日常に生きる
「ところで三上くんは今週末暇でしょうか?」
隣のクラスの地味で眼鏡、おさげ髪の委員長スタイル。
だけどよくよく見ると結構かわいい顔をしている、そんなごく普通の少女、逸見かなでさん。
「ああ、うん。お暇ですよ?逸見さん」
「ああ、それはよかったです!!すごくすごくよかったです!!ただ…」
「ただ?」
「あの、逸見さんじゃなくて、その…」
ここまで言われてようやく彼女が何を言いたいのか悟るボク。
「あっ、うん。そうだね。ゴメン。その…かなでさん」
「…はい」
控え目な自己主張がかわいいこの子は俗に言うボクの彼女である。
5月の某日。天気は晴れ。
これを世の人は五月晴れという。
そして、そんな明るい空の下、仲良く中庭でランチボックスを広げるボクら二人は、誰がどう見ても仲のいいカップルに見えるだろう。
「じゃあ、週末なんですけど、お買いもの付き合ってもらっていいですか?」
「…ああ、もちろん」
ボクはできる限りの笑顔で答えた。
「実は英語の単語帳がもう一冊ほしくて…」
「逸見さん…じゃない、かなでさん、十分英語できるじゃない。それに単語帳なら学校指定のやつもう持ってるでしょう?」
「ええ、持ってますけど…でも学校指定のものはイマイチ使いにくくて…しょっちゅう使うものですから、できればあうものをしっかり選んでおきたいんです」
「…真面目だね」
「…いえ、そういう性分ですので」
ボクはその言葉に対して否定も肯定もしない。
品行方正。学業優秀。運動能力も悪くなく、性格は見てのとおり穏やかで優しい。見た目だってさっきも言った通り十分かわいくてきれい。目の前女の子はそんな女の子だ。
なぜそんな子がボクの前に座っているのかわからない。
彼女がなぜボクを選んだのか?彼女がボクに何を望んでいるのか?いまだにわからない。
彼女はいつだって完璧を目指す。完璧とは何かと問われたら「彼女みたいな人じゃない?」とボクは答えるだろう。
「ねぇ?」
「はい?」
「頭、なでてあげようか?」
「…えっ?」
「なんかいっつもがんばってるから、その御褒美」
「あの、お気持ちはうれしいんですけど、他のみなさんがいらっしゃいますから…あの、後で…」
「今、なでたいので却下です~」
「へっ!?あの、わひゃぁっ~!!」
わしわし頭をなでてみる。
「あのぉ…恥ずかしいので…」
「…嫌?」
「…嫌、ではないです」
「では、継続しま~す」
「そのぉ…はうぅう…」
彼女は上目づかいのまま、顔を赤くしてこちらを見上げている。
『完璧』
今の彼女は、そんな状態からは程遠い。
完璧を目指してしまう彼女を、ボクは完全に理解しているとは言い難い。
彼女がなぜ完璧を目指すのか、彼女がなぜボクを選んだのか、その辺に理由があることもなんとなくわかる。だからこそ、ボクは、ボクといる間だけは彼女に、逸見かなでというボクの彼女に「普通」の少女でいてほしいのだ。




