175.オークションへと参加して
「ようこそお越しくださいました、招待状を拝見してもよろしいでしょうか」
ルスク・ヴェガス内某所。
オークションへと参加するべくしかるべき格好に着替えた俺達は、招待状に表示されたとある場所へと到着した。
物々しい雰囲気の中、入り口に立つ屈強な黒服に招待状を見せる。
全部で五名、それを確認すると何も言わずに招待状を回収しその人は入口へ向けて手を伸ばした。
「ようこそお越しくださいました。入場に当たり、マスクの着用をお願いしておりますのでどうぞ中でお好きな物をご着用ください」
「マスク?」
「匿名のオークションですので」
「なるほどな」
特別なオークションとは聞いていたけれど、まぁ中身が中身なだけに誰が何を買ったのかを知られないようにするための配慮なんだろう。
例えば誰かと誰かが競い合って、負けた方が報復しないとも限らない。
お互いの安全の為にもその辺はしっかりとしておくべきなんだろう。
とりあえず入り口を抜けて少し進むと、壁一面に無数のマスクが並べられていた。
ところどころ抜けていることを考えると先に来た誰かが取っていったんだろう。
動物だったりアンドロイド風だったりと多種多様なマスクが並べられており、さっそくアリス達が楽しそうに選び出した。
ぶっちゃけ顔を隠すだけなんだから何でもいいんだが・・・。
「マスター、これなんてどうですか?」
「俺が?」
「可愛くありませんか?」
「可愛いか可愛くないかで言えば前者だが、俺がそれをするのか?」
「はい」
「・・・好きにしてくれ」
アリスが選び出したのは可愛らしいネコ科の顔を模したマスク。
もっとこう、狼とか強そうな感じがよかったんだがアリス的にはこれがいいらしい。
あえて、という事にしておきたいところだが本人的には真剣に選んだ感じなんだよなぁ。
因みにイブさんはスペースラビット、ローラさんはラピッドウルフ、アリスとテネスはなぜかアンドロイド風のマスクを選んだようだ。
アンドロイドがアンドロイドのを選んでどうするつもりなのかはわからないけれど、本人たちがそれでいいのなら何も言うまい。
マスクを付けた後は番号札を貰い、所定の場所へと移動する。
どうやら大きなホールのような場所らしく、半円形のすり鉢状になった会場には想像以上に多くの参加者が着席していた。
ひーふーみーっと、今いるだけでも30人を超えている。
流石にぎゅうぎゅう詰めに座ることはないだろうけど、それでも倍以上は吸われそうなので参加者はおおよそ100人というところか。
参加料だけで1億、オークションそのものでもそれなりに儲かるだろうし主催者はぼろもうけなんだろうなぁ。
しばらくすると同じくマスク姿のスタイルのいいバニーガールがシャンパンを手にやってきた。
流石に薬なんかは入ってないだろう、静かにそれを受け取り口に運ぶ。
「ん、美味い!」
「スキャンした結果合成機を通さない本物のお酒のようですね、私達に味は分かりませんが気に入っているようでしたら取り寄せましょうか?」
「因みに同じものを買うといくらになるの?」
「銘柄とかそういうのはよくわからないけど、安い物で50万ヴェイルから高いのは1000万ヴェイルまであるみたいね」
「取り寄せないで結構だ、生憎とそういうのが似合うキャラでもない。それだけの金を出すならもっと別の物に金を使った方が有意義だろ」
一晩で百万を超える酒を飲むとか庶民の俺にはどう考えても無理。
それならまだ本物の肉や惑星産の野菜を食べるとかの方が現実的だし、金額的にも納得がいく。
いくらあぶく銭があるからって、それを興味のない物に費やすのはもったいない話だ。
そんなこんなで気づけば会場はほぼ満席、静かに入口が閉じられ照明が絞られたかと思ったら中央の舞台に無数の証明ドローンがあつまり、真ん中にいた一人の男性を照らし出した。
「レディースあ~んどジェントルマン、ようこそ当オークションへ、この度はご参加いただきままことにありがとうございます。今宵出品されます物はどれも世に二つと無い逸品ばかり、どうぞ心行くまでご検討いただきその手につかみ取ってくださいませ。それではまず開催に際しまして注意事項を読み上げます、待ち遠しいかと思いますがどうぞご清聴ください」
少し茶けたような感じで話し始める司会者、彼もまたマスクで目元を隠しているせいで詳細な表情は読み取れないが中々のイケメンなんだろう。
「当会場での暴力、暴言、その他排斥類似行為はすべて禁止されております。そのような行為を見かけましたら速やかにご退場いただきますのでご注意ください。ここにおられる皆様はどこの誰もないただの参加者、ご理解をお願いいたします。また、落札後の返品交換は受け付けておりません、よくご理解の上ご購入ください。加えて落札後の強奪も禁止されております、これはオークションですからどうしても欲しい場合はそれなりの額を積むのが正義です。必要であれば貸し出しも行っておりますので是非ご利用ください。因みに利息は十日で三割で私の仲介料が一割となっています。え、高い?一発当てればすぐに返済できますから、終わりましたらどうぞ各カジノをご利用いただければ」
「十日で四割・・・ぼったくりか?」
「むしろ良心的かと」
「マジか」
「ルスク・ヴェガス内の貸金レートは最大で十日で七割、平均五割ですから良心的な方でしょう」
一度借りれば二度と返し終わらない恐怖の借金地獄、一度でも手を出せば最後もれなくオークション行という残念なことになるのは確実だ。
借りるぐらいなら自力で稼げ、それ以外に助かる道はない。
その後もオークションの説明が続き、いい加減参加者が飽きだした頃先程のバニーガールが布のかけられた台を押して壇上の司会者に近づいてく。
「ここまでご清聴ありがとうございました。それでは早速参りましょう、出品番号1番!スペースダイナーから提供されました特別な一本、惑星産の木材を使った樽を使用して熟成された10年物のウイスキー!お酒好きなら是非とも手に入れたい逸品です、まずは100万ヴェイルから!」
「150万!」
「200万!」
「300!」
一品目から中々のハイスピードで値段が吊り上がっていく。
スペースダイナーと言えば世界中の美食家を唸らせる特別な料理を作ることで有名なスペースコロニー、ここに来たらどんなものでも食べられることで有名だが、まさか酒瓶一本にこれだけの入札が入るなんて思わなかった。
そりゃ俺も酒は好きだが、あんな高価な酒怖くて飲むタイミングがわからない。
「それでは番号札54番様、550万ヴェイルで落札です!今日は是非こちらを開けて勝利の美酒を味わってください。それでは参りましょう、商品番号二番!某所で作成された特別な一本、先ほどはお酒でしたが今回はたばこです!惑星産の葉を贅沢に使用したそれに火をつければ最高の香りと至福の時間を過ごせること間違いなし。船内の空調システムに文句を言われようともこの時間は誰にも譲れない!全部で3箱の特別セット、30万ヴェイルから!」
「50万!」
「120万だ!」
「150万出すぞ!」
こちらもまた嗜好品、うちの船でタバコなんて吸おうものならアリスがすっ飛んできて速攻でタバコを握りつぶされること間違いなしだ。
なんでもたばこの煙は空調システムをかなりの速度で痛めてしまうようで、宙賊船がボロボロだったりするのはそれが原因だったりするんだとか。
特に彼らが吸うような合成品の安物は中にどんな成分が入っているかわからない、船の寿命を延ばしたいのならタバコは吸うなが船乗りの鉄則、まぁそれが地上だったら話は別だが札を上げている大半は宙賊っぽい厳つい皆様方のようだ。
マスクをしてもわかるガラの悪さ、そこまでしてタバコが吸いたいかねぇ。
「11番さん211万ヴェイルで落札です!残念ながら当会場は禁煙ですけど、後でたっぷりとお楽しみいただければ。続きまして商品番号三番、とあるヒューマノイドマイスターが作った特別なボディ!もし好みならぜひ連れて帰っていただきたいところです。300万ヴェイルからどうぞ!」
そんなこんなでオークションがスタート、俺達が欲しい物はもう少ししてからのようだけど果たして無事落札できるのだろうか。




