173.オークションへと招待されて
「この度は誠に申し訳ございませんでした」
本日二度目の謝罪、最初は捕まえてやった!みたいな勝ち誇った顔をしていたのに、蓋を開ければ例のカップルがハッキングしていた証拠が山のように出てきたことで状況は一変。
結果、支配人直々に頭を下げる事態となっている。
因みにイブさん達も向こうでいい感じに暴れまわっていたらしく、気づけば合わせて5000万ヴェイルを超える額を稼ぎ出していた。
それもこれも例のカップルが濡れ衣・・・、違うな先に名乗り出てくれたおかげだ。
このコロニーでの犯罪はバレなければおとがめなし、バレても罰金を支払えばどうにかなる。
もしかすると例のカップルも罰金を払ってしれっともどってくることは・・・さすがにないか。
「謝罪は結構だ、さっきも言ったが今日だけで二度もプレイを邪魔されて気分を害されたんだ。それについてはどう落とし前をつけてくれるんだ?せっかく気分よく勝ち始めていたのにハッキングなんてくだらないことを横でされて、ここの警備は一体どうなってるんだろうなぁ」
「まぁまぁトウマさん、先方も深く反省しているようですから」
「その件につきましては申し開きもできません。この度の不始末につきましては、後日改めて謝罪と賠償をさせていただければと思います」
「・・・まぁいいだろう。はぁ、興覚めだ、もう帰らせてもらう」
「それなのですが、もしよろしければ最上階のVIPシートへのご招待を・・・」
「結構だ。皆、帰るぞ」
向こうからすれば僅か数時間で5000万もの損失を出したわけだから今すぐにでも取り返したいはず、それを断ってどうやって勝ち逃げしようか考えていたところなのでちょうどいいタイミングだった。
悔しそうな支配人を横目に皆でエレベーターを降り、黒服たちに見送られながらカジノを後にする。
ある程度進んで角を曲がった所で大きく息を吐いた。
「やれやれ、何とか脱出できたな」
「皆様お疲れ様でした、わずか数時間で5000万ヴェイルは中々の戦果ではないでしょうか」
「この金額を中々って言えてしまうアリスさんがすごいです」
「それもこれも私たちのおかげね、もっと褒めていいのよ?」
「テネスちゃんすごいんですよ、言われた通りにカードを替えるだけで勝手に役が揃っていくんです。私、ポーカーなんて初めてだったんですけど、こんなに楽しいなんて知りませんでした」
「私は別に何もしてないわよ、ちょっと他所の手札を確認してただけでカードを集めたのは二人の実力じゃない?」
確かイブさんたちがやっていたのはポーカーだったはず、相手の手札がわかれば降りるかどうかすぐに判断できるし、ハッタリをかましてブタのまま勝負することもできる。
でも役を揃えるのにテネスが介入していないとなると、勝利を勝ち取ったのは彼女達のビギナーズラックによるものだろう。
残念ながらその場にはいなかったが、無双するところを見てみたかったなぁ。
「なんにせよここでしばらく過ごせるだけの軍資金は一気に増えたわけだ。流石に明日もあのカジノにいくわけには行かないが、後何軒かは回ってもいいかもな」
「そこでまた荒稼ぎするんですね?」
「流石にそれはまずいだろ」
「そうでしょうか、一晩で億稼ぐ方もいますし、数軒回った結果が億単位なら普通ですよ」
「そもそも連勝できないのがギャンブルだろ?」
「それは勝てない人の言い訳でしょう、勝つ人は勝つそれだけです」
それだけって言い切ってしまうのがアリスの凄いところ、とりあえずあの支配人が賠償とやらを決めて連絡してくるまで他のカジノでのんびりとやらせてもらおう。
それから二日、コロニーでは比較的規模の小さいカジノに行ってはスロットやカードでコツコツと小金を稼ぎ、気づけば6500万ヴェイルまで貯金を増やすことに成功した。
当初はがっつり稼ぐつもりだったけども、カジノ運営者による集まり的なやつで俺たちの話題が出たらしく、どこに行っても目をつけられてしまったので派手な事ができなかったってのはある
それでも負けずにプラスを積み上げ続けられたのはアリスとテネスのおかげ、マシンってこんなに簡単でよかっただろうか。
「マスター、ミラージュの支配人よりメッセージが入りました」
「お?やっとか」
「今回の件につきましては500万ヴェイルで丸く収めてほしいそうです。その代わり次回以降は初回から上階でプレイができるのと希望があれば最上階のVIPルームに案内してくださるのだとか」
「あれだけ荒稼ぎされた上に追加で500万払わされると思えば同情もするが・・・謝罪は無しか」
「一応ご迷惑をおかけしましたと文面には書かれていますが、あくまでも賠償のみの・・・いえ、追加でメッセージが来ました。この後ソルアレスに来たいと言っていますがどうしますか?」
「わざわざ来るというのなら断る理由もないが・・・アリス達も同席するのか?」
「規約通りカジノには同行していないのですから大丈夫でしょう」
「ま、それもそうか」
約束通り支配人が直々に謝罪しに来るというのであれば止める理由もない。
それから30分ほどして手土産を手に本人が到着、一応外で出迎えキッチンへと案内した。
向こうは一人、こっちは五人。
完全アウェイの中終始笑顔を絶やさないグレイン支配人、まったくイケメンは笑うだけでも絵になるなぁ。
「外だけでなく中も素晴らしい船ですね」
「お褒めにあずかり光栄だ。古い船だがこの間拡張したばかりでね、もし荷運びの仕事があれば喜んで引き受けよう」
「その機会がありましたら是非。こちら、よければ皆さんでお召し上がりください」
「わ!本物の果物ですよ!」
「ありがとうございます!」
可愛らしいバスケットを持っているなと思ったら、中身は中々の高級品だった。
普通のコロニーでも数万はする品、ここだとその十倍はするだろう。
「悪いな、こんな物まで持ってきてもらって」
「それだけのご迷惑をおかけしましたから。まずは改めて謝罪を、この度は誠に申し訳ありませんでした。今後につきましてはハッキング対策を強化し、より安心安全に楽しんでいただけるよう取り組んでまいります。先ほどご連絡させていただきましたが、今後も是非ご利用いただきたく・・・」
「それに関しては機会があればとだけ言っておく。最近どこに行っても視線が厳しくてな、まるでどこの誰かが俺達の事を悪く言ったような感じなんだが・・・知らないか?」
「申し訳ありませんが、存じ上げません」
そりゃ謝罪に来てるのに私が言いましたなんてのは言えないよなぁ。
まぁあくまでも噂という事にしておかないと色々とめんどくさいことになるので、とりあえずこのぐらいにしておこう。
「ま、そりゃそうだよな。とりあえず謝罪は受け入れよう、賠償に関してもその額で問題ない。今後も遊びに行くかどうかについては確約はできないが、その時が来たらまたよろしく頼む」
「ぜひよろしくお願いいたします」
「話は以上か?」
「ひとまずは。ここから先はあくまでも私の独り言なのですが・・・近くコロニーの某所でオークションが開催されるそうです。特定のVIPしか入ることを許されない特別な場で、そこでは市場に出回らない希少な品が多数出品されるとか。聞けば大開拓時代の品がお好きだとか、もしかするとそういう品も出るかもしれません。ちょうど五枚チケットがありますが譲り先が見つかっていないんですよね。一枚100万ヴェイルなのですが・・・どうしたものか」
ほぉ、そう来たか。
賠償しない代わりに極秘オークション的な物に参加できるように取り計らう、そういって来た。
ぶっちゃけ興味はある。
わざわざ向こうが言い出してくるぐらいだからさぞ面白い物が出品されるのだろう。
まぁ、俺が大開拓時代の物が好きだっていうのはあえてアリスが流した情報なのだが、まさかこういう形で実を結ぶとは思わなかった。
はてさてどうするべきか、終始にこやかな表情を浮かべる支配人を前にとりあえず俺も笑い返すのだった。




