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祓っていいとも!  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第1章

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第8話(3)図書室にて

                 ♢

「えっと……」

 講堂で天馬さんと会った翌々日、校庭で功人さんと会った翌日の昼休み、わたしは図書室で途方に暮れる。

「来たか、静香……」

 ジャッキーさんが図書室に入ってきた。

「あ……」

「適当にかけてくれ」

「ええ……」

 わたしは困惑する。

「? どうした?」

 ジャッキーさんが首を傾げる。

「えっと……ご用件は?」

「ここは……書物を扱う部屋なのだろう?」

 質問に質問で返された。

「まあ、そうですね……」

「学問を追求する部屋とも聞いたが?」

「まあまあ、そうですね……」

 わたしはとりあえず頷く。追求した経験はないが。出来れば今後もそういう経験は訪れないでもらいたいものだ。

「ならば、おあつらえ向きではないか」

 ジャッキーさんは両手を広げる。

「はい?」

「先の戦いの反省をしたいのだ」

「ああ……」

 ジャッキーさんは椅子に腰かけ、机に両肘をつき、顔の前で両手を組む。

「あのモンスター……オーガに我は不覚をとってしまった……」

「鬼みたいなやつですね」

 わたしは一応、ジャッキーさんの前の席に腰をかける。出来ればさっさとお暇したいところなのだけれども。

「鬼か……」

「違いますか?」

「いや……概ねそういう理解で構わない……」

 ジャッキーさんは深々と頷く。

「そうですか」

「強力な相手だった……」

「オーク何体分ですかね?」

「……」

「あ、あれ?」

「オークとオーガ、名前の響きこそ似てはいるが、実態は似て非なるものだ。単純に比較計算出来るものではない……」

「あ、そ、そうですか……」

 知らんかった。

「強力だったとはいえ……何故あのような不様を晒してしまったのか……」

「え、ええ……」

 不様って。

「我は……己が恥ずかしい!」

 ジャッキーさんは目を閉じて頭を下げる。どちらかといえば、恥ずかしいのはむしろわたしの方だと言いたくなったが、それは言わないこととする。

「そ、そんな風に考えるのはよくないと思いますよ?」

「む?」

 ジャッキーさんが目を開ける。

「自分を責めてもどうにもなりません」

「ふむ……」

 ジャッキーさんが頭を上げる。

「大事なのは次の機会にどうするのかです。幸いにも次があるわけですから……それについて考えを巡らせる方が建設的です」

「確かにな……」

 ジャッキーさんが腕を自らの胸の前に組み直す。

「ね?」

「………」

「あら?」

「……静香」

「は、はい……」

「なかなか良いことを言うな」

 ジャッキーさんが笑みを浮かべる。

「あ、ああ、それはどうも……」

 わたしは自らの後頭部をポリポリと掻く。無難なことを言っただけなのだが。勇者さまに落ち込んでいてもらっても困るからな。案外正攻法が効いたようだ。

「我の元いた世界では……このように相談出来る相手がいなかったからな」

「え、ええ、そうなんですか?」

 勇者さま、ぼっちだったのか。

「相談しなくても大体はなんとかなった」

「あ、ああ、そうですか……」

 究極のワンマンか。まあ、それはそうか、なんてたって勇者だもんな。

「まあ、それはともかく……次の機会か……」

「え、ええ……」

「やはり己を磨くしかあるまい」

「磨く……ま、まあ、それはそうだと思いますが……」

「……力を貸してはもらえないだろうか?」

 そう来ちゃったか。

「え、ええっと……」

「駄目か?」

「だ、駄目っていうか……わたしでは力不足じゃないかな~って……」

「そんなことはない」

「で、でも、手合わせ?みたいなのはやったことがありませんし……」

「技を披露してくれるだけで良い」

「は、はい?」

「見て覚える」

「そ、そう言われても……」

「早くしろ!」

「わあっ! か、『髪、切った?』」

 ジャッキーさんがいきなり大声を出したため、驚いたわたしは右手に剣を発生させてしまい、ジャッキーさんの長髪をそこそこ切ってしまった。

「……ふむ、最近少々動きづらいと感じていた。これくらいの長さがちょうどいいだろう……礼を言う」

「え、ええ……」

 己磨きってそういう意味かい。切った髪の片付けにも時間を取られた。わたしの昼休みを返して欲しい。

お読み頂いてありがとうございます。

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