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天界物語~天使たちの舞踏会  作者: 髙橋涼羽


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第58話

 待ちに待った、舞踏会当日――。

 一年に一度しか夜が訪れない天界の花園の空には、虹色の雲に囲まれた満月が美しく妖しい輝きを放っていた。


「ハニエルお姉様が戻ってらしてるわ」

 月を司る美しい大天使ハニエルを、ウリエルは時々「お姉様」と呼び慕っていた。

 その美しい満月を見上げていたウリエルに、リリスが呼びに来た。

「ウリエルー! ちょっといらっしゃい!」

 心踊らせ、ウリエルはリリスの下へ駆けて行った。

「ハア~イ!」


「さあ、お嬢様どうぞ!」

 リリスは彼女を寝室へと促した。

 窓辺に飾られた舞踏会用の衣装を見たウリエルは、その大胆なデザインに驚き、そして嬉しさのあまり思わず感嘆のため息を吐いた。

 彼女は胸に手を当て「なんて素敵なの! ああ、リリちゃん……私なんて言っていいか……」と、うっとりと見惚れてしまった。


 窓辺から差し込む月光に照らされたそのドレスは、真珠のように輝き、見る角度によってはほんの少し色が変わるようだ。

 ウリエルの美しいデコルテを際立たせる為、ベアトップのタイプ。基本胸元はハートカットだが、大胆に深めに大きくカットされている。右脇はシースルーになっており、腰までスリットが入っている。

 スリットの辺りにはウリエルの象徴とも言うべき太陽のモチーフと、白薔薇の飾りが複雑に施されていた。

 だが、一番目を惹いたのは裾であった。床まである裾は、下にいくにしたがい透けていき、それはふんわりと幾重にも花びらのようになっていた。


 ウリエルはその美しい衣装に近づき、細かい刺繍にも目を輝かせた。

「すごい……。でもリリー、ちょっと大胆すぎない?」

 大きく開いた胸元に、ウリエルはドキドキした。

「今年のテーマは”可愛らしさ”と、そして……”エロチック”よ」

 リリスは”エロチック”の所で、ウリエルの耳元で妖しく囁いた。

「んもう~! リリちゃんったら、やあね!」

 こう言いながらも嬉しそうにはしゃぐウリエル。

「あなたせっかく綺麗な胸してるんだから、それを隠すなんてもったいないわよ」

「そう~?」

 ウリエルは頬を染め、隠すように両手を胸に当てた。


「さあ、最後の仕上げよ。見て!」

 そう言うとリリスは、数枚の羽根のような物を取り出した。それはウリエルの翼のように、オレンジがかった黄金色だった。まさに羽根のように、ふわふわしている。

「リリちゃん、それは? すごく綺麗」

「これはね、あたしが改良した”太陽の翼”という花なの。これをね――」

 リリスは”太陽の翼”の花びら数枚を、胸元に飾り付けた。それは見事な出来映えで、まさに天使の為のドレスだった。


「はあ~……素敵!」

 ウリエルは目を細め、うっとりとした。

「この”太陽の翼”はね、あなたの翼をモデルに作ってみたの。喜んでもらえて嬉しいわ」

「リリちゃん……」

 ウリエルは嬉しさのあまり、彼女に抱きついた。

「こらこら! さあ、早く着替えましょ!」


 リリスの花園に、満月の光が益々強く降り注ぐ。

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