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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
27/34

第27話 砂下の捕食者

 

 第27話です。


 死砂の大平原の行軍は続く。

 変わらない景色の中で、初めての“異変”が現れる。

 砂の下に潜むものとは――。


 

 ザッ。

 ザッ。


 軍靴が白い砂を踏む。


 空は高い。

 太陽は少し傾き始めていた。


 外套のフードの奥で、タクミはゆっくり息を吐く。


 歩く。

 ただ歩く。


 白い砂。

 空。

 地平線。


 何日も見てきた景色だった。


 ザッ。

 ザッ。


 その時だった。


「……ん?」


 タクミの足が止まる。


 視線が足元へ落ちる。


 砂。

 白い砂。


――揺れていた。


 さざ波のように。

 ゆっくりと。


「……なんだ?」


 タクミは一歩下がる。


 次の瞬間。


 バンッ!!


 砂が爆ぜた。


 白い粒が空中に舞い上がる。


 その中心から、黒い影が飛び出した。


「うおっ!?」


 巨大な魚だった。


 空中を裂くように、タクミへ突っ込んでくる。


 全長は二メートルほど。

 背ビレが鋭く立ち、尾ビレが空気を裂く。


 口が開く。

 鋭い牙が並んでいた。


「なんだこいつは!」


 反射的に身を引く。


 だが、視線は外さない。


 タクミは頭の奥へ意識を向けた。


(サラディン)


 静かな呼びかけ。


 知識を引き出す。


 だが――


 何も出てこない。


「……おい」


 眉をひそめる。


「あいつ……ここまで来たことないだろ!」


 魚の魔物が砂の上に落ち、体をくねらせる。


 再び砂へ潜ろうとしている。


「ガチであそこに八百年引きこもってたのかよ!」


 苦笑が漏れる。


 その瞬間。


 魚が跳ねた。


 牙が迫る。


 タクミは動かなかった。


 足を半歩引く。

 体を前傾にする。

 拳を構える。


 営業マンだった男の動きではない。


 空手の正拳突きのような動き。

 まっすぐな拳。


 魚の口が目前まで迫る。


 その瞬間。


「――硬化!」


 水色のガントレットが光った。


 拳が突き出される。


 ゴパァッ!!


 鈍い破裂音。


 魚の頭が弾け飛んだ。


 肉片と砂が空中に散る。


 胴体だけが砂の上に落ち、ビチビチと跳ねた。


 タクミはそのまま拳を下ろす。


 ゆっくり息を吐いた。


「……」


 沈黙。


 そして。


「硬化パンチ、やっべえええ!!」


 思わず笑った。


 自分の拳を見る。


 ガントレットの光が消えていく。


「なにこれ」


 笑いが止まらない。


「こんな威力だったか?」


(まあいい……そんなことより……)


 足元には、頭を失った巨大魚。


 砂の上で痙攣している。


 タクミはしゃがむ。


 魚の体を観察する。


 硬い鱗。

 巨大なヒレ。


「……砂、泳げんの?」


 首を傾げた。


 答えは出ない。


 だが肉はある。


「……よし」


 ナイフを抜く。


 解体を始めた。


 肉は多かった。

 想像以上だった。


 肉を切る。

 砂の上に並べる。


 太陽が乾かす。


 ここの砂漠の乾燥は異常だった。


 肉はどんどん硬くなる。


「……乾くの早いな」


 小さく呟く。


 日が落ちる頃には、かなりの量が干し肉になっていた。


 タクミはそれをバックパックへ詰める。


 サンドワーム皮のバックパックが少し重くなる。


「……助かった」


 小さく息を吐く。


 保存食に余裕ができた。


 精神的にも、少し楽になる。


 タクミは魚の残骸を見る。


「お前の名前は――」


 少し考える。


 そして頷いた。


「サンドバラクーダにしよう」


 誰も聞いていない命名だった。


 タクミは立ち上がる。


 外套の砂を払う。

 バックパックを背負う。


 白い地平線を見る。


「……行くか」


 軍靴が砂を踏む。


 ザッ。

 ザッ。


 死砂の大平原。

 その奥へ、タクミは歩き出した。


(経過日数:212日)


 

 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます。


 第27話「砂下の捕食者」でした。


 死砂の大平原にも、捕食者は潜んでいました。

 タクミは新たな保存食を手に入れます。

 旅はまだ続きます。


 次回、第28話「岩陰の夜」


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