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「雪夜君~。バイト先がクラス中にバレちゃったよ~」


結衣お姉ちゃんが電話越しに泣き言を言ってきた。クラス中?なんで?


「どうして?」

「七瀬さんが口を滑らしちゃって…」


桃姉~!!うっかりにも程がある!折角ルティで2人の世界を構築してたのに!これから邪魔者が入るかもしれない。憂鬱だ。それに結衣お姉ちゃんだって働いてる姿をじっと観察されてたらやりにくいだろうし。自分の事は棚に上げて憤る。まあホントはオレからの視線も邪魔なのかもね。考えたくないけど。


「今度働いてる私を見学に来るって里穂子ちゃんが。」

「来るのは里穂子お姉ちゃんだけ?」


なら別に問題ないと思うけど。


「ううん、里穂子ちゃん、倉持君、林田君、二宗君のメンバーだよ。」


また二宗か。ホント余計な所で出てくるよ、お前は。メイド姿の可愛い結衣お姉ちゃんの事を見たりしたらフツーに惹かれるんじゃないの?ただでさえ里穂子お姉ちゃんは二宗と結衣お姉ちゃんをくっつけようとしている節があると言うのに。


「ルティは良い店だからちょくちょく来店が増えるかもしれないね。ローテばらしちゃダメだよ。」

「うん。」


心配だな。



数日後の夜の電話で結衣お姉ちゃんが見学会終了を告げた。


「何とか無事に終わってよかったよ。でも林田君が『常連になっちゃおうかな』とか言ってて不安。雪夜君が言ってた通りローテ聞かれたよ。教えなかったけど。」

「二宗は何か言ってた?」

「二宗君?『朝比奈君、良く似合ってると思うよ』って言ってたかな。何かずっとポーッとしてたけど?」


二宗のヤツ結衣お姉ちゃんに見惚れてたな。でもそんなに口は上手くなさそう。結衣お姉ちゃんにも意識されている様子は無いし。まだ大丈夫か。


「撮影会する約束なんてしてないよね?」


二宗が結衣お姉ちゃんの自宅に入ったらと思うと居ても立っても居られない。是が非でも邪魔する所存です。


「してないよ。撮影は禁止とだけ伝えてある。」

「そっか。二宗のヤツ、桃姉に惹かれてる様子とかある?」

「今んとこまだない。」


惹かれてる様子があるなら修正液の実験台になってもらいたかったんだけどな。もうちょっと待つか。でも期限は3月14日まで。あんまりのんびりもしていられないけど。



ルティに行くと結衣お姉ちゃんがメイド姿でお出迎えしてくれた。


「お帰りなさいませ、旦那様。」


ニコニコだ。カワイイ。席に案内してもらう時見えたが二宗が来ていた。居心地悪そうにしながらも結衣お姉ちゃんをチラチラ見ている。オレを目に止めて吃驚したような顔をしている。オレも驚いた。もしかしたら常連になるのか。はち合わせると気まずい。


「今日は限定メニューの苺ムースとピスタチオクレームのケーキがお勧めだよ。」


結衣お姉ちゃんがそっとお勧めを教えてくれる。


「じゃあそれとモカ。」

「承りました。」


結衣お姉ちゃんは頭を下げて去っていく。今日は結衣お姉ちゃんの働く様子じゃなくて二宗の様子を観察してみる。フォークはチョコレートケーキをつついているが、視線はずっと結衣お姉ちゃんを追っている。魅了されてるな。二宗自身にどれくらい自覚があるか分からないけど。チョコレートケーキを頼んでいるという事は結衣お姉ちゃんからお勧めがなかったということかな?それともピスタチオが嫌いとか?特にそういう記述は無かったはずだけど。二宗の嫌いな食べ物は内臓系だったはずだ。ホルモンとかだね。

しばらく観察していると結衣お姉ちゃんがケーキとコーヒーを持ってやってきた。


「苺ムースとピスタチオクレームのケーキと、モカでございます。」


しずしずとテーブルに注文の品を乗せる。


「有難う。」


まずはお勧めのケーキを食べてみる。結衣お姉ちゃんが『早く食べてみて』という顔をしているから。苺の甘酸っぱい味とピスタチオのまろやかな味が非常に美味しい。


「すごく美味しいね。甘酸っぱいのにまろやか。ピスタチオってあんまり食べたことないけど、こんな味なんだ?」

「濃厚で美味しいよね。ピスタチオが手に入るとペーストにしてケーキとか作ってる。私は結構好きだな。」


結衣お姉ちゃんはニコニコだ。

それからピスタチオペーストを使ってプリンを作った話とか、マカロンを作った話とか聞いた。ピスタチオの話題以外でも、クイズ番組でよくわからなかった答えの話とかした。結衣お姉ちゃんは国語問題には結構強い。著名人の名前とかは結構弱い。

いつも通りだが、オレとまったり話している。二宗の視線が突き刺さってるんだけど。まあ、牽制にはなるかな?結衣お姉ちゃんは全く気付いていない。鈍い。

結衣お姉ちゃんはずっと俺と話し込んでたので、二宗が会計の時になって慌てて気付いてレジに立った。


「800円になります。」

「有難う。おいしかったよ。」


二宗は会計を終えてチラッとこっちを見たのでばっちり目があった。ツンと澄まして余裕の表情を作った。ホントはそこまで余裕のある心境じゃないけど。二宗は物言いたげに去って行った。これから二宗とは競い合うことになるかもしれない。結衣お姉ちゃんと親密度をあげておかなければ…間に入り込めないと思えるくらいに。


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