176.欲しい物を落札して
「それでは出品番号19番プラネッティの茶葉セットは25番が220万ヴェイルで落札です!」
カンカンとハンマーが振り下ろされ、見事ローラさん希望の商品を落札に成功した。
正直茶葉にここまでの値段が付くとは思わなかったけど、上品なマダムっぽい人とローラさんが競り合い、資金力の差で無事に落札。
プラネッティという茶葉を生育することに特化した特別な惑星でしか採れないとっておきの茶葉らしい。
正直味がどこまで違うかはわからないけど船に戻ってから堪能させてもらうとしよう。
「ここまで三戦三勝、なかなかの勝率ですね」
「そうだな。まぁ、ものすごい激戦になる商品に手を出してないってのもあるけど、予定よりかは安く買えてるし順調と言えば順調か」
「次は・・・イブさんが希望されてるレーザーガンですね」
「予想落札価格は300万ヴェイルです」
「落札できるでしょうか」
「まぁ500万までなら競り合えるし大丈夫だろ。でもなんであれがいいんだ?」
一見するとどこにでもありそうなレーザーガン、確かに装飾は素晴らしいけどそこまで出すなら最新のやつが何丁でも買えそうなもんだが、どうやらそういうわけにはいかないらしい。
「あれはホロムービーで使われていた奴なんです」
「ホロムービー?」
「出品番号20番は34番様が330万ヴェイルで落札です!これで半分と言いたいところですがまだ三分の一、さぁ張り切ってまいりましょう!次は出品番号21番、かの有名なホロムービー『星屑に駆けろ!』の作中で使われた本物のレーザーガンです!この星を散りばめたような装飾、そして流れるような模様はファンならばぜひ手に入れたい逸品です!それでは100万ヴェイルから参りましょう!」
「150万!」
「175万!」
「200万だ!」
「まだまだ!230万!」
「300万でどうだ!」
競り合っているのは二人の男性、一人は白髪をオーブバックにした獅子のマスクを被った男性と特徴的なタトゥーを腕に入れた宙賊風の男性。
あっという間に予想落札価格を超え、更に上昇中だ。
イブさんはこの流れに委縮してしまったのか手を上げる様子がない。
「380万!」
「おっとここで新しい落札希望者が参戦だ!25番さん380万!お二人はどうする?」
「にわかが出てくるな、400万!」
「これは飾るよりも使ってこそ輝くってもんだろ、420万!」
「使うなら俺達も使うぞ、460万」
「く・・・500万!」
「おっと!ここで本日の最高値!7番様500万ヴェイルです!予定落札価格を大きく超えておりますが、お二人はどう出る!?」
オールバックの男性が500万を提示、この時点で俺達の予算を超えてしまったがイブさんの落胆ぶりを見るとここで止まるわけにはいかない。
「530万!」
「いや、550万だ」
「え!?」
「出ました550万!おっと、ここで7番様はあきらめたご様子、残るは13番様との一騎打ちだ!」
ここにきて競り合っていた一人が脱落、のこるはあの宙賊だけだ。
まさか俺が手を上げると思っていなかったのかイブさんが驚いた顔でこちらを見る。
「欲しいんだろ?」
「それはそうですけど・・・」
「資金はまだあります、マスターにお任せしましょう」
「そうよ。次はもう手に入るかわからないんだから、ガンガンいっちゃいなさい!」
「570万!これは俺のもんだ!」
「それはこっちのセリフだ、600万!」
「650!」
「700だ」
お互いにヒートアップし始めドンドンと価格が上がっていく、気づけば700どころか850を超え900万ヴェイルにせまろうとしている。
明らかに予算オーバー、イブさんは祈るように指を組んでおでこに手を当てたまま固まっている。
ここまで来たら男同士のプライド勝負、とはいえ譲る気はさらさらないけどな。
「880!なぁ、これ以上はもうやめようぜ。ここで譲ってくれるんならあとで美味い酒おごってやるからよ」
「悪いがそれは出来ない相談だ。うちのクルーがどうしてもっていうんでね、900万」
「くっ・・・仕方ねぇ、その心意気に免じて譲ってやらぁ」
「皆様ご注目ください!白熱した一騎打ちの末、見事900万ヴェイルで25番様が落札です!皆様盛大な拍手をお願いいたします!」
会場中から向けられる視線を一身に受けながら右手を挙げてそれに応える。
あの人も本当に欲しかったんだろうけど、最後は自ら身を引いてくれた。
宙賊と言えば殺してもいい宇宙のゴミという認識でいるけれども、たまには気持ちのいい人もいるんだなぁ。
こんなところで900万ヴェイルも出そうっていうんだからかなりの大金持ちか、実力者なんだろうけど・・・まぁ、それはここでは気にしない約束だ。
「それでは続いての商品です、商品番号22番!とある難破船から回収された摩訶不思議な箱。どれだけ力を入れても熱を加えてもレーザーを打ち込んでも開かない摩訶不思議な逸品です!スキャンの結果中身が本、もしくは書籍という事だけは分かっております。もし開ける事が出来たのなら是非ご一報をお願いします。それでは参りましょう、50万ヴェイルから!」
「55万!」
「60万!」
「63万!」
先程の上がり具合からするとなんとも小さい値動きだが、開けられるかもわからない箱にそこまで出せる人がすごい。
言い換えると何をしても傷まない特別な金属と考えることもできるけど、果たして一体何が入っているんだろうか。
「マスター、150万まで構いませんか?」
「ん?あんなのが欲しいのか?」
「なんとなくあの箱には見覚えがあります。それこそ、私が機能を停止する時代の物ではないでしょうか」
「大開拓時代の品か。で、開けられるのか?」
「やってみないとわかりませんが、分析して成分がわかればソルアレスの外装を強化できるかもしれません」
「中身よりも成分、いいだろう200万まで許す」
「ありがとうございます」
まさかアリスが反応するとは思わなかったが、その時代の品物は元々欲しかったしもしかすると開けられるかもしれない。
なんせその時代に生きたやつがいるんだ、不可能ではないだろう。
「予算は大丈夫ですか?」
「んー、まぁ何とかなるだろ」
「すみません、私が欲しいって言ったばっかりに」
「いいじゃないか、欲しい物は手元に置いておくべきだ。残ってるのはテネスの欲しがっているカバンと俺が狙ってる二重結合水晶のオブジェぐらいなもんだろ?人を買う予定もないし、十分予算内で収まるさ」
「それならいいんですけど・・・」
イブさんの奴を買っても2500万ヴェイルぐらいで落札できるはず、ここでの稼ぎを考えればまだ半分残っている計算になる。
別に全額使う必要もないし残れば旅の資金にすればいい。
最終的に箱は230万ヴェイルで落札、予定よりも高く放ったが十分誤差の範囲だ。
さて、あとは俺のを買えば無事終了。
いったん中座となったので今のうちにトイレを済ませておこう。
人で溢れるエントランスを抜け、豪華なトイレへ。
ふぅ、もれるかと思っ・・・。
「おい、お前」
突然後ろから声を掛けられ出るものが一気に引っ込んでしまった。
この声は確かさっきの。
恐る恐る振り返ったそこには、先ほど競い合った宙賊が立っていた。




