第326話。女性だけの冒険者パーティは婚期を逃す?
名前…ミカエル
種族…【擬似神格者…ハイ・エルフ】
性別…女性
年齢…なし
職種…【魔法剣宗】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】など多数。
特性…飛行、【超位回復】、【自己再生能力】、【才能…剣技、王威、王権】など。
レベル…99(固定)
天使長。
天軍剣士長。
竜城の中庭。
私は、カティサークが停泊している中庭にやって来ました。
あー、ノヒトよ……ペネロペ達を迎えに行ってチュートリアルを受けさせるのなら、ついでにジリオの一家も頼むのじゃ。
ソフィアが【念話】で伝えて来ました。
構いませんよ……ジリオさんの所へは、ソフィアから連絡しておいて下さいね。
私は、【念話】で返答します。
了解じゃ……あ、ついでのついでで、我の農場を任せておる一家の方もチュートリアルを頼むのじゃ……そっちにも連絡をしておくのじゃ。
ソフィアは【念話】で伝えて来ました。
わかりました……農場長さんだけでなく、ご一家全員ですか?
私は【念話】で訊ねます。
そうじゃのう……区別するのが面倒じゃ……丸っと全員じゃ。
ソフィアは、【念話】で言いました。
従業員さん達も入れるのですか?……かなりの人数になりますよ。
私は【念話】で確認します。
あー、家族だけで良い……まあ、差配はノヒトに任せるのじゃ。
ソフィアは【念話】で言いました。
適当な……。
まあ、良いですけれどね。
と、すると、カティサークは邪魔になりますね。
後で、また取りに来ますか……。
二度手間になりましたね。
ソフィアの奴、あらかじめ言っておいてくれれば良いのに……。
思い付きで行動するのは、私も同じです。
もしかしたら、私の思い付きの行動も、周囲の人に迷惑をかけているのかもしれません。
まあ、こればっかりは性分ですし、結果的に最善策を選択しての計画変更なので、自分の行動原理を変えるつもりはありませんけれどね。
私は、カティサークを一旦放置して、竜都の都市城壁外の南方に広がるソフィア農場に向かい【転移】しました。
・・・
ソフィア農場。
私は、ソフィア農場にやって来ました。
ソフィア農場の農場長と少し話します。
ソフィアからの連絡はまだ……。
と、農場長のスマホに着信がありました。
ソフィアです。
農場長は、ソフィアと話して委細を承知し、直ぐに家族を呼び集めに屋敷に向かいました。
私も、ソフィア農場で働いてもらっている、私の寄子である【ドライアド】のカスターニョと、【ハマドリュアス】のメロとペロを迎えに行きました。
3人は、陽当たりの良い広場に建ててもらった立派な屋敷に住んでいます。
3人を探すと、ガラス張りの温室の中で、お茶を飲んでいました。
私はカスターニョとメロとペロと合流しました。
3人と話すと……今日の仕事は終了したのだ……とか。
毎日楽しく働いているそうです。
それは、何より。
3人の寄親としては、彼らが幸せなら、それに勝る喜びはありません。
農場長の話では、3人は、大変良く働いているそうです。
果樹園に解き放たれた3人は、正に、水を得た魚のようなのだ、とか。
水やり肥料やりのタイミングや量なども、まるで果樹と会話をして聞いているかのように適切なのだそうです。
まあ、【樹人】は、樹木や植物と簡単なコミュニケーションが取れますからね。
私は、3人を連れて農場の事務所に戻ります。
事務所では、農場長さんが、家族と一緒に待っていました。
農場長さんの名前は、ボニート・コンタディーノ。
ボニートさんは、元は、一介の農夫から叩き上げて栄達し、ソフィア農場の長にまで上り詰めた凄腕農業経営者。
ソフィアから、コンタディーノの家名を名乗ることを許された、勲章持ちの農業の名人です。
ボニートさんから、家族全員を紹介してもらいました。
奥さんのジリアーナさん。
主にボニートさんと一緒にソフィア農場の穀物生産を指揮しているそうです。
長女のアルベルティーナさんは、経理担当。
長男のコジモさんは、青果物と商業作物の担当。
次男のデチモさんは、畜産・酪農の担当。
長女アルベルティーナさんの夫エンリコさんは農学博士。
長男コジモさんの妻ベルナデッタさんは、外渉担当。
ベルナデッタさんは、【リーシア大公国】で広大な農場を営む名門貴族家アグリコルトゥーラ家の、ご令嬢なのだそうです。
なるほど。
次男デチモさんの妻コンシリアさんは、獣医さん。
その他、ボニートさんの、ご両親……ジリアーナさんの、ご両親。
ボニートさんとジリアーナさんの孫達……と。
大家族ですね。
コンタディーノ家は、この他に、私の寄子である3人の【樹人】や、従業員数百人を率いる大農場主です。
ソフィア農場のオーナーはソフィアなのですが、基本的にソフィアはコンタディーノ家に全幅の信頼を寄せており経営には口を出していませんでした。
さてと、チュートリアルへの参加者ですが……。
とりあえず、既に隠居しているという、お爺ちゃん、お婆ちゃん達は、申し訳ないのですが、チュートリアルからは除外させてもらいます。
ボニートさんとジリアーナさんの孫達も、まだ幼いので、保留。
義務教育が終わる頃、適性を見て、改めて判断させてもらう事にしました。
つまり、ソフィア農場から、今回チュートリアルに参加してもらうのは……。
私の寄子である【樹人】の3人……ボニートさんとジリアーナさん夫妻……アルベルティーナさん、コジモさん、デチモさんの3姉弟……それから、3姉弟の配偶者のエンリコさん、ベルナデッタさん、コンシリアさんの、合計8人です。
幼い孫達は、お爺ちゃん、お婆ちゃんに預かってもらうのだ、とか。
ノヒトよ……ジリオの家族は、オラクルが迎えに行ったのじゃ……じゃから、大丈夫じゃ。
ソフィアから【念話】が伝わりました。
わかりました。
私は、【念話】で答えます。
では、ジリオさん一家の方は迎えに行かなくても良し、と。
「皆さん、整列して、私に手を伸ばして下さい」
私は、コンタディーノ家の転移適応を調べます。
問題なし。
【ドライアド】のカスターニョと【ハマドリュアス】のメロとペロは、以前に転移適応を調べてあります。
私達は、【シエーロ】に向かって【転移】しました。
・・・
【シエーロ】中央都市【エンピレオ】。
【知の回廊】最深部。
私が、【ワールド・コア】ルームのエントランスに到着すると、ヴィクトーリアが迎えに来ていました。
ソフィアの元に案内してくれるそうです。
私は、連れて来た全員に魔力登録をさせ、あとは、ヴィクトーリアに任せました。
よし、次。
私は、次の目的地に【転移】しました。
・・・
サウス大陸【パラディーゾ】。
【タナカ・ビレッジ】。
私は、クイーンと……クイーン農場の果樹園で働く、私の寄子である【ドライアド】のオリーヴォと【ハマドリュアス】のペスコとチリエージョを迎えに来ました。
いつものようにクイーンを呼び出してから果樹園に向かい、今日の仕事を終えて夕日を浴びてマッタリとしていた3人の【樹人】達と合流します。
既にソフィアから話は通っていたので、すぐに【シエーロ】へと【転移】しました。
・・・
【シエーロ】中央都市【エンピレオ】。
【知の回廊】最深部。
私が【ワールド・コア】ルームのエントランスに到着すると、今度はオラクルが待っていました。
オラクルは、ジリオ家をソフィアの元に連れて行き、私達の迎えにエントランスまで出て来てくれたのです。
私は、【ドライアド】のオリーヴォと【ハマドリュアス】のペスコとチリエージョの魔力登録をしました。
「オラクル。では、頼みますね」
「畏まりました」
オラクルは、クイーンと3人の【樹人】を連れて、【ワールド・コア】ルームに入って行きます。
私は、またまた、【転移】しました。
・・・
竜城の中庭。
私は、カティサークが停泊している中庭にやって来ました。
ようやく、当初予定のフリダシに戻った訳です。
私は、カティサークごと【転移】しました。
・・・
竜都【ドラゴニーア】東外縁部。
歓楽街上空。
私の指示で、【自動人形】・シグニチャー・エディションが転移座標のターゲットになってくれていたので、問題なく【転移】が完了しました。
「ご苦労様、任地に帰還して下さい」
わたしは、【自動人形】・シグニチャー・エディションに指示します。
「畏まり、ました」
【自動人形】・シグニチャー・エディションは、礼をして西の空に飛んで行きました。
ペネロペさん達、月虹は、まだいません。
時間が、5分ほど早いので仕方ありませんね。
【マップ】の表示範囲を広げると、直ぐ近くにペネロペさん達は、来ていました。
どうやら飛空舟で、こちらに向かって来ているようです。
私は、歓楽街の門前の飛空船ターミナルに降りて、ペネロペさん達を待ちました。
程なくして、小型の飛空舟がターミナルに到着します。
ペネロペさんが降りて来て、私を見つけて手を振りました。
へえ、自家用飛空舟ですか?
さすがは、【ドラゴニーア】所属のエース冒険者パーティ月虹です。
お金持ちですね。
「こんばんは。ご自宅は、どこですか?」
「中心街です」
ペネロペさんは答えました。
「時間がかかりますね。では、皆さんの舟を、私の船に収容しますので、一緒に向かいましょう。道案内をして下さい」
「ノヒト様の船?」
ペネロペさんは、ターミナルをキョロキョロ見回しました。
いやいや、このターミナルは、いわば自動車駐車場のようなモノなので、カティサークのような100m級の飛空船は係留出来ません。
「上です」
私は、ペネロペさんの視線を上空に誘導しました。
「デカっ!あれ、自家用ですか?」
ペネロペさんは訊ねます。
「はい。私とソフィアの私物です。まあ、用途は専ら、ファミリアーレの移動用ですね」
「すっげーっ!」
ペネロペさんは、口を開けて言いました。
私は、ペネロペさん達のパーティの飛空舟ごと、カティサークの甲板に【転移】します。
ペネロペさん達を船内に案内しました。
ペネロペさん達、月虹は、カティサークのホテルのような内装に驚きます。
「【自動人形】に注文して、飲み物などは自由に召し上がって下さい。また、船室には、シャワーもありますから、ご自由に使って下さい」
「うへーっ!神様業って、凄く儲かるんだねー?」
ペネロペさんは言いました。
「こらっ、ペネロペ、非礼よ」
月虹のサブ・リーダーであるルフィナさんが、ペネロペさんの正直過ぎる感想に苦言を呈します。
「あ、ごめんなさい」
ペネロペさんは、即座に謝りました。
「いえいえ、謝罪は必要ありません。おかげ様で、賄賂などに目がくらまない程度には稼がせてもらっていますよ」
「なるほど。【調停者】様が貧乏だったら、悪い奴らに買収されちゃうもんね?それは確かに具合が悪い」
ペネロペさんは言います。
私は、ペネロペさんの素朴な感想に思わず吹き出してしまいました。
ペネロペさん達も笑います。
私は、ペネロペさん達の自宅の住所を教えてもらい、カティサークの高度を上げて、魔導タービン・ファンを起動させました。
カティサークは、ゆっくりと加速して行きます。
・・・
月虹の本拠地。
月虹の本拠地は、大きな屋敷を改装した、オフィス兼パーティ・メンバーの共同住宅でした。
私は、月虹の自家用飛空舟を降ろします。
自家用飛空舟は、屋敷の裏手にあるガレージに向かいました。
ペネロペさんが、魔法で施錠されている扉を開けます。
「キトリー。いるかぁー?今帰ったよーっ」
ペネロペさんが叫びながら、屋敷の中にズカズカと入って行きました。
私は、ルフィナさんに促されて、月虹の屋敷に、お邪魔します。
「喧しいっ!叫ばないで伝声管を使いなさいよ。まったく……」
月虹の代理人であるキトリーさんが、屋敷の奥からやって来ました。
「こんばんは」
私は、キトリーさんに挨拶します。
「あら、ノヒト様、いらっしゃいませ」
キトリーさんは、慌てて、居住まいを正して、丁寧に挨拶しました。
キトリーさんは、月虹の敏腕代理人。
ペネロペさん、ルフィナさんとは同郷の幼馴染なのだそうです。
キトリーさんは、月虹への指名依頼の窓口、営業、外渉、スケジュール管理、果ては兵站管理までを一手に引き受けるパーティの屋台骨を支える存在でした。
そもそも、月虹は、ペネロペさん、ルフィナさん、キトリーさんの仲良し幼馴染3人組が結成したパーティ。
ペネロペさんがリーダー、ルフィナさんがサブ・リーダー、キトリーさんがエージェント。
そこに、冒険者養成専門学校で知り合った、1年後輩のセーラさんが加わりました。
セーラさんは、パーティの範囲攻撃担当魔法職。
その後、パーティの前衛である、ティアナさんと、ユルシュルさんをスカウトして、現在の月虹が出来上がりました。
メンバーは、全員、女性で仲良し。
女性だけのパーティで稼ぎも良い為に……皆、婚期を逃した……以外は、とてもハッピーなのだ、とか。
女性だけの一流冒険者パーティが婚期を逃すのは、この業界のアルアルなのだそうです。
まあ、私は何も言いません。
月虹のメンバーは、旅装を解いて、シャワーを浴びて着替え、再集合します。
私は、月虹を連れて【シエーロ】に【転移】しました。
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