244.オークションですごい物を見つけて
「ヒューマノイドってあのヒューマノイドだよな?」
「どのヒューマノイドかは存じませんがとりあえずヒューマノイドかと」
オークションリストの最後に書かれていたのはまさかの単語、噂話でヒューマノイドが見つかったという話だったがまさかそれをオークションに出してくるとは思わなかった。
普通に考えれば世紀の大発見になるはずなのに、こんなところで流して大丈夫なんだろうか。
「・・・なんて生産性のない会話なのよ」
「まぁニュアンスが伝われば問題ない」
「そういう事です。因みにマスター、何にエントリーしますか?」
「そうか、ノルマがあるんだったか。えーっと、どれにしようかなっと」
ヒューマノイドは別として他の出品物に目を通す。
正直ものすごく欲しいという物ではないけれども、ある程度は買い物しないといけないので個人的に欲しい物をいくつかピックアップ。
アリスとテネスの二人には転売できそうなやつをピックアップしてもらいそれも一緒に入札することが決定、全部が全部買えるわけではないので優先順位をつけながら出来るだけ効率的にノルマを消化できるように組み込んだ。
「欲しくないものに入札するってのは・・・なんだか変な感じだな」
「高く売るための仕入れと思えば悪くありませんよ?」
「なるほど、そういう考え方もアリか」
「因みに今回リクエストした分は売り先がほぼ決まっていますので、確実に利益は出ます。もちろん安ければ安いほど利益が増えますので頑張ってください」
「それに関しては頑張りようがないと思うんだが?」
競り合えば競り合うほど利益は減るけど、競り合わなければ手に入らないという矛盾。
しばらくしてオークションが始まったのだが、誰もが最後のブツに総ベットしたいのか低調な入札状況になっていた。
「マスター、次も行きましょう」
「おいおい正気か?」
「こんな格安で仕入れられるチャンスまたとありませんよ?予算は潤沢にあるんです、ガンガン行きましょう」
「こんなに買って、ちゃんと売れるんだろうな」
「大丈夫、落札した瞬間に取引先にアポ取ってるから。因みに今の壺も80万ヴェイルで売れたわよ」
「・・・マジか」
まさかのリアルタイム販売、それが出来るのもこの二人だからだろうけど20万ヴェイルで仕入れた壺が四倍になるとは・・・恐るべし遺跡物需要。
本物か偽物かわからないものが市場に出回っている中で、コロニーの正式オークション品というお墨付きが付いていればそりゃ欲しくもなるか。
現在三分の一が終了、そのうちの半数を俺が落札していることになる。
ノルマはとうに超えているけれど、買えば買うだけお金が増えるので引き続き購入を続けることになりそうだ。
「それにしてもこれだけ競り合ってこないってことはみんなヒューマノイド狙いか」
「恐らくは。一応ノルマの為に買付けている人もいますが、今回は運営も目を瞑っているようですね」
「俺が買ってるからか?」
「それもあります。競い合ってくれればくれるほど運営に入るお金も増えますので、安いものでお茶を濁されるよりも一発デカいのをという感じなのでしょう。マスターがこうやって買う事で在庫が残る心配もありませんし、裏で喜んでいるんじゃないですか?」
「だといいけど。それで、まだヒューマノイドについては分からないのか?」
「んー、結構深く潜ってみたけど全く。ここまでやって出てこないってことはよっぽど隠したい何かがあるんじゃないかって勘ぐっちゃうけど、それがわからないのよねぇ」
アリスとテネスの二人がかりで会場のデータベースにアクセスしているけれど情報は無し、引き続き遺跡発掘をしている惑星の方にも探りを入れているが、それも見当たらないようだ。
アナログ式な方法で記録しているのか、それとも完全オフラインの何かに情報を入れているのか。
なんにせよわからない以上直接確認するしかない。
「ま、それまでしっかり小遣い稼ぎさせてもらうさ。次は?」
「次のアーカイブチップは飛ばして、その次の携行ランプを狙いましょう」
「ん?チップの方が人気だろ?」
「遺跡産の物は古すぎて規格が合わないことがほとんどですので、チップ人気の割に手を出す人はあまりいないんです。それならば確実に売れるランプの方が勝率は高いでしょう」
「なるほど」
「ランプは割れたりするから人気が低いって思われてるけど、実は固定ファンがいるからその人に回せば確実に売れるのよね。しかも高値で」
「もう好きにしてくれ」
「という事ですので、引き続き入札をお願いします」
俺の役目は商品を落札する事、その後も延々と入札を続け気づけば1000万近い額をオークションで使用していた。
だがその裏でリアルタイムの売買が行われ3000万を超える額で取引が進んでいるという現実、という事はずっとここでオークションに参加して商材を買い続ければ一生安泰なんじゃないだろうか。
なんてことを考えている間にいよいよその時はやってきた。
「皆様お待たせいたしました。当オークションもいよいよ次が最後の品になります。今回お出しするのはつい先日遺跡から発掘されたばかりのとっておき、さぁご覧いただきましょう過去数例しか例のない稼働するヒューマノイドです!」
舞台の下からせりあがってきた布をかけられた何かに、全参加者の視線が集中する。
参加者を煽りに煽った司会者が勢いよくその布をはがすと、信じられないものがその下から姿を現した。
「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」
「え?」
「は?」
「嘘でしょ!?」
驚いてはいるけれど、他の参加者とは明らかに違う反応。
それもそのはず布の下から現れたのは見覚えのある人物だった。
「なんで彼女がここに?」
「いえ、彼女自身はちゃんとソルアレスにいます」
「という事は、彼女の同型機ってことになるのか?」
「そうだとしたら彼女があの遺跡から来たっていう証明にもなるわね」
まさかこんなところで彼女が遺跡から来た証拠を見つけることになるとは思わなかった。
舞台上のヒューマノイドはそのまま顔を上げて周りを見回している。
遺跡のあった時代という事はアンティークよりもさらに前の存在という事になる。
性能としてはだいぶ劣るけれどもヒューマノイドはヒューマノイド、その価値はかなりの物になるだろう。
「さぁ、100万ヴェイルからすたーとです!」
「300万!」
「500万!」
「1000万だ!」
あれよあれよという間に値段が吊り上がっていく。
さっきまでの冷めたオークションは何だったのかというぐらいの白熱した競り、物次第では俺も手を出そうと思ったんだけどあの子を見るとその機も失せてしまった。
それよりも不安なのは予定通り彼女を遺跡のある惑星に連れて行っても大丈夫なのかという事。
持ち主はいないわけだし、そのままあそこに置いていくとこの子のように捕まってオークションで売られるんじゃないだろうか。
それは本当に彼女の望んでいる事なのか?
そんなことを考えてしまう。
「大丈夫ですか、マスター」
「大丈夫に見えるか?」
「別に人身売買じゃないんだから・・・って言いたいところだけど、さすがの私もこれを見ると色々と考えちゃうわね」
「我々は所詮ヒューマノイド、マスターの一存でこのように売られる可能性もあるわけです。そうならないようにするには今以上に頑張るしかないでしょう」
「せめて売るときは記憶データを初期化してくれる?」
「お前らなぁ」
「ふふ、冗談ですよ」
まったく、冗談に聞こえないっての。
まだまだ盛り上がるオークション会場、だが目的を達した俺達にこれ以上ここにいる理由はない。
値段がどんどんと吊り上がりハイテンションになる司会者の声を背中で聞きながら、俺達は会場を後にした。




