第312話。黒の結社?
名前…ウィノナ
種族…【人とドラゴニュートの混血】
性別…女性
年齢…15歳
職種…【役員】
魔法…【闘気】、【収納】、【鑑定】、【マッピング】
特性…【才能…経営】
レベル…9
ソフィア&ノヒト(コンパーニア)の【ラウレンティア・スクエア】支配人であり、同【ラウレンティア】支社長。
【ピュトン遺跡】。
61階層。
【ピュトン遺跡】の61階層〜70階層は、氷河エリアでした。
「ひゃ〜っ!チョ〜、寒いよ〜」
ウルスラが言います。
「ウルスラ。気のせいです。あなたは妖精。完全なる環境適応特性があるはずです」
「そうじゃ。以前に【氷竜】を討伐しに【ピアルス山脈】に行った際も、吹雪で寒かったが、其方は大丈夫だったではないか?」
ソフィアが言いました。
「あ、そう言えば、そうだった〜」
ウルスラは、ヘラヘラと笑います。
「トリニティ。あなたは寒くありませんか?」
私は、トリニティに訊ねます。
ウルスラより環境適応幅が狭いトリニティの方が心配ですよ。
まあ、それも、生身の状態ならば、の話ですが……。
「はい。全く問題ありません」
トリニティは、答えました。
トリニティが着る【ゲームマスター代理のローブ】は、完全環境適応装備。
どうやら、そのギミックは正常に働いているようです。
「ノヒトよ。これだけ寒い場所じゃ。ボスは、【氷竜】じゃろう?我は、【氷竜】の肉が大好物なのじゃ」
ソフィアは言いました。
ソフィア、ヨダレが出ていますよ。
パブロフの犬ですか?
「あ〜。あの、お肉、スッゴク美味しいもんね〜」
ウルスラが言います。
「残念ながら違います。【氷竜】がボス指定されているのは、雪原エリアと雪山エリアなのです。氷河、氷原、氷山海域などのエリアのボスは、それぞれ【氷竜】とは、また違う魔物に設定されています」
「な〜んじゃ。期待外れじゃ。まあ、我の【氷竜】肉のストックは、まだ潤沢故、問題はない。さあ、ウルスラよ。角笛を鳴らすのじゃ」
ソフィアが促しました。
「は〜い」
ブワ〜ッ、ブワブワッ、ブワブワ〜ッ!
ウルスラが【誘引の角笛】を吹きました。
すると、氷塵を巻き上げて、魔物が集まって来ました。
「やってやるのじゃーーっ!」
ソフィアは、魔物の群に向かって真っ直ぐ突っ込んで行きます。
ウルスラがソフィアの後を追って行きました。
間髪を容れず、ファヴがアナログ時計の1時の方向、リントが11時の方向に突撃します。
3柱の守護竜が形成した3正面の前線をトリニティとオラクルがコンビとなり、ヴィクトーリアとティファニーとウィルヘルミナがトリオになり、中団支援。
私は後方から、皆を守ります。
氷河エリアでは、クレバスの中や、氷の下に潜む魔物がいました。
なので私は、【マップ】で広域索敵をかけて魔物を探し、【神位理力魔法】で地上へと引きずり出して空中に浮かばせておきます。
後は、イージー・モード。
氷河エリアは、レジョーネの狩場と化しました。
私達は、魔物の血で氷河を赤く染めながら進撃します。
あっという間に、70階層のボス部屋に到達しました。
・・・
70階層のボスは、【氷河竜】。
【眷属】として5頭の【フリーズ・ワーム】を率いています。
「【氷河竜】は、特段、脅威となるような特殊な能力はありません。寒地適応の【古代竜】です」
「うむ、我が倒すのじゃ。ニョロニョロ達の方は皆に任せた。行くぞっ!偽物めーーっ!」
ソフィアは、【氷河竜】に突撃しました。
偽物って……お目当ての【氷竜】ではなかったからといって、酷い言われようです。
ソフィアは、【氷河竜】の頸部を一刀両断。
【フリーズ・ワーム】は、ファヴとリントが倒しました。
【宝箱】の中身は【アダマンタイトの盾】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
私達は、71階層に続く階段を降りて行きました。
・・・
71階層〜80階層は、湿地林エリア。
「湿地か。【ジャバウォック】めらが住むのじゃ。遠隔攻撃で対応しなければならぬ故、面倒臭いのじゃ」
ソフィアは、少しだけ億劫そうな顔をします。
確かに【ジャバウォック】は精神攻撃をして来るので、面倒な相手ですからね。
【精神攻撃】は射程が短いので、遠隔から魔法で落とせば楽勝なのですが……。
ソフィアは、突貫肉弾娘なので、どちらかと言えば遠隔の敵を狙撃するようなチマチマした戦い方は、あまり好きではないのです。
広域ブレスで一網打尽に殲滅出来るのならば話は別ですが、私は、レジョーネに対して……魔物から取れる素材の価値を損じるような倒し方は、なるべく避けるように……と指示していますので、それも出来ません。
「ソフィア。ここは、湿地帯ではなく、湿地林です。ボスは【ジャバウォック】では、ありませんよ」
「な〜んじゃ。ならば良いのじゃ」
ソフィアは、長巻【クワイタス】を引っさげて突撃しました。
ウルスラが【誘引の角笛】を吹き鳴らします。
ワラワラと魔物が集まって来ました。
私も、再び湿地の泥の中に潜む魔物を【神位理力魔法】で引きずり出して、湿地林エリアもイージー・モードの狩場と化します。
レジョーネは、問題なく、ボス部屋に到達しました。
・・・
80階層のボスは、【湿地竜】。
【眷属】として、7頭の【王沼ワニ】を率いています。
ソフィアが【神竜の斬撃】で、【湿地竜】の首を斬り飛ばし、ファヴとリントが【王ワニ】を始末しました。
うん、何ら問題はありません。
【宝箱】の中身は【不落の鞍】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
「【神の遺物】の鞍じゃな?どれどれ……ほおー、慣性制御と、騎手の【自動防御】をして、騎乗すると鞍から落ちなくなる、と。ふむ、【竜騎士】が使用すれば、なかなか役に立ちそうなアイテムじゃな。これは、モルガーナにやれば良かろう」
ソフィアは【鑑定】を使いながら言いました。
「それが、そうでもないのですよね。私は、騎竜と【竜騎士】は状況に応じて、人・竜で別れて戦ったり、あるいは、【竜騎士】が【竜】の背に立ったり出来た方が、戦い方の幅が広がると思います。この【不落の鞍】は、座った状態で下半身がガッチリと鞍に固定されてしまいます。それは、良し悪しではないのでしょうか?私は、【不落の鞍】をモルガーナに使わせるつもりはありませんよ」
「ふむ。融通が効かないアイテムなのじゃな」
ソフィアは言います。
「まあ、特殊なギミックを発動させる事が出来る優秀なアイテムである事は間違いありません。しかし、モルガーナや【ドラゴニーア】の竜騎士団は、全員【ドラゴニュート】だから飛べますので、落下事故は、ほとんど起こらないでしょう。どちらかと言えば、【飛行】の魔法や翼を持たずに飛べない者が、騎竜に乗る時の安全装置という位置付けのアイテムなのではないでしょうかね」
「なるほど。まあ、身内に使う者がいなければ、売ってしまえば良いのじゃ」
ソフィアは言いました。
「そうだね」
私達は、休憩を取ります。
ソフィアは、エッグベネディクトを食べ始めました。
私達は、好きな具材を挟んだマフィン・サンドを食べます。
「ノヒト。【黒の結社】って知っているかしら?」
リントが訊ねました。
「はい。知っていますよ。900年前、【ヴァンパイア】や【サキュバス】や【ゴルゴーン】や【メリュジーヌ】ら、【魔人】のユーザー達が、【魔人】の社会的地位向上と待遇改善を標榜して結成した組合でしたね」
【黒の結社】は、名称こそ、厨二感が満載なダーク・サイドな語感でしたが、活動内容は、至って良心的な組合組織でしたね。
主に【魔人】にキャラ・メイクしていたユーザーの互助組織として機能していた他、NPCの社会へも【魔人】に対する偏見や差別を払拭しようとする意図で慈善活動などを通じて関わっていたのです。
私もプライベート・キャラのグレモリー・グリモワールが【死霊術士】であった為に忌み嫌われていたので、【黒の結社】のメンバーには、何となくシンパシーを感じていました。
まあ、私の場合、差別や偏見を受けて、それが度を超えて不法な行為にまで及んだ場合は、相手を魔法と暴力で、ねじ伏せていたので、【黒の結社】に助けてもらうような必要はありませんでしたけれどね。
「あのね。元の【ウトピーア法皇国】が【魔力子反応炉】に繋いで奴隷としていた者達の中に、その【黒の結社】のメンバーを名乗る者がいるのよ。人数は3人だけだけれど」
リントは言いました。
「【黒の結社】は、ユーザー大消失と共に消滅したのでは?」
何故、私が【黒の結社】が消滅した、と考えたかと言うと、【黒の結社】は【魔人】のキャラ・メイクをしたユーザーが所属する組合だったからです。
【魔人】でない人種が【黒の結社】の組合員であるはずはありません。
また、ユーザーがキャラ・メイクした【魔人】以外……つまりNPCの【魔人】は人種の敵性個体しかいません。
例えば、かつてのトリニティのように遺跡の【徘徊者】や、【神格】の守護獣が守る4つの島に住む【魔人】達のように。
NPCの【魔人】は、人種の敵しかいない訳ですから、NPCの人種が【魔人】の互助組織に参画している意味もないと思います。
「それが……元の【ウトピーア法皇国】で行われた異端審問の裁判記録によると、間違いなく【黒の結社】に所属する異端者として有罪になって奴隷にされていたわ。どういう事かしら?」
リントは首を傾げました。
【ウトピーア法皇国】では、政治犯、思想犯、異教者、異端者……などは、奴隷にされていたのです。
【ウトピーア法皇国】では、彼らの支配階級が勝手にでっち上げた、実在しない全知全能神を信仰する一神教が唯一の宗教として存在していました。
そのインチキな一神教以外を信仰する人達が、全員、異教者・異端者と定義されてしまうので、世界の理上、正しい信仰である【リントヴルム】聖堂の信徒も異教・異端と見做されてしまうのですが……。
「わかりませんね。ただし、原則としてユーザーでない者が【黒の結社】の組合員である事はあり得ません。同名の他組織ではないのですか?」
「妾も、初め、そう思って直接会って話を聴いたのだけれど。間違いなく、ノヒトも知る件の【黒の結社】のようなのよね。ただし、【魔人】の相互の扶助を目的とした互助組織ではなくて、【魔人】を信仰する、一種の宗教のように変質しているようだけれど」
リントは、言います。
宗教に?
どうして、そんな事になるのでしょうか?
よく、わかりませんね。
「その【黒の結社】の組合員を名乗る者達は、反社会的な性質なのですか?もしも、そうなら、【魔界】に送ってしまえば良いのでは?」
「反社会的ではないわね。むしろ、良識的な振る舞いをしているわ。ただ、妾に祈る事は、頑なに拒否しているけれどね」
リントは苦笑いしました。
「どうしますか?」
「とりあえず……【黒の結社】の信仰を続けるのは構わない……と認めたわ。ただし、他者に布教したり、他者が信ずる宗教を否定したり批判しないように【契約】させたけれど。その【契約】を守り、犯罪や違法行為などを企図したりしない限り、【サントゥアリーオ】で庇護するつもりよ」
リントは言います。
あ、そう。
「わかりました。また何かあったら教えて下さいね」
「わかったわ」
リントは頷きました。
さてと、休憩は終わり。
私達は、81階層に続く階段を降りて行きました。
・・・
81階層〜90階層は、草原エリア。
ウルスラが【誘引の角笛】を吹き鳴らして、レジョーネの進撃が再開されました。
ソフィアとウルスラが中央……ファヴとリントが両翼……トリニティ、オラクル、ヴィクトーリア、ティファニー、ウィルヘルミナが中団支援……私が後方支援という盤石の陣形で、魔物を木っ端のように蹴散らしながら進撃します。
程なくして、私達は、90階層のボス部屋に到達しました。
・・・
90階層のボスは、【バジリスク】。
【眷属】として、9頭の【コカトリス】を率いています。
「ソフィア。【バジリスク】も【コカトリス】も【石化】を使いますが……ソフィアには、効きません。ファヴやリントも【抵抗】出来ます。トリニティだけは気を付けて下さい」
レジョーネは、頷きました。
ソフィアが【神竜砲】で、【バジリスク】の頭を吹き飛ばして瞬殺。
ファヴとリントも収束ブレスで【コカトリス】を各個撃破。
1頭だけ、守護竜トリオの前線をすり抜けて来た【コカトリス】がいました。
オラクルが、その【コカトリス】に対して大盾【アイギス】を使って、掟破りの、逆【石化】で無力化し、最後はトリニティが三又槍【トライデント】を投げ、突き刺して倒しました。
【宝箱】の中身は、【神蜜】と【コンティニュー・ストーン】が3つ。
もはや、90階層の【宝箱】から【神蜜】が出るのは確実なようですね。
レジョーネには、私を含めて【天運】持ちが4人もいました。
なので、確率上、最高の宝が毎回【宝箱】から出るのだと思います。
つまり、90階層は、【神蜜】が確定。
・・・
90階層の奥。
転移魔法陣部屋。
私達は、転移座標を設置しました。
「さあ、午前中は、ここまでにして、お昼ご飯を食べに行きましょう」
「「おーーっ!」」
ソフィアとウルスラが気勢を上げます。
私達は、カティサークに向かって【転移】しました。
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