PAF プロローグ
僕は野原に寝転がる。眩しい空に手をかざし逆行して黒くなった手を見る。
更に、見てると手の淵が赤く光ったように見えてきた。まるで、生きている証拠を見ているようだ。
だけど、僕には生きる意味も、帰る場所も、存在する価値すら無い、そう思って生きている。僕はいっそ、この晴天の空に吸い込まれて消えたいとも思った。
僕はスッと目を瞑り僕は感傷に浸ろうとした。
風が首元を通り抜ける。それに呼応するかのように草木がザワザワと音を立てる。
草は元気だな。本当に生きているようだ。
僕には生きていく中でこの風がないんだ。楽しいとか悲しいとか寂しいとか悔しいとかそういう感情がないのだ。
風を感じながら自分の愚かさを身をもって感じていた。
「あなたは、幸せですか?」
風と共にいきなり聞こえた声に耳がピクッと反応する。
微かな笑い声が聞こえたのを感じた。
しかし、次の瞬間には、なぜこんなことを?なぜ、僕に?という疑問だけで頭が埋め尽くされていた。
まるで、心が読まれているように感じその声の主に恐怖さえ感じた。
その人の顔は逆光し黒くて見えない。しかし、その興味が溢れるような目の光だけは強く見えた。
その目の光は、質問の答えのことか。僕は答えてやろうと思った。僕の人生で一番答えやすい答えかもしれない。
口を尖らせた。目を閉じた。
「幸せじゃないよ。こんな不公平で理不尽な世界で幸せの光なんてある訳ない。」
彼女もこんな答えが帰ってきて愕然としているだろう。どんな顔かな、絶望的な顔かな。
僕は興味本位で立ち上がり、そいつの顔を見た。
整った顔立ちに、見覚えのある清楚な藍色の制服。1人の少女が立っていた。
無論、見た事のない少女のはずだが、彼女の顔はあたかも僕と会った事のあるかのような明るい顔をしていた。
そのため僕の腐った答えに対しての暗さは顔には全く出ていなかった。
期待を大いに裏切られがっかりしている僕に彼女は僕へ二言目を発した。
「あの、行きましょ。学校。」
彼女は「ニへへッ」と笑う。
僕は自分の体を見る。確かに僕も制服を着ていた。彼女と同じ学校の。
彼女の学年の色は緑。僕と同学年らしい。
今日は学校をサボりたい気分だったのだが、神はそれを許してくれないようだ。
俺みたいな変なヤツと登校するぐらいなら、1人で行ったほうがいいと思うんだけどな。
まぁ、美女と登校できるんだったら。俺得だよな。
「お、おう。い、行こうか。」
おどおどしてしまった。心の中の声と言ってる事が全く合っていない。僕は脳内だけがフル回転する人間らしい。
しかしながら、普段なら絶対に言わないセリフを言った。これは、自分が単純に彼女の容姿に惹かれて反射的に言ったのか、またもや、神が言わせたのか。
僕は重い腰をあげる。
立ち上がったところから見える景色は素晴らしいものだ。僕は野原から、街の景色を見た。太陽の光が屋根の瓦に反射して、ギラギラしている。
そう、この街は生きているのだ。大いなる光を浴びて今を生きているのだ。
僕にはその光がない。
僕の心も照らしてくれ、そう思った。もちろん太陽なんかで照らされるわけもない。
しかし、太陽ほどではないが、輝かしい笑顔で笑う一等星が隣で僕のことを待っている。
僕は行きたくもない学校へ向かう。ちょっと僕より身長の低い彼女と歩いて行く。
なぜ、僕が彼女と登校しているのかという疑問を抱きながら。
だからかもしれない。いや、誰でもこんなことになるとは思わないだろう。
彼女とはもうこれで一切の関わりもなくなるだろうと思っていた。
しかし、違った。こんなこと誰が分かるというのだろう。神のみぞ知る運命だったのであろうか。
そう、人生の分岐点が今始まった。




