四十一 本選、レオニート
引き続き、恵の視点
セレナーデとの試合後、案の定多くの人達に待ち伏せされてた
私は気付かれないように、こそこそと人の居ない所を進む
けど、このままだと姉さんの所には行けないし
次の試合までは結構な時間もある
誰も居ない部屋にでも隠れてる?
丁度、近くに倉庫があったので、そこで時間を潰そうと思う
中に入り、置かれている物を手に取る
んー…ボロい剣ばっかり…コロシアムの剣闘士用のやつかな?
こんな剣じゃろくに戦えないと思うけど…
ん?…誰かきた?
私はとっさに物陰に隠れる
現れたのは、フードを被ってる二人組
多分、本選に残ってる二人だと思う
「ガキが解放されてたのか!?」
「ああ、セレナーデはもう使いもんにならん」
「王族襲撃は人数不足で出来んし、聖女を襲うのも失敗した」
「残るのは、優勝して王から褒美を貰うタイミングで王を殺すだけだが…」
「聖女の妹が強すぎる…我々では勝ち目ないぞ?」
「なら、最後の手を使うまでだ」
「なっ!?…観客にまで被害が出るぞ!!?」
「それに、上の連中が…」
「黙れ!!」
「っぐぅ!?きっ貴様…」
「もう手がねえんだ。なら国ごと滅んでもらおうじゃねえか」
仲間…刺し殺した…
奥の手?そんなにやばいのか?
それに、決勝でしか当たらなくなったな…
フードの男が去ってから、私は刺し殺された男の遺体に近寄る
…胸に一撃か…ほぼ即死だ
フードを取ると、側頭部に角が生えてる
魔人族って奴かな?鬼人族はおでこに角生えてるらしいし
ん?なんか変なコインだ…中央に化物?が彫ってある
書かれてる文字…龍神教?なんだか物騒…
とりあえず、龍神教のコインは懐に仕舞って、あとでドミニカにでも見せよう
その遺体を一通り調べたけど、後は特に何もなかった
時間潰すつもりだったのに、遺体と一緒は嫌だし
どうしようかな…
「あら?事件かしら?」
ルーファ…なんで後ろにいるの?
「私は何処にでもいるのよ~?」
この堕天使ふざけてるの?それとも本当の事?
何処にでも現れるらしいし本当の事か…
「それにしても、こいつら何をやらかす気なのかしらね?」
ふふってルーファは笑ってる
…こいつ何処まで知ってるんだ?
私がルーファを睨む
「別に繋がってたりしないわ。自分の使徒に被害が出るようなのとは組まないわ」
ルーファが、はぁー…やれやれと呆れてる
いや、よく分からないお前が悪いでしょ?味方かどうかも未だに分かんないし
「まぁ良いわ、この遺体は私が処理しとくわ。あぁコインはドミニカにでもみせなさい」
「…龍神教って何?」
「あら?聞いちゃうの?んー…そうねぇ古龍王が生きてた時からある古い教団。女神教を異端とした、古龍を崇める組織…かしらね」
「でも、龍が神になったりはしないでしょ?」
「そうでも無いわよ?古龍王は龍神になりかけてたから女神に討伐を指示されたんだし」
え?古龍王が龍神に?もう何がなんだかわかんない…
と言うか、なんでルーファそんなこと知ってる?
ルーファ笑ってるし、聞いても答えなさそう…
「まぁ、今は剣舞祭に集中しなさい。じゃ私は行くわ」
遺体を掴んで、ルーファは空間を割って消える
相変わらず、ルーファのこれ分かんないな。魔法なのかスキルなのか…
っと、そろそろ試合確認しとかないと…
Aレオニート、B私、Cアルバート、D獣人の戦士、Eフードの男、F人族の剣士
Cのアルバートは相手が来なかったらしく、不戦勝
Dの獣人の戦士は力で押しきって勝利したらしい
Eはルーファが棄権したから当たり前
Fの人族の剣士はそこそこ苦戦したらしいが、最後に逆転して勝ったそう
…知り合いと二連戦になりそうだけど、…アルバートは獣人の戦士に負けそうでもある
レオニートか…大剣士な上、近接格闘も使うんだよね
なかなか面倒な相手になりそう…
後、セレナーデ戦で<飛び烏>を作ったせいか、スキルに自己流派と武器スキルに自己流剣術が追加されてた
自己流派は文字通り、己の流派の開祖になるそう。独自の剣技を編み出せるようになるとか…
自己流剣術はその編み出した剣技を武器スキルとして使う際にそこから発動するらしい
つまり、<飛び烏>はこれのお陰であそこまでおかしくなった
後、おまけで考えてた<飛び雀>も剣技になってる
自己流派…これから色々聞かれるだろうし、天真流とでも名乗ろうかな…どうせ今は私しか使えないし
〈本選AレオニートBメグミの試合が始まります。お二人は受付にお集まりください〉
時間か…知り合いでも手を抜くのは失礼だし
真面目に行くか
受付まで行くまでに何人かに声かけられた
ほとんどが女の子だったけど。ファンになったとか、キャーキャー言われた…
メグミ様って熱い目線で見つめられてたのは良く分かんない…
さて、コロシアムの中央に入る
私の姿が見えると、歓声が一気に上がる。…流石にびびったよ…姉さんもこんな感じだったのか…
「おう、メグミ人気者だな!」
レオニート、相変わらずだな。
〈メグミ、入場してきましたね。いやー…セレナーデとの試合後、姿を隠してたのでいったい何処にいたんでしょうかねー?〉
〈恥ずかしくて隠れてたんじゃろ?〉
〈レオニートとは知り合いだそうですけど、この試合もたのしみですね〉
〈あ奴は大剣を器用に使う上、近接格闘で隙を潰す戦術じゃから隙を狙う戦いは出来んじゃろう〉
ドミニカ…好き勝手言ってるし…間違いじゃないけど…
「なんでこんなに騒がしくなったんだ…」
「お前の強さに魅せられたんだろ?。俺も楽しみにしてるぜ?」
「私は…特になにもしてない」
一瞬、<飛び烏>が頭に過ったけど…あれドミニカも驚いてたな…
「まぁ…手は抜く気ないけど」
「おぅ。胸を借りるぜ剣聖」
レオニートはやる気満々だ…格上に見てるね…誰だ!?貸す胸無いって言ったの!!?斬るぞ!
肩に乗せてた大剣を両手で持ち、構えるレオニート
私もいつも通り、居合いの姿勢で待ち構える
〈試合は始まってます…が、二人とも構えたまま動きません〉
〈当たり前じゃろ?二人とも達人並みじゃ。不用意に近寄れるわけなかろう〉
実況にドミニカ呆れてる
でも、素人だと剣の間合いとか分からないだろうし、仕方ない
「んじゃ、こっちから行くぜ<鎧砕き>」
レオニートの大剣が横から振り抜かれる
危な…武器スキルで威力底上げしてる
刀で受け流しても、あれだと折れてたよ
「避けたか。いつもの戦い方なら受け流しやると思ったんだがなぁ」
「武器破壊狙いか…」
ただでさえ、刀で大剣なんか受けたら折れるのに…
ならこっちも破壊狙いする?
また即席の剣技作るのか…
もう開き直る!イメージは刀を魔力を纏わせて、そして当てた瞬間流れ込み中から破壊する
よし、こんな感じかな…
「行くよ<金剛破>!」
「?おい…」
レオニートの大剣に刀の先端を当てる
私の刀は魔力を纏ってる
当てた瞬間、大剣に纏ってる魔力が流れ込む
「な!?…え?…」
バキッとひびが入ったと思うと、バキバキっと音がする
最後には、大剣がバキンッと折れてしまった
「おお。予想通り」
私、満足
レオニート唖然としてる
〈お主はぁぁぁ!?またぁぁぁぁ!?!?〉
ドミニカまた発狂してる
もう開き直るから気にしない
「仕方ねぇ…」
レオニートは折れた大剣を放り投げ、素手で構える
格闘術?もしかして、そっちが本命?
レオニートが地面を蹴ると直後、私の前に現れる
ちょ…速…
私はとっさにレオニートの手のひらを刀で受ける
メキッ…やばい…刀から変な音した…
〈あれは!覇王流の阿修羅!?〉
〈覇王流は人数が少ないゆえに使い手が居ないと言われとるが…あ奴は使い手だったか〉
〈確か、素手での戦いを禁止されてるとの話ですね〉
〈開祖の弟子が素手での試合で、相手を殺めてしまってそうなったらしいぞ。武器を失ってから本気になる流派じゃの〉
なにそれ、聞いてない
レオニート何か纏ってるし
魔力?覇気?雰囲気違うし気を抜くと負けそうだ…
でも刀…レオニートの初撃で変な音しちゃったし、負荷かけられない
レオニートの踏み込みが速く、私は受け流すのでやっとの状態だけど
どうする?このままだと勝ち目ない。でも無茶したら折れる…
レオニートの拳は魔力纏ってるし、かなり強固。真正面から行ったら確実に折れる…
だけど、距離は取らせてくれない…多分、転移も前の試合で使ったから読まれてる…
なら、もういっその事刀捨てるか?
私も武器を失った時用の体術は覚えてる
問題は、レオニートほどの使い手じゃない事…長時間の戦闘はほぼ無理
出来るのは一瞬、不意に一撃を入れる事くらい
やるタイミングは刀で拳を受ける時…
レオニートがまた地面を蹴って近付く
よし…刀で受け止める…
拳が刀に当たる瞬間に手を離す…刀がバキンって折れた…
このタイミング…!
「〈発破〉」
レオニートも反応したけど遅い!
私は手のひらに魔力を込めてレオニートに叩きつける
レオニートの体からドンッと音がすると、レオニートは崩れるように倒れる
〈な…なにが起こったのでしょうか?私には何がなんだか…〉
〈……〉
ドミニカは無言でこっちを見てる…目が鋭い…
〈と…とにかく、レオニート気絶。メグミの勝利です!〉
実況の一言で歓声がわーっと上がる
…ドミニカまだこっちを見てる…怒ってる?
うん、逃げよう…
あっ…刀…折れちゃってた…しょぼん…
折れた刀を見て、しょんぼりしてる私をドミニカが捕まえて、小部屋に放り込まれた…痛い…放り込まなくてもいいじゃん…




