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「ルシアンよ!」と呼んだら乙女ゲームが崩壊しました。〜メリバ転生した大天使は最強騎士で全ルート救済する〜  作者: 久茉莉himari


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46/50

【46】当て馬ルート、分身の涙で友情で再建中。〜軍師の敵は、食いしん坊ヒロインだった件〜

「あ・の・ね!」


ロクシーが警棒で自分の手のひらをトントンと叩きながら、鋭い声を出す。


「お腹ペコペコのアンジュちゃんを、今、分身と入れ替えたらどうなる?

自宅に戻って、ルシアンの料理をガッツリ食べるよね?


忘れたの?

食いしん坊だよ?アンジュちゃんは!

そうなると……」


一拍の間。


無表情なルシアンに、なぜか一人だけ冷や汗をダラダラ流しているルチアーノ。


ロクシーがジロリとルシアンを見る。


その視線の厳しさに、ルチアーノがその場でピョンと跳ねた。


「"酷い目に遭った凛花ちゃん"というゲームの設定が崩れる!


アンジュちゃんは、あの鈴木とかいう生徒のことを何とも思ってないし、何なら忘れちゃってるだろうし、実害も無かった。


でも、ゲームの"凛花ちゃん"は違う。

ここで、心に傷を負うの!

そして、ハルを想って涙する……」


ルチアーノが即座に真紅のシルクのハンカチを噛む。


「正にアオハルのロマン……!ラブ❤️」


ロクシーは無言でルチアーノに肘鉄を食らわすと、「ぐわっ……」と呻いているルチアーノを無視して続ける。


「でも、助けてくれた颯真くんだけが、凛花ちゃんの理解者になる!

そして、二人の距離が近づき、恋に発展する筈だったの!

それもこれも全部、無くなった!

だからね――」


ロクシーの軍師の目がギラリと光る。


「友情でいいから、せめて、この機会に颯真くんがアンジュちゃんに同情してくれないと!


ごはんバクバク食べてる女の子に同情しますか?

ハイ!しない!


お腹いっぱいで、ベッドで横になってるだけで良いから!」


ルシアンが小さく頷く。


「理にかなっているな。


では、アンジュさまのお食事をここで用意して、召し上がって頂こう。

失礼」


そうして、ルシアンが音もなく理事長室を出て行く。


途端に、ロクシーがガクッとソファに座る。


さっと強炭酸水を入れたシャンパンフルートを渡すルチアーノ。


「ロクシー先生!お疲れ様です!」


ルチアーノの言葉に、ロクシーがギロッとルチアーノを見ると、シャンパンフルートを受け取り、一気に飲み干す。


そして、低い声で言った。


「じゃあ、次はあんたよ。

アンジュちゃんの分身を長く使う必要性がある以上、あんたの分身は極力使わないようにしないと!

次の脚本を覚えること!」


ルチアーノはすっくと立ち上がり、

ロクシーに向かって敬礼すると言った。


「了解でありますッ!!」




そして、満腹になったアンジュを分身と入れ替えるのは、ルシアンの役目になった。


その間、アンジュの分身は病院へ運ばれ、検査を受けていた。


もちろん、かすり傷一つ無った。


まず、アンジュの母親が病院に駆け付け、その後に担任の松坂と警察官がやって来た。


颯真は警察の事情聴取以外は、ずっとアンジュの分身に付き添っていて、アンジュの母親は、颯真に何度もお礼を言っていた。


それから、校長と教頭も病院にやって来た。


二人はアンジュの母親に、現時点で解っていることを説明し、謝罪した。


後日、アンジュに暴行を加えようとした生徒の処分の報告と、正式な謝罪に伺いますと言って、校長と教頭が去る。


それに続くように、篠崎と松坂も母親に挨拶をして、帰って行った。


颯真も帰ろうとすると、

アンジュの分身が「待て」と呼び止める。


それをパソコンで観ている、ロクシーの拳に力が入る。


颯真が「どうした?」とやさしく訊くと、

アンジュの分身は「済まぬ」と言って泣き出した。


パソコンに向かって「……良し!」とロクシーが言うと、画面の中の颯真が言った。


「アンジュ?どうしたんだよ?」


「……颯真よ……大会は……?」


颯真は、「馬鹿だな。そんなこと考えてたのか」と笑って、アンジュの分身の金色の髪を撫でた。


イレイナがホホホと笑う。


「分身を作っておいて良かったわね〜。

これが本人だったら、ルシアンが雷と共に現れるわ!それも良い画だけど❤️」


「イレイナは黙ってて!!」


ロクシーはパソコン画面から目を離さず、鋭く言い放つ。


颯真のやさしい声は続く。


「大会なんてこれから何度でもある。

アンジュを助ける方が何十倍も大切だ。


酷い目に遭ったけど、

ルシアンくんのお陰で怪我をしてなくて良かった」


ロクシーがパソコン画面を見たまま舌打ちする。


「出たよ……!!ルシアンへの尊敬!!」


そして、アンジュの分身が、

本人なら絶対に出さないであろう、か細い声で言った。


「……そうま……」


「明日、学校の後、アンジュさえ良ければお見舞いに行くよ。

今日はもう何も考えずゆっくりした方が良い」


アンジュの分身はコクンと頷くと、「待ってる」と小さな声で言った。


ロクシーはそこまで観ると、ハーッと安堵の息を吐いた。




病院での一連のやり取りが終わり、アンジュの分身が母親と自宅へ戻る頃――


ルシアンは一足先にアンジュの自宅へ戻り、

アンジュの部屋で分身を待っていた。


アンジュ本人は、自分の部屋のソファに座っている。


そのソファは、アンジュのために用意されたカッシーナの一人掛けのアイボリーカラーのソファで、一万ドル以上はするものだ。


アンジュが半歩後ろに立つルシアンを振り返る。


「ルシアンよ。いつまでこうしておればいいのだ?」


ルシアンが0.21秒でアンジュの前に跪く。


「アンジュさま。もう少々のご辛抱を。

アンジュさまの分身が戻って来たら、お休み下さい」


「シャワーは?」


小首を傾げるアンジュに、

ルシアンが前屈のように下を向く。


一瞬の間の後――


「シャシャシャシャワーは……必要ございません!!

アンジュさまは、天界の"聖なる浄化の布"で浄化されております!」


「そうであった!」


にこりと微笑むアンジュは知らない。


最強大天使ルシアンの顔が、

『シャワー』の一言で火山のマグマ色になっていることを。


そして、その時――


アンジュの分身が母親に支えられながら、部屋に入って来た。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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