ep.3 笑って
昼休み。
本当は星のクラスに行きたかったのに、たどり着く前に止められてしまった。
「三日月さん……体調悪そうだし、休んだら?」
瞬時に私は、首を振った。
それこそ、無意識のうちに。
「ほら、如月先輩ならうちらが呼ぶからさ?」
そう言って笑う、名前も知らぬ同級生たち。
笑っているはずなのに、どこか、彼らのような色が見えた。
「嫌、星は自分で呼ぶから……どいて」
自分でもびっくりするほど低い声が出た。
「わかったわかった。でもほんと顔色悪いからさ、保健室行きなよ」
その言葉は感情がなく、ただ薄っぺらなだけのように思えた。
「お気遣いありがとう。けど大丈夫だよ、ただの寝不足だから」
そう言ってから、最近あまり寝ていなかったことを思い出す。
きっと彼女らには、強がりに見えたのだろう。
「そう。じゃあまたね、三日月さん」
「うん、またね」
そう言った途端に、壁に手をついた。
「あれ?可笑しいなぁ」
そう言って、しばらくの間壁に手をつきながら歩いていると、良く見知った顔が見えた。
「星!」
「小夜。いつもより遅いから心配したよ」
星が、心配してくれた。
それだけで、先程のことなんて、すっかり忘れてしまっていた。
「ごめんね、友達と話してたらいつもの時間過ぎちゃってて」
今日も、平気そうに見えるよう作った顔で、星に嘘を吐く。
最もそれは、近くに私達以外のひとがいるからなのだけれど。
「そっか」
そう言って、星はわたあめのように柔らかい笑みを浮かべる。
話題がなかったからというのもあり、私は今日いちばん星に伝えたかったことを話した。
「ごめん、星。今日掃除当番だから放課後ちょっとだけ待ってて」
「わかった。図書館で待ってるから、終わったら来て」
その言葉に、頷きひとつを返してから、図書館に向かおうとした。
けれど、時間的に往復だけになってしまう。
そう思ったのは星も同じようで、私を教室まで送りながら話してくれた。
「今日3時間とかしか寝てなくてさ、めっちゃ眠いんだよね〜」
「3時に寝たの?心配だよ」
「んー、大丈夫大丈夫!ここまでついてきてくれてありがと、星。じゃあまた、放課後に!」
その言葉に星は、こちらに背を向けたまま、ひらひらと手を振っていた。
笑えない。by作者




