃力S】になる可能性がない訳ではありません。
名前…ティアナ
種族…【人】
性別…女性
年齢…29
職種…【守衛士】
魔法…【闘気】、【防御魔法】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…防御魔法、防御力B】
レベル…39
名前…ユルシュル
種族…【人】
性別…女性
年齢…28
職種…【守衛士】
魔法…【闘気】、【防御魔法】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など。
特性…【才能…防御魔法、献身】
レベル…39
ティアナさんとユルシュルさんは、パーティの前衛でアダマンタイト級冒険者。
自らに防御魔法をかけて、前衛壁職をこなすという珍しい【守衛士】の職種を持っていました。
これは【宮殿騎士】や【聖騎士】などと同様の特性で、魔法を自分にかけて防御力を上げて、攻撃は武器で行うという職種は、実質、この3職種しか存在しません。
防御力は強力で、敵が自分達より相当レベルが高くても前衛壁職として鉄壁の守りを見せる【守衛士】は、パーティの生存率を高めて、集団戦では頼りになる存在でしょう。
チュートリアルを経て新たに発現した【才能】は、ティアナさんが【防御力B】、ユルシュルさんが【献身】でした。
これらも、【守衛士】とは相性が良い【才能】ですね。
最後の1人は、キトリーさん。
彼女は、戦闘職ではありません。
名前…キトリー
種族…【人】
性別…女性
年齢…30歳
職種…【代理人】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…敏腕、経営】
レベル…20
キトリーさんは、冒険者パーティ・月虹の敏腕代理人。
ペネロペさん、ルフィナさんとは同郷の幼馴染なのだそうです。
キトリーさんは、月虹への指名依頼の窓口、営業、外渉、スケジュール管理、果ては兵站管理までを一手に引き受けるパーティの屋台骨を支える存在でした。
優秀な冒険者パーティには、キトリーさんのような優秀な裏方さんが必要不可欠。
900年前のゲーム時代では、場合によっては、裏方さん達を複数雇って、個人のエージェント・オフィスを持っているユーザーの冒険者パーティやクランやアルトもありました。
アルトにもなるとメンバーは、最大99人ですから、管理業務専従班がいなければ、とても運営などは出来ませんからね。
かつてのグレモリー・グリモワール(私)のパーティも、戦闘を行うのは、専ら、グレモリー・グリモワール(私)、エタニティー・エトワールさん、オリジナル・6さんの3人だけで、ナイアーラトテップさんとピットーレ・アブラメイリンさんの2人は、後方支援任務で戦闘には参加していませんでした。
ナイアーラトテップさんとピットーレ・アブラメイリンさんは、ゲーム史上最高クラスの生産系と研究系の魔法職でしたが……戦闘では、グレモリー・グリモワール(私)や、エタニティー・エトワールさんや、オリジナル・6さんなどの世界ランカーに混ざるには、弱過ぎます。
端的に言えば、戦闘ではポンコツでした。
しかし、パーティの収入は、戦闘に参加しないで死亡リスクがない2人も均等に頭割りです。
そのくらい、後方支援任務は、大切なのです。
私は、面倒臭い事が大嫌いなので、後方支援任務は、どんなに高額な報酬を提示されても、お断りですね。
因みに、キトリーさんがチュートリアルで新たに得た【才能】は【経営】です。
私は、月虹への説明を終えました。
「あのさ、ノヒト様、あんまし実感がないんだけれど、私ら強くなっているんだよね?ぶっちゃけ、どんくらい強くなったのかな?」
ペネロペさんが言いました。
なるほど、自身の能力限界を知っておく事は、戦闘では、極めて大切ですからね。
「ペネロペさん。では、ここのバルコニーから外に飛び降りてみて下さい。ここは5階です。因みに魔法と魔力による身体強化はなしで、です」
「へっ?魔法も【闘気】もなしだと、さすがに大怪我するでしょう?」
ペネロペさんは、窓の外を見下ろして言いました。
【ワールド・コア】ルームの建物は、どこも天井が高いので、5階の床面は、地上40m以上の高さにあります。
マンションで換算するなら、10階建以上。
その高さから飛び降りてさえ……死んでしまう、ではなく、大怪我……と言うところが、ペネロペさんの地力の高さを示していました。
因みに、自分の身体や武器に魔力を流して強化する事を【闘気】(魔力)を流す、あるいは、【闘気】(魔力)を練るなどと表現します。
「この【ワールド・コア】ルームの中は、【闘技場】と同じ復活のギミックがありますので、万が一の場合も平気ですよ。試してみて下さい。たぶん、この方法が一番、どのくらい強化されたのかが実感しやすいと思いますので」
月虹のメンバーは、一様に不安気な顔をして私とペネロペさんを交互に見ていました。
「よーしっ、女は度胸だっ!」
ペネロペさんは、言います。
「ちょっと、ペネロペったら……」
ルフィナさんが心配そうに言いました。
「大丈夫だって、神様は嘘は吐かないんだからさ。ノヒト様が平気だって言うなら平気だよ」
ペネロペさんは言います。
神は嘘を吐かない……という言説は、半ば事実として、この世界のNPCには信じられていますが、実は、【神格者】も普通に嘘は吐けました。
まあ、その言説は、神の言動に説得力を持たせる効果があって、私や守護竜にとっては有益な虚偽情報なので、あえて訂正はしませんが……。
私達は、広いバルコニーに出ました。
ペネロペさんは、バルコニーの手すりを乗り越えて、外側に立っています。
まるで、これからバンジージャンプをする人のような体勢でした。
ただし、足にゴム製のロープなどは結ばれてはいません。
「せーのっ!」
ペネロペさんは、ヒョイッ、と空中に身体を投げ出しました。
シュタッ!
ペネロペさんは、着地します。
「ノヒト様ぁ〜。怪我しなかったよ。足の裏が痺れたけどぉ〜」
ペネロペさんは、下から叫びました。
「ペネロペさん。今度は、壁を駆け上って来て下さい。魔法も【闘気】もなしでです」
「やってみる〜」
ペネロペさんは、そう言うと、後方に駆け出しました。
助走距離を取る為です。
ペネロペさんは、勢い良く走り出しました。
シャタタタタ……ピョーン、ピョーン、ピョーン……シュタッ!
ペネロペさんは、建物の平らな壁面を20mほど駆け上がり途中で失速しかけて、その後はバルコニーや窓枠などの突端を足場にして、私達がいる5階まで戻って来ました。
「おーっ!本当に生身で登れちゃったよ」
ペネロペさんは、自分がした事に驚いている様子。
「どうですか?どのくらい強化されたか、イメージは掴めましたか?」
「はい。相当にヤバいってのは、わかりました」
ペネロペさんは言いました。
「他の皆さんは真似しないで下さいね。この実験は、元来、身体能力が高かったペネロペさんだから出来た事ですので、純粋魔法職や、元は、普通の農家だった方が真似すると、普通に死んでしまいますからね」
私は、一同に釘を刺しておきます。
私達は、会議室の中に戻り、チュートリアルの説明会を再開しました。
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・・・
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