第37話 記憶の扉
どうやら第二王女様が取り調べに協力しているらしい。
犯罪者の近くにこんなお偉いさんを連れてきてもいいのだろうか。
凶暴犯だったら怪我をさせるかもしれないのに。
「では、ドルクさん、あなたから見させてもらいます」
見させてもらう?
取り調べって聞くもんじゃないのか。
「あんまり痛くしないでくださいよ?」
ドルクは何をされるか分からないはずなのに、とても落ち着いている。
経験からなるものだろう。
「失礼しますね」
そう言うと、ドルクの頭を優しく持つように手を添える。
「記憶閲覧」
その言葉を最後に、彼女は動かなくなった。
「記憶閲覧」、それが第二王女の固有魔法らしい。
一体どんな魔法なんだろうか。
名前からすれば、記憶を見るようなものだと思うが、実際は分からない。
見られているドルクは、瞬きしながら「何されてんだ」と言っている。
どうやら、見られている側の意識はあるようだ。見られている感覚は無いのかもしれない。
時間にして約十分。第二王女が目を覚ました。
「記憶を...見させてもらいました」
どこか疲れた様子をしながら、騎士団員へ報告をしている。
「彼は嘘を言っていないですね。『神殺し』は別の誰かがやったのであり、彼があの場にいたのは依頼を受けていたからのようです」
「何か怪しい点はありませんでしたか?」
「特にはなかったですね。ただ...神を殺せる人物なんているのでしょうか。記憶を見ても、その光景は信じたくないものでした」
「全ての神が戦いに長けているわけではないのですよ。もちろん、人智を超えた力はあるかもしれませんが、今回に限ってはそれが戦うためのものじゃなかったのでしょう」
話を聞く限り、ドルクは本当に無実のようだ。
牢で嘘をつくメリットも特にないとは思うが。
ドルクも一安心した顔をして、背もたれに体重をかけていた。
次は俺の番だ。
〜〜
インジェニスさんとお話をして、ドルクという方が無実であることが決まった。
今までも記憶を見ては、無罪か有罪かを確かめるために協力してきたけど、ドルクさんのは怖かった。
死の恐怖がとても近くに感じた気がする。
あの男は一体何者なんだろう。
それは一旦置いといて。
次はセン・シルヴァという方の記憶を見なければ。彼も証拠不十分だし、皆さんのために確かめてあげないと。
「それじゃあ次はあなたを見させてもらいますね」
黒髪の少年は返事をすることもなく、スっと頭を差し出してくる。
すぐに発動条件が分かっちゃうの嫌だな。
ドルクさんと同じように彼の頭に手を添えて、固有魔法を発動させた。
「記憶閲覧」
途端に水の中へ沈むような感覚が全身を包む。
これだけはいつまで経っても慣れる気がしない。だって、心臓がヒュッってなるんだもん。
そして気付けばあるところにいる。
なんて言えばいいか分からないけど...記憶の部屋って呼んでる。
まるで図書館のように、日時の記された本がずらりと並んでいる。
探すのも一苦労なんだよね。
「...ッ」
でも、今回は違った。
目を開ければ記憶の部屋ではなく、扉が三つあった。過去にもこんなことが一度だけあった。
隣国の王女を見たときだ。彼女は扉が二つだった。
その時は分からなかったけど、扉を開いて部屋に入った時、どうして扉から始まるのか理由が分かった。
また会おうとした時には、彼女は既に亡くなってしまっていたけど。
久しぶりに扉と出会えて、胸の高鳴りが止まない。
インジェニスさんに協力を頼まれているのに。
彼の記憶を確認しないといけないのに。
体の色んなところが震えて、呼吸の仕方も忘れるくらい、私、レナリア、いや、恋城莉愛は望んでいたのかもしれない。
自分以外の転生者の存在を。




