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「ルシアンよ!」と呼んだら乙女ゲームが崩壊しました。〜メリバ転生した大天使は最強騎士で全ルート救済する〜  作者: 久茉莉himari


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【23】密室の放課後イベント、強制発生。〜ベランダ会談と、繊細過ぎる香水工場〜

そして遥斗は、寝る前にアンジュから貰った封筒をリュックから出した。


勉強机に封筒を静かに置く。


封筒は天使の羽根のシールで止められていて、宛名は無い。


そっとシールを剥がす。


その中からは――

桜の花びらが、さらさらと出てきた。


遥斗の机に広がる、薄いピンクの花びら。


少し、色褪せていて――

それが本当の桜の花びらだと実感させてくれる。


「……アンジュちゃん……ありがとう……」


遥斗は蛍光灯に照らされる花びらに、一人、呟く。


――その桜の花びらの封筒は――

ロクシーの指示でルシアンが用意して、

アンジュから遥斗へ渡されたことも知らずに。




翌日。


遥斗は弾んだ気分で教室にいた。


翔太がルチアーノに貰った花束を母親に渡し、

それを花瓶に飾った画像を見せて、

ルチアーノが感動の余り側転しながら、

「中野……!!流石だ☆リリカール❤️❤️❤️」

とはしゃいでいても気にならない。


アンジュは変わらず、美しい笑みを浮かべ、授業に集中している。


そんな昼休み――


アンジュが昼食を終えると、

ルチアーノが意味ありげに、

「アンジュちゃん……ちょっとベランダでお話したい……!」

と言い出した。


アンジュは「よかろう!」と返事をすると、

ルチアーノと共にベランダに向かう。


遥斗は嫌な予感がした。


(盗み聞きなんてルチアーノさんに悪いけど……ちょっとだけ……!)


そして遥斗が、

ベランダの傍で聞き耳を立てていると、

ルチアーノの話し声がした。


「アンジュちゃんに、折り入って頼みたいことがありまして!」


「何だ?」

と訊くアンジュは普段通り無邪気だ。


「実は俺様……そろそろ部活動を始めようかな、と!

リリカルな感性が爆発しそうなのであります……ッ!」


遥斗が心の中で叫ぶ。


(リリカルな感性が爆発……!?

意味分かんないよ!!

……ルチアーノくん、変わった!?)


「……ほう!

素晴らしいな!」


またもや、心の中で叫ぶ遥斗。


(……アンジュちゃん!

それって素晴らしいの!?)


「そ・こ・で!

アンジュちゃんに、俺様のモデルになって頂きたいのでありますッ!!」


「モデルとは?」


一拍置いて、

ルチアーノが、

どこぞの大物アーティストのインタビューのように、

高校のベランダを"俺色"に変えていく。


「俺様……そう、俺様に……降ってきたんすよね……

美を体現したい、その気持ち……そして、その方法が……。


アンジュちゃんには……

この俺様の美を創作するミューズになってもらいたく……!

どうか俺様のモデルとなって貰えませんか?お姫様☆」


アンジュの高らかな声がする。


「美を創作したい!

なるほど!

芸術とは尊きもの!

やろう!」


「わーい☆

アンジュちゃん!

ありがとう❤️❤️❤️


じゃあ、今日の放課後に、美術室の準備室で!

俺様の才能に、顧問の先生が貸し切りにしてくれたんだyo☆」


「ルチアーノ、良かったな!」


キャッキャとはしゃいでいる二人。


遥斗はすぐさまスマホを取り出すと、

美術部に所属している友達にメッセージを送った。




そうして放課後になった。


遥斗はホームルームが終わると、

無言でさっさと教室から去って行った。


翔太は

「ハル、何か用事かな?」

と言うと、

ルチアーノとアンジュに向かってニカッと笑い、

「俺も部活に行くね!じゃあねー!」

と言って教室を出て行く。


ルチアーノは隣のアンジュにコソッと言った。


「では、一時間後に美術部の準備室で☆」


「うむ!」とアンジュが輝くような笑顔で頷く。


そして、一人になったアンジュは教室で宿題をしながら、

一時間を過ごした。


丁度、ルチアーノとの約束の10分前になったので、

美術室の準備室へと向かう。


ドアの前にルチアーノが立っていて、

出迎えてくれた。


「アンジュちゃん!ありがとう!

さあ、どうぞ☆」


ルチアーノがドアを開き、

アンジュが中に入ると、

ルチアーノがドアの鍵を掛ける音が小さく響いた。




準備室の中は――

香水のミニ製作工場になっていた。


アンジュが青い瞳を見開く。


「……なんと!

ルチアーノの転生した神谷伊織は香水作りの天才だったのか!?」


ルチアーノがふわっふわっふわっと三回髪をかき上げる。


「ノンノンノン!

神谷伊織は油絵!

だが、俺様は地獄の王にして、香水の魔術師☆

才能を生かすなら香水、でしょ!?でしょ!?」


アンジュが感嘆の声を上げる。


「なるほど……!

自分の才能を生かすのは、良いことだ!


それにしても……

この繊細な器具を、たった一時間で、一人で組み上げたのか!?」


「それはね〜♪」

とルチアーノがご機嫌に話し始めた時だった。


ガチャガチャとドアを開けようとする音がした。


ドアが開かないと分かると、

ドンドンとドアを叩いている。


「なんだよ……もう!!」


ルチアーノがわざとらしくプンプンしながら、

ドアに近付いて鍵を開けようとすると、

ガンッとドアを蹴る音が響いた。


「ハイハイ、今開けまーす♪」


ルチアーノが鍵を開けて、

ドアを少し開けた途端、

黒い影が飛び込んで来た。


影は一直線にアンジュに近付く。


それは、遥斗だった。


ルチアーノが鬼の形相になり、

遥斗を怒鳴り付ける。


「静かにしろッ!!

俺様の繊細な香水工場が崩れるだろ!!」


遥斗も即座に怒鳴り返す。


「俺は知ってんだよ!

部活で石像のヌードを鉛筆で描くっていうのをやってんだろ!?


でも、アンタは所詮石像は石像だって言って、

リアリティーが無くてつまんないからって、

本物のヌードを描きたいって言ってたんだろ!?


それで、天才のアンタに

顧問の阪下先生がノリノリで美術部の準備室を用意した!!

こんなもの、アンジュちゃんを油断させる罠だ!」


そして遥斗がアンジュの通学バッグを抱え、

アンジュの細い手首を掴むと言った。


「アンジュちゃん、帰ろう」


次の瞬間――


選択肢:

①「……うん……!」

②「……ハル……!とぅしたの!?」

③「罠って……何が?」


理事長室でロクシーがパソコンに向かって叫ぶ。


「選択肢、キターーー!!

ルチアーノ!良くやった!!

アンジュちゃん!もう、どれでも良いからね!!」


その刹那――

風が吹く筈も無い準備室の中で、

アンジュの金色の髪が、なぜか暴風で煽られた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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