プロローグ
ここは天界と地獄界の中間、全ての地獄を支配と管理する場所である。
頂上と周囲は地上の夜明け前のような淡いコバルトブルーに染まり、広い廊下が真っ直ぐに伸びている。
その廊下の両側には巨大な円柱が並んでいた。あまりにも巨大過ぎて、柱のその”てっぺん”が見えないくらいだ。
廊下を進むと、奥には黄金に装飾された両開きの扉が見えてきた。地獄管理界の四大長官――――最長官であるルシフェルの部屋だ。
すると、その部屋近くの柱に人影が……。
その人影は何やら落ち着かない様子で、先程からソワソワしていた。
地獄管理界の四大長官の一人、アスタロトだ。
(ウリエル……そろそろ来る頃だよな……)
彼は四大天使の一人ウリエルが、報告書である巻物を届けにルシフェルの下にやって来るのを待っているのだ。
ウリエルは以前の地獄界の管理者であったが、今はその権利がルシフェルに移っていた。
だが、ルシフェルの助言者という形で、時々こうして報告書を届けに来るのだが。
「今年こそは……今年こそは……」
ブツブツ言いながら、彼はうろうろ落ち着き無い。意味もなく柱に触れたり、撫でたりなんかしている。
「早く彼女に申込まないと!」
彼は焦りを抑えきれない。それは、年に一度の舞踏会の為である。
憧れのウリエルにパートナーになってもらう為に、ずっと待ち伏せしていたのだが。
(誰にも渡すものか!)
要領が悪いのか、なぜかしら毎年チャンスを逃しているアスタロト。
そんな彼は、いつも彼女に「デートしよ!」と声をかけては断られ続けていた。
「嫌よ!」
「一度くらいいいだろ?」
「い・や・よ! べーっだ!」と、舌を突き出すウリエル。
(ま、そんな顔も可愛いけどな……)
毎度の事ながら、こんな風景を見せられていた周囲は、何故彼がパートナー申し込みを躊躇しているのか不思議でならなかった。
だが、今年は違う!
(去年はアズラーイールの奴だったし、一昨年はラグエルの奴だろ? その前の年は……はて? 誰だったっけ?)
「くそっ! あいつら上手いことやりやがって」
自分の要領の悪さを棚に上げて文句を言うアスタロトだった。




