第315話。ピュトン・ダンジョン攻略!
本日3話目の投稿です。
95階層のボスは、【闇竜】。
【眷属】として、15頭の【闇竜】を率いています。
もはや、ただの【古代竜】など、レジョーネにとっては、羽虫扱い。
戦いにもなりません。
【宝箱】の中身は【魅了の香水】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
【魅了の香水】ですか……。
色々と悪用が可能なアイテムなのですよね。
管理には十分に気をつけなければいけません。
この【魅了の香水】は、1回使い切りで特定の個人を対象として、誰でも自分を好きにしてしまう効果があります。
【神格者】には無効ですが……。
「【魅了の香水】じゃな?これは、【ドラゴニーア】では違法薬物指定されているのじゃ」
ソフィアが言いました。
まあ、それが妥当です。
誰でも自分を好きにさせられるなら、どこかの国の首席使徒や王様や大統領などを籠絡して、国政を好きにする事も出来るかもしれないのですからね。
私の【収納】に永久死蔵するのが、一番安全かもしれません。
「休憩にします」
午後のオヤツ・タイム。
ソフィアは、バケツ・プリン(ミルク味)を食べ始め、ウルスラはブドウ1房を丸ごと入れたゼリー。
私は、納豆巻き……トリニティは、キュウリを具にした肉巻きおにぎりという変り種……ファヴは、ケチャップたっぷりのハッシュドポテトとハムのホット・サンド……リントは、シフォンケーキ……で、それぞれ小腹を満たします。
「ノヒトよ。バケツ・プリン・シリーズは爆発的に売れておるのじゃ。今や、竜都の高級ホテルや高級レストランでさえ、デザートのメニューにバケツ・プリンを載せるほどじゃ。これは、一過性のブームではなく、完全に定番メニューとして確立された、と判断出来るのじゃ。このプルプルの儚い柔らかさ、と、シッカリと形状を保つ保持性を両立する技術が競合他社には真似出来ぬ。他社が真似をしたバケツ・プリンは、自重に耐えられず、崩れてしまうか、偏平に潰れてしまうか、あるいは固過ぎて食感が悪くなるか、の何れかなのじゃ。この技術は真似出来ぬのじゃ。ソフィア・フード・コンツェルンの独り勝ちじゃ」
ソフィアは、愉快そうに報告しました。
あ、そう。
「他の商品の売れ行きはどうですか?」
「うむ。絶好調じゃ」
ソフィアは、フンスッ、と胸を張ります。
「ソフィアの名前で売れているだけなのでは?」
「それも考慮したが違うのじゃ。商品名を隠した覆面商品モニター・テストを何度も行なっておる。その何れでも、ソフィア・フード・コンツェルンの商品は、高い支持を受けておるのじゃ。我が自ら商品開発した……丸ごと卵パンや、ゆで卵フライや、世界一の味玉や、卵増量タルタルソースや、目玉焼き専用ソース・シリーズ……なども人気じゃぞ」
ソフィアは、言いました。
なるほど。
商売が好調なのは、良い事ですね。
私達は、96階層に続く階段を降りて行きました。
・・・
96階層のボスは、【ショゴス】。
【眷属】として、16頭の【ショゴス】を率いています。
【ショゴス】は、【スライム】や【ウーズ】などと同じ不定形な粘性生物。
黒いコールタールのようなドロドロの身体に、無数の目と触手を持つ、気持ち悪い系の魔物。
ネト〜、っとした動きで、俊敏性は皆無ですが、強力な魔法と精神攻撃を持ち、また、直接打撃によるダメージを、ほとんど受け付けないという難敵です。
【ショゴス】は元々、94階層のボスだった【エルダー・シング】が配下として使役する生物兵器……という設定がありました。
しかし、親分である【エルダー・シング】が【創造主】の逆鱗に触れて全滅させられた時に、この【ショゴス】を裏切らせて【エルダー・シング】を狩らせた……という設定になっています。
太古から、存在する魔物という訳ですね。
しかし、現在では【ショゴス】も自然界に存在しません。
「直接打撃が効かぬじゃと?どうやって倒せば良いのじゃ?魔法やブレスか?しかし、それで消滅させてしまうと、素材が取れないのじゃ」
ソフィアが訊ねました。
「【ショゴス】に対しては魔法も効きが悪いのですよね。なので、【ショゴス】の体内をサーチして、【コア】を見つけて火力を集中してピンポイントで破壊するのが討伐の定石なのですが、【超位コア】を破壊してしまうのは勿体ないですからね。ここは私がやりましょう」
「うむ。気持ち悪いドロドロの相手は、ノヒトに任せるのじゃ」
ソフィアが言います。
私は、今日初めての戦闘。
無造作に歩いて行き、【ショゴス】達からの集中攻撃を丸っと無視して近接し、ドロドロの身体の中に、ズボッ、と手を突っ込んで、体内から【コア】を引きずり出します。
私が、【コア】を抜いた【ショゴス】は、次々に干からびたようになって、死んでしまいました。
ふっ、造作もない。
【宝箱】の中身は【圧縮箱】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
「何が入っておるかな?また【神の遺物】の【自動人形】ならば良いのじゃが……」
ソフィアが【圧縮箱】を振って、耳を当てて中を推測します。
因みに、【圧縮箱】の内部は亜空間なので、振っても音などはしません。
ソフィアは、【圧縮箱】を床に置きました。
【圧縮箱】から出たのは、【魔導砲】。
うーむ、喜んでも良いのですが、ゲームマスター本部の工場の【神の遺物】製造ラインで、幾らでも造れますからね。
「ふむ。大砲はロマンじゃ」
ソフィアは嬉しそうです。
「いらないよ」
「そうじゃが。ロマンは大事じゃ。ロマンなくして、技術の進歩はないのじゃ」
ソフィアが、もっともらしい事を言いました。
「なら、この【魔導砲】は、ソフィアの取り分にする?」
「いらぬ。クイーンの村の門楼にでも、設置しておけば良いじゃろう」
ソフィアは言います。
ソフィアにとってもロマンと実益は別なようですね。
私達は、97階層に続く階段を降りて行きました。
・・・
97階層のボスは、【王竜】。
【眷属】として、17頭の【王竜】を率いています。
サクサク倒しました。
【王竜】を含む、一般的な【古代竜】は、けして弱くはありません。
音速で飛び鋭い機動が出来て、魔法・近接攻撃共に超威力、耐久力もデタラメに高く、ブレスという超火力の必殺技まで持つ【古代竜】は、むしろ数多いる【超位】の魔物の中でもチャンピオン級に強いのです。
しかし、レジョーネにとっては、カモ。
特殊な性質を持たず、おかしな攻撃をしてこない【古代竜】は、レジョーネの対戦相手としては素直過ぎるのです。
言うなれば、癖のない敵。
地力が圧倒的に強いソフィアやファヴやリントにとって……癖がない=楽勝……という図式が成立してしまいました。
【古代竜】にとっては、レジョーネは天敵でしょう。
【宝箱】の中身は【カラドボルグ】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
【カラドボルグ】は【神の遺物】のロング・ソード。
【アルタ・キアラ】や【アロンダイト】や【デュランダル】や【エクスカリバー】などと並んで、ユーザーから高い人気を誇る剣でした。
性能もトップ・クラスです。
「うむ。これは良い剣じゃ」
ソフィアが言いました。
ファミリアーレで剣を使うのは、ハリエットとアイリスとサイラスとティベリオですが、3人には、身体や腕力や特性にあった高性能な剣や刀を与えています。
必要ないですよね。
グレモリー・グリモワールの陣営に【カラドボルグ】を御するような正統派の剣の達人がいれば、そちらに譲ってしまいましょう。
私達は、98階層に続く階段を降りて行きました。
・・・
98階層のボスは、【カーバンクル】。
【眷属】として、18頭の【カーバンクル】を率いています。
【カーバンクル】は、【古代竜】の一種ですが、顔が馬面でした。
【カーバンクル】は、果物やナッツや野菜などを好む、草食の【古代竜】なのです。
ヌボーッとした脱力感溢れる愛嬌のある顔つきをしていますね。
【カーバンクル】。
魔物としては珍しく自然界でスポーンする個体は、人種へのヘイトを持たない中立個体として設定されていました。
知性が高く、また好奇心も旺盛な為、時折、人種と会話したり交流する個体が現れる事もあります。
歴史書によれば、都市や城などに住み着き、人種に知識や助言などを与えたり、人種を庇護した【カーバンクル】の存在も確認されていました。
しかし、遺跡でスポーンする【カーバンクル】は、違います。
好戦色アリアリのガッツリ敵性個体でした。
知性が高いという事は、【カーバンクル】は魔法が、とても得意。
そして、これといった弱点もない完成された魔物でもあります。
戦闘力は、【古代竜】にあっても最上位クラス。
間抜けな顔に騙されて油断していると、レジョーネと言えども痛い目に合います。
遺跡にスポーンする【カーバンクル】は、ユーザーにとって出会いたくない魔物の代表みたいなモノでしょう。
私は、【カーバンクル】がスポーンした瞬間に、戦闘力に劣るウィルヘルミナを、すぐ【収納】に回収したくらいです。
私から、説明を聴いたソフィア、ファヴ、リントは協力して、油断なく間合いを測りながら、遠隔のブレスと【神位魔法】の集中砲火の飽和攻撃で、着実に1頭ずつ、【カーバンクル】を倒して行きました。
【カーバンクル】の魔法が、後方の私達の方にまで、飛んで来るので、私は、トリニティ、オラクル、ヴィクトーリア、ティファニーの防御に専念。
多少、時間がかかりましたが、3柱の守護竜は【カーバンクル】を倒しきりました。
今回は、ノーダメージとは行かず、私は、ソフィア、ファヴ、リントに【完全治癒】をかけてあげます。
「強敵だったのじゃ。もしかしたら、【ダンジョン・ボス】より強いかもしれぬ」
ソフィアは、汗を拭いながら言いました。
それは、あながち間違いではありません。
火力こそ、【ダンジョン・ボス】に劣りますが、【カーバンクル】は高い知性を駆使して、相当、嫌らしい攻撃を仕掛けて来ます。
実際、トリニティや【自動人形】達がいる後方を脅かすのも、ソフィア達の注意を逸らすには、随分と有効でした。
【カーバンクル】は、自然界では人種の友人ともなりますが、敵に回すとソフィア達でさえ侮り難い強力な魔物なのです。
【宝箱】の中身は【願いの石板】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
出ました……【願いの石板】。
【願いの石板】は、遺跡の【宝箱】から出る可能性がある、あらゆるアイテムを【宝箱】から狙って出す事が出来る……言わば、発注表のようなモノ。
その選択性と汎用性から、900年前のゲーム時代……この【願いの石板】が市場価値が一番高いアイテムでした。
当然、レア中のレアである超絶レアの【神の遺物】です。
マジですか?
4回の遺跡攻略で、2回も【願いの石板】が出るとか。
4人分の【天運】の効果、恐るべしです。
「やったのじゃーーっ!これを使って【超位魔法習得】の【スクロール】と交換すれば、ウィルヘルミナも【超位覚醒】させられるのじゃ」
ソフィアは飛び上がって喜びました。
「ソフィアお姉様、ありがとうこざいます」
ウィルヘルミナの主人であるファヴが礼を言いました。
「何を言う。ウィルヘルミナは家族じゃ。便宜を図ってやるのは当然の事なのじゃ」
ソフィアが言います。
私も同じ気持ちですよ。
私達は、99階層に続く階段を降りて行きました。
・・・
【ピュトン遺跡】99階層。
私達が99階層に足を踏み入れると……もはや、お約束ですが、99階層の魔物が待ち構えていて、総攻撃を仕掛けて来ました。
レジョーネにとっては、獲物を探す手間が省けるので、むしろボーナス・ステージ。
私達は、魔物の大群を美味しく頂いて、【ピュトン遺跡】の最後のボス部屋に向かいました。
・・・
【ピュトン遺跡】99階層のボスは、もちろん【ピュトン】。
【眷属】として多様な20頭の【超位】の魔物を率いています。
【ピュトン】は、地獄の底から響くような咆哮を一吠え……。
咆哮が終わる前に、ソフィアの【神竜砲】で頭を吹き飛ばされて死亡してしまいました。
……呆気ない。
やはり生まれたての若い【ダンジョン・ボス】は、喧嘩慣れしていないので、浅はかです。
何故、咆哮を上げる暇があったら、ブレスの1発でも吐かないのか?
ゲーム的には、この咆哮を上げるクダリは、降臨イベントのムービーとして処理されるので隙にはならないのですが、実戦では、もちろん……ムービー中はキャラが動けない……などという、お約束はないので、無防備そのもの。
本当に馬鹿なのではないか、としか思えません。
まあ、戦闘人工知能を組んだのは、私達、ゲーム開発会社の人間なのですが……。
【ピュトン】死後、ソフィア、ファヴ、リントが危なげなく20頭の【眷属】を殲滅して戦闘は終結しました。
いよいよ【ピュトン遺跡】の最後の【宝箱】を開ける時です。
ソフィアが巨大な【宝箱】の蓋を開けて、中に入りました。
【ピュトン遺跡】99階層の【宝箱】の中身は……。
【宝物庫】。
【エリクサー】10回分入りボトル。
竜鋼インゴット1t。
【ドラゴニーア金貨】10万枚。
【コンティニュー・ストーン】3つ。
ここまで、過去3度の99階層【宝箱】で内容は同じ。
問題は最後の1つが何かです。
「ノヒトよ。これは、何じゃ?【ダンジョン・コア】か?少し色が違うようじゃが?」
ソフィアが大きな球体を頭の上に持ち上げて言いました。
「ソフィア。それは、【アイランド・コア】です。別名、【浮遊島の心臓】ですよ」
「なぬっ!【浮遊島の心臓】とな?つまり、竜城を浮かせ、また、竜城の全動力を賄っている【竜城のコア】と同等のモノか?」
ソフィアは訊ねます。
「種類としては同じモノですね。でも、【竜城のコア】は、特別性で、不壊・不滅のオブジェクトで、出力も桁違いだけれど、【アイランド・コア】は、竜城みたいなデタラメに巨大な質量の物体は浮かせられない。せいぜい小島くらいですね。だから【アイランド・コア】。グレモリーの別荘【ラピュータ宮殿】を浮かべているのが、その【アイランド・コア】なんですよ」
「ほお〜。良いモノじゃな。我は、これを貰おうっと……」
ソフィアは、自分の【収納】に【アイランド・コア】をしまってしまいました。
「みんなで相談して決めますよ。私だってコンパーニアの本社オフィスが手狭になって来たので、【アイランド・コア】で造った浮遊島にコンパーニアの新しい本社ビルを建てたいのですから」
【ドラゴニーア】の中心街は慢性的に土地と不動産が足りていないので、大規模なビルは空きがありません。
「嫌じゃ。これは我が貰うのじゃ。我は、これで浮遊島を造り、ソフィア艦隊の母港にするのじゃ」
ソフィアは、腕組みしながら、プイッ、と横を向きます。
ソフィアが強硬に主張すれば、私とトリニティ以外のレジョーネは、ソフィアの意に沿おうとするでしょうから、多数決では部が悪いですね。
まあ、ソフィア艦隊の母港にするという事なら、受け入れても構いませんが……。
「ともかく、【ダンジョン・コア】を回収してしまいましょう」
「うむ。これでサウス大陸で、4つ目の遺跡クリアじゃ。これでサウス大陸の隠しマップ……【プレスタンツァ】に続く【門】が開き、アンの奴めを殴りに行けるのじゃ」
ソフィアは言いました。
「姉妹喧嘩は、ほどほどにして下さいね」
「これは、姉妹喧嘩などではないのじゃ。悪逆非道なる盗っ人であり、また不倶戴天の敵でもある、アンの馬鹿者に対する正義の鉄槌なのじゃ」
あー、はいはい。
レジョーネは【ピュトン遺跡】の99階層ボス部屋の奥にある【ダンジョン・コア】部屋に向かいました。
・・・
【ピュトン遺跡】。
【ダンジョン・コア】部屋。
私は、【カーバンクル】戦から【収納】に避難させたままだったウィルヘルミナを外に出してあげました。
やっぱり、最後は、レジョーネ全員揃って終わりたいですからね。
「さあ、回収しますよ」
レジョーネの一同は頷きます。
私は、【不滅の大理石】の台座に鎮座する【ダンジョン・コア】を【収納】に回収しました。
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