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2011 デジャブ  作者: 森本 義久
11/17

ライアン

10   ライアン 2005年


ロイヤルホテル中野の駐車場に着くと ホテルのフロント係りの男が待っていて 「いつもの部屋を用意しました」 と言った。。

ライアンと俺は そのままエレベーターに乗って18階の部屋に入った  


部屋に入るといきなり「ヨハン あそこで何をしてたんだ?  誰をつけてた?」

「ちょっとまて いきなりそれかい  それよりさっきの状況を説明してくれるのが先じゃないか?ライアン??」  「ヨハン  お前  あまく考えていないか?  あのままやつらに攫われていたら、、今頃、、」  ちらっと時計を見た  AM4:10分  さらわれそうになって歩道に頭をぶつけてから約40分だ     「今頃お前は 両手の爪をペンチで剥がされ 歯を全部抜かれて、、、耳をそがれてる頃だな、、」 「、、、、、、」

「今日の朝日が昇る頃には どこかのラーメン屋の厨房で骨までミンチ肉にされて 下水に流されてるだろうよ」  「どう言う事だ?」 「だから やつらにお前がやられる前に それを俺が聞いているんだ  お前の命に関わるんだ 全て話せ」

「ライアン、、」


それから俺は 小森連の事 そいつはレナちゃんを殺害し 母親の香織も殺したようなものだとか 香織の父親田中剛三に頼まれて小森連の行動を調べるために 歌舞伎町のホストクラブAACを見張ってたことなど 問われるままに話した。。


「やはりそうか、、ヨハン あのビルの5Fは確かにホストクラブだが 6Fから7Fは福建系の中国マフィアの事務所なんだ  お前はそれも知らなかったんだろ?」  「当たり前だ 看護士の俺にマフィアなんか用はないからな」  「馬鹿だな~~」と ライアンは笑った。

そして「ヨハン  マジお前は今日 危なかったんだぞ」 と話はじめた。。


 歌舞伎町は戦後 台湾マフィアと半島系の韓国マフィアがほぼ2分して支配していた

そこに1990年頃から中国マフィアが入って来たのはいいが 中国3大グループの上海系 北京系 それに福建系が弁当販売をめぐって抗争を始め 1994年8月10日には 有名な青竜刀事件などの派手な殺し合いが続き 30人以上が死傷した。。

その間に 台湾マフィアや韓国系も生き残りをかけて それぞれの中国系グループに加勢したり敵対したりしていた。 そうなると日本のヤクザも黙っていられなくなり 敵味方入り乱れての歌舞伎町の覇権争いへと発展していった。。


そして日本の警察も手をこまねいてばかりじゃいられない 暴対法が施行されて以来 暴力団と言うだけで取締りが出きるようになって どんどん締め付けていって なんとか歌舞伎町の平和を取り戻しつつあった2000年代から5年 冬のソナタが日本人に大ブレイクした勢いの韓国ブームに乗って いつの間にか大久保に韓国マフィアが1大勢力を作りあげていた。  

そして先月 上海系の下っ端が大久保で酔っ払ったあげく 韓国の奴と喧嘩して2人殺してしまった。その仕返しに韓国 福建グループが歌舞伎町の上海系の台湾料理店を襲って 3人拉致されて消された。。  「さっきも言ったように死体なんか出ない  ひき肉にして漂白剤と混ぜて下水に流せば死体は消える 警察も下水を漁るような汚い仕事はしないからな」。。


「それでライアンは どこに属してるんだ?   それに4年前俺はライアンに逢った 京王プラザホテルの駐車場出入り口で、、」 「ああ あの時 俺もすぐにお前だと気がついたよ、、ほんとうに懐かしかったが あの時は上海のボスの護衛として付いていたから急いでいた、、、、俺達フィリピン系はこの日本ではまだまだ弱い、、だから台湾マフィアや上海と提携してこの歌舞伎町でしのいでいるんだ  、、、」


俺達 上海 台湾 フィリピンとで歌舞伎町で働くそれぞれの国の女や男が 安心して働けるように楯になってるんだ。  だから今回のように 福建 韓国系の奴らにやられたら 奴らを叩いておかなければ俺たちの存在意義がなくなってしまう


「しかし最初に手を出したのは上海だろ?」「そんなのは関係ないんだよ ようは殺し合いに勝つだけだ」

そんなビリビリした中に 1週間前から福建マフィアのアジトを見張ってる奴が居る事に気づいて やつらも色々調べたらしいが  どんなに調べてもただの日本人で上海や台湾マフィアとは どうも関係ないらしい じゃ面倒だから捕まえて吐かして殺してしまえって事で  俺の方も昨日から福建のあの事務所がなにやらおかしいって事で見張ってたら のこのことあのレストランの2階にお前が現れた、


「レストランの厨房に居た俺は お前の顔を見てビックリしたよ、、」  「 ん??」

「まさかその馬鹿がよはん  高杉英樹  お前だったからな」あははは~~と  大笑いだ    むっとした俺は「馬鹿で悪かったな」

大笑いしながらライアンは「まあ  良かった良かった、、もう安心だ」

「良くはないさ  何が良かったんだよ 頭ぼこぼこだぜ」と顔をしかめると  

「馬鹿  今こうして生きてるのが ヨハン  キセキなんだよ」  と言ってまた笑った。  懐かしいライアンの笑う顔を見ていると俺も嬉しくなった  あははははっははは~   久しぶりに心から笑った     あはははっはっはは


ホテルの朝食を頼んで  十何年ぶりにライアンと2人で食事をとった 

小学校の時のダバオの家では 毎朝ライアンが迎えに来て 一緒に朝食を食べてから 2人で歩いてダバオ日本人学校に行っていた。。

お互いに今年30歳 ライアンとカレンと過ごした ミンダナオ島 ダバオの夏の懐かしい日々を想い起こしていた。。


そして「ヨハン 少し聞いていいか? 言いたくなければ答えなくていいから」と

「ああ 何でも聞いてくれ  どうした?」  「いや 昔のことなんだが ずっと気になっていたんだけど、、、あの日 何故ピストルを持って 2階に行ったんだ?  それに何故あの頃 お前はライフルだけじゃなく 拳銃の練習をしてたのか?  あの頃のフィリピンでも 市民が拳銃を持つ事さえも禁止されていたのに 小学生のヨハンがどうして拳銃を持っていたのかが 後から考えてもおかしいんだよ、、、」


そう  それは俺も後から考えた、、 お祖父ちゃんが何故俺に 小学生の俺に拳銃の練習をさせていたのか、、、あの時 母を襲ったあのゲリラに向けて拳銃を撃ち続けた時 頭の中の恐怖とは別に 手と指だけは 確実に相手を捕らえていた。。


そう アポ山のジャングルの中でお祖父ちゃんは ライフルは槍と同じで 自分の家族や 部族を養ったり 獣を狩ったりするためにバゴボ族の男はその腕を磨かなければいけない と言っていた。。そして拳銃は 家族や部族を守るために 人を殺す道具として ヨハンお前はそれを使わなければいけない そして人を撃つ時はほんの少しの躊躇もしてはいけない バゴボ族の長として行動を起こす時 世の中の法律も罰則も超える精神を持つ男に ヨハンはならなければいけない   と お祖父ちゃんが言っていた。。


「そうだったのか、、  なんとなく解ってはいたんだ  俺には、、、、俺の爺ちゃんもそんな事を俺に言っていた時があったから、、」

   


「それよりライアン 俺はお前に感謝してる お前が俺の命の恩人だって事は いままで1度だって忘れた事はない これまで俺がこうして生きていられるのは お前があの時

俺を殺そうとしたゲリラの一人を 撃ち殺してくれたから

しかし こうして今になってみたら 俺のせいで人殺しになったお前が マフィアをしているのも 俺のせいなのかと想うと  すまない。。」


「ヨハン  馬鹿だな~~  それとこれとは  関係ないよ」 

「そか   しかし、、、」   「そうか  いやあ  話せば長くなるが、、、

どうせ今日は夜までこのホテルに居なければいけない   ヨハンは仕事か?」

「いや  別にいつ仕事って言う仕事でもないし   電話すればずっと暇だ」

「 そうか 」ニヤリと笑うと「 じゃ  ビールでも飲むか?」

「ああ  それは良いな」  クククッ  とお互いに笑いあった。。


そして自然と 話が小学校6年生が終ったあの春休みの話題になった  

「あの時 タイミングよくライアンが 2階に上がって来てくれたのも 後で考えると不思議だった」

と言うと ライアンが 「あの時 お前が家の裏に回った後に ふと見上げると2階の窓にライフルを持った男が見えたんだ、  これはヨハンが危ないと想って 俺は玄関からそっと中に入って行った

そしたらヨハンが2階の書斎のドアの前で 中を覗き込んでるのが見えた  だから早く知らせないと想ったが 声に出すと気づかれてしまう  そっと急いで階段を上っていたら拳銃の音が連続で響いた  俺はてっきりヨハンが撃たれたと想ってライフルを構えて階段を上りきったら そこに見えたのは ヨハンにナイフを振り下ろす男だった。。

あっと想った時には 引き金を引いていたんだ。」   と



そして その後はよく覚えていない  爺さんに抱きかかえられて家まで帰ったらしいことは夢の中の出来事のように覚えているが 歯はガタガタ鳴るし 震えは止まらないし 爺ちゃんが何か話しかけながらライフルから俺の指を剥がそうとしているのをぼ~~っと見ていた。。  そしてじいちゃんは俺に言った「ライアン お前はわしの誇りだ 今日はよくやった  仲間のために命を賭けて戦う それはバゴボ族の戦士の証だ  まさに今日 ライアンはバゴボの戦士になったのだ」  と   そして

「お前は何も心配はせんでいい  ヨハンも大丈夫じゃ   全てロメオの爺さんとわしらで処理するから お前はこれまでどうり学校にいけば良い、、」  と 頭をごりごりしながら語った。。


春休みの間は 家の手伝いをしたり豚や鶏の世話をしたりして過ごした

当然 ヨハンと同じダバオ日本人学校の中等部に行くもんだと想っていたんだけど 親父とお袋が反対した  そして入学前になって 地元のダバオ第5中学校に行くはめになったんだ。。

「でも 第5中学校では  鍛えられたよ・・・」「ほう?」


ライアンが中学校に入学してしばらく経って なんかクラスの雰囲気がおかしい事に気が付いた

先生達の態度もなんか不自然だなって想いながら 毎日真面目に通ってた

ある日 3年生に呼び出されて行ってみると 何人かがナイフを持って 「お前 人を殺したからって生意気にしてんじゃないぞ」   って   あは  初めて解ったよ

俺は普通の中学生だと想ってたんだけど みんなは知ってたんだ そしてみんな怖がってたんだよ 俺のことを・・  と


それからはあまり学校にも行かなくなって ろくでもないような奴らとつるんで ちょこちょこ怒られるような事もしたけど でも おじいちゃんとの約束の手前 高校まではなんとか頑張って卒業できたのが不思議だよ。。   まっ その後はいろいろあったけど 5年ほど前から ダバオの仲間達とはるばるハポンにまで来て 新宿でマフィアの真似事してるんだけどな。。


「そうだったのか  すまない」  「おいおい  なに謝ってんだよ  馬鹿」

「いや  ダバオ日本人学校の時に ライアンの家にも何度かいったんだけど 声をかける勇気がなくて・・・ 何故高校の時にでも連絡を取らなかったのかと  日本に来てからも後悔していたんだよ」

「そうか  まっ 俺も似たようなもんだ  ヨハン家の前までは行けるんだけどな・・」「そうか」  と お互いに笑いあった



「しかしヨハン お前の噂も聞いていたよ」   「なんて?」

「中学も 高校も成績はトップクラスだったよな 格闘技のエスクリマでもマニラでも優勝したって  じいちゃんも自慢してたよ ヨハンは医者かボクサーになるだろうって でも高校を卒業すると突然居なくなって 噂では日本人が尋ねて来て連れて行ったって だから俺も心配していたんだ」

「そうか 実はあの時 叔父さん 親父の兄がダバオに来て 親父の親父 つまり日本の爺さんが死んだから その遺産相続の手続きを俺にもしてくれと」「ほう はつみみだ」

「その時急に 無性に日本に帰りたくなって 日本に帰るならこの機会しかないと考えて 

じいちゃんに相談したんだ」「ほう」  じいちゃんは お前の人生だ お前もわしも2つの祖国を持つ わしはフィリピンを選んだがお前もどちらを選らんでも わしはかまわない  って  「うん」

そこで叔父に 「お祖父さんの財産分与は要らないから 代わりに日本での身元保証人になってください そして日本で仕事が出来るまでの 学校の費用と生活費をください」って  「うん」

そしたら そんなのは大したことじゃない って

「そしてダバオの高校を卒業と同時に日本に来て 高円寺にアパートを借りて 看護士の専門学校に入れてもらえたんだ」  「そうだったのか  なるほど  しかし安心したよ」 「ン?  なんで?」  「いや ヨハンがまっとうな人生を生きてるって分って ほんと嬉しいよ」



「ありがとう  それよりライアンのほうは大丈夫なのか?  中国マフィアとのトラブル 困ったことはないのか?   俺に出来る事は何でも言ってくれ   実際に お前は俺の命の恩人なんだから」

「ばか  堅気のヨハンにこの俺が助けてもらう事なんか何もないさ  それより こんな俺だけど また友達で居てくれよな」

「当たり前だよライアン   それよりマジで 変な話 貯金なら1500万くらいはあるよ 今は住み込みで働いてるから ますます使う事もなくて」あははは~~「女に指輪でも買ってやれよ」「女が居れば 夜な夜な 前科持ちのホストの尾行なんか頼まれてもしないよ」 「それもそうだな」 あははっははっは


それから2時間ほど ビールを飲みながらフィリピンの懐かしい話しをしていると ライアンの携帯が鳴った。。ああ 下で待ってろ すぐに行く

「ヨハン仕事が入った 逢えて嬉しかったよ また連絡する あのホストの尾行はこっちでやるからお前はもう新宿には近づくな それとこのホテルは安全だからゆっくり寝てから帰れ じゃ  またな」 「おう」と 慌しくライアンが出ていった。

明るくなった窓のカーテンを開き 窓を開けると 夏の朝の穢れない透明な空気が流れ込んで来た 少し寝ようとベッドに横になった  すごく疲れた  目を閉じると 懐かしいフィリピンの ミンダナオ島ダバオの ハイビスカスの香りと土の匂いがした。














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