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砂漠転生  作者: タマリンド
第1章 砂漠脱出編
14/34

第14話 砂海の監視塔


 第14話です。


 砂没神殿を後にし、再び砂の海へ踏み出したタクミ。

 終わりの見えない砂丘を越え続ける日々。

 干し肉は少しずつ減り、孤独だけが静かに積み重なっていく。

 そんな中、遠くに人工物らしき影が現れる。



(経過日数二十五日目)


 砂丘を一つ越えたところで、タクミは足を止めた。


 視線の先。


 砂の地平線から、細い影が突き出ている。


(……なんだあれ)


 目を細める。


 陽炎が景色を歪ませる。

 ただ、自然物ではないことだけは分かった。


 真っ直ぐすぎる。


 砂丘でも岩でもない。


(塔……か?)


 タクミは背負ったサンドワーム革のバックパックを揺らしながら歩き出した。


 乾いた風が法衣を揺らす。


 砂没神殿で見つけた純白の法衣。

 内側の魔法陣が体温を穏やかに整えてくれる。


 砂漠の旅は、あれを着る前よりはずっと楽になっていた。


 それでも暑いものは暑い。


 タクミは瓢箪型の水筒を軽く振った。


 水の音。


 少しだけ安心する。


 塔はゆっくりと形を現してきた。


 石造りの建物だった。


 高さは二十メートルほどだろうか。


 下半分は砂に埋まり、壁の一部が崩れている。


(監視塔……っぽいな)


 頭の奥に浮かぶ知識。


 サラディンが最後に与えたこの世界の知識だ。


 街道や都市の外周に建てられる見張り塔。


 旅人や商隊を監視する施設。


 ここにも昔は街道があったのかもしれない。


 今は――


 砂しかない。


 塔の入口は半分砂に埋もれていた。


 足で砂を払い、体を滑り込ませる。


 中は薄暗かった。


 円形の石室。


 壁際には崩れた棚。

 倒れた机。

 散乱した木片。


 天井の隙間から細い光が差し込んでいる。


 タクミはしゃがみ込み、木片を一つ拾った。


 指で触れる。


 乾いている。


 ただ、完全には崩れていない。


 少し力を入れる。


 パキッ、と軽い音がした。


 断面はまだ木の色をしている。


 タクミは辺りを見回した。


 棚板。

 机の脚。

 梁の破片。


 思ったより木材が残っている。


 小さく舌打ちした。


「くそっ!ライターでもあればな…」


 火。


 それだけでいい。


 肉を焼ける。

 夜も暖かい。


 日本では当たり前だった物が、この世界にはない。


 ふと、頭の奥に光景が浮かんだ。


 コンビニのレジ横。


 ケースの中に並ぶライター。


 タクシーの車内。


 スマホの通知。


(営業先に向かう途中だったんだよな……)


 苦笑する。


「まあ……」


 小さく息を吐いた。


「今さらか」


 荷物を下ろす。


 バックパックの中を探る。


 干し肉。


 残りは少ない。


 数日分。


 タクミはそれを見つめた。


(そろそろ狩らないとな)


 この砂漠で見かける魔獣。


 サンドワーム。


 大サソリ。


 どちらも食える。


 乾かせば保存食にもなる。


 塔の壁に背中を預ける。


 石の冷たさが少し気持ちいい。


 風はほとんど入ってこない。


 砂も防げる。


 天井もまだしっかりしている。


(……悪くないな)


 タクミは立ち上がった。


 塔の入口から外を眺める。


 夕日が砂丘を赤く染めていた。


 風の音だけが聞こえる。


 砂の海は、どこまでも続いている。


 タクミは頭を掻いた。


「まあ、なるようになるか」


 そう呟くと、塔の奥へ戻った。


 木片を集める。


 いつか火を起こせるかもしれない。


 干し肉を一切れ噛む。


「……うん」


 ゆっくり頷く。


「とりあえずここ、拠点だな」


 サンドワーム。


 大サソリ。


 狩って、肉を干す。


 それからまた西へ歩く。


 やることは単純だった。


 塔の石壁に夕日の赤が差し込む。


 静かな拠点が、砂漠の中に一つ生まれた。



 砂漠転生をお読みいただきありがとうございます。


 第14話「砂原の監視塔」でした。 


 タクミは監視塔を発見し、干し肉の残量からここを一時拠 点にすることに決めます。 

 砂漠の旅はまだ序盤、孤独と生存の戦いは続きます。 


 次回、第15話「果てしない彼方」


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