イケメン王子対脳筋兄上
フォーグラム王国南東部 ティモル街道と呼ばれる広い街道の左右は山に囲まれており、中央に緩やかな川が流れる地形
その先にはティモル城とよばれる南部からの敵の侵攻を防ぐ城塞都市がある。
ティモル城の城主はテンセイ派の貴族であり、常備兵として500の戦力がある。
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僕が1000人の兵を連れてから王都を出たのはエーミィと婚約してから2日後だった。
「どこまで行くんですかい?」
行軍中、隣で馬を引くのは風魔法を得意とする元S級冒険者のアール
僕かシンを交代で護衛するのだが、今回は相対する敵の強さを考えてこちらについてくれた。
そもそもあっちには剣と魔法が使えて兵も率いれるレイと、びっくりするぐらいの魔力をもつアキナもいるしね。
「急いでティモル城にいきたいね。ガイエス兄上がくる前にそこに入城できればかなり楽になるね。というか、ガイエス兄上側がシンなら、めんどくさくなって降伏するんじゃないかな?それぐらい難しくなるはずだよ。」
「なるほど、シンセイ坊ちゃんならありえますねー、あの人攻めるのとか苦手でしょ。」
一応僕とシンの連名で雇用主なんだけど、あの人と言ったりする。アールのこういう性格を気に入ってるだ。
「そもそもシンは同じ兵力で戦うとか、少数で大軍を倒すなんてのは嫌いだよ。楽をしたいタイプだからね、ちゃんと人数揃えて、しっかりと準備して、数に勝る軍で戦いたいと思ってるよ」
「でも今回は5000対1000ぐらいで劣勢じゃありませんでした?」
アールの疑問はもっとも、シンの方は今回は1000人しか率いることができず、少数の側になってしまっている。
「そうだね、困ってると思うよ、だからちゃんと戦わないんじゃないかな?」
シンがやりそうな事を想像するとニヤニヤしてしまう。あの弟はほんとうに突拍子もないことをやってくれる。今回も楽しみだ。
「そうそうテンセイ坊ちゃん、あんまりこのへんの地理に詳しくないのですが、あと何日ぐらいでつくんですかい?」
俺がニヤニヤしてるのを見て、軽くため息をしながら話を変え始めるアール。
「4日ほどかな、いくつかの街を経由していくけど、行軍だし急いでもこれが限界だね。」
こうして、僕たち1000の兵はガイエス兄さんを迎え撃つため、ティモル城を目指して行軍する。
ティモル城には常備兵として500がいるため、ガイエス兄さんが武国との国境を捨てて、こちらの想定を上回る戦力で来たとしても十分に耐えられる。
もっとも、国境を捨てた先に作る国に将来があるとは思えないけどね。
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王都を出て2日後の行軍中、前方から、大急ぎで早馬がこちらへ向かってきた。
「こっ、こちらはテンセイ殿下の軍でよろしかったでしょうか?」
早馬に乗っていた兵は大声をだしながら必死にこちらへ向かっていた。
「僕がテンセイだ、どうした」
大事だと考えたら僕は馬を前にだして早馬をいち早く迎える。
早馬の兵は近くまでくると急いで馬をおり、片膝をついた状態で話し始める。
「ティモル城、落城しました!!!」
は?
僕を含め、この報告を聞いた全員が固まってしまった。
ティモル城は常備兵もいて高い防衛力を誇る城塞都市である。そもそも攻められてるという報告すら聞いていない。
何があったのかわからないが、とにかく情報が足りなかった。
「一体何があったんですか?一日で落城するとは考えにくい、城主の裏切りですか?」
「いえ、我々はみなテンセイ派です。当然結束も固く誰1人裏切っておりません。ただ、攻められた報告も、敵軍が来たという報告もなく落城し、詳細な情報を掴む前に大急ぎでこちらへ参上しました。」
情報を掴む前に大急ぎでくるしかなかった、つまり内部、もしくは超少数の侵入者による瞬間的な作戦で、気づいた時には手遅れになっていたのだろう。
恐らく少数先鋭による無警戒の相手への奇襲
常備兵として少ないながらも兵を備えている城に対して簡単にできることじゃない。
つまり、こんなことが出来るのはあの人ということになる
リュート参謀
ガイエス兄上の懐刀、知恵袋と呼ばれており、兄上がもっとも信頼している人物
第一王子ガイエス派の知能担当である。
「あらら、目標がなくなっちゃいましたね、どーするんか坊ちゃん?」
僕とシンにとっての懐刀のアールが質問してくれる。まぁアールは頭脳担当のリュートさんと違って武力担当だけど
「とりあえず、リュートさんがこっちにいてくれてよかったってところかな。城を取られてるのはかなりの大問題だけどね」
「よかったってのはなんでですかい?」
アールは不思議そうな顔をしてこちらをみる、まぁ相手に強敵がいるのによかったってのはおかしいよね。
この戦場だけで考えたらの場合だけど。
「最悪なのはユリウスさんのほうにリュートさんがいてリュートさんが軍を掌握してる場合かな。その場合シンがとってもピンチになるし、恐らく勝てない。でも今回はこっちにいふから、とりあえずシンのほうは大丈夫そうだね」
さてと、とりあえずここまではギリギリ想定内かな、かなり最悪に近いけど
城を出る前にシンと必死に考えた戦略、そのうちの一つを実行しなきゃかな。
かなりの運頼みで博打要素が強いけど、しょうがないね。
「落城は確かだよね?じゃあ軍を動かそう、城にいっても撃退されるだけだ」
そういって僕はある場所に軍を動かし始めた。
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布陣予定地に向かう道中
ティモル城に関しての新しい情報があった。
急に城内に現れた兵が物凄い勢いで守護する男爵の倒しを、兵の指揮をする指揮官をも簡単に倒してしまったらしい。
そこで混乱した兵は恐らく正気を失ってしまい逃げ惑うか降伏したのであろう。
実際の攻めての人数や兵力状況を確認するとなく敗残兵となってしまった。
そして指揮官はやはりリュート参謀だった。
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2日後、エーミィとの結婚式から合わせて6日後
僕たちは布陣予定地へ到着した。
「ところで坊ちゃん、こんなところで一体何をするつもりなんですか?」
「ティモル城取られちゃったからね、相手にとって攻め辛く、そして無視できない位置にあるんだ、だからここで時間稼ぎに付き合ってもらう」
「時間?それは坊ちゃんらもあまりかけたくないのでは?」
今回の戦いで時間稼ぎをすると、父上や他の兄姉が軍を連れて参戦する。
これによって大きく2つの変化が起きる
まずはガイエス兄上の軍が非常に不利になる。
当たり前だが反乱は長続きしない、南部の貴族も半数は日和見しており、どちらの派閥にも属さない貴族も多い。
時間をかければかけるほど兄貴の敵が増える。
そしてもう1つ、僕たちの武功が減る
こんな一大事に何を言ってると思われるが、この反乱を2人で収めたとなれば次期皇帝への道は大きく開かれる。
それが援軍待ちで援軍がきてやっと解決出来たとなると、手柄を横取りさせる可能性が高い。
現場で他の兄や姉が大きく動いていないのは、反乱の行先を見据えてどこで手柄をとりにくるか見計らっているのだろう。
「こっからは運と見極めが大切だね。みんなよろしくお願いするよ」
みんなに号令をして、僕はティモル街道を囲む山の1つである東ティモル山に陣の形成を始める。




