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2011 デジャブ  作者: 森本 義久
13/17

白河マンション  レナちゃん

12 レナちゃん事件 犯人小森連 復讐 白河マンション


白河マンション38階は 田中剛三の一人娘 香織夫婦の為に作った部屋で 他の階とは別のエレベーターになっていて 6人用の小さなエレベーターが 地下2階のボイラー室 地下1階の住民駐車場 そして1階の管理人室から38階まで止まらないようになっている。。

その夜AM3:30 地下駐車場に白い営業用のワゴン車が止まった

後部ハッチを開けて 大型トランクを転がしながらライアンと38F専用エレベーターに乗った



ウゥゥゥゥ・・・ン  狭い、、、目を開けているのかどうかも解らない 正真正銘の真っ暗だ   身体が小刻みにゆれてるのに気がついて車で運ばれているのが解った 今の状況を想い出してみる  膝をかかえるように座っていて手は後ろでに手錠をかけられている 足も縛られていて頭がずきずきする  そして身体も手足も方々打ち身が痛い。。


歌舞伎町のホストクラブの仕事を終えて 女が待つ居酒屋に向かって風鈴会館の角に差し掛かった時 ぶつかりそうになるくらいギリギリを通るワゴン車が覆いかぶさるように停車した。。 「こら 危ないだろう」とどなったとたん 目の前のサイドドアが開いて むなぐらをつかまれ車の中にひきずり込まれた。。

‘あっ“と言う間もなく叩きのめされた 闇金の金利がとどこうっているのを瞬間に想い出しながら ガチャっと手錠をかけられたまでは覚えている。。


車が止まった。車から地面に降ろされ ごろごろとタイヤの音と振動を感じながら スッとエレベーターが上がる感覚がした。。しかしこの男たちは 一言も言葉を発しない  思えば襲われた時から 一言も発してないのが不気味だ。。

とにかく明日 お金は返そう 女に頼んでダメなら また別の街金からでも借りてこいつらの分の180万きっちり返そう   と考えていると エレベーターが止まって またけつの下のタイヤの音がごろごろして ガチャ  どうやら事務所に入ったらしい。。


 カチッと鍵が開いて「出ろ」と男の声が  光が注すとアッと思わず目を閉じた。。

「早くしろ」と 怒鳴られて 転がり出た身体を起こして 恐る恐る ゆっくりと目を開けると 上から見下ろす男の手が伸びて来て 口に巻かれてたサランラップのようなものをジャっと剥がした。

呼吸が楽になった俺が 「すみません  明日には必ず振込みます・・いや ここに持って来ますから今日は許してください」と一気に吐き出し 土下座して頭を床に押し付けて お願いした

「ン?  金?   ああ  俺は借金取りじゃないぞ」とあはははと笑い声、、、

??どう言う意味だ??  とよく周りを見回してみると なんだか見たことのある部屋だ。。広いリビングに20人以上座れる大きなソファに天井の豪華なシャンデリア「こっここは・・・かおりの家だ」


「思い出したか?」  ン?よく見ると見も知らない30歳くらいの男が2人。。勇気を絞って 「お前達は誰だ? ここは白河のマンションか?」と聞くと「ああ  その通り   お前がレナちゃんを殺した 白河マンションだよ」???「レナって、、レナって、、、お前達はなんなんだ?アッ、、、レナの父親か?」   それには答えず  「まあ落ち着け 今手錠を外してやる」 と言って手と足の手錠を外してくれた。

「こっちに来て座りな  コーヒーでいいか?」  「ああ、、、」

なんだか想っていたより状況はいいようだ  手足をならしながらゆっくり歩いて男から離れた位置に腰掛けるとなんだか落ち着いてきた。。「いったいどう言うつもりだ 俺が警察に言えばりっぱな誘拐犯だぞ」と言うと 男は「ふん」と鼻で笑った

もう一人の男が コーヒーを持ってきて 俺と男の前に置いてそのまま立っている

どうやら椅子の男の方が目上のようだ。。


「それでどう言う事だ?  説明してくれ」と言って コーヒーカップを持って一口飲んだ  それでも緊張してるせいか 液体がヒザの上に一滴落ちた   するといきなり

バシっ  ガシャ~~ン  カップと一緒に俺の身体が吹っ飛んだ  ???

「なな  なにすんだ」  カップは割れ 倒れたまま叫ぶと  立ってたその男の蹴りがバシバシ  っと飛んで来た  止めてくれ~~ 心で叫ぶと  その男が「コーヒーをこぼしただろう これはおしおきだ!!」と 言った  ????

そして倒れてる俺の耳を想いっきりひっぱった  いたたた  たすけて~~~~

「悪い子はこうだ」  ザクッ  と音が耳元で聞こえると そこがジンジンと熱くなってきた

????  あっ   男の手を見ると 右手にナイフ 左手に肉をつまんでいる

あっあっアッ~~~   自分の右耳を押さえるとヌルッとした感触だけで耳がない

ああああああああああああああああああああああああああああああ~~~


「ライアン うるさいからもう部屋に連れて行け 後は明日だ 念のため手錠をしときな」

「ああ そうだな」  というと あっけに取られてる俺の首の襟を持って引きずっていく   みみ  「俺の耳   」というと「ああ  欲いのか?  ほら返すよ」と笑いながら血まみれの耳を手渡した   そして部屋に入ると無理やり手錠をかけて あっけにとられてる俺をチラリとみて「いい子にしてないと もう片方も無くなるぞ」と笑って「うけた?  そこうけるとこなのに~~」あはははあは  ガチャリとドアを閉めて出て行った。。

耳  俺の耳、、、手にした血だらけの耳をくっつけようと耳に当てるが   ぽとりと落ちる  何度も何度もくっつけようとしてどのくらい経っただろう   諦めた。。

そしてこれまでの人生で 最悪の状態だと認識すると 急にガタガタと身体も歯も振るえが止まらなくなった。。


2001年6月12日 読売新聞   


5歳女児殴り死なせた疑い  母交際相手の無職男を逮捕 母親からも事情を聞く


警視庁深川署は10日 交際相手の長女を殴って死なせたとして 障害致死の疑いで東京都日野市南平 無職小森連を逮捕した

逮捕容疑は9日深夜11時過ぎ 交際相手の田中香織さん宅で 香織さんの娘 田中レナちゃん(5)の腹を蹴り 頭を壁にぶつけて外傷性くも膜下出血で死亡させた疑い。

「夕食の際のジュースを床に零していたのに気が付いて殴った」と容疑を認めている。

レナちゃんの顔や身体にも 怪我の痕や火傷の痕があり 深川署は日常的な虐待がなかったかどうか調べる。

同署によると 小森連容疑者は 2000年の11月頃から交際相手の女性のマンションでレナちゃんと3人で暮らしていた。事件当時 レナちゃんの母 田中香織さんは小森連容疑者と同じ部屋におり レナちゃんが嘔吐しぐったりしたため タクシーで近くの同友愛病院に連れて行き死亡が確認された。異常を感じた医師が通報した。



司法解剖  被験者 田中レナ(5)女児


2001 6月14日  西東京医科大 解剖学部准教授 方島みずほ


死因は頭頂部の強い打撲による脳幹部出血 外傷性くも膜下出血


左耳断裂痕1箇所  

身体には30箇所以上のたばこの火を押し付けたような火傷ようの痕

打撲痕が 目視確認できるだけで身体に18箇所 両足に14箇所 両腕に27箇所

頭部に7箇所のかなり強い打撲痕跡

2箇所の肋骨骨折 (2ヶ月以上前でほぼ治ってる)  左手 左足の骨折跡 それぞれ1箇所(1ヶ月以上前) 暴行の痕跡あり


以上



小森連を1番手前の部屋に入れてライアンが戻ってきた

まさかいきなり耳を削ぎ落とすとは想っていなかったが レナちゃんの解剖所見を読んだ時のライアンの怒りようが異常だったのを想い出した。


。コーヒーを入れなおして ソファに座っているライアンに差し出した 「ありがとう」

「ライアン  巻き込んで悪かったな   恩にきるよ」

「いや 俺の方こそ あの6000万で仲間も助かった  改めて礼を言うよ ヨハン」

「そのことは気にするな  それより今夜の事 大丈夫かな?」「ああ 人が一人居なくなっても 歌舞伎町では日常茶飯事だから 警察ざたにもなってないと想うが 用心のために当分は新宿に近づかない方がいいぞ」

「ああ  解ってる  2~3日様子を見てから 親父をここに連れてくるよ」  「ああ それがいい  明日からはどう言う段取りで行こうか?」「予定どうりで 毎日 レナちゃんがやられたとうりにやろう 」「ああ  わかった」「適当に飲んでゆっくりしてくれ  シャワーでも浴びてくるよ」


熱いシャワーを浴び缶ビールを持ってリビングに戻ると ライアンはワイルドターキーをロックで飲んでいた。

「 一番奥の部屋にライアンの荷物を入れたよ  景色が最高だぜ」 「ああ  ありがとう」「当分はここに住んでもらうからな」「わかってる  じゃ俺も部屋でシャワーして少し休むよ」「ああ  俺はこのままリビングで寝るから」 「うん じゃ何かあったら声をかけてくれ 習慣ですぐに起きるから   」といってライアンは奥の部屋に行った。。



3日後 高円寺から この白河町のマンションに親父を連れてきた。

ここには一通りの入院用具は用意してある 大きめの医療用ベッドに親父を寝かせて点滴などをセットした。

「親父 ベッドはこの位置でいいですか?」「ああ 英樹 ありがとう  外の景色も見えて いい眺めだ」「モニターはこのリモコンで 向こうの部屋の様子が24時間見えるようになっています」「ああ  ありがとう」

親父の希望で 個室ではなく20坪のリビングの南窓際にベッドを用意した。

テレビモニターも120インチをベッドから10mはなれた天井にセットして 何度もテストしたのでベストポジションのはずだ。。

「小森連 見てみますか?」「ああ 少し背中を起こしてくれ」「はい」


小森の部屋にセットした4台のカメラは リモコンで動かしたり拡大もできる


カチ  スイッチを入れると120画面に4分割に部屋の中が映った。。小森連は洗面台の鏡に 自分の顔の左側を見ていた。

「何をしてるんだ?」「あれは、、、ああ  3日前にライアンが切り取った耳の痕を ああして時々眺めているんですよ」「ああ  言ってたな  その時を見たかったのだが」「こいつを捕まえて来てからは全て録画してるので 見たければありますよ」「ああ  後でな  少し疲れた  消してくれ  」「はい  高円寺からの移動で疲れたようだから 少し休んでください 薬足しますね」「うん あまり強くしないでくれ」「わかってます」

「この3日間を話してくれ」「はい 拉致してきた夜は耳を削がれたことがショックだったようで ほとんど寝てないようでした」

と話しながら 点滴に処方の麻酔薬を差し込んだ。。

2日目から厳しい躾を始めた  個室にはキッチン バス トイレとゲストルームとして一通りの設備が整っていて  朝の歯磨きから食事 トイレ バスまでチェック対象

零したり 遅かったりと本人が気が付かない小さな理由でも たばこの火や 殴る蹴るの罰が待っている。。


はじめのうちはランダムな体罰に想っていた小森連も この頃ではその意味を理解した様子で 細心の注意を払って ビクビク生活するようになった。。

まさに レナちゃんがそうであったような怯えようになってきた。。


そんな事を話しているうちに 親父は安心したように小さないびきをかいて寝てしまった。

親父の癌はもう全身に転移していて 麻酔剤でコントロールしなければ意識障害が出るレベルになっている。

本来 退院などできないところだが 里菜先生の責任と看護士の付き添いを条件にこうして外泊許可が下りている    そして 残りの時間もそれほど長くはない もって1ヶ月  ここに居られるのは2週間ほどでしかない。。 

親父の命が尽きる前に 小森 連は 田中剛三の孫レナちゃんの命の償いをつけなければいけないのだ。。








その夜は 切り離された自分の耳を見ながら一睡も出来ずに 洗面所の鏡を見たり ベッドに腰掛けたり あれこれ考えているうちに 窓の外が明るくなってきた。  耳の血はやっとかさぶたが出来てきて ジンジンとした鈍い痛みが永遠に続くようだ。。

いろいろ考えたが どうやらレナの復讐のようだ。。2人の男のどちらかがレナの本当の父親で どうやってかこの白河マンションの38階の合鍵を手に入れて 俺に仕返しをしようと考えたようだ。。

こうして捕まってから解ったことがある   それは このマンションのセキュリティは

侵入するのも困難だが 外に逃げるのも困難だという事だ 特別室のこの38階は それもまだ特別だという事に気がついた。


ガチャ  ドアが開いて耳を削いだ方の男が入ってきた 手にはパンとトマトのかけらの乗ったプレートを持っている。  「食事だ  こぼさず 早く食え きっちり躾けてやるからな」  急に入って来て驚いたが  気を取り直して 「たたたた  頼む  ここから出してくれ  謝る レナのことは本当に悪かった この通り謝るから 助けてくれ~~~」男の足元に土下座した時 勢い余ってぶつかってしまった  そのはずみで男の手からプレートが落ち派手な音をたてて皿が飛び散った。。

「このことは誰にも言わない 死んでも言わないから助けて」  すると

バン  ドン  ドン  と身体が吹っ飛んで壁にぶつかった   「こぼすなと言ったろ」バシ バシ っと蹴りが頭 アバラ 腕 足に連続で飛んでくる  避ける間もなくあちこち肉が裂ける。。やめて  いたい  いたい  やめて  いたい痛い、、、

「拾え  拾ってくえ」   蹴りが止まった  ああ この落ちたパンを食べなきゃ、、

「はい  すぐに、、」  部屋の隅に落ちてたパンを拾って一口かじると  “こら”

バン~~とまた身体が吹っ飛んだ   

「姿勢  正座してくえ」「ははははい  はい  ごめんなさい  ごめんなさい」  飛び起きて正座をした。   いったいなんなんだ  このいいがかりは ガタガタ震えながら上目づかいに見上げると 男が「掃除もしとけよ」と言って背中を見せて部屋を出ていった。。  安堵感で床に倒れこんだ いつまで続くんだろう  もう嫌だ  嫌だ 涙が出た  怖かった。。

ビクビクしながら割れた食器を片付けた その間も部屋の外の音に注意しているが 密閉性がいいのか何の音も聞こえない   窓の外を見ると晴れ渡った東京の下町の風景が広がり 信号機に止まる車の列や 通勤通学らしき人々の小さな姿が平和に見える   

昨日まで 自分もあの中に居たことが まるで夢のように思えてくる。。

昼になっても 夕方になってもドアは開かず  食事も出ない  仕方ないので洗面所で水ばかり飲んで夜を迎えた。。



3日か4日たった 俺がそんなに悪い事をしたのか?   もしそうでも刑務所に入れられて罪は償ったはずだし  あいつらは誰なんだ こんなのは理不尽だ。。

 こんなに腹が減ったのはこれまでの人生で経験がないくらい  餓えとはこんな事なのかと考えた 手錠もかけられたままで 部屋にはベッドと薄い掛け布団 そして洗面所とトイレの水以外  風呂のお湯もシャワーも出ない  服もあの晩からの奴らの暴力でボロボロだし 顔も身体も血と火傷のあとを水で拭いただけなのでかさぶただらけ 鏡で見ると化けもンのようだ。。ほんとうにホームレスのように汚くなった。。


耳のない暮らしを想像していた。。 先ず俺の好きなサングラスがかけられない  そしてホストの仕事ももう出来ないだろう。。髪の毛で隠したとしても 気が付いたお客が気味悪く想うだろうし それよりも店側が雇うはずもない。。   手に職もない前科もちの俺が この先どうやって暮らしていくのか 想像もできない。。

日野に帰って親父のように土方と百姓を兼業でして 虫のように生きるのか? ああ  やだやだ。。それにしても腹が減った  昨日の朝のパンから 固形物を食べてないのだ。。

  ベッドに寝たままぼんやりと目を開けて 明るくなっ窓を見ていると  


「おはよう」とレナの父親らしき方が入ってきた。。何故かその手からは煙がモコモコ噴いている   「ははは  はい  おはようございます」  急いでベッドから降りて床に正座した。。そして「あ あ 貴方がレナちゃんのお父さんですか?  ほんとうにあの  あの   すみません  あの・・・」 男の目の色がかわった 「ああ  そうだ  このやろう」  と髪の毛をつかまれた そして ジュと音がした。。ン?  あああああああいいいいいいいたたああああああああああ

髪の毛のこげる匂いとともに飛び上がる痛みが頭を襲った  逃げようと這い回るが 手錠がかけられてるので うまく逃げれない。。這い回っている俺の髪の毛をつかんだまま「こら  おとなしくしろ」と  頭 背中と  火の塊を押し付けるたび  気絶しそうな痛みが襲ってくる・・たたったたたたすけてええええええええええええ~~

「なかなかいいな  お香を束ねたやつだ  たばこの火の代わりだ  レナちゃんの痛みを想い知りやがれこら~~~」ガンガンと拳と火の塊が交互に襲ってきた

ひいひい言いながら手錠の鎖で髪の毛の火を消していると やっと男の動きが止まって「レナにした事を 死ぬほど後悔させてやる  刑務所がパラダイスだったと思えるくらいにな」と言って部屋を出て行った。。

刑務所??  ああ ここは刑務所なんだ  そう言えば監禁されて躾だ掃除だ食べ方だって  刑務所のようだ   なんかやっと自分のこの場所での生き方がわかったきがするが   焼かれたところが 頭から背中 足と  あらゆるところが痛い  シャツも焦げ臭くボロボロだが 起き上がる気力さえなく床に突っ伏した。目を閉じると もうここから生きて出れないんじゃないかと  ふと想った。。


どのくらい気を失っていたのだろう  「おい起きろ こら  座れ」と言う声に目を覚まして見上げると 車椅子に座る爺さんと左右に奴らが立っていた。。

「は  はい」なんとか身体を起こして  やっと正座した。。

「小森 連  お前を地獄に連れて行くのを どれだけ夢みたか  」 しわがれた声で爺さんは言うが どこかで見た顔だが想いだせない  「レナの祖父 かおりの父の田中剛三だ  お前に地獄を見せてやる レナの・・俺の 悲しみ 憎しみを思い知らせてやる・・」  ???  「あっ!」そうだ ここに住んでた頃 かおりとレナとこの爺さんが写った写真を あの頃リビングに飾ってあったっけ・・・そうだ「助けてください  誤解です  レナちゃんを殺したのは俺じゃない  助けてください」 すると爺さんは  持ってた杖で 死ね  死ねといいながら俺を叩きだした。。 が年寄りの力は弱くて痛くもなんともない。。 この理不尽に思わず頭に血が上って 残った力で 「じじ~~~」と飛び掛った。。

車椅子が倒れ爺さんもひっくり返った。。「親父! このやろ~」と 立っていた男2人が恐ろしい勢いで飛び掛ってきた。。うわあああああああああああああああ   四方から激しい蹴りが飛んできた   バキッ  バキッ  身体の中で音が響いて 意識が飛んだ。。




朝の検査を終えて 「親父  少しでも食べられたら食べてください」「ありがとう英樹 味噌汁なら食べれそうだ」 「起きてこっちで食べますか?」「ああ  そうしよう」  今朝は体調が良さそうだ   高円寺から来たばかりより ずいぶん顔色もいい  この分なら少しの時間 小森連の部屋に入れそうだ。。


さっき部屋の様子を見てきたが 小森連は俺のことをレナちゃんの本当の父親だと想っているようだ。。 子供を持った事もない俺だが 女子医大に香織さんとレナちゃんが剛三を見舞いに来たとき  剛三と香織さんが言い争いを始めると 退屈になったレナちゃんは剛三さん担当看護士の俺を探しにきた。    父親を覚えてない様子のレナちゃんは 何故か俺になついてくれて 俺もそんな事ははじめてで嬉しかった。。

それを知った剛三さんも レナちゃんが来る時はそっと教えてくれて 俺はレナちゃんの時間に合わせて時間休をとるようにしていた  そしてレナちゃんが来ると女子医大病院の裏にある小さな公園で過ごした  いつも一人の俺にとって 人と過ごす時間というのは ほんとうにあのレナちゃんとの あの小さな公園でしかなかった。。

さっき小森連から「レナちゃんの本当のお父さんですか?」と聞かれたとき 一瞬にして全ての憎しみが溢れて 思わず自分を失った  気が付くとボロボロの小森連がそこにうつぶせていた。。


「いいですか?親父さん」「ああ  開けてくれ」「ライアンも一緒に  」「うん」

ライアンがドアを開けると ベッドの下に落ちてうつぶせに寝てる小森連が見えた。

「起きろ  おい  座れ」ライアンが革靴でつっつくと うううっと顔をあげ  ゆっくりと座りなおした。。

親父を見ると 車椅子に座ったからだが怒りに震えている。。

「小森 連  お前を地獄に連れて行くのを どれだけ夢みたか  」 小森連はキョトンとしている 「レナの祖父 香織の父の田中剛三だ  お前に地獄を見せてやる  レナ・・俺の 悲しみと憎しみを 思い知らせてやる・・」というと 小森連にもわかったようだ   あっという表情で

「助けてください  誤解です  レナちゃんを殺したのは俺じゃない  助けてください」というと  親父の怒りは頂点に達し 杖で小森連を打ちだした。。

俺とライアンは それを黙ってみていた  親父の気持ちが痛いほどわかる  そこに隙が出来た  小森はいきなりうめきながら  親父に飛び掛ったのだ

車椅子が後ろに倒れ 親父も仰向けにひっくり返った  瞬間ライアンが親父の下に飛び込んだ    思わず俺は渾身の力で小森連を蹴った  蹴った  メチャクチャに蹴った  ライアンも起きなおしてうおおおおと  ヒザを飛ばした

バキバキと骨の折れる音もかまわず ライアンは怒り狂った 小森連は枯れ木のように転がった。。


親父を抱いてリビングのベッドに寝かせた。。「親父 大丈夫ですか?」

「ああ  英樹  すまない  つい腹がたって」「はい  それは十分わかります  それよりどこか痛いとこありますか?」「いや  大丈夫だ・・」

親父は言うが  腰の骨でも折れたのかもしれない  額に脂汗が浮いて辛そうだ。。

「親父  ちょっと見るよ」服を脱がせ  背中から身体をチェックしてみると どうやらアバラが折れたかヒビが入ってるようだ。。

とりあえず痛み止めの麻酔薬を注射して ついでに点滴を打って様子を見ることにした。。


ライアンが 「どうやら  小森連 アバラ何本かと腕も折れたようだ  うなってやがる」と部屋から出てきた   「ほっとけ」  それどころじゃない  「ああ  そうだな ちょうどいいや」と満足そうだ。。


その夜から  親父の容態が変わった   常時点滴で麻酔薬を注入してるから痛みは大丈夫だが 体力が落ちたのが見た目にもわかる。。

「ライアン  親父  いよいよかもしれない」というと「そうか  悲しいな」

「うん」  「少し急がないとな  小森連の奴もやっと後悔しても無駄だとわかったようだ  かなり弱ってきたよ」

「ああ そろそろだな  」「 ああ・・・」


次の日から親父は ベッドから起き上がれなくなった。。

点滴での栄養補給と麻酔薬の調節をしながら うとうとと眠っている事が多くなったが

目が覚めている時は モニターに映る小森連の動きをじっと見ている。

その小森連は アバラが折れて肺に当たっているようでベッドに横になったまま ハアハアと荒い息をしている  食事制限でパンしか与えてないが それさえも手をつけてない    それをじっと見つめている親父の頭の中には いったい何が映っているのか。。


それから3日後の2005年7月25日   

今朝の親父はなんだか元気な頃のように 身体の力がみなぎっているようにみえる。

ベッドを起こして 久しぶりのコーヒーを飲んでいた親父が  「英樹  ちょっとこっちに来てくれ  ライアンもな」と俺たちを呼んだ。。

親父のベッドに並べて 俺が仮眠しているソファにライアンと2人で座ると 

「英樹 ライアン ほんとうにありがとう  わしのわがままに最後まで付き合ってくれて  この恩はもう返すことは出来ないが 改めて御礼を言うよ」

「親父  なに言ってるんだよ  お礼を言うのは俺の方です  孤児の俺の本当の父親になってくれて ほんとうにありがとうございます」  

ライアンも「親父さん  俺のほうこそ 親父さんが居なかったら とっくに歌舞伎町の下水の中でひき肉になっていました  親父さんのおかげで子分達も フィリピンに帰って人並みな生活ができるようになりました  心から感謝しています」

「ありがとう  2人にそう言ってもらえて 安心してあの世にいけるよ」と左手を差し出した   俺とライアンは  その手を両手で握り締めると 涙が溢れて止まらなくなった。。「英樹  ライアン  最後に頼みがある」顔を拭いながら「はい なんでしょう?」

「警察をよんでくれ 小森 連を開放する  そして警察にわしが全て説明する」「えっ??」

「そう  これはわしが全てやった事で お前達は借金でわしに脅されて協力したと」

「親父~~」「親父さん~~~」「ああ  これで気が済んだよ  レナもこれで許してくれるだろう」「・・・・・・・・・・・・・・・」

長い沈黙が流れた  


先に立ち上がったのはライアンだった   でも「ライアン 俺の娘と親父の仇討ちだ」

ライアンもその意図がわかった「そうか じゃ悔しいが譲るよ」「ありがとう」

そして親父の耳元に顔を寄せて はっきりと聞こえるように「親父  見ててくれ」

と  小森連の居る部屋へと進んだ。。


ウウウウウウウ   痛みで意識が戻ると  余計胸と手足の痛みが襲ってきた。。

ああ  これは折れてるな  死ぬのかな・・・・・ ゼイゼイと呼吸も苦しい   タタタ 助けて~~

喉がガラガラで声が出ない   この状況を前にも経験した事がある・・・と  ふと感じた。。

確か  デジャブとか言うんだな  うん  生前の体験か予知夢?

頭ではこんな馬鹿みたいなことを考えてはいるが  俺の身体はベッドに横向きになって足を抱えて丸まってゼイゼイいっている。。なんだか 心と身体が別々の生き物になった感じだ。。 

そう言えば 俺の耳はどうしたんだろう?  確か枕の下に隠してあったはずなのに 手で探ってもどこにもない。。まっいいや

人生が変わった日  あれから何日だったろう?  1週間?  パンは食べたか?  忘れた   ん?  トイレはいつしただろう?  後ろに手を回してパンツの中を探ってみるとべた~っと手についた   うわ!!

もう  何もかもがどうでもよくなった  痛みも少しやわらいだ  もうダメだ  もういいや、、、


ごめんなさい  ごめんなさい  ごめんなさい   

ビービー  泣く女の子の声   泣くなこら~~~   やかましい~~

バタン  ガンガン  物の壊れる音  

うっすらと目を開けると朝のようだ  空調が効いてるので室温は変わらないが 

夏の強いい光が窓から入ってくる。。

ああ  今の声はレナの声だ   そうか  デジャブだと想ったのは  

レナの心だったんだと気づいた。。

もうダメだ  誰も助けてくれない  神様に何度願った事か  神様は居ないという事がわかった  喉もカラカラだが ベッドを降りて全面所までたどり着く気力がない  そうだ もうすぐ死ぬんだ  と考えると  猛烈な振るえが襲ってきた


そのとき ガシャ   っとドアが開いた  わあああああああああああああ

とっさにベッドから落ちてドアに向かって這った  これが最後の脱出のチャンスだと本能が言っているようだ。

しかし  頭に強烈な蹴りをくらって 壁まで吹っ飛んだ  そしてガンガンと頭の骨が割れる音が頭の奥まで響いた。。


そして  裁判長の声で「脳挫傷によって死亡・・」


寂しい寂しい真っ暗な闇の中に吸い込まれていった。。




ガシャ っとドアから出て  リビングの窓側に置かれた医療用ベッドに歩みより

「親父  終りました」  と  報告した。。

「すまない  ありがとう  英樹」

大型モニターで全てを見ていた親父は 流れる涙も拭わずに  まだ  モニターを見つめている。。    

その夜   静かに親父の鼓動が終った。。















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