第028話 ~父の服と二つのベッド~
「ユーキの世界では寝る前に歯を磨く習慣ある?」
「あるぞ。歯ブラシと歯磨き粉が一般的かな」
「私は電動歯ブラシ派!手磨きよりきれいになる気がするしね!」
「よかった、じゃぁ、皆で磨きに行きましょうか?」
俺たちは洗面所に向かい、三人並んで歯を磨く。
何か枝?にモシャモシャがついた、たわしみたいな物。
ルエルに言われなければ、絶対に口の中には入れないアイテムだ。
口をすすぎ、俺たちはさっきの部屋に向かっている。
「ユーキの服、サイズがあって良かったわ」
「でも、なんで男物あるんだ?出会ったときは男物は無いって言っていたような気が」
「確かに言ったわね。その服、今着ている服は私の父の服なの。ユーキがさっきまで来ていたのは旅人の服よ」
「ルエルのお父さんの服か。悪いな借りちゃって」
「そんな事無いわ。ずっとしまっていただけだから。」
「お兄ぃは着ることができれば何でもいいもんね!ファッションとか興味ないし!」
「愛、それは語弊だ。俺はファッションに興味が無いわけじゃない。おしゃれな服は不便なんだよ。仕事している時とか動きにくいし、バイクに乗る時も考えないといけないし」
「ふーーん。そういうことにしておきましょう!今度、服選んであげるよ!」
「遠慮しておく。自分の服位、自分で選ぶ」
そんな会話をしながらさっきまでいたテーブルに戻る。
「二人とも、明日は早朝の鐘で起きて、それから食事。少し話をしたら出かけましょう」
「お出かけー!どこ行くの?楽しみ!」
「明日詳しく話すわね。そろそろ深夜の鐘も鳴りそうだし、早く寝ましょう。明日も早いわ」
「で、どうやって寝るんだ?」
ベッドは二つ。ここには三人いる。
ドキドキしながら、ルエルの答えを待つ。
「ユーキ。私は自分の部屋で寝るわ。アイはさっきまで寝ていた両親のベッドを使って」
「俺は?」
「はい、これ」
ルエルは掛布団と枕を俺に渡す。
「ユーキ。どこで寝るか自分で考えて」
「お兄ぃ!私は大きいベッドで寝れるから、スペースあるよ」
「ユーキ。私の部屋には大きなカーペットがあるの。そこでよければ、同じ部屋で寝れるわ」
フラグか!これはよくあるフラグなのか!!!
もし、どちらかを選択したら、選択したルートになるやつか!
「さ、先に寝ていてくれ。俺はちょっと考え事があるから、もう少しここに居る」
「お兄ぃ。私は一緒に寝ても大丈夫だからね!」
「ユーキ。私も大丈夫よ。ユーキの事信じてるから」
「あぁ、ありがとう。さ、早く寝よう」
二人は二階に行き、それぞれの部屋に入って行った。
俺は考える。考える。かんがえる。かんがルエル。
この俺が、誰かと一緒に寝るだと。確かにベッドがいい!
でも、出来れば一人で寝たい!いや、二人でもいいんだけど、どっちかを選べって!
椅子に腰かけ。手元にある巾着を開き、中身をテーブルに出す。
テーブルには小さい魔石がたくさんある。
これは子供の魔石か?
天寿を全うした者の魔石と言っていたが、生きた期間に比例して大きくなるのだったら、この魔石はほとんど子供の物ではないのか?
襲われた集落。ゴブリンの持つ無色の魔石。ほんとにただ、人間が討伐に行ったのか?
もしかしたら、人間の生活をよくするために、あえてゴブリンと会話していない?
魔石を人間がほしいが為に?
懐から布にくるまったナイフを出す。
この異世界にきて念のためと思い、ルエルが投げたナイフの一本。
そこで、一本拝借したが、このナイフは歯止めがない。
良く切れそうな鋭いナイフだ。
このナイフで、俺さされそうになったんだよね?
今考えると、本気で怖いな・・・。
魔石を巾着に入れ、ナイフを布にくるみ再び懐に。
だんだん眠くなってくる。
どこで寝ようか
とりあえず、布団をかぶり、テーブルに枕を置き、顔をうずめる。
いい匂いがする。眠いな。
愛でもルエルでもどっちでもいい。
ベッドを貸してくれ・・・・




