最終羽
エピローグ
一年後。
待ち合わせ場所として指定された公園のベンチに座りつつ、俺は物思いにふけていた。
予想外に始まって終わった俺が主人公の物語の後日談を、どう収拾つけようか、ということである。
まあ、結論から言えば、変人奇人、超人愚人仙人を生み出してきた羽切家が、神様までも生み出してしまったという、それだけの話である。
神様と言っても、半神だけど、……いや、十分の一神とでも言ったほうが正確か?
実際、そんなもんである。
あの時母さんから貰った能力は超超超超超弱体化し、残倖が僅かに残ってるくらいだ。
まあ、あんなチート能力無い方が世の中のためかもしれない。
さて、そろそろあの後世界がどう変化したかを語ろうか。
まず、能力を無くした母さんは『仙人』を引退した。
しかし、能力を無くしたとはいえ母さんは元々能力無しで充分強い。『仙人』に残ってくれという声もあったそうだが、母さんは断っていた。
だから、今は弟が『仙人(仮)』に襲名された。
知識面で頼りないが、その辺は妹が手伝ってあげてるらしい。
俺? 俺はいまだ、ただの一般人継続中だよ。
頑丈さは健在だが、それも弱体化しちまって爆弾耐性消えちゃったし。
「……ん?」
公園に見慣れた人が入ってきた。
沢田リコだ。ジャージ姿で、背中に何やら平べったいカバンを背負っている。
……あ、こっちに気付いた。駆け寄ってくる。
「やっほー羽切くん! こんなとこで何やってんのー?」
「野暮用さ、沢田リコは?」
「へっへー、これから部活の最後の大会なんだ!」
おー。そういえば俺達ってもう三年生なんだよな……。
「へー、頑張れよ」
「勿論! 優勝狙うよー」
ああ、良い機会だ。
何部なのか訊いてみるか。
「そういえばさ、沢田リコって何部なの?」
「ん? 見て分からない? テニス部だよ」
…………。
……テニスかー、そっかー。
うん。
「頑張れよ! 遠くから応援してる!」
「うん! あ、と、もういかなくちゃ! じゃね!」
ダダっと、沢田リコは駆けて行った。
沢田リコは、進路に幼稚園児の先生を選んだらしい。
子供が好きだとかなんとか。
夢があって、いいと思う。
夢があるっていいなと思う。
「……お」
熊を発見した。
……いや、精巧な熊のきぐるみを着たベアコンを発見した。
…………。
そっとしておこう。
ベアコンこと藤宮マサルは、動物園への就職活動を頑張っている。
熊への熱意だけで、よくそこまで頑張れるなぁと、感心している。
ああ、あと、面接のために髪の毛を黒く染め直したため、彼は変人戦隊のプラチナベアーを止め、ただのベアーになった。
心底どうでもよかった。
「む」
公園の外に、仲良さげなカップル――もとい青井秀と伊藤詩織がいた。
今日はよく知り合いと会う日だな、と思いながらも、二人を観察する。
青井秀は相変わらず片手に本を持っていて、しかし、片手は伊藤詩織の片手をしっかりと掴んでいた。
伊藤詩織は、幸せそうに青井秀にもたれ掛かってる。けど、繋がれたほうの手の爪を立て、地味に青井秀にダメージを与えているのは流石だと思う。
二人は、同じ大学に行くそうだ。
そのために伊藤詩織は青井秀や俺に家庭教師を頼むなど、必死に勉強をしているが、今日は息抜きの日なのだろうか。
「あ」
前方に金髪美少女発見。ていうかフルフルだ。
買い物袋を持って、歩道を歩いている。
日本語がかなり上達した彼女は、もっと日本のことが知りたいと言い、茶道部と弓道部、剣道部に柔道部など、自分で決めたやりたいことをやっているらしい。
フルフルはどうやら、解放されたようだ。
多分、まだ手は黒いだろうけど、少なくとも、足は、洗えた。
それで、充分だろう。
「おまたせ」
そして、彼女がやってきた。
赤みが入ったボブカットをしていて、オシャレな服装をした、俺の幼馴染。
「ああ、結構待った」
「ちょ、そこは『今着たとこ』って言うとこでしょ」
そして、俺達は歩き出す。
腕を組んで、肩を並べて。
人間として、生きていく。
「ねえ、千里」
「なぁに? 神聖」
「俺、やっと将来の夢決まったんだ」
「へぇ、何に成るの?」
「【正義の味方】」
Fin




