第331話。スパイ・ドローンのキー・ホール。
本日2話目の投稿です。
【ドラゴニーア】。
竜城の大広間。
いつものメンバーが、順次、大広間にやって来て、朝の挨拶を交わしました。
仮眠開けのレジョーネのメンバーは、やや眠そうです。
「2時間ばかり寝させられるのが、一番寝た気がしないのじゃ……。あわぁ〜」
ソフィアは、もう何回目かわからないアクビをしました。
「だよね〜」
ウルスラが半眼で答えます。
「午前中、しっかり眠って下さい」
「うむ。何だか、1日を損した気分じゃ。夜更かしは苦手じゃ」
ソフィアは、言いました。
「だよね〜」
ウルスラは、もう半分寝ながら、相槌を打っています。
私達は、テーブルに着きました。
朝食のメニューは、もはや定番となっている……洋食と和食(【タカマガハラ皇国】料理)から選択出来るスタイルです。
私は、和食一択。
今朝の和食献立は、ご飯、味噌汁、お新香、納豆、ほうれん草とベーコンの炒め物、メインは秋刀魚の塩焼きと、【パイア】の生姜焼きから選べます。
秋刀魚は何尾食べるか、生姜焼きは何枚食べるかを、事前申告制。
因みに、秋刀魚一尾の大きさは、地球のサイズより気持ち大きい程度でした。
生の状態を見せてもらいましたが、肩が盛り上がって身が太く、いかにも脂が乗っていそうです。
また、【パイア】の生姜焼きの方も美味しそうでした。
迷わせますね〜。
「我は全種類じゃ。秋刀魚は20匹、生姜焼きは5kgじゃ。卵料理も全種類を5人前ずつじゃ」
ソフィアは、言いました。
「では、私も秋刀魚を二尾と、生姜焼きを一人前で」
私は、珍しく、メインを両方ともというチャレンジをします。
どちらも美味しそうで、選べませんでした。
朝食が、テーブルに並びます。
先ずは、秋刀魚。
【理力魔法】で、身を骨から完全に分離して、半身を丸ごと口に頬張り、白ご飯をかっ込みます。
美味い。
もう半身は、カボスを絞って頂きます。
これまた美味い。
二尾目は、大根おろしをタップリ乗せて、醤油を少しだけ……おっとっと、かけ過ぎは禁物ですよ。
美味い。
あっという間に秋刀魚二尾と、ご飯一杯がなくなってしまいました。
ご飯を、お代わりします。
お次は、生姜焼き。
薄切りのロース肉……しかし、【パイア】なので一枚が大きい。
これだけ、大きいと、何かを巻きたくなるのは、人の業。
生姜焼きで、ご飯を巻いて食べます。
おー、美味い。
これは、新たな食の扉を開いてしまったかもしれません。
生姜焼きのタレが染み込んだ付け合わせのキャベツの千切りも、ご飯と一緒に巻いて巻いて……。
美味いっ!
これは、凶暴な料理ですね〜。
食べ過ぎてしまいます。
ソフィアとウルスラは、半ば寝ぼけながら、それでも食事を無意識で口に運んで、モソモソと咀嚼していましたが、私の生姜焼き巻き飯を目敏く見つけて、パッチリと目を見開き真似をし始めました。
「うむ。この食べ方が正解じゃな」
ソフィアは、生姜焼き巻き飯に満足している様子。
あ、しまった……。
私は、納豆の存在を、すっかり忘れていました。
ご飯の、お代わり……いや、もう、お腹が厳しい状態です。
おかずとして残っているのは、ほうれん草とベーコンの炒め物が半分と、味噌汁だけ。
味噌汁に納豆を投入して、納豆汁という方法もありますが、ここは、納豆だけで食べましょう。
私の納豆は、ネギ多めカラシ多めのカスタム納豆なのです。
他のおかずにフュージョンするには、少々、癖が強過ぎました。
私は、納豆を単体で食べながら、残ったおかずを平らげます。
うん、納豆単体で食べても美味しいですよ。
トリニティなどは、いつも納豆はおかずとして単体で食べていますしね。
まあ、これは、これで結果オーライです。
・・・
食後。
ソフィアとウルスラ、そしてトリニティは、二度寝に向かいました。
しかし、ファヴとリントは、もう起き出して活動をするそうです。
ファヴは、今日行われるチェレステさんの即位・戴冠の儀の、もう1人の主役でした。
サウス大陸の守護竜であるファヴから、チェレステさんは王権を神授されるからです。
その準備もあるので、ファヴは、寝てもいられないのだ、とか。
リントの方も、【魔界】に移住する【ウトピーア】の民達の関連で諸々の段取りをしに【トゥーレ】に行かなくてはならないそうです。
2人とも、ご苦労様ですね。
サウス大陸は、魔物の支配から解放されたばかりの復興途上。
ウエスト大陸は、リントへの信仰が薄れている状態。
サウス大陸も、ウエスト大陸も、理由は違えど、守護竜が統治の指導をしなければならない状況でした。
その点、セントラル大陸は、政治システムも組織も完成され成熟していますので、ソフィアは責任をアルフォンシーナさんを初めとした人種に任せてサボれます。
いや、ソフィアは怠惰でサボっている訳ではありません。
永年をかけて、ソフィアが指導して来た歴代の神竜神殿の大神官が、現在の【ドラゴニーア】を中心とするセントラル大陸の精密な統治システムと繁栄を築き上げて来たのです。
ソフィアは……昔頑張ったから今楽が出来る……という立場なのでしょう。
ソフィアは、あんな感じですが、実は、極めて有能で実績も抜群な神様なのです。
私は、仕事に向かうファヴとリントの2人に【完全回復】をかけてあげました。
2人から礼を言われます。
頑張って、2人の民達も、セントラル大陸の人々のように幸せにしてあげて下さいね。
私は、内職をしにサウス大陸へと【転移】しました。
・・・
サウス大陸【パラディーゾ】。
【タナカ・ビレッジ】。
私は、クイーンに挨拶をしてから、イーヴァルディ&サンズ造船所に向かいました。
造船所で、【収納】から材料を取り出して、内職を始めます。
【超級飛空航空母艦】エクスプローラーを建造しながら、【自動人形】・シグニチャー・エディションを製造しながら、ドローンを造りながら、チェレステさんに贈呈する【王族の馬車】をカスタムしながら、ミネルヴァと【念話】で会議をしながら、ハロルド達コンパーニアの首脳とスマホで会議をしながら、思索もする……という並列タスク処理。
こんな事が出来てしまうゲームマスターは、つくづくチートだと思います。
エクスプローラーは、内装のかなりの部分が出来上がりました。
もう、飛ばしても大丈夫です。
空中に浮かべて航行させながら、残りの部分を仕上げる事が出来ますね。
軍艦は、陸地に係留してある状態が一番無防備なのです。
今後は、建造作業をしながら空を飛ばせておけば良いでしょう。
【自動人形】・シグニチャー・エディションは、完成した内の約半数30体をグレモリー・グリモワールの所に出荷します。
これでグレモリー・グリモワールに譲渡を約束した【自動人形】・シグニチャー・エディションの残り納品数は、300体。
まだ、そんなにあるのですね。
頑張りましょう。
ドローンは、【超位魔法石】を使って100機を一気に造り、早速、5大大陸の各地に飛ばしました。
以後は、このゲームマスター本部所属の情報収集ドローンの事を、スパイ・ドローン【キー・ホール】と呼びましょう。
以前、ファミリアーレの為に造ったドローン【サン・マルコ1号】は【高位魔法石】がベースです。
【サン・マルコ1号】には攻撃手段がありません。
【キー・ホール】は、【超位魔法石】がベース。
スペック・アップした余剰性能は、各種サーチ能力と防御力と飛行速度の向上に大部分を割きましたが、攻撃機能も搭載しました。
選んだ攻撃手段は、シンプルな【轟雷】。
ただし、私は、基本的に平時の情報収集任務で【キー・ホール】に攻撃を行わせる事は想定していません。
【キー・ホール】は、自己防衛の為に攻撃を行わなければならないような事態になるとするなら、まず、その前に逃げる事を選択するようにプログラムしてあります。
【轟雷】は逃げる隙を作る為の、いわば目くらまし的なモノ。
しかし、【高位雷魔法】なので、対象に当てれば高い殺傷力がある事は間違いありません。
その他の【キー・ホール】の仕様は、【ビーコン】機能、【認識阻害】機能、リアルタイム・データリンク機能、高精細撮影機能……などなども搭載していました。
これでゲームマスター陣営は、強力なスパイ衛星網を世界に張り巡らせる事が出来ます。
ゲームマスター陣営は、私、トリニティ、【コンシェルジュ】達、神の軍団……など、打撃力の点では申し分ないほどに強力ですが……情報収集に関してはミネルヴァの広域【魔力探知】頼り、という脆弱性がありました。
【キー・ホール】は、その弱点を補うモノとなるでしょう。
また、【キー・ホール】の運用・管理は、ミネルヴァが行いますので、私の手が煩わされない、という利点もあります。
チェレステさんに贈呈する【王族の馬車】は、【超位魔法石】を用いた浮遊装置と……推進装置として、それぞれ【超位魔法石】を用いたレシプロエンジンを双発で取り付けました。
推進ベクトル可変式レシプロ……つまりティルト・ローター機です。
ザックリと言うと、垂直離着陸が可能なプロペラ飛行機ですね。
主翼を持たないオス〇レイみたいなモノでしょうか。
本来の用途は女王の御座馬車ですので、慣性制御などを行う【超位魔法石】も取り付けて、乗り心地の良さも追求してあります。
もはや、馬車要素は、どこにもありませんが……。
まあ、良いでしょう。
装甲は、遺跡で入手した竜鋼を薄く伸ばして馬車に貼り付けました。
さらに、もう一つ【超位魔法石】を用いて、強力な【防御】と【魔法障壁】を展開出来るようにします。
うん、これで防御面は良いでしょう。
武装は、【ピュトン遺跡】で入手した【魔導砲】を馬車上部に砲塔を据えて、そこに搭載しました。
砲撃管制に【超位魔法石】をもう一つ追加。
合計で6個の【超位魔法石】を使いました。
この【王族の馬車】は、見た目や内装が豪華な手作りの【砲艦】みたいなモノだと考えてもらって差し支えありません。
【砲艦】より足が遅い代わりに、砲塔が360度回転して仰角も120度を砲撃出来るので、より多方面からの襲撃に迎撃対応出来ます。
女王の御座する乗り物としては、厳つ過ぎるという意見もあるでしょうが、まあ、それは、それ。
安全に勝るモノはありません。
そうこうしているとリマインダーが鳴りました。
もう、時間です。
作業をしていると時間が流れるのが本当に早いですね。
私は、内職の店開きを片付け、クイーンに挨拶をしに向かいました。
・・・
【タナカ・ビレッジ】。
クイーン(エンペラー・タナカ氏)屋敷。
私は、クイーンと話して、【タナカ・ビレッジ】の果樹園に勤務している【ドライアド】のオリーヴォとペスコとチリエージョを連れ出しました。
彼ら3人は、今日の夕刻、チュートリアルの説明会に参加します。
後で迎えに来るのも二度手間なので、もう今から合流してもらう事にしました。
私は、クイーンに挨拶して【ドラゴニーア】に【転移】します。
・・・
【ドラゴニーア】竜城。
私が、礼拝堂に到着すると、トリニティが待っていました。
トリニティも、ソフィア農場から【ドライアド】のカスターニョとメロとペロを連れて来ています。
私は、トリニティに3人を迎えに行くように指示していました。
【ドライアド】の6人は、昼食を一緒に食べて、午後は夕刻まで、竜城内にあるソフィアの私有地の庭園でユックリしてもらう予定です。
私達は、昼食を食べに大広間に向かいました。
・・・
竜城の大広間。
昼食のメニューは、カレー。
ライスとパンとを選べます。
もちろん、私はカレーライスを選びますよ。
小麦粉とカレー粉を炒めてルーを作った、ザ・日本の洋食屋さんのカレーライス。
ルーのパターンは、ビーフ、ポーク、チキン、ラム……または、野菜のみと選べ、野菜にも色々と選択肢があるようです。
トッピングも選べるのですね。
これは、どうやらカレー・スタンドや牛丼屋のカレーなどの影響も受けているようです。
私は、一皿目は、ラム・カレー・ライスにしました。
はい、もちろん、お代わりをするつもりです。
トッピングは、オクラなどは、どうでしょうか。
ソフィアは、オム・カレー・ライスですか?
それも悪くないですね。
私の頼んだカレーが目の前に提供されました。
早速、頂きます。
おー、辛い、けれども美味い。
これは、後を引く美味しさです。
ラムも美味いですね。
往年の名ドラマーは……カレーライスは飲み物……との名言を遺しましたが、私も、あっという間に完食してしまいました。
お代わりは、ビーフ・カレー・ベースに、玉ねぎ、人参、ジャガイモの家庭のオーソドックスなスタイル。
そこに豚カツをトッピング。
これは、間違いありませんよ。
美味い。
カレー・ライスは正義です。
……食べ過ぎました。
お腹がヤバい。
・・・
食後。
私達は、国際儀礼格式第一正装で、集合しました。
私とトリニティは、【ゲームマスターのローブ】と【ゲームマスター代理のローブ】。
一応、ゲームマスターは、正装時には帯剣する慣例があるので、私は【神剣】……トリニティは【アルタキアラ】を腰に下げました。
オラクル、ヴィクトーリア、ウルスラ、ウィルヘルミナは、【高位聖職者】の正装。
なるほど、守護竜の従者という扱いで、首席使徒に準ずる様式の衣装が選ばれたのですね。
ティファニーは当然ながら、【聖杖】、【法皇の法衣】、【聖冠】の【法皇】装備。
アルフォンシーナさんは、もちろん大神官の儀式正装。
ゼッフィちゃんも新調したのだという【高位女神官】の正装で着飾っています。
ゼッフィちゃんは育ち盛りなので、儀式正装は毎年新調しなければならない事を恐縮していました。
相当に高価らしいですからね。
守護竜3柱と、アルフォンシーナさんの護衛という扱いの竜騎士団も、ピッカピカの【フルプレート・メイル】で集結していました。
ソフィアの儀仗近衛スタイルの豪華な装飾の【アダマンタイトの鎧】。
キラキラと光の反射が眩しいくらいです。
しかし、ソフィア、ファヴ、リントの守護竜トリオだけは、存外に素っ気ない格好でした。
何故なら3柱は、式典には現身して守護竜形態で参加するからです。
守護竜形態って、つまり裸ですからね。
衣装はいらない訳です。
「さあ、出発しますよ」
私達は、サウス大陸に向かって【転移】しました。
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・・・
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