一度調教が必要だろうか
じゃれる顔は可愛らしくも愛らしい。
幾度となく揺れる金髪が見慣れているのに美しい。
「…引っ付かないでって」
「えへへー」
何がそんなに嬉しいのか異常にスキンシップが激しいのは宝城香蓮だった。
ホントお気楽な奴ね。
「凛が悪いんじゃない。私を放っておいて冴えないおバカさんとずっと一緒にいるんだもん」
一応友達だし修学旅行だしでかまって貰いたかったんだろうけど私からしてみたら心外以外の何ものでもない。だって今日までずっとかまってたんだから。
「もしかして盗撮の話し? 凛、それ本気で言ってたの?」
「今更っ!? あのねえアンタの為に私たちがどれだけ動いてあげたと思ってるのよ…」
「そ、そんなの知らないわよ! 冗談だと思ってたんだから…」
「あっそ。なら全部お話しましょうか」
香蓮に今日までの流れを説明する。
顔が赤くなったり蒼くなったりと忙しい信号機となっていたが最終的には頬をピンク色に染めていた。
「ふ、ふんっ! べ…別に頼んでなんかいないんだからね!!」
「そ。ならいいわ」
「ごーめーんーなーさーいー! 冗談、冗談よ!! お願いだから見捨てないで!!」
「うざいなあ…」
泣きながら腕に抱き着いてくる香蓮。さっきから何がしたいんだコイツは。つーかこのタイミングで冗談なんか言うなよ。
「だってだって! ホントに盗撮されるだなんて思ってもみなかったんですもの!」
「んまあ…言われてみればそうかもね」
当たり前の話しだが盗撮とは立派な犯罪である。
それはこの日本特有の刑法ではなくどこへ行っても一緒である。当然、香蓮が元居た国でも盗撮は禁止となっている。
「盗撮するだなんて最低よね! 人間のする事じゃないわ」
「その通りだけどお前が言うなお前が」
プンスカとお怒りだけどアンタ盗聴してたわよね?
どっちもどっちだと思うけど。
「全然違うわよ。失礼しちゃうわ」
「どう違うの? 同じ犯罪よ」
「私の盗聴には愛があるもの。すべてが許されるわ」
「どんな理屈だ…。あーそういえば聞き忘れてたけどアンタ部屋のシャワーでお風呂済ます気ない? そうすれば盗撮の心配も…」
「ない」
きっぱりと言い切られる。盗撮されるって聞いてましたか?
「聞いてたけど凛と一緒のお風呂を邪魔されるわけにはいかないわ」
「いや香蓮…クラス違うからアンタと一緒に入ることは多分ないわよ」
「えーーっ!!?」
驚きを隠せず目を剥く香蓮。顔こわっ…。
西高には女子だけでも百五十名はいる。当然、旅館の温泉にその数が入れるわけもなく修学旅行時はクラスごとに時間が定められるのは最早必然だった。
「盗撮のターゲットは香蓮だけどもちろん盗撮するような奴は捕まえるわ。私だって修学旅行楽しみたいし。だから…」
「いや…ちょっと待って…じゃあ逆に良いんじゃない……?」
ニヤリと笑う悪魔の金髪。
こういう顔をする時は大抵ろくでもないことを考えてるもんだ。
「じゃあ尚更一緒に入りましょ、凛」
「はあっ!? アンタ何いってんのよ!」
「なにって…だってわたしの事が心配なんでしょ? だったら一緒に入って守ってもらわないと…ね?❤」
うっとり恍惚の表情で思いを馳せる。ダメだこいつ…いったいどっちの味方なんだ。
「もちろん凛よ。でもそれ以上に凛と一緒にいたいのよ。それに一人くらい違うクラスの子が混じってたってバレやしないわ。じゃあ向こうで会いましょ。よろしく~」
「ちょっ…香蓮!」
ひらひら~と手を振るとクラスの列へと消えていく。
返事を聞かずに確定させる為だろうけどなかなか知恵がついてきている。ここは一度調教が必要だろうか。
「はあ…面倒くさ…」
いや調教が必要なのは多分わたしだ。
だってなんだかんだで、きっと香蓮の為に動いてしまうのだから。
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