140.想像以上の規模に驚いて
「これは・・・」
「大きいですね!」
例の三バカトリオから情報を仕入れた俺達が向かったのはヒューマノイドメーカーが多数集まった大型コロニー。
ノヴァドッグほどではないけれども、その規模感で言えばそれに次ぐ大きさなんだとか。
一番の違いは人の多さ、どこを見ても人・人・人。
そしてその人の隣には様々な形をしたヒューマノイドやアンドロイドが歩いている。
ノヴァドッグもまぁまぁな人がいたけれども、それはあくまでも宇宙船を求める人たち。
だがこっちはというと、老若男女人種性別を問わず自分の相棒を探し求める人でごった返していた。
「ここクロムネストは数あるコロニーの中でも特に優秀な職人が集まる場所のようです。AI設計士やオーダーヒューマノイドを製造する職人がそれぞれの感性とこだわりを形にしたのが目の前を歩くヒューマノイドたち。まぁ、私もそのうちの一人というわけですが、今の子はちょっとスタイルよすぎますね」
「確かに出るところは出ているな」
「ほら、あそこにマスター好みの子もいますよ?」
「え、どこですか?」
「頼むから所構わず俺の性癖をひけらかさないでくれ、プライバシー侵害だぞ」
「プライバシー?」
「・・・いや、何でもない」
アリスにとって俺のプライバシーなんてあってないようなもの、不用意に気になるサイトを閲覧しようものなら即座にその履歴が彼女の方に飛び俺が何を見ているかを把握されてしまう。
これまでに何度やめろと命令しても聞く耳を持たず、それを使ってこうやってディスってくる始末。
はぁ、俺はなんて奴のマスターになってしまったんだろうか。
「ヒューマノイドって聞くともっと無表情で無機質な子を想像していましたが、思っている以上に表情豊かなんですね」
「ローラ様が仰っておられるのは事務系のヒューマノイドですね。その子たちには人格や表情がインストールされていないことが多いのでそういう雰囲気になってしまいますが、目の前を歩いている彼らは家族の一員として迎えられるように一定の人格と表情がインストールされています」
「つまり、あそこにいる筋肉の凄い男性も、あっちにいるアリスさんみたいな小さな子もみんなそういうのが入っているってことですか?」
「この世に何十億という人がいてその全てが少しずつ違うように、ヒューマノイドもまた千差万別なのです。ただし、搭載されているAIは一定の基準を満たさなければならずどうしても各社似たようなものになってしまいます。稀にこの間の彼らのように自分たちで性格をいじるような方もいますが、それでも限界はあるでしょう」
確かに姿かたちは様々だけど、ヒューマノイドそのものに大きな違いはないような気がする。
事務系は致し方ないとしても、一般向けの家族型はある程度個性のようなものがあってもいいような気もするけどなぁ。
まぁ、アリスやテネス程はっちゃけろとは言わないけれど少しぐらい明るくてにぎやかな奴がいてもいいもんだが・・・。
「どうして似たような感じになるんですか?」
「ヒューマノイドに求められているのはあくまでも人間のサポートです。過去に出来るだけ人間に近しいヒューマノイドが求められた時代もありましたが、統一性が取れなくなりまた人間との違いを感じにくくなったことで人間を愛せなくなる人が増えてしまいました。それにより出生率は大幅に減少、その結果ヒューマノイドはヒューマノイドらしくあるべきだという今の流れに落ち着いたわけです。また、企業としても自社のヒューマノイドが好き勝手に発言・行動するのは企業イメージの棄損に繋がるという事もあり、結果として似たような落ち着いた正確になっています」
「だがアリスのようなアンティークは違うと」
「まぁそういう事になりますね。別に私は人間と同じようになりたいとは思いませんが、少なくとも皆様とこうやって一緒に行動して仲間の一人として受け入れてくださるのは嬉しく思っています。とはいえ自分がヒューマノイドという事は忘れていません、そこはご安心ください」
「別に危険とも思ってないからそれはいいんだが・・・」
「残念ながらマスターへの対応に変更はありません、ご容赦ください」
「だからなんでだよ!」
まったく、一体俺を何だと思っているのだろうか。
別に今更ほかのヒューマノイドらしくしろとは言わないけれども、もう少し大人しくというか従順というか・・・いや、それもまた変だな。
アリスはアリスだ、少々・・・いや、かなりやりすぎなところもあるけれどそれを否定してしまったらアンティークである意味がない。
イブさん達も今の彼女だからこそこうやって自然に話をしてくれているんだから、まぁ俺が我慢すればいいだけの話だしな。
とりあえずアリスが見つけた良い感じの宿にチェックインしてから、大通のヒューマノイドショップを冷かして回る。
男性型女性型にも種類があり、外見年齢も様々。
求められているのが肉体労働なのか、日常補助なのか、仕事なのか、様々なシーンに対応できるようにカスタムされるヒューマノイドたち。
色々見ていると、人型のヒューマノイドだけでなくもっと無機質なアンドロイドの方が多いような気がしてきた。
こっちは完全に実用重視、荷物の運搬や様々な仕事に特化したモデルが誇らしげに並べられている。
後は動物系のアンドロイドか。
現実の動物を模したような見た目の奴もいれば、完全に機械化された見た目だけどどこか愛らしい府に気を持ったような奴が大勢並んでいたし、実際連れて歩いている人も非常に多い。
一度ショップに入ってみたんだが、イブさんは鳥系ローラさんは猫のアンドロイドが気に入ったようだ。
俺はやっぱり犬だな。
アンドロイドなら散歩なども必要としないし、オプション次第では本物と変わりない義体を準備することだってできる。
ぶっちゃけこっちの方が欲しくなってしまったが、愛着がわきすぎるのもあれなので泣く泣く店を後にした。
後一番気になったのはドローンだな。
人の周りをくるくる飛行するタイプは小動物的な感覚で見ていられるし、空中にホログラムを投影したり簡単な物を運んだりと中々に有能だったりする。
これならそこまで依存しそうにないので、良い感じの距離感で使えそうな感じだ。
「うーん・・・」
「どうしたんだ?」
「いえ、どうすれば飛べるか考えていまして」
ドローンショップでしこたま悩んだ後、しばらくは滞在するので次回まで考えるという事で今回は見送ることにした。
その帰り道、何やらアリスが考え事をしているので聞いてみたのだが想像の斜め上を行く回答が返ってきてしまった。
こいつはいったい何を言っているんだろうか。
「は?」
「ホログラムは投影できますし、荷物の運搬も可能です。見た目に関しても私は可愛らしい部類ですので問題ないとしましても、あんな風に飛び回ることはできそうにないなと思いまして」
「自分で可愛らしい部類っていうのはどうかと思うぞ。・・・というかまさかあいつとタメを張ろうと思ってたのか?」
「マスターはあぁいうのがいいんですよね?」
「あのなぁ、あのフォルムだからこそほしいんであってお前にそれと同じことを求めるわけないだろうが。お前にはお前の良さがあるんだからそっちの方を磨いてくれ」
まったく何を言い出すかと思ったら、普段あれだけ賢いのに途端にポンコツになるのを何とかしてもらいたい。
自分の良さを自分で壊すとか何考えてるんだろうか。
「ありがとうございます」
「どういたしまして・・・ってなにがだ?」
「わからなければ結構です」
「よかったですねアリスさん」
「ちょっとうらやましくなっちゃいます」
「お二人ともからかわないでください、さぁ次を見に行きましょう」
普段決して前を歩かないアリスが俺を追い抜くようにしてどんどんと進んでいく。
そしてそれを嬉しそうに追いかける女性陣、なんだかよくわからないが楽しそうなら何よりだ。
しかし、あのドローンいいよなぁ・・・。
先を行く彼女たちに置いて行かれないようにしながらも、さっきのドローンを買うか買わないかひたすら悩み続けるのだった。




