第332話。VIP集結。
名前…イスラフェル
種族…【天使】
性別…男性
年齢…193歳
職種…【魔法槍士】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…飛行、【超位回復】、【自己再生能力】、【才能…槍術、先導】など。
レベル…99
ルシフェルとガブリエルの息子。
サウス大陸【アトランティーデ海洋国】。
王都【アトランティーデ】王城。
私達は、【アトランティーデ海洋国】に到着しました。
ゴトフリード王と王家、そして主たる大臣達が居並んで、私達を迎えてくれます。
「ソフィア様、ノヒト様、アルフォンシーナ様、皆々様ようこそ、おいで下さいました」
国際儀礼格式第一正装を身に纏ったゴトフリード王が恭しく頭を下げて挨拶しました。
王家の面々も、ゴトフリード王に習って深く頭を下げています。
大臣達は跪いて、伏礼の体勢。
私は、あまり他人から額突かれるのを好みませんが、今回のこれは、公式な国際儀礼格式による礼法に則った場。
私も止むを得ず、この世界の慣行に従う事にしています。
実は、ファヴとウィルヘルミナ、リントとティファニー、トリニティ、オラクル、ヴィクトーリアは、私達とは別行動をしていました。
ファヴは、一足早く【パラディーゾ】に向かっています。
【パラディーゾ】の中央塔でローズマリー大巫女らと、何やら神事を執り行うのだ、とか。
ウィルヘルミナは、その付き添い。
これは、チェレステさんの女王への即位・戴冠に必要な儀式なのだ、とか。
王権神授には、何だか面倒な段取りが色々あるようです。
リントとティファニーは、ウエスト大陸から、チェレステさんの即位・戴冠式に出席する【サントゥアリーオ】と【ウトピーア】の首脳陣を迎えに行っていました。
オラクル、ヴィクトーリアは、竜都【ドラゴニーア】に各ギルドのトップなどを迎えに行っています。
トリニティは、私が派遣した神の軍団の神兵を転移座標として、【スヴェティア】の首都である魔法都市【エピカント】に飛び、魔法ギルドのトップを迎えに行ってもらっています。
私達は、大広間で一同が会して、しばしの歓談をしていました。
すると、リントとティファニーに連れられて、【ウトピーア】中央都市【トゥーレ】の司祭であるイゾルデ・ゴルトベルクさんとツェツィーリア・ハンマー・シュミットさん……他数人がやって来ました。
このイゾルデさんとツェツィーリアさんの2人は、【ウトピーア】の実質的統治責任者であるエクストリア・プルミエールの名代……つまり、【ウトピーア】の政府留守番係です。
エクストリアは、何をしているのか?
エクストリアは……ほら、やって来ました。
オラクルが、【トゥーレ】神殿長エクストリア・プルミエールと、同司祭のアンネリーセ・キースリングを連れて来ました。
この2人は現在、竜都【ドラゴニーア】に滞在中。
エクストリアは、【リントヴルム】聖堂の聖職者として、再教育中だったのです。
リントとティファニーに連れられて、その他にも何人か要人らしき人物がいました。
「ソフィアお姉様、ノヒト、アルフォンシーナ。紹介しますわ。彼女が【サントゥアリーオ】の新女王に即位予定のディオクレスタ。ディオクレスタ、こちらが【神竜】のソフィアお姉様で、こちらが【調停者】のノヒト・ナカ。アルフォンシーナは、【ドラゴニーア】の大神官よ。後で、弟のファヴも紹介しますからね。ソフィアお姉様とノヒトは、【サントゥアリーオ】に並々ならぬ恩がある2柱の神だし、アルフォンシーナも日頃、妾が世話になっていて【サントゥアリーオ】にも色々と便宜を図ってくれているわ。くれぐれも失礼がないように。この2柱とファヴ……それからアルフォンシーナには、常に心を込めて対応して、可愛がってもらいなさいね」
リントが、ディオクレスタさんに私達を紹介します。
「畏まりました、リント様。皆々様、お初にお目にかかります。ディオクレスタでございます」
ディオクレスタさんは、恭しく礼を執りました。
ディオクレスタさんは、複数の混血です。
遺伝的に強いのは、50%を占める【人】。
「ディオクレスタは、ご覧のように【人】、【エルフ】、【ドワーフ】、【オーガ】、【ゴブリン】、【獣人】が複雑に混血しています。初代女王が、ディオクレスタのような複数混血ならば、【サントゥアリーオ】は、【ウトピーア法皇国】のように愚かな種族差別主義に走る心配がないでしょう?」
リントは言いました。
なるほど。
「肝心の為政者としての能力は、どうなのじゃ?」
ソフィアが訊ねます。
「悪くありません。本当は、ウエスト大陸出身の女傑ピルエット・ルミナスに女王就任を打診したのですけれど……女王などという身分は柄ではない……と断られました。ディオクレスタは、いわば第2希望です。けれども、結果的にはディオクレスタを選んで良かったと満足していますわ」
リントは言いました。
ピルエット・ルミナス……どこかで聞いた名前ですね。
あ、当代の勇者とかいう人物です。
リントは、勇者をスカウトしようとしたのですね。
剣聖からも……勇者であるピルエットにチュートリアルを受けさせてくれ……と頼まれています。
なるほど、件の勇者は、剣聖から評価され、守護竜が女王に据えたいと希望するほど、優秀なのでしょう。
そういう人物なら、是非会ってみたいですね。
その後に、グレモリー・グリモワールとフェリシアとレイニール、ディーテ・エクセルシオールと彼女の配下である【ハイ・エルフ】の4人、そして、アリス辺境伯ら【サンタ・グレモリア】の首脳陣、マクシミリアン王と王家の面々、【ブリリア王国】の大臣達、【イースタリア】領主リーンハルト侯爵がやって来ました。
グレモリー・グリモワールは、私の代わりにサウス大陸の関係者に対してチュートリアルを受けさせてくれた経緯で……ファヴに連れられ、王都【アトランティーデ】と【パラディーゾ】と【ラニブラ】に、それぞれ転移座標を設置しています。
「おつかれ様」
「おっつ〜。うわっ、凄い派手派手じゃん。マルディグラの仮装行列みたいだね?私、こんな地味なローブじゃ、やっぱ場違いかな?一応、舐められないように魔法の指輪は、全部の指に付けて来たんだけれどさ」
グレモリー・グリモワールは開口一番、大広間に居並ぶ要人達を見回して言いました。
グレモリー・グリモワールの両手の10本指には、【神の遺物】の指輪がジャラジャラと付けられています。
グレモリー・グリモワールの養子であるフェリシアとレイニールも、全部の指に【神の遺物】の指輪がハマっていました。
グレモリー・グリモワールなりに、これが正装っぽい仕様なのでしょうね。
確かに、国際儀礼格式第一正装は、豪華絢爛な衣装ばかりです。
そんな姿をした連中が大勢集まると、目がチカタカして来ますからね。
「平気ですよ。【神の遺物】の超絶レアの【漆黒のローブ】シリーズは、十分に国際儀礼格式第一正装の資格があります。私が保証しますよ」
「あ、そう。なら、堂々としてたら良いね」
グレモリー・グリモワールは言いました。
「はい、問題ありませんよ」
私は、マクシミリアン王と、【ブリリア王国】の人達と順番に挨拶します。
「ノヒト様。【サンタ・グレモリア】が、いつも、お世話になっております」
正装で着飾ったアリス辺境伯が恭しく頭を下げました。
「アリス辺境伯。こちらこそ、お世話になっています」
「あ、ノヒト。アリスは、辺境伯から、侯爵に昇爵されたんだよ。そんで、玉突き人事で、リーンハルトは、公爵に昇爵されたから」
グレモリー・グリモワールが説明してくれました。
【ブリリア王国】では、先の【ウトピーア法皇国】との戦争の時に、国内の親【ウトピーア法皇国】の貴族達がマクシミリアン王へのクーデターを企て挙兵したのです。
しかし、マクシミリアン王にコテンパンに返り討ちにあい、大量の貴族や貴族家が戦死、処刑、廃爵、取り潰されました。
その空籍を埋める為に、リーンハルト元侯爵を始めとする親マクシミリアン王派の貴族家が一斉昇爵されたそうです。
リーンハルト新公爵は位人臣を極め、さらに加領もされ、現在は元来の【イースタリア】に加えて【ノースタリア】の、合わせて2領を統治する王家に匹敵する大領主となっているのだ、とか。
旧【ノースタリア】の領主は、【ウトピーア法皇国】が攻め込んで来た時に、自分の領民を捨てて、さっさと逃げ出したらしいのです。
そのせいで、【ノースタリア】で、【ウトピーア法皇国】侵攻軍主力を迎え撃ったグレモリー・グリモワールは、物凄く大変な防衛戦を強いられたのだ、とか。
何故なら、領主と一緒に領軍もいなくなってしまい、領民を守る組織が【ノースタリア】には、全く存在しなくなってしまったからです。
脆弱な集団を守りながら敵と戦うのが、一番大変ですからね。
グレモリー・グリモワールは、先の戦争では本当に良くやりましたよ。
因みに、【サンタ・グレモリア】のアリス新侯爵は、新領地として【サンタ・グレモリア】の北方に広がる【黒の森】の西側半分をマクシミリアン王から与えられたそうです。
魔物がスポーンして、環境不変ギミックの所為で開墾もままならない森フィールドなんかを領地に貰っても、と普通なら考えますが……実は森には魔力溜まりなどが多くあり魔力を養分とした樹木が魔木として魔法触媒となり価値があったり、また森の地中からは、ほとんどの場合豊富な希土類が産出されるので中々有用でした。
危険な森の魔物に対抗し得る戦力を備えてさえいれば、森は宝の山なのです。
そうこうしていると、ヴィクトーリアが、世界銀行ギルドのビルテ・エクセルシオール頭取……世界冒険者ギルドのグランド・ギルド・マスターである剣聖クインシー・クインと同No.2であり、剣聖の妻でもあるクサンドラさん……世界商業ギルドのニルス・ハウストラ会頭……などなど主要ギルドのトップ達を連れて、やって来ました。
「ソフィア様、ノヒト様、アルフォンシーナ様、ご機嫌よう」
ビルテさんが恭しく礼を執ります。
「こんにちは」
ビルテさんは、私達に挨拶すると、ディーテ・エクセルシオールの元に向かいました。
この2人は、祖母と孫娘の関係です。
私達は、各ギルドのトップと順番に挨拶しました。
「ソフィア様、ノヒト様、大神官様、こんにちは」
剣聖は挨拶します。
私達は、挨拶を交わしました。
「剣聖。今日はフランシスクスさんは一緒ではないのですか?」
フランシスクスさんは、剣聖の頭脳と呼ばれる【戦略家】です。
剣聖は、いつもクサンドラさんとフランシスクスさんと一緒にいるイメージでした。
「ああ、フランシスクスは、王都【アトランティーデ】の冒険者ギルド本部で俺の代理をしてもらっているから、別行動ですよ。俺は、一足先に、【ドラゴニーア】に移らせてもらったんです。今日は、こっちで合流する予定なんだが……ああ、いたいた」
剣聖は言います。
フランシスクスさんが、やって来て私達に丁寧な挨拶をしました。
以前そんな事を言っていましたね。
年明け早々、世界冒険者ギルドは、本部を現在の【アトランティーデ海洋国】王都【アトランティーデ】から、竜都【ドラゴニーア】に移転します。
フランシスクスさんは、現本部で残務処理をして、剣聖は、新本部の立ち上げ業務をしているのでしょう。
元来、剣聖は、実務をクサンドラさんとフランシスクスさんに丸投げしていましたから、剣聖がいなくても本部業務は回る、というなのでしょうね。
「あなたが剣聖?」
グレモリー・グリモワールが訊ねました。
「そうだが?」
剣聖は、グレモリー・グリモワールに答えます。
「サイン下さい」
グレモリー・グリモワールは、【収納】から紙とペンを差し出して言いました。
剣聖は、困惑しながら、グレモリー・グリモワールに言われるがまま名前を書きます。
「グレモリーさんへ……って書いてね。綴りは、Gremoryね」
グレモリー・グリモワールは言いました。
「お、おう、これで良いか」
剣聖は言われるがままに書きます。
私は、グレモリー・グリモワール陣営と剣聖一行を改めて紹介しました。
最後に、トリニティが、魔法ギルドのグランド・ギルド・マスターである【大魔導師】フォルトゥナート・バンディエーラと、お付きの人達を連れて来ました。
フォルトゥナート・バンディエーラは、齢700を数える【ハイ・ヒューマン】の老人です。
「ここは、【アトランティーデ海洋国】か?」
フォルトゥナート・グランド・ギルド・マスターは、開口一番に訊ねます。
「おう、フォルトゥナート爺さんか。ここは間違いなく王都【アトランティーデ】だぜ」
剣聖が答えました。
「クインシーの小僧。何と……本当に、2万km以上を、ひとっ飛びとは……。恐るべき魔力量と、【転移】能力。信じられん」
フォルトゥナートさんは、驚愕しています。
フォルトゥナートさんは、NPCとしては希少な【転移能力者】の1人。
しかし、距離や、人数、質量などには、制限がある為、【エピカント】と【アトランティーデ】間を一跨ぎで【転移】する事など、とても出来ないそうです。
私達は、改めてフォルトゥナートさんと挨拶を交わしました。
「老師、ご無沙汰しております」
アルフォンシーナさんが、フォルトゥナートさんに挨拶します。
「老師だなどと、アルフォンシーナ様の方が歳上であろうに」
フォルトゥナートさんは、地雷を踏みました。
気のせいか、ピシッと何かがヒビ割れるような音がしましたね。
「老師、ご無沙汰しております」
アルフォンシーナさんは、微笑みながら、もう一度、挨拶しました。
ゴゴゴゴ……と、アルフォンシーナさんから、濃密な魔力が漏れ出しています。
「は……はい、アルフォンシーナ様も、ご機嫌麗しゅうございます」
フォルトゥナートさんは萎縮して言いました。
アルフォンシーナさんは、力技で、年齢の話題をなかった事にしたのです。
私達も空気を読んで、たった今のやり取りを記憶から抹消しました。
「ねえ、バンディエーラって家名は、つまり、ガエターノ・バンディエーラって、フォルトゥナートさんの親族かな?」
グレモリー・グリモワールが訊ねます。
「ガエターノは、倅ですが?」
フォルトゥナートさんは答えました。
「そのガエターノさんの奥さんの名前は?」
グレモリー・グリモワールは重ねて訊ねます。
「嫁の名前は、エニグマと言いますが。エニグマが何か?」
フォルトゥナートさんは、怪訝な顔をしました。
「グレモリー。どうかしましたか?」
「ああ、あのね。ピオさんに私の所有物件の登記を調べてもらった事があってね。エニグマ・エクリプスって、グリモワール学派の今の総帥なんだよ。旦那のガエターノ・バンディエーラは、グリモワール学派の筆頭理事って事になっている」
グレモリー・グリモワールは説明します。
「ま、まさか……こちらの方は?」
フォルトゥナートさんは訊ねました。
「彼女は、グレモリー・グリモワール。英雄でグリモワール学派の創始者ですよ」
私は、フォルトゥナートさんにグレモリー・グリモワールを紹介します。
「なな、なんと、グレモリー・グリモワール様ご本人でしたか、ご復活遊ばしたのはギルドの情報で存じておりました。お会いしたかったのです。私は、現職に着く前、グリモワール学派に所属しておりました。エニグマは、私の一番弟子です」
フォルトゥナートさんは興奮して言いました。
「あ、そう。900年間も、私の、荒らしホイホイ、じゃなかったグリモワール・タワーを管理してくれていて、学派を維持してくれているんだってね。あんがとね」
グレモリー・グリモワールは、フォルトゥナートさんに頭を下げました。
900年前にグレモリー・グリモワール(私)が創設したグリモワール学派の魔法ギルドでの登記は、現在も生きています。
登記所在地は、セントラル大陸【スヴェティア】魔法都市【エピカント】の【グリモワール・タワー】。
グレモリー・グリモワール(私)にとって、フォルトゥナートさんや、彼の息子さんと、お嫁さん達は……つまり、弟子筋、という事になるのです。
存外に世間は狭いですね。
グレモリー・グリモワールは……今後のグリモワール学派をどうするか……などについて、フォルトゥナートさんと話し始めました。
どうやら、近い内にグリモワール学派の現総帥エニグマ・エクリプスが【サンタ・グレモリア】に向かい、グレモリー・グリモワールと会談の機会を持つ事になったようです。
「さてと、皆さん、そろそろ行きましょう」
私は、歓談中の各国、各ギルドの要人に促しました。
今回の即位・戴冠式には、他にも世界中から多数のVIPが招かれていますが、私達が運ぶ人達は、今ここにいる人達が全てです。
【ユグドラシル連邦】各国の首脳は、【箱船】に乗って、既に【ムームー】に入っているそうですし……【イスタール帝国】、【タカマガハラ皇国】、【アルカディーア】のイースト大陸の首脳は、それぞれ定期運行飛空船で移動を完了しているのだ、とか。
まあ、私達は、タクシーやハイヤーではないので、よく知らない人達を運んであげるつもりも、必要もありませんからね。
因みに、ファヴとウィルヘルミナ……それから、ローズマリーさん達ファヴの聖職者の皆さんは、【パラディーゾ】から【ラニブラ】に直行で現地入りします。
私達は、サウス大陸【ムームー】の王都【ラニブラ】を目指して、【転移】しました。
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