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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
8/34

第8話 砂の夜


 第8話です。


 灼熱の昼が終わり、砂漠に夜が訪れます。

 しかし砂漠の夜は安らぎではありません。

 急激な冷え込み。

 そして、夜に活動する生き物たち。

 文明社会では経験することのない「完全な自然の夜」が、タクミの前に現れます。


 

 太陽はゆっくりと沈んでいった。


 昼間、あれほど強烈だった光が弱まり、空は赤く染まる。


 砂漠の一日は短い。


 そして変化は急激だった。


「……寒いな」


 タクミは腕をさすった。


 昼間は灼熱だった。


 だが太陽が沈むと同時に、空気が一気に冷え始める。


 砂も熱を失っていく。


「極端すぎるだろ……」


 苦笑する。


 だが、これが砂漠なのだろう。


 タクミは立ち上がった。


 体を軽く動かす。


 昼間に休んだおかげで、体力は少し戻っていた。


 そして地面を見る。


 並べていたサンドワームの肉。


「お……」


 指で触れる。


 表面が固くなっている。


 完全ではないが、かなり乾いていた。


「思ったより早いな」


 砂漠の乾燥は凄まじい。


 タクミは肉をいくつかスーツのポケットに入れた。


 試しに一切れかじる。


「……固い」


 だが食べられないことはない。


 味は薄いが、確かに肉だ。


「保存食にはなるな」


 水を一口飲む。


 そして西を見る。


 昼の間、砂しか見えなかった世界。


 だが今は違った。


 太陽が沈み、空が暗くなるにつれて――


 星が現れ始めていた。


「……すげぇ」


 思わず声が漏れる。


 空いっぱいに広がる星。


 東京では見えない光景だった。


 数え切れないほどの星が輝いている。


「これなら……」


 頭の中の知識が浮かぶ。


 星で方角を読む。


 タクミは空を見上げる。


 北の星。


 星座の並び。


 知識が自然と結びつく。


「西……あっちか」


 タクミは方向を確認した。


 目指す場所は一つ。


 漁港町オルデ。


 そこに行けば、人がいる。


 海がある。


 文明がある。


「……よし」


 タクミは歩き出した。


 夜の砂漠は静かだった。


 風の音だけが続く。


 昼よりもずっと歩きやすい。


 熱がない。


 砂も冷えている。


「昼よりマシだな」


 タクミはゆっくり歩く。


 星を頼りに、西へ。


 砂の上に足跡を残しながら進む。


 しばらく歩いた頃だった。


 カサッ。


 小さな音がした。


 タクミは足を止める。


 砂がわずかに動いた。


「……またか?」


 警戒する。


 ガントレットに意識を向ける。


 宝石がかすかに光る。


 その時――


 砂の中から小さな影が飛び出した。


 体長三十センチほど。


 黒い体。


 長い尾。


「サソリ?」


 魔物というほど大きくない。


 だが毒がありそうだった。


 サソリは尻尾を振り上げる。


 タクミに向かって突進した。


「悪いな」


 タクミは腕を構えた。


 ガントレットが光る。


「硬化」


 拳が鋼のように固まる。


 そして――


 振り下ろした。


 バンッ。


 鈍い音。


 サソリは砂に叩きつけられた。


 ぴくりと動いた後、静かになる。


「……夜もいるのか」


 タクミは息を吐いた。


 この世界では油断できない。


 昼も。


 夜も。


 どこに危険があるか分からない。


「まあ……」


 空を見る。


 星は変わらず輝いていた。


「それでも進むしかないか」


 タクミは再び歩き出した。


 砂漠の夜。


 冷たい風。


 無数の星。


 そして――


 一人の旅人。


 それが今のタクミだった。


 彼はまだ知らない。


 この旅がどれほど長くなるのか。


 漁港町オルデに辿り着くまで――


 何年もの歳月が必要になることを。



 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます。


 第8話「砂の夜」でした。


 砂漠最大級の自然災害――

 サンドストームがタクミを襲います。


 次回、第9話「砂の嵐」


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