1.
「愛せるわけないだろう。」
目の前の少年は、うつむきがちに呟いた。長すぎる前髪で表情はみえない。端から見れば、その様子は痛々しいとも感じられるだろう。
その呟きを受けて、少年を見つめる娘は優しく微笑みかける。
「いいえ、殿下。わたくしは愛せますわ。」
そして、少し赤らめた頬を庇うように白銀の髪を耳にかける。
「愛しています、ロイ殿下。」
フェルーナ公爵の一人娘。センシス王国第二王子──呪われた瞳の嫌われ者、ロイの婚約者。王国一のハズレくじ令嬢。それがわたくし──。
だなんてとんでもない!!!
寧ろ、わたくし毎日とても幸せです!
わたくしはロイ殿下をお慕いしております。呪われていると言われるオッドアイの瞳、大好物です!!!
今だって、わたくしの告白で殿下は少し顔を上げてくださった。
長い前髪の隙間から見える黄金と漆黒の瞳、たまりませんっ!
「メディナ」
はい!わたくしの天使!!
「メディナ、聞いているのか?」
「え、ええ、ええ。何でしょうか、殿下。」
ロイ殿下は間違いなくわたくしをまっすぐ見てくださっているわ…!殿下ったら瞳を気にして、いつも下を見ているから、こんな眼差し刺激的すぎるわ…!
「僕が怖くないの──」
「怖くありませんわっ!そんなこと絶対にありえません!」
言葉を遮るのは無礼だが、つい全力否定してしまった。本当にわたくしはこの黒髪の天使に癒されたくて、愛し愛でたいのです…!
いつもきゅっと結ばれた唇が少し緩んだ気がした。
私の記憶があるのはここまで。