十五 妹が見た姉の本気 《過去のお話》
妹の恵が語り手
子供の頃の…天使になる前のお話をしたい
私、天間 恵は双子で姉の天間 光とほとんど一緒にいる
私が剣術の道場で鍛練してれば、光はにこにこして参加してくる
ただ、姉は運動能力が全くない。周りから見てもすぐわかるほどで、何しても上手くならなかった
逆に私は運動関連はだいたいできる
よく、姉の光が私の運動能力丸ごと妹に取られたーと、ふざけて言う事がある
周りの人は姉の冗談を真に受けて聞いたりしてる
でも、私は姉の身体能力が条件ありで、解放される事があることを知っている
まるで、セーフティでも付けられてるんじゃないかと思うような
圧倒的な身体能力で有り得ないような力を出す
火事場の馬鹿力とか似てるけど、うん…あれは違う
妹の私ですら、恐怖したから
あれは確か、まだ私達が8才の時の雨の日だった
私はいつもの様に道場で夜まで鍛練をしていた
先生や姉と一緒に七時まで
ただ、あの日はたまたま姉が忘れ物したと帰りの途中で道場に戻ってしまった
そこで、私も一緒にって姉に付いていけば、あんな目にあわなかったんだろう
私達の道場は元々あまり強くなかったらしい
私が道場に入ってから、道場の名前が売れだした
確かにあの頃は腕前をめきめき上げて試合では無敗全勝
調子にのってた…うん、間違いなく
帰り道で、ライバルだった道場の前を通るんだけどね
まさか、相手の師範代まで私を目の敵にしてると思わなかった
多分二人で帰ってた場合、いつもどおり挨拶して終わりだったと思う
「ちょうど良かった。少し鍛練していきなよ」
ライバル道場の師範代が声をかけてきた
多分一人だったから好機に思ったんだね多分
「お姉ちゃんが来るまでならいいですよ」
子供だった私も警戒心がなかったのも問題だったかも
「連続試合でもしよう。君は強いから負けるまで連続だ」
この時点でおかしいのが分かるんだけどね
最初のうちは一対一だった、強いから二対一まだこの辺なら分かる
「あの…四対一は流石に無理です…」
三対一の試合にぎりぎりで勝利した辺りから休ませてすらくれない
違和感と恐怖を感じ始めてた
…私の子供が一斉に来ると怯えてしまうのは、この道場の師範代による、私を再起不能にするための作戦にやられた後遺症…トラウマ
…簡単に言えば、子供相手に、道場に引きずり込んで複数人で鍛練とかいいながらタコ殴り
相手も子供だからたまたま運が悪かった
で済ますつもりだったらしい
「そろそろ本格的にやるか」
「あの…帰っても良いですか…」
流石に私もやばいと思い帰ろうとしたが、まぁ囲まれてるし無理だった
「一対三十人の同時戦を開始する」
最初は私も抵抗してたけど、さすがに三十人とか相手じゃ無理だった
「やめて!無理だよこんなの!?」
一人や二人ならまだなんとかなったけど何人もましては、休憩なしでぶっ通しで疲れもたまっている
不意を突かれて竹刀を叩き落とされてしまう
剣道と違い身を守るものもない、まして竹刀を落とした時点で本来なら負けで終わる
一対一なら小手術とかで抗えるがこの暴力には無意味
私もここで流石に気が付く、あぁ私の事を壊す気なんだと…
(…なんで?…私ただ真面目にやってただけなのに…)
叩かれてとっさに丸くなり頭を守る、でも叩いてくる本数も多くて手加減も一切ない…痛い…
私は涙を流しながら
「…痛…い…お姉…ちゃん…たす…けて…」
と呟いていた
「恵ちゃんここに居るって聞いたよーどこー?」
道場の扉を大きく開いて、光はきょろきょろしながら歩いてくる
まぁこの光景見ちゃうよね
「なにしてんのー!!?」
いつもにこにこしてる光が真顔で叫んだのには私もびっくりした
そこからがヤバかった
光の忘れ物が訓練用竹刀、少し重いやつだった。私が明日から家で鍛練に使うって言ってたから取りに戻ったんだって
その竹刀で叩いていた門下生を殴り飛ばす
「なっ!?そいつを止めろ!!?」
師範代が慌てて光に門下生を向ける
慌てるよねだって光は運動能力皆無って皆が知ってる事だもん
そんな光は、竹刀を出鱈目に振り回す、基礎すら覚えて無いから振り回してるだけなんだけど、竹刀を振る速さが有り得ない
速すぎて、私や師範代でも見えない
しかも、いつもはのんびりしてるのに、この時は縮地?なのかな、地面を蹴ると一瞬で近付いて竹刀を振るう
「お…お姉ちゃん…」
あまりの光景に私は唖然としてたと思う
だって、今までは私がお姉ちゃん守るんだ!って思ってたからね
まさに無双状態、たった数十分で門下生を全てなぎ倒す
光は門下生を全滅させると、師範代に向かう
その時の顔がね…お姉ちゃん笑ってたんだよ
「ふふっ…だめですよー。こんな一人を一方的に殴るなんて、これじゃ鍛練じゃなくて虐めじゃないですかー」
光はブチギレてた
まだ子供なのに敬語まじりの話し方は光が怒るとなる癖みたいなもの
笑いながら師範代に一瞬で近付いて竹刀を振る
見えない速度の竹刀じゃ対策のしようがない
師範代が一方的にぼこぼこにされる
普通なら有り得ない
「お…お姉ちゃん、も…もういいよ。死んじゃうよ」
流石に反応が薄くなって動かない師範代にまだ殴ろうとする光を私は怯えながら抱きついて止めた
「んー?、恵ちゃんが良いならやめよっか」
私の顔見て、光はにこっと笑って
「帰ろー」
私と手を繋いでいつものにこにこ顔で歩き出す
私はしばらく怖くて、震えてたけど光の豹変ぶりもあまりに恐ろしくて、助けてくれた光が近くに来てもびくびくしていた
「恵ちゃんまだ怖いのー?大丈夫ー?」
光自身は気が付いてなかったからよかったけどね
その後、ライバル道場はしばらくすると無くなってた
両親が何かしたのか?お姉ちゃんがなにかやらかしたのか?詳しくは分かんない
まだ子供だったから…光も同い年なはずなんだけどね
何かしてても可笑しくないと思っちゃうんだよね、光は
まぁ何が言いたいのかと言うと、私より光…姉は私より遥かに強い
ただ、セーフティがかかってる
多分、大切にしてる人が理不尽に傷付くと解除されるんじゃないかな?
ん?なんでそんな話したかって?
多分だけど、光の今の体である大天使も同じ様にセーフティが付いてるように感じるから
光がステータス見た時に私もみてたんだ
大天使だけステータスとスキルの配置に違和感があった
何か、続くような感じで…
あと、大天使が天使の中で最上位なはずなのに、たいして私の守護天使と差が無さすぎる
女神が配慮したにしては、大天使を下げる必要はない
後、私のスキル構成が大天使の盾になるの前提なんだよね
私自身は姉の盾になるつもりはあるけど、
私が傷付く様になってるのに死なないように調整されてる
何が隠して有るのか…
ただ大事な姉に害が無ければ良いけど…
多分、私が守り切れないで死にかけるほどの相手だと光のセーフティが絶対に外れる
女神は私がセーフティ解除の条件になるのを分かっててスキルを調整した節がある
もしかしたら、死んで天使になるのも仕込まれてたのかも
まさかね…