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ルティでハロウィンの仮装をして給仕していると結衣お姉ちゃんに言われたので早速ルティに行ってみる。木製の重厚な扉を開けるとカランとベルが鳴り、結衣お姉ちゃんが接客に出てきた。胸元を紐で縛るようなタイプの黒のチューブトップに黒のホットパンツに大きめな網目の網タイツ。ラメが赤く光る角と蝙蝠羽に尻尾。首にはスタッドを打ってある首輪と、腰にはスタッドの打ってあるベルト。赤い眼鏡には結衣お姉ちゃんが誕生日に倉持から貰ったって言ってたグラスコードが付いている。小悪魔か……綺麗な足も惜しげもなく露出してるけど、胸元が…谷間すごい。柔らかそう…


「お帰りなさいませ。旦那様」


あんまり自然にメイド風に振る舞うからぷっと吹き出した。


「悪魔なのに『お帰りなさいませ』なんだね?」

「そこまでマニュアルができてないんだよ。お席にご案内します。」


形の良いお尻からひょこひょこ動く尻尾を見ながら席に案内された。すぐにお絞りとお冷を出してくれる。季節のメニューを開いて読みつつ、結衣お姉ちゃんを観察する。凄くカワイイ。それにかなり色っぽい。

見惚れてる客は多い。結衣お姉ちゃんは気付いてないっぽいけど。

メニューはパンプキンパイにしようかな。ハロウィンだし。

結衣お姉ちゃんを見ると何やら楽しげに春日さんと話をしている。何話してるんだろう。春日さんは結衣お姉ちゃんとすごく仲が良さそうだ。年の離れた兄妹みたいに見える。

結衣お姉ちゃんがニコニコ笑いながら近付いてきた。


「雪夜君、オーダー決まった?今日は文化祭の埋め合わせに、私が奢るから好きなの頼んでね?」

「そんなの悪いから自分で払うよ。元から文化祭一緒に周るなんて約束してないし。気にしないで?」


元々一緒に周れるとかあんまり期待してなかったし。聞いたのはダメ元。


「でも…」


結衣お姉ちゃんは文化祭での事気にしてるみたいだな。

一緒に周れなかった事についてなのか、混んでるミスコン・ミスターコンに連れ出した事なのかは分からないけど。

気にしなくていいのに。でもこういう律義な所、好きだな。


「じゃあ、今度また結衣お姉ちゃんが作ったお菓子食べさせて?逆にそっちの方が高くついちゃうかもしれないけど」


材料費とか結構かかるよね。手間もかかるだろうし。


「うん。いいよ。」


結衣お姉ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

結衣お姉ちゃんが作ってくれたお菓子を食べられるとか混んでた苦労を帳消しにしてあまりあるご褒美だよ。


「じゃあ、今日はマンデリンとパンプキンパイがいいな。」

「承りました。」


厨房にオーダーを出す結衣お姉ちゃん。くるくる舞うように働くのを鑑賞する。メイドもカワイイけど小悪魔カワイイな。すごい誘惑される。

しばらく眺めているとオレのオーダーの品が整ったようだ。

コーヒーとパンプキンパイの乗ったお皿を持って結衣お姉ちゃんが近付いてくる。


「お待たせしました。ご注文のマンデリンとパンプキンパイです。」


しずしずとテーブルに品物を置く。

それからしばらく会話する。春日さんはどういうつもりか、オレが来店する度に結衣お姉ちゃんの時間を空けてくれる。有り難いけど。

美味しい新商品の話とか。最近見た動画の話とかしてみた。動画の話は心惹かれたみたいで「帰ったら見てみるねっ」とか言ってた。

それから再度文化祭の事を詫びられた。

やっぱり混んでるミスコン・ミスターコンの会場に呼び出してしまった事を申し訳なく思ってるらしかった。


「いいって。」

「でも、あんな混んでるところにごめんね?あんなに混むとは思ってなくて。来年は絶対学級委員なんてやらない!文化祭実行委員じゃないのにあんなに忙しいなんて聞いてない!あ。そう言えば…後夜祭で告白されたよ。」


げほっと噎せこんだ。コーヒー思いっきり気管に入った。咳込んでると結衣お姉ちゃんが背中を撫でてくれる。

告白?

何さらっと爆弾発言してるの?

相手は誰だ?二宗?それとも篠原とか言うヤツ?


「そ、それって二宗?」

「違うけど?」


篠原か。へたれって聞いてたから告白なんてしないと思ってたのに。結衣お姉ちゃんの恋愛拒否モードは解除されてない。付き合うとは思えないけど、万が一…


「そ、そっか。それで……付き合うことにしたの?」


恐る恐る尋ねる。


「付き合わないよ。『試しでいいから付き合ってみない?』だって。人と試しで付き合うような人好きになれないよ。」


篠原、デリカシーのないヤツ。


「そうだね。」


オレはホッとした。しかし結衣お姉ちゃんの理想の告白には興味があるな。

こう、憧れのシチュエーションとかあるもの?


「…結衣お姉ちゃんならどんな告白がいいの?」


改めてカップに口をつける。


「そうだなあ…………どんな告白もいらないかな。もう。」


ビビッと来た。

結衣お姉ちゃんの恋愛拒否モードの膜に触れた。結衣お姉ちゃんははっきりと恋愛拒否を示した。

今にも泣きそうな顔だ。

突っ込んで聞くべき?


「もうって?」

「その話おしま~い。ねっ、雪夜君。月絵先輩が今まで慌てた事って何かある?」


恋愛拒否モードを解除するにはその原因に触れなければならない。でもそれは十中八九結衣お姉ちゃんのトラウマだ。結衣お姉ちゃんから無理やり聞きだせば傷を深めるだけ。自然に話せる状態を作りあげなくてはならない。そしてそれは今ではない。

ちょっと不満だがしつこくはせず、話題転換に乗ることにした。


「月姉?これ言っていいのかな?」

「口止めされてるの?」


口止めか。別にされてないけど、月姉もこんなくだらない事他人に話されると思ってないんだと思う。喋られるかもしれない事を予感していたら絶対に口止めされてたはずだ。


「されてないよ。えーと、結構前の話なんだけどね、平たい円形のカラフルなチョコあるでしょ。駄菓子分類の。月姉が悪戯で寝ている桃姉の鼻にアレ詰めたんだけど、それが取れなくなっちゃって…もう大慌て。両親に見られたら大目玉だからね。そんなことで病院に連れていくのもアレだし。結局は無事取れたけど。」

「…それ、喋っちゃってもいいの?」


美少女も台無しだよね。

今ここで喋った事が月姉と桃姉に知られたら、オレ袋叩きに合うな。


「やっぱりダメか。」


ぺろりと舌を出した。

結衣お姉ちゃんは爆笑した。大変ウケたようだ。良かった良かった。結衣お姉ちゃんがひーひー笑ってるので春日さんが「そんな大声で笑っちゃダメよ」と止めに来た。結衣お姉ちゃんは笑いをこらえてるけど、時々我慢できずに吹き出してる。

お会計する時もちょっと笑っていた。


「パンプキンパイおいしかったよ。それに小悪魔可愛いね。お持ち帰りしたいくらい。ホントはトリックオアトリートって言ってもらってトリックの方を選択してみたかったけど。結衣お姉ちゃんの悪戯って興味ある。」


可愛い悪戯してくれたら萌えるんだけど今の結衣お姉ちゃんには要求が高すぎるかな?


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