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ロイヤルズと代理人の青年?!  作者: siro


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ジークハルトはフェルマータを描く

 牢屋の中は真っ暗だった。上から空気穴のように細長い穴が空いているだけで、カビ臭く、居るだけで生きる気力を奪っていくような場所だ。

 痛む手を眺めながら、ジークハルトは小さくため息をついた。自分が犯した罪の重さに、なぜ成功するなんて思ったのか、その浅はかさに自嘲した。同じ平民だと思っていたカールが、あまりにも貴公子のように入って来たことに焦ったのかもしれない、まるで長年の友達のようにふざけて、そして自分よりもしっかりとした地位を持っていたことにも。でも彼の体を知って、今はバカなことをしたと思っていた。

きっと、雇い主は、彼が彼女だと知っていたんだ。

 女性が魔力を扱えるのは貴重だ、魔力を持つ女性と男性の間の子供は強い魔力の子供が生まれる、今では魔力を持つ女性はとても少ない。魔法使いの家系は、嫁として喉から手が出るほど欲しいと言われている。拐おうとするほどに・・・。



どのくらい時間がたったのかわからないが、誰かがまた牢屋に入れられた。わめき立てながら、無実だと繰り返し言う声を聞いて、ジークハルトは思わず笑ってしまった。


「あはっははは!!!俺をそそのかした奴らの声が聞こえる。」


「何を言ってる!!!わしは知らんぞお前なんぞ!!」


「うるさい!!静かにしろ!!囚人ども!!」

看守が長い棒を持って、喚く男を黙らせた。

その足音はこちらに近づき、止まった。


「おい、お前。」

顔をあげるも、暗闇の中人の輪郭がかすかにわかるくらいで、顔はわからなかった。

「あの男の声を知っているのか?」

「あぁ、俺に代理人の男を攫うように言ってきた男の横にいたのはあいつだ、ラグートとか名乗ってた商人の男でそいつが俺をある貴族に合わせたんだ。それから坂を転がり落ちるように僕の手は汚れたんだよ」

そう言うと、看守は無言で去って行った。


うとうとしている間に、食事の時間になっていた。うるさく鉄格子を叩きながら、食事が入れられる。ふと、牢屋の中の気配が減ってることに気づいたが、それよりもまずい食事だ。



今までと雲泥の差の生活。想像していたよりもまだマシだっと思いながら、いつのまにか日課になっていた光を目で追っていた。

 闇の中に光が差し込んできた。どうやらもう朝になるようだ。小さな光が少しずつ広がっていくのを眺めながら、そういえば朝はいつも、甘美なメロデイで優しく、繊細な曲が似合う、頭の中でメロディが流れ、指が勝手に動いていく。いつも、あのサロンに行って、みんなが来るまでひたすら自分の好きな曲を弾き続ける。ハイリンヒが静かに入ってくると、いつもソファに腰掛けてじーっと耳をすませて聞いているのを感じながら、時々曲のリクエスをされて・・・。


そんな日はもう来ない、自分で壊してしまったのだから。


 足音がコツコツと近づいてくる、石壁に寄りかかりながら、漏れている光をぼーっと眺めて居たジークハルトの前でその足音は止まった。


「やぁ、ジークハルト」

その声に振り返れば、ランプを手に持って佇むハイリンヒがいた。


「・・・どうしてきたの?」


「朝は、やっぱり君の顔をみないとね・・・友達だからかな」

そう言いながら、ランプを足元に起き。どこかから木の椅子を持ってきて、鉄格子の向かい側に座った。


「裏切ったのに?」


「友達って喧嘩しても仲直りするのが友達だろ?」


「・・・」


「なぁ・・・俺の友達は、嫌だった?」


「・・・別に」


「・・・俺は、嬉しかったよ。ジークハルト。君と友達になれて。勝手な思い込みかもしれないけど、君のおかげで外の世界を知れたし、自分でなんでも出来ると思っていたことは、間違いだったって気づかせてくれた。大きな声で笑い合うのも知ったし、ふざけたり、脱走したり。いろんな事を君は教えてくれた。小さい頃の僕は、傲慢だったと思う。それに気づかせてくれたのは君だ。」


 僕はそんな綺麗な人間じゃない。ジークハルトは心の中で叫んだ。そうだ、もう彼とは会えないんだ、だったら全て吐き出してしまえばいいとすら思った。

「・・・僕は・・・傲慢になったよ」


「・・・」


「王子の友達っていうステータスが持てて。周りの目が一気に変わった。」


「・・・」


「神童って言われてた頃の比じゃなかった。街中では女の子に声をかけられる、商人からはいろんなものを融通してくれるようになったし、両親は大喜びだった。しかも、大きくなれば貴族の女性からもアプローチされるし、婚約話まできた。僕の世界も一変した。でも、同時に、僕と君達とでは住む世界が違うんだってますます思いしった。」


「そっか・・・・」


「僕は、辛くなった。・・・貴族じゃない自分に。まるで真似事でしかいられない・・・道化師みたいな自分に!!そして気づいたんだ、君の気分次第で、僕への対応は変わるんだ!!婚約話まできたのも、結局君がカールを連れてきてお気に入りにした途端に!・・・どうして、カールのほうがいいとか言われなきゃいけないんだ!!」


「・・・」


「どうして!!!君達は王子なんだよ!!どうして!僕と違うんだよ!!!」


「そうだね。俺が・・・王子で無くなるときは、首が飛ぶときだ」


「っ?!」


「ごめん。・・・そしてありがとう。友達になってくれて」


離れていく足音に、ジークハルトは泣きながら言った。


「僕は・・・・君とずっと友達で居たかった。こんな感情知らないままで居たかったんだ。」


その言葉にハイリンヒの足は止まった。嗚咽をもらすジークハルトは、辛そうに吐き出した。


「昔に戻りたいよ・・・」


その言葉に、ハイリンヒは子供の頃、ただ純粋に遊んでいた頃を一瞬思い出し、目を閉じた。そして小さく答えて、また歩き始めた。

「・・・そうだな」




薄暗い牢屋から出れば、一気に光が差し込み手で影を作った。あまりの眩しさに、先ほどのことは悪い夢のように感じる。


「気は済みましたか?」

フィリップが壁に寄りかかりながら、牢屋から出てきたハイリンヒに聞いてきた。

「・・・うん。」


「仲直りはできましたか?」


その問いに肩をすくめてハイリンヒは答えました。

「どうだろうね。聞こえてたんだろう?」


「まぁー少しだけ」


「父上がさ、大人になれっていうんだ。・・・俺は大人になれたかな?」


「さぁ、どうでしょうね。うちの兄は、未だに子供っぽいですけど、年齢的には大人で、そして結婚もして子供もできて居る。」


「・・・」


「まぁー哲学ですよね〜。あまり思い悩みすぎると禿げますよ」

フィリップはいきなりそういうと、ハイリンヒの頭を乱雑に撫でた。

「ちょっ!!おい、やめろ!」


「あははは、鳥の巣みたいですよ。」

ひとしきり笑ったあと、フィリップはハイリンヒの肩を組んで、小声で囁きました。

「・・・ジークハルトは死刑にはならないそうですよ。カールは代理人といっても、平民ということで、罪が軽くなったそうです。といっても、鉱山で5年間の重労働させられるそうです。」


「5年か・・・」


「いつでも付き合いますよ」


「ありがとう、フィリップ」


「どういたしまして。それと犯人ですが、実行犯の貴族と商人までしか捕えることしかできなかったそうです。その黒幕まではさっぱりとか。」


「そうか・・・」


「ジェームズとレーオンハルトが怒り狂ってましたよ。・・・ジークハルトを唆したのは貴族だそうですよ。」


「なるほど・・・はぁー、いくか」

顔を引き締めながらハイリンヒが言えば、フィリップはうなづいた。




ばたついた王宮は、事件から2週間後にやっと落ち着いた。犯人たちは捕らえられ、それ相応の罰が下ったのだ。みんなサロンに集まり、今朝届けられた新聞を回し読みしていた。そのほかにもハイリンヒとジェームズが教えてくれる内容にカールは目を見開いて驚いたりしている。

「ヴァルデ子爵?」

カールは初めて聞く子爵の名に首をかしげた。

「そう、国外から来た貴族でね。まさか、シュバイツ王国とつながりを持っている商人と繋がってたそうだよ。」

レーオンハルトが疲れたように言った。

「さすがレオ!」

そう褒めたのはハイリンヒだ。

「もう僕は疲れた、向こうにも僕の正体ばれたし。街中を逃走とかもう二度としたくない!」

「あはははは」

ハイリンヒは笑うだけで答えなかった。

そして、カールは今朝届いた新聞を開いてみた。新聞にはでかでかと、王子を狙った貴族としてその名が乗せられ、同じように商人の名も載っていた。


「なんだか、あっけないな」

カールが思わず呟けば。ジェームズは肩をすくめて答えた。

「そんなもんさ。」


「これで、僕たちの日常は戻るの?」

ペーターが聞けば、ハイリンヒがうなづいた。

「もちろん。俺としてはみんなが此処にいてくれて楽しいけどな!」


「嫌だよ。可愛いご令嬢と会えないじゃないか」

レーオンハルトが言えば、ペーターも同じようにうなづいた。

「いや、会えるだろ?これからは」

「どうでしょうね?王妃様は、むしろ嬉々として僕たちを巻き込んで授業を増やされるのでは?」

フィリップの言葉にハイリンヒは顔を引きつらせた。


「それに、王妃様主催のお茶会に強制参加されそうだよね」

そうカールが言えば、みな口々に家に帰ろうと言いました。


「ひどいぞ!俺の母上に対して」

ハイリンヒが一応怒って見せるも、みんなにじーっと見られてたじろいだ。


「そ、そりゃー俺もそう思うけどな・・・」


「「思ってるんじゃないですか」」


*5年後


ここは、囚人たちが働かされる鉱山の入り口。そこには刑期が終えて、ある程度の路銀だけ渡されて外に出される人がいた。

その日は3人出て来た。


「おい、お前はどうするよ。」


「おりゃー・・・故郷に帰るかな。約束守っててくれてりゃー奥さんがまってるさー」


「そうかぁーお前は?若いの」


「僕は・・・王都にいこうかな」


「やめとけ。この路銀じゃ、お前王都までいけねぇぞ?」


「そっか・・・友達が元気にしてるか見にいくだけだから、何かで稼ぎながら行くさ。あんたは?」


「俺か?・・・・俺はあんたらの金を盗むね」

「「え?」」


隠し持ったナイフを突き立てて来た男に、フードをかぶった男が躍り出てナイフを弾き飛ばした。

「あああ!」


「逃げるぞ」


若い男とおじさんの首根っこを持って、もう一人の男が現れて引っ張っていく。あまりの出来事に二人も慌ててついった。


「な、なんてやつだ」


「気をつけていけよ」


「すまねぇ。ありがとうよ」

男は、助けてくれた二人組の男にお礼を言いながら逃げるように道を駆け上っていった。


「・・・君達は」


男はフードを外しながら笑顔で言った。

「やぁ、君はチェンバロは弾けるかい?俺のサロンに来ないかい?」

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