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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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189/260

189.想定外の事態が舞い込んできて

何故この人からカイロスの名前が?と、思ったりもしたけれど先日のガサ入れは宇宙軍の管轄なんだからちょっと調べたらわかる話だ。


寄港後に駐在していた部隊から何か情報を仕入れたんだろう。


事情聴取されているから俺達がそこにいたのももちろんわかっているはず、だがそれで俺達を結びつけるのは少々横暴ではないだろうか。


「誰だって?」


「とぼけても無駄です。カイロスを捕縛しようと投入したオークション会場に貴方達もいたそうですね」


「いたがそれが何か関係あるのか?あれは人身売買の現場を押さえるためだろ?」


「表向きはそうなっていますが実際は違います。資料を精査して貴方とカイロスがいくつかの品を競り合っていたこともわかっています。それでも白を切るおつもりで?」


「何を言っているかわからないってのが正直なところだ。確かにオークションには参加したし、何人かと競り合ったこともある。だがオークションはそもそも匿名で行われていたし、マスクの着用を義務付けられていたから相手の素性がわからないようにされていた。だから競り合った相手がそういう名前だとしても俺が知るすべはない。で、そのカイロスって人がどうしたんだ?」


恐らくナディア中佐は俺がカイロスさんと接触したと思って話をしていているんだろう。


もちろんそれは間違いないし、ついこの間も一緒に逃げてきた所だ。


だが向こうにはそれを証明する方法がない。


いくら参加者名簿に名前があっても、更には競り合っていたとしても直接かかわりを持たないことを前提としたオークションだから知らぬ存ぜぬで通すことは十分可能。


問題は俺が彼を逃がしたってところなんだろうけど、アリスの話ではしっかりと痕跡を隠したという話なので今はそれを信じるしかない。


「・・・ふむ、知らないで通すおつもりですか」


「つもりも何も知らないんだから仕方がない」


「それではガサ入れ突入時のトラブルについては?」


「トラブルがあったのか?俺達は目的の物を手に入れたから見たくないものを見る前にさっさと帰ろうとしていたんだ。そこに突然宇宙軍が入って来て銃を突き付けられた。まぁ、すぐに解放されたからそれに関しては文句はないがなんとも鮮やかな突入だったけどなぁ」


「わかりました、変なことを聞きましたね」


おや、もっと突っ込んでくると思ったが思ったよりも早く引き下がったな。


なんていうかドンドンと追及して追い込んでくるのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。


「別にいいさ、俺達がそう思われるような場所にいただけだからな。因みにその人とはどういう関係なんだ?」


「因縁の相手、とだけ」


「ナディア中佐とやり合うなんてよっぽどすごい相手なんだろうな」


「宙賊相手にこういう言い方をするのは癪ですが、味方であればさぞ心強かった事でしょう。もっとも、彼が敵である以上容赦はしません」


「とはいえここはルスク・ヴェガス、お互いの身分は知らぬ存ぜぬで通るのがマナーらしいぞ。なぁナディアさん」


「ふふ、そうですね」


その後は穏やかな空気に戻り、女性陣で好きな食べ物だなんだと女子トークに花を咲かせ始めた。


もちろんそこにはアリスとテネスも参加、早くも用無しになった俺は話に入ることも出来ず窓の外をのんびりと眺めながら美味しいケーキに舌鼓を打つだけだ。


うん、甘くて美味い。


ケーキと言えば、嫁に逃げられた日に買って帰ったよなぁ。


喜んでもらえると思い奮発して買った本物のケーキ、結局食べる奴はおらず諸々の騒動の中で捨ててしまったような気がする。


あの時食べたとしてもこんなにも美味しく感じることは無かっただろうけど、あれが無かったら今こうして面白おかしくやっていくことはできなかっただろう。


あれが俺の転換期、いや本当のスタート地点。


35にもなってまぁなんとも遅いスタートではあるけれど、それでも残りの人生を十分に楽しむ時間はたっぷりとありそうだ。


「何を一人で黄昏ているんですか?」


「別に?話に入っていけなくなっただけだ」


「そうやって自分から距離を取るからおじさんって言われるらしいですよ」


「うるせぇ、俺は元からオッサンだっての。それで、向こうから連絡は?」


しばらくして話の輪から抜けてきたアリスが何やら含みのある笑みを浮かべながらやってきたと思ったら、速攻でディスられてしまった。


まったく主人に向かってそういう対応はよくないと思うぞ。


「ありません。一応事情は説明しておきましたけど、その後は音沙汰なしですね」


「ふむ、お互いに天敵だと認識しているわけだし余計な火種は作らないっていう感じか」


「宇宙軍の連絡を見る限り後二・三日は滞在するつもりのようですね」


「うーむ、それまでは姿を現しそうにないな。正直ここにいる理由はそれしかないからさっさと離れたいところなんだが・・・」


「例の宙賊たちですか?」


「いい意味でも悪い意味でも顔を売りすぎたからな、面倒ごとになる前にさっさとこの宙域から抜け出したいところだ」


向こうからすれば仲間を殺しまくった敵、という認識になるはず。


このままここにいて命を狙われないとも限らないし、カイロスさんが囮になってくれている今のうち離れるのが一番確実。


もちろん獲物が近くにいると考えることもできるけど、ぶっちゃけ十分すぎるほど稼がせてもらったんだよなぁ。


加えてカジノでも大勝ちさせてもらったので、イブさん達の稼ぎを加えればまさかの7000万ヴェイルにもなる。


これ、この前のオークション分を抜いているから単純計算1億以上稼いだことになるのか。


そりゃ去り際に支配人が茫然自失になるわけだ。


でもまぁそのおかげで資金も潤沢、惑星を買うという大きな買い物をするにはまだまだ足りないけれども普通の商売をする上では申し分ない資金力だ。


これだけあれば高価な物をドンとかって運ぶなんて言う事も出来るようになる。


今までは小さい物でコツコツ稼ぐ感じだったが、船も多少大きくなったし今後はそっち系で攻めてもいいかもしれない。


「それで、次の行き先は決まってるんだろ?」


「資金も増えてきましたのでそろそろ辺境に向かってもよろしいかと。その前にテラフォーミング用の製品を扱っている会社に一度顔を通しておいてもいいかもしれません。どのような星が手に入るかはわかりませんが、規模感と値段を知っておくのは悪い事ではないでしょう」


「というと、またハイテク系コロニーか」


「といいますか工業系ですね。規模感は今までの倍、ぐらいあると思います」


工業系か。


ラインでも十分デカいと思っていたけれど、それよりもでかいとなるともはや想像がつかない。


でも夢に向かって進んでいるのは間違いない、その為にもさっさとやることを終わらせたいところだ。


「ちょっと、そこでどんな秘密のやり取りをしているの?」


「秘密って程じゃないさ、次にどこへ行くか話し合っていたんだ」


「あら、もう行くんですか?」


「そっちは来てまだ間もないかもしれないが、俺達はそこそこの期間いるからな。やるべきことはやったし軍資金もしっかり稼いだ。あとは夢に向かって進んでいくだけだ」


「うちで働いてくれるという話は?」


「はて、そんな話した覚えがない」


「ふふ、冗談ですよ」


全く冗談に聞こえないんだが。


なんだかんだ縁があってここまで来てしまったけれど、出来ればあまり関わりたくない相手でもある。


まぁ、すぐ近くにいたという事で今回は縁があったけれど流石に辺境まで行けばもう会う事もない。


後はアリスがいらぬちょっかいをかけなければのはなしだけどな。


そんな感じでお茶会は無事に終了、軍資金を手に次の旅路への準備を進めていた俺達だったが残念ながら世の中そううまくはいかないらしい。


「マスター、緊急事態です!」


「ん?」


翌日。


朝食を終え、自室でくつろいでいると天井のスピーカーからアリスの緊迫した声が聞こえてきた。


急ぎコックピットへ向かうと、メインモニターには信じられない映像が流れている。


「なんだこりゃ」


「宙賊連合からの宣戦布告です。コロニー内に潜伏しているカイロスを差し出さなければ24時間以内にコロニーを襲撃するんだとか」


「はぁ!?」


宙賊がコロニーを襲撃?


そんなバカなことを・・・と言いたいところなのだが、モニターに並んだものすごい数の宙賊船を前に何も言えなくなってしまった。

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