248.お待ちかねの惑星に降下して
「こちらソルアレス、セリオス・ステーションコントロール、応答願います」
「こちらセリオス・ステーションコントロール、今日はどこに行くの?」
「惑星に降下し遺跡調査団を迎えに行きます」
「あら、そんな大役を仰せつかったのね。大変だと思うけど頑張って。出港を許可します、もちろん後ろのクジラちゃんもね」
今日も管制のお姉様(勝手に命名)に見送られハンガーを出発、いつもはそのまま多くの船が行き交う航路へと向かうが、今日は重力に逆らわず目の前の茶色い惑星へと進路を向ける。
コロニーに到着してもうすぐ一カ月、随分と長い滞在になってしまったが無事に目的を達成できそうだ。
まぁ、思っていた以上に稼げたのでそれだけでもここにいる価値はあったし、彼女を惑星に連れていくという目標も無事に果たせそうだ。
「30分後に惑星降下シークエンスを開始します、それまでは自由行動ですがトイレに行くのをお忘れなく」
「へいへい」
「こちらソルアレス、ノクティルカ応答願います」
「こちらノクティルカ、アリスちゃんどうしたの?」
「発進許可が下りましたので30分後に惑星降下シークエンスを開始します。ノクティルカにはオートパイロットがありませんが、大丈夫ですか?」
「惑星降下自体はやったことあるし、大きいか小さいかの違いでしょ?大丈夫何とかなるわよ」
「ローラ様ですから問題ないと思っておりますが念のため。突入角度計算はそちらにおりますテネスがリアルタイムで計算しますので・・・まぁ大丈夫でしょう」
ソルアレスには俺とアリスだけ、流石に惑星降下をローラさん一人にやらせるのは大変なのでテネスにはその補助に入ってもらった。
まぁローラさんなら何とかするだろうと思ってはいるけれど、何かあって後悔はしたくないので万全を期すのは当然の事。
そしてその時がやってきた。
ソルアレスが惑星への降下を開始、大気の抵抗を受けソルアレスのシールドが見る見るうちに真っ赤に染まっていく。
メインモニターの端には同じく降下を開始するノクティルカの姿、向こうはシールドを有していないので船そのものが真っ赤に燃えているように見えるけれども、アリス曰く内部に熱が伝わらないような構造になっているので問題はないそうだ。
それでもアレだけ真っ赤になっているのを見ると不安になるのは当然の事・・・、まぁ今は信じるしかないか。
「大気圏突入を継続、問題なし。マスター、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「わかってるっての」
「ここで何が見つかるかはわかりませんが、少なくともいい経験にはなると思います」
「どうしてそう思うんだ?」
「辺境には未発見もしくは手つかずの遺跡が山のようにあるようですから、もしかすると買い付けた惑星にそれがある可能性はゼロではありません。そんな時、何も知らないよりもここでの経験が生きるのは間違いないでしょう。もちろんお母様について何かわかるかはわかりませんが、少なくともマスターの知識欲を満たせるのは間違いありません」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
今回の降下はあくまでも彼女の為であって別に母親の事を探すつもりはないけれども、少なくとも発掘現場を見るという機会はそうあるものではない。
アリスの言うようにもしもに備えてしっかりと勉強するのは悪くないだろう。
なんてことを考えているといつの間にか大気圏を突破、眼下には茶色い大地と茶色い海が広がっていた。
ここが遺跡惑星か。
しばらくするとメインモニターに着陸用ポートが表示され、それに誘導されるようにソルアレスが姿勢を変える。
ホロムービーとかだと惑星着陸って物凄い大変な事のように描かれているけれど、正直こういう惑星でもそう難しいわけではなさそうだ。
「ほい、到着っと」
「如何ですかマスター」
「んー、それっぽいな」
「参考にならない回答、ありがとうございます」
「仕方ないだろ。これだけ茶色いと何が何だかさっぱりわからん。一応道はあるから向こうに行くんだろうってのは分かるけど、ここまで霞んでいると大丈夫と言われても不安になるなぁ」
これで二度目の惑星、最初があまりにも綺麗すぎてこの茶色くかすんだ空気がなんとも不思議な感じだが、これぞ遺跡惑星と思えばそれっぽく感じてしまう。
海も大気も、今立っている地上も全部茶色。
少しぐらい植物があるのかと思ったがそういうのも見当たらず、土と岩しか視界に入ってこなかった。
流石に空気が悪いので前にローラさんが付けていた透明マスクを着用、アリス曰く害はないそうだがなんとなくしておいた方がよさそうな感じだ。
因みにノクティルカはあまりにも大きすぎて着陸ポートを利用できず、すぐ横の海に着水しなければならないらしい。
正直こっちが一番心配だったんだがローラさんの操舵技術によって特に危なげなく着水できたようだ。
「みんなお疲れ、さすがローラさんだな」
「最初はどうなることかと思いましたけど、まるでオートパイロットを受けているような感覚があって不思議と揺れる事もなく着水出来ました」
「ほぉ、まるで遺跡が出迎えてくれたみたいじゃないか」
「ふふ、詩人みたいなことを言うんですねトウマさん」
「生憎とそんなキャラじゃなくてね、っと誰か来たぞ」
惑星に降下してイブさん達と合流、しばらくすると向こうから白ひげを蓄えた如何にも隊長という風貌の男性がやってきた。
ミニマさんほどではないけれども背は低く、ずんぐりむっくりな体系。
だが決して太っているわけではなくものすごい引き締まっているのが服の上からでもわかる。
「よく来てくれた。私はゴドウィン、この遺跡調査隊の隊長をしている。来てくれたところ大変申し訳ないんだが、実はまだ出発準備が出来ていないんだ」
「ソルアレスのキャプテン、トウマだ。何かトラブルでもあったのか?」
「長期の帰還時には発掘用の大型機械を停止させるのが通例なんだが、故障してしまったのか停止できなくてね」
「そんなの通電を切れば・・・いや、そういうわけにはいかないのか」
しかし困ったな、挨拶もほどほどにさっさと作業に入ってその隙に彼女を下ろそうかと思っていたのだがどうやらそういうわけにはいかないらしい。
「その通り。遺跡発掘は知っての通りとても過酷な環境だ、電気が来ないなんてのもざらにある。それに対応するように機械には自己発電ユニットが組み込まれているから強引な方法で停止することもできない。幸い暴走しているわけじゃないから、何かしらの方法で停止できるとは思ってるんだが・・・うちのメカニックでは手に負えなくてね」
「ふむ、でしたらうちのミニマさんを行かせましょう。こう見えて非常に優秀なメカニックです、何かお手伝いできることがあるかもしれません」
「え、うち!?」
「テラフォーミング用の機械も遺跡発掘用の機械もやることは同じ、設計図があればなんとかなるのでは?」
いや、無茶ぶりすぎるだろアリスにツッコミを入れそうになったが、どうせこのままじゃどうにもならないんだし第三者の目があれば何か変わるかもしれない。
アリスが言うようにミニマさんは優秀なメカニックだ、もしかすると何とかなるかもしれない。
「何とかって・・・設計図はあるん?」
「それが、何分大昔の機械で設計図がなくてね」
「発掘用機械の品番等は分かりますか?」
「確か・・・HKT514だったかな」
「・・・発掘用機械の設計図を発見しました。出力しますので一緒に行きましょう」
「それは助かる!事務所はこっちだ、すぐに来てくれ」
あれよあれよという間に話が進み、何故か俺達が機械を修理することになってしまった。
まぁ、ここで恩を売っておけば多少の事にも目を瞑ってもらえるはず、とりあえず今後の話もしなきゃいけないから俺達も事務所に・・・と思ったのだが、後ろを振り替えると何故かテネスが難しい顔をしていた。
「どうしたんだ?」
「私もアイツと同じようにさっきの設計図を探してみたんだけどね、見つけられなかったのよ」
「そうなのか?」
「ネットワークの奥底、もしくはどこか個人のフォルダに名前を変えて眠っていた可能性もあるんだけど・・・これがアイツと私との差なのね」
なるほど、アリスにはできて自分にはできない現実に納得できていないのか。
そんなこと言ってもそもそもアイツは規格外、存在自体がイレギュラーすぎる。
その中で違法AIという形ではあるけれど、普通のヒューマノイドと変わらないスペックでここまでできるのはすごいと思うけどなぁ。
「向こうはアンティーク、こっちは普通のヒューマノイド。スペックも経験も何もかも違うのにお前はよくやってると思うぞ」
「慰めはいらないわよ」
「慰めなんかじゃない、ただ事実を言ってるだけだ。テネスがいなかったらヤバかった場面なんて山ほどあるんだ、これからもよろしく頼むぞ」
「ふん、調子いいこと言っちゃって。まぁいいわ、アイツがいても頼りないから私がしっかりフォローしててあげる」
どうやら機嫌を直してくれたようなので、改めて俺達もアリス達を追いかける。
初めての遺跡惑星、果たしてここで何を見つけることが出来るだろうか。




