じぅいち
まだ生まれたての赤子のように、右に左に寝返りを打って泣き喚きたい、と思ったことが、一度くらいはないだろうか。
私にとっては今がその時である。
望夏大先生のお言葉通り、私の出した二つの出来事を思い出しながらどうにかそれらの無駄でないところを探してみたのだけれども、何とも不思議なことに、どちらも無駄でしかないのである。
いやはや、これは困ってしまった。
それこそ、靴べらを使わずに靴を履こうとして、踵の部分を踏んで拉げさせてしまった時ほどに困ってしまった。
絶妙な困り具合である。
望夏大先生のお言葉に背いたことが、まさかのあってしまったということは先日思い知らされてしまったが、幸いにもそれは酔いの席。仕方あるまい、と片付けてもバチは当たらない。
しかし、今日は一滴たりとも酒は飲んでいない。というより、初めに飲んでみて私は酒に弱いのだと気づいたのでそれからは特別な席でのみ飲むようにしているのだった。
つまりはつまり、今日こそ初めて望夏大先生のお言葉に背く日となりかけているのだ。
そんなことが起こりそう、というだけで寒気がしてくる。背筋を氷でなぞられた気分である。
「よし、望夏大先生の所へ行こう」
まさか、私が望夏大先生のお言葉に背くなど、あってはならない。
ということで、私がそのお言葉に背く前に一旦はそのお言葉撤回の申し出をしてみようというのだ。正直かなり愚策ではあるのだが、寛大な望夏先生の事、私の境遇も考えたうえでどうにかしてくださると信じたい。
そうと決まれば、善は急げ。善でもないのかもしれないが、まぁ、急いでおいて損はないと思うので急いでおこうと思う。




