純粋な愛の物語
見渡す限りの大海原。コバルトブルーの澄み渡る、常夏の青い空と青い海。
雄大な入道雲に負けないぐらい、白く大きな帆を張った美しい木造船が、水平線をゆうゆうと進む。
世界屈指の美しい海、西海洋の船の旅。
甲板の上では人々が輪を作って幸せそうに踊りながら、日の光を照り返す、キラキラと輝く波間の景色や芳しい潮の香りを楽しんでいる。
奏でられる音楽に合わせ、商船の周りをウミネコ達がミャウミャウと鳴いて、彼らを歓迎するように空に白い円を描いている。
順風満帆。全ての事象がこの船の航海を祝福しているかのように思える。
チョップとマルガリータは船首に二人並んで、前方の海上を眺めていた。
「今日は良い天気だねー。潮風も気持ちいいし、本当に旅立ち日和!」
「そうだね……」
「こないだまで、あんなにバタバタしてたのに、平和そのものだねー」
「そうだね……」
「今夜は、わたし達の結婚お祝いパーティーをしてくれるんだって。どんな料理が出てくるのか楽しみだね!」
「うん」
「チョップくんは五十人前くらいないと足りないよって、コックさんに言ってあるから、いっぱい食べてね」
「さすがにそんなには食べきれないよ。食べてもせいぜい三十人前くらい」
ミャウ、ミャウ、ミャウ……。
「ねえ、マルガリータ」
「なあに?」
「……やっぱり、何でもない」
「なによー」
「……」
「……」
「ねえ、マルガリータ」
「なあに?」
「僕はマルガリータにずっと言いたくて、でも言えなかった言葉があるんだ。聞いてくれる?」
「うん、いいよ」
「僕は……、マルガリータが好きだよ、初めて会った時から。一目惚れだったと思う」
「うん」
「マルガリータはとても可愛くて、優しくて、僕は君のためならどんなことだって出来る。どんな事をしてでも護ってあげようって、ずっと思ってた」
「うん」
「七年前にあんな事があってから、僕はマルガリータのことを何度も諦めようと思ったけど、それでもどうしてもあきらめる事ができなかったんだ」
「チョップくん……」
「マルガリータ」
「はい……」
「愛してるよ」
これは、鷹のように天を舞い、海を割って世界を救った、西の島国の英雄譚。
そして。
たった一人の愛する少女を、全てを懸けて護り抜いた少年の物語。
マルガリータは満足そうににいーっと微笑むと、ぽよーんと胸を張って。
「早く、その腕治るといいね! わたしのおっぱいモミモミできないのはつらいもんねっ♡」
「なんか、いろいろ台無しだなぁ……」
水兵チョップ海を割る ~西の島国の英雄譚~
Fin




