八十四 ドミニカ、マリアちゃんと飛竜 編 4〈マリアちゃん側のお話〉
ドミニカ視点
さて…この駄犬は放置して置くとして
儂は、少し地図を再確認しておくとするかのぅ
飛んで行くにしろ道筋は確認する必要はある。
飛竜の谷まで、真っ直ぐ向かうとなると…
「ドミニカ様ー。飛竜の谷って事は、魔銀鉱山を通るんですかー?」
…もう復活しとるし。
「…そうじゃのう。魔銀鉱山を通るのが最短じゃな」
でも、儂は鉱山にはあんまり行きたくないんじゃ…
鉱山には、必ずドワーフが近くに村を作って作業しとるからなぁ…
少し遠い目をしている儂を放置し、レイミィは地図を覗きこむ
「他は…幻夢の森を越えるか、竜の湖を越えるしかないですね」
ふむ… 幻夢の森は空から抜ける場合でも幻惑にかかる可能性があるのぅ。
竜の湖は水竜の巣…確実に絡まれる…
安全を考えると…、鉱山しかない…か
はぁ…
「ドミニカ様は、ドワーフが嫌いですもんね」
ため息を吐く儂に、レイミィが笑顔で言う
別に、嫌いな訳ではない…
「儂が…ドワーフと間違われるのが嫌なだけじゃ…」
ぱっとみ、幼女。しかも、喋る言葉は年寄り臭い…
間違がえるなって言う方が、無理なのもぶっちゃけ分からんでもない。
でも…、歩けば、必ず話し掛けられる…。
散歩してるドワーフが珍しいのと、鍛治をしてない=フリーな状態。だと、分かるから鍛治を依頼をされる
基本的にドワーフが、鍛治場か鉱山から籠っとるが故に…本当に嫌にもなるわぁ!!
しかも、儂と女ドワーフの見た目の違いは…髪色と耳が尖ってるか、尖ってないか。それだけじゃもんな…。
まぁ、男ドワーフなら髭の生えた小柄の男性じゃし
間違われる事はないんじゃがなぁ…
「そう言えば…ドミニカ様、魔銀鉱石が違法で大量に取引されたって噂が…」
…おん?なんじゃそれ
「…レイミィ、詳細を話せ」
儂が真顔で問うと、レイミィも真剣な表情になる
…いつも、これくらい真面目なら良いものを…
「えっと、ですね…。魔銀鉱山での定期報告での鉱石の量が噛み合わないとの情報と…ぼくの暗部の報告で、とある貴族が違法取引してると…」
ふむ…。レイミィ直属の暗部の報告ならば間違いはないだろう。
こやつの情報網は流石じゃな。伊達に王家の血筋なだけはある
獣人は、種によって髪色が決まっておる。
狼人族ならば、灰色。兎人族ならば、茶色。猫人族ならば、青や黒色。など
じゃが…全ての獣人族の王族にのみ銀の髪色が継承される。
これは獣人の元となる存在の色が銀色だった故に、最もその血が濃い王族が色を引き継いでいると儂は仮説している
まぁ…ぶっちゃけた話、その辺は分からん。創造神フレアリード様の意図など儂に分かるわけがないのじゃ
言いたい事は、レイミィは紛れもなく王族だと言う事じゃ
正確には、レイミット・ウルフェー第六王女。
当の本人は、王家とか血筋とか全く興味がないらしいが…。
で、ふらっと城から抜け出して旅の途中で行き倒れてる所を儂が拾った訳じゃよ。
一応儂のギルドに落ち着いてからは、こっそり家族に手紙は出してるらしいが…。回収に来るのが王家直属の暗部…。
…そう言えば、ヒカリ達と一緒にいる兎人の娘も髪が銀色じゃったような…。
まぁ本人達は隠す気無いみたいじゃし、儂がとやかく言う必要はないじゃろ!
それに、獣人の国周辺は儂の守護の範囲では無いし。
ちなみに、冒険者ギルドの役員より強い護衛は居ない。だから、レイミィを護衛する者は必然的に居ない。
一応、ギルド役員は儂の加護の対象になっておるから
な
下手な騎士より遥かに強い。
っと、魔銀の違法取引の話の途中じゃったな。
…ん?なんか、隣が静かじゃな…?
「んー…。…くんくん…ドミニカ様より…少し甘い香り…」
って、この駄犬またマリアの匂い嗅いどるー!?
マリア本人は抱き付かれて困惑はしてるけど、抵抗はしてないし…
「…すん…すん…ずっと嗅いでられるぅ…。ドミニカ様は、すぐ止めるから長く嗅げないけど…」
いや、普通止めるじゃろ?他人に匂い嗅がれるとか普通、嫌じゃろ?
儂がおかしいの?
「…良い匂いするの?くんくん…んー、分かんない。」
たまに、マリアは自分の腕をすんすん嗅いで、首を傾げてる
いや、人族と獣人族じゃ嗅覚が全然違うから匂いの違いとか分からんよ。
とりあえず、この駄犬をマリアから引き離すとするか…
レイミィの首根っこを掴んで…引っ張る
「あぅー…もう少しー!!」
うん、駄目じゃ。
「マリアも!少しは抵抗せんか!!」
苦笑いしてるマリアにも言っとく
「あはは…はーい。」
…これじゃ、これからも抵抗しなさそうじゃな…。
さて、真面目な話。
儂は、魔銀鉱山を飛んで越えて行くつもりじゃったけど、
魔銀の違法取引の詳細をドワーフの村で確認する事も必要じゃ。
でも、そうすると飛竜の谷に着くのがかなり遅れる
のんびりやっとる訳にはいかん。間に合わなかった…じゃすまんからな
ふむ…どうするか…
「ドミニカ様ー。ぼくがドワーフの村で調査します。」
むぅ…。レイミィ一人でやらせるのは流石に…
「ぼくはそう言う事を調べるの得意ですし、終わったらドミニカ様を追い掛けるのもぼくが適任。だって、ぼくは狼人族ですから。長時間走り続けるのも大丈夫!」
…確かに、狼人族は獣人の中でもタフな方じゃが…
少し無茶じゃと思う。魔銀鉱山と飛竜の谷は結構、距離があるし…飛竜の谷はかなり奥地じゃよ?
じゃが、ここまでやると言っておるんじゃ。やらせるしかないか…
「…分かった。お主に任せる」
少し不安ではあるが…
「大丈夫です。しっかりやります!」
ここまで、やる気出してるんじゃから
しっかり頼むぞ?
「…ですから、少し…ドミニカ様の香りを補充させてくださーい!!」
…は?
「ちょっ、ま」
レイミィにいきなり飛び付かれる儂
そのまま、ベッドに押し倒される。
「うへへ…すぅー…はぁー…」
これ、引き離したらやる気無くす奴?じゃよな…
あー…もう好きにせぃ…
…しばらくの間、レイミィに匂いを嗅がれておったぞ…
数時間ほど経って、ようやく解放されたわ…
「むっふー。満足!」
レイミィは凄く艶々しとる。
儂?やつれておるよ…
じゃって、数時間も抱き付かれて胸元の匂い嗅がれつづけるんじゃよ?…たまに嗅ぐ場所変えてたみたいじゃが…
儂、途中で思考放棄しとったから知らん。
さて、薄暗くなってきたし
そろそろ出発するか
まずは、レイミィとマリアを異空間に入れんとな
とりあえず、放り込んでおけば良いか?
一応、即席の部屋に放り込まれるようにしたが…
…いや、レイミィはともかく
マリアには、レイミィが勝手に出歩かないように言っとく必要があるか…。奴に言った所でどうせ聞かんからな。
という訳で、レイミィは問答無用で先に放り込むか
「…へ?ドミニカ様?」
レイミィを手で掴んで…魔力で包む
まぁ、一瞬で目の前から消える訳じゃけど…
「わぁ…」
マリアは、すでに儂の出入りを見とるからな
驚く様子もあんまり無い。
「先に言っておく。マリア、レイミィと二人で大人しくしとるんじゃよ?他の部屋は、かなり危険なものもあるんじゃ。勝手に出歩いてはいかんぞ」
「…?はーい」
儂の言葉を聞いて、良く分かってないマリアが頷く
よし、ではマリアも異空間に放り込んで…っと
ふぅ…
後は、人気の無い所で天使に戻って…
飛び立つだけじゃな…
「うふふ~…。魔銀の件も~、これで~後処理の方は大丈夫~ですね~」
建物の影から、薄桃色の眼光がドミニカを見つめてる
その横に、すっ…と紫色の髪の女性が現れる
「だいたいの後処理は終わりました。後は飛竜だけ」
「ですか~。でも~想定通りなら~…」
紫色の髪の女性が頷く
「その予想通りになってます。赤青頭が、引き連れて飛竜の谷に向かってるみたいです」
「まぁ~、マモンなら~絶対に~そう動かします~よね~」
薄桃色の瞳を閉じて、うんうんと頷く
そして、笑みを浮かべる
「で、アスモ様はこの後はどうなさるんですか?」
「そうですね~…。一応は~このまま~ドミニカさんの様子見~ですかね~?マリアには~死なれると~非常~に困りますし~。その後は~、双子天使さん達の~様子も~見に行く~予定です~」
影から姿を見せる。衣装は見慣れたメイド服
しかし、その姿は大きく変わっている
翼は数倍大きくなり、肌は青く、白目が黒く、瞳が薄桃色に…
「じゃ、アタイは次の準備にでも移りますかねー。」
「…貴方は~最後まで~話し方を~維持できないの~?」
「あっ…やべっ…」
紫色の髪の女性は、慌てて逃げるようにその場から離れる
「も~すぐ逃げますね~。…さて~私も動きますか~」
薄桃色の瞳で、ドミニカが飛んで行った方向をじっと見つめると、そっと…その場から消える




