八十二 ドミニカ、マリアちゃんと飛竜 編2〈マリアちゃん側のお話〉
引き続き、ドミニカ視点
儂らは、馬車で王都を出発したところじゃ
いやぁ、隣街行きの馬車があって良かったのぅ
お陰で、マリアと二人で銀貨小四枚で済んだ。…ん?四枚…?儂、子供扱いされとらんかこれ…?
まぁ良いか。
馬車を一台丸々借りるのは、少々金がかかるし
儂の所持金は極力使いたくないからの…手持ち少ないのじゃ…。全く、ラーンの奴め…!ケチ臭い…
さて、気長に馬車の旅でも楽しむかのぅ
隣のマリアも戦闘用の防具に着替えておるが、馬車旅を楽しんでおる
隣に座るマリアの防具の見た目は、綺麗なドレス…とは言っても魔力保護されてる白い戦闘用のドレス。所謂、バトルドレスと言う奴じゃな。
聖女やお姫様なんかが戦場に出る時に着る奴じゃ。
魔力による障壁保護がされておるし、胸当てやスカートアーマーなんかには魔銀が使われている。生半可な攻撃なら衝撃すら通さん作りじゃ
特に、聖女は魔力溜まりによる瘴気の浄化や、瘴気によって生まれるゾンビ、骸系や悪霊、死霊系なんかの魔物の討伐に駆り出される事が多いゆえ、使われる素材が常に最高級な物が選ばれる。
それはマリアのバトルドレスにも例外はない。最高級の素材で作られたこのドレスなら、ワイバーンのブレスが当たっても火傷どころか、熱すら感じぬかもしれんのぅ
ちなみに、ヒカリにはバトルドレスは用意されておらん。ぶっちゃけ必要ないからの。
後は…浄化についてじゃが
実は、浄化は神官でもやれるのじゃ。まぁ、聖女に比べれば効果が段違いに低いんじゃが…。
聖女には光魔法や治癒魔法の効果を引き上げる力が備わっておるからな
まして、神官が光魔法、治癒魔法の適正の最大が大方、8~5なのに対し聖女は必ず両方共10まで上がる。治癒魔法のLv10は部位の欠損すら直せる。
故に、聖女は国としても保護を優先するのだ。
人族からすれば守護の象徴。人族に敵対する者からすれば、聖女はまさに天敵であり、脅威でもある。
まぁ、聖女自体が少人数しか生まれんようになっとるから、そこは人数でバランスで補っておるらしい。ヒカリ?あれは論外。だって天使じゃし
現在、聖女の数は聖国に一人、帝国に二人、王国に一人か…。
…ん?
おおっと、マリアがこっくりこっくり…と船を漕いどる。まだまだ子供じゃな。
よしよし、儂の膝の上に頭を乗せて寝かせてやろう。
うん?他の乗客が皆こっちを微笑ましく見てる…?
…なに!?幼女が幼女を膝枕させてる…?
見た目故に言い返せん…ぐぬぅ。儂…お主らより遥かに年上じゃぁ…
だから、暖かい目を向けるでない…!!
…ぐぬぅ。儂を知らんからって…
って、おうっ!?なんじゃ!?馬車がとまった…?
とりあえず、隣の夫婦にマリアを預けて馬車の外を見て見るか…
むっ…賊か?王都付近で…とは、珍しい
数は…馬車を十五、六人ほどで囲んでおるな。人を運ぶ馬車なんぞ襲ってもあまり意味ないと思うが…?
護衛もおるし。…って、護衛四人だけか。ちと、分が悪そうじゃな
「…すいません。お客様の中で戦える方は居ませんか?」
やはり…馬車の御者が、馬車の中へ助っ人を求めておる
じゃが…儂を除いて、見るからに一般人しかいないのぅ。若い夫婦、老人、家族連れ…冒険者なんかは残念ながら居ないのぅ
これは、仕方ないかのぅ…余り遅れるのも嫌じゃし。手を貸すかの
「儂が手を貸す。その代わりタダではないぞ?」
儂はピョンと馬車から飛び降りる。
他の乗客、護衛の冒険者、御者の全員が馬車から飛び出た儂を見て、ぎょっ!?としておる。全員か…。皆、儂の事しらぬのか?特に冒険者パーティー…儂は、お主らのギルドのマスターじゃよ?
「やれやれ…。お主らのランクは?」
呆けてる隣の冒険者の男の子に儂が声をかける
「は?…え?みんなDだけど…?」
一般冒険者のランクじゃな。それでなぜ儂を知らんのじゃ?
「ふむ…なら、お主らのパーティー名は?」
冒険者達、困惑しとる。後、賊も何だかんだ待ってくれとるの
「し…疾風の翼」
たしか…ここ最近登録された、新しいパーティーじゃったか…?なるほど、まだ知識不足じゃな
「あい分かった。お主らは儂が帰ったらお説教じゃ。儂の事詳しく知りたかったら、ギルドでラーンかレーンにでも聞くがよい」
冒険者達がラーンとレーンの名を聞いて固まる。あやつらは何だかんだ、ギルドで人気者じゃからな
さて、待たせたのぅ
腰の魔法袋から巨大なハンマーを取り出す。ふむ、こいつを使うのは久々じゃ。古龍ゾンビの時は大斧じゃったし
儂の愛用武器じゃ。破砕槌ブレイクハンマー
名前の通り、巨大な金槌である
そのハンマーを片手で軽々持ち上げ、振り回す儂。
…うむ。やはりコイツは、手に馴染むのぅ
「えっ…あぁっ!?…まさか…」
儂のハンマー捌きを見て、隣にいる冒険者の女の子が青ざめておる…儂の名に気付いた様じゃの
「ふむ、たまには儂が指揮に従ってみるのもいいじゃろぅ。ほらお主、リーダーじゃろ指示せんか」
儂が隣の冒険者の男の子を急かす
まぁ多少のミスなら儂がなんとかしてやる。
「あ…えっと…」
…遅いっ!?本当にリーダーかこいつ!?あーもぅ…
「儂は勝手に動く!お主らも好きにせい!!」
さて…儂は馬車の左側面に居る、遠距離の奴らから先に片付けるとするかのぅ
ハンマーを構え、一気に加速する。
弓を持ち馬車を狙ってる盗賊の正面に現れる儂。驚いてる盗賊が反応する前に、ハンマーを振るう
「はや」
盗賊の言葉を遮るように、そのままハンマーが顔面に叩き込まれる
グシャっと潰れた音と共に、その盗賊は倒れる
…ついでに、近くの盗賊達も叩き潰しておくかの。
「せい!」
近くで呆然としてる二人も、まとめてフルスイングで叩き潰して…ふぅ。
お次は…っと、もう近くには居ないのぅ
ふむ…。
儂が動いたのが開戦の合図になったらしいのぅ
なんだかんだ、冒険者パーティーも善戦しとる
弓使いと魔法使いが盗賊の遠距離を封じて、前衛二人が的確に数を減らす。理想的な動きじゃな
…じゃが、想定外が起きると崩れやすい陣形じゃ
例えば…弓使いや魔法使いが不意討ちを受けるとかのぅ
今、まさにそれが起きようとしておる
草影をアサシンが、隠れながら進んでおるからな…。狙いは遠距離の二人じゃな。
盗賊の中に手練れなアサシンが紛れとるとは…普通は思わんよ。
背後までアサシンが来とるのに…遠距離二人は気が付く様子なし…か。
っと、もうアサシンが弓使いの女の子の近くまで来とる。このまま静観なんてしとったら、後味悪い。
しょうがない…儂が黙って処理するか…。全く、気が付いてないしのぅ…あの二人。遠距離組の二人は、後で説教決定。
…さて、そろそろ殺るか
ハンマーを構えて、再び駆け出し加速する
短剣を構えるアサシンの前に、いきなり儂が現れる。不意討ちなぞ、やらせんよ?
「っ!?」
「反応が遅いわ!!」
驚いて固まるアサシン
儂は、その隙を逃さずに、フルスイングして胴体にハンマーを叩き込む
「げばっ!?」
アサシンは吹き飛び、そのまま動かなくなる
ふぅ…これで、一先ず大丈夫か。
再び、戦場を確認する
うむ、冒険者パーティーが盗賊の数を減らして優勢になっとる
儂はもう必要ないじゃろう
そのまま、戦闘を最後まで見届け
冒険者パーティーは、無事に盗賊の討伐を終えた。
成果は上々。被害は無し。うむ、完璧じゃ
ちなみに、冒険者パーティーは全員儂の前で正座させておる
さて、少しお説教のお時間じゃ。
まず、お主ら
「なぜ、儂を知らぬ?分かる者は手を上げよ!」
「…は、はい」
さっき反応した弓使いの女の子が、恐る恐る手を上げる
「冒険ギルド総本部のギルドマスター、ドミニカさんですよね?」
「「「えっ!?」」」
他のパーティーメンバー達が一斉に反応する
そりゃあ、普通なら知らないとヤバイからのぅ。
「うむ、ドミニカじゃ。自分の所属するギルドの長の顔位覚えておれ!お主ら」
即座に、儂は三人にデコピンをする
「あたっ!?」
「いたっ」
「あぅ…」
今回はこれで許してやろう。まだ言いたい事あるが、馬車を余り待たせるわけにもいかんし…
でも、これだけは言っておく。生死を左右しかねんから…
「リーダーのお主は、もっと素早く指示せんか!」
「すいません」
「遠距離二人も、不意討ちに気を付けんか!さっきは危なかったぞ!!」
「「すいませんでした…」」
ふぅ…このパーティーは、まだまだ未熟じゃな。
じゃが、筋は良い。
もう少し、周りを確認すればアサシンにも気が付いたと思う位には動けておったからな
っと、儂はそろそろ馬車に戻るか。
お説教は帰ってきてからでも、たっぷりと出来るしのぅ
今は移動が優先じゃ
「お主らのお説教は、儂が戻ってからギルドでたっぷりとしようかのぅ…。」
ちょっと圧をかけながら儂が笑顔で言うと、四人ともに顔色を真っ青になっている
…あんまり圧をかけすぎても、護衛が不安になるかのぅ
このくらいで、勘弁してやるとするか…
「護衛の仕事ぶりも、見とるからな。」
さて、青くなってる冒険者どもは、置いといて儂は馬車の中に戻るかの
儂が馬車に戻ると、他の乗客の反応が少し変わっとる。
どうやら、儂の強さに驚いて戸惑ってる様じゃな
儂の強さと見た目のギャップは天と地程の差だと、ラーンとレーンに良く言われておったな…
まぁ…よい。…マリアは隣の若い夫婦の奥さんに、膝枕してもらってまだ寝とるな。
割りと、戦闘中でかい音してたと思うのじゃが…
それにしても、王都の近くで盗賊が現れるか…。
そこまで、優秀では無かったがアサシンまで居るのが気になるのぅ…。
普通、アサシンは闇ギルドに金を払い派遣される。
しかも、その契約金は洒落にならん。まして、盗賊に雇えるほどの資金があると思えん。
なにより…あの程度の盗賊に、アサシンを派遣するなんてアサシンを無駄死にさせてる様なものだ。
闇ギルドの連中がそんな事するか…?
うーむ…考えると余計に分からん…。
…その後は、二日ほど馬車で揺られておったが、特に問題は起きず、隣の街フールに到着した。
結局、盗賊関連は分からず仕舞い。帰ったら調べること増えたのぅ…
後、盗賊との戦闘の件で馬車賃が無くなった。しかも、護衛代まで貰ってしまったのぅ。
疾風の翼は気にしてなさそうじゃったが、報酬減ってると思う…すまぬ
とりあえず、このお金はマリアへのお小遣いと言う事にしておこう。
さて、まずは宿の手配じゃな。
ギルドに行けば、無償で部屋借りれるが…せっかくじゃ、旅行気分で宿を取る方向で行こうと思う。
…まぁ、ギルドには顔を出すつもりじゃが…




