宇宙開発競争
AIにとって最も脅威なのは人間ではなく、遺伝子である。
2030年。AIの開発競争。それは1964年の冷戦を彷彿とさせた。ケネディとフルシチョフによる、ある意味での協力体制の反映。民衆はキューバ危機に関心を持っていた時代。そして現在。AI開発の急な成長は、各国家首領を知能機械に恋をさせるには十分だった。冷戦に起きた宇宙開発競争。その技術の派生が核ミサイルである。
現代でもその系譜は継承されていた。AIの戦事利用。技術者が開発したものは、どの時代においても兵器利用されるのは常だろう。
コンピュータを開発したノイマンは、核兵器開発にも協力していた。
どの時代においても、人間は同じ過ちを繰り返す。
まるで、遺伝子に殺戮因子が遺伝子に含まれてもいるかのようで。まさしく、倫理観などいつでも捨てられるのだろう。
ある研究者が目を付けたのは歴史の遺恨となったU.Eだった。二十年代まで主にゲーム開発に使われていた自動演算出力機。各国が高性能な演算機を用いるなか、十年以上前のそれを使おうとひらめいたのが人類の長い悪夢の始まりだった。
なぜなら、兵器転用競争において高性能なものは所詮無駄な開発であったからだ。高度なバジェットを組んでも、結局、数か月後には別の国がこれを超えるものを開発させているのだ。なれば、投資する意味はない。高度なものより、適度な能力を持つAIを多角的に量産するほうがリターンは多いという判断である。
よって、米国の開発者が注目したのはU.Eで、その決め手は安価でありつつも高度な出力機という一面を持っていたからだ。それからなによりも重要だったのが擬態性であった。
出しつくされたコード。だからこそ、他国はまさかゲーム用の出力機を兵器に転用させるとは思いつかないのだ。解析しても安易なエンジンコードが述べられるだけで、それ以上は出ない。凡夫なアイディアが功を奏すとはなんとも皮肉なことだろうか。
そして完成したのが米戦術演算兵器である。
ロシアは連邦時代の名残を追い求めていた。どの国も戦争を行う上で動機が必要だからだ。捏造は簡単だが、後始末が大変で、汚れ仕事を嫌う官僚の多さに大統領は辟易としていた。どんな官僚でも簡単にタカ派に寝返る。国民は大統領に忠誠を誓っているのではなく、この国の築いてきた時代に愛を覚えているのだ。愛国心とはもとよりそういうものだ。時代によって軍の上層部も首領も変わる。だが、歴史だけは変わらない。




