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第二十話『さよにゃらはさみしいのにゃん!』修正03

 第二十話『さよにゃらはさみしいのにゃん!』


(無理にゃろうにゃあ)

 そう思いつつも、心のどこかで、ひょっとしてひょっとするかも、との期待を寄せている自分が居るのにゃ。うじうじと考え込んでいるのはウチらしくにゃい。ネコらしくにゃい。にゃもんで尋ねてみることにしたのにゃ。

 にゃあまん様は今、青緑の湖底に、どっか、と腰を据えているのにゃ。見下ろす目に映るは、にゃにかを圧しつけられたように身体全体がへこんでいるニャンポにゃん。楽ににゃった、とはいってもにゃ。全身を絶えず左右に動かしている様子から、霊技の力が続いているのは間違いにゃい。

「にゃあ。ちょっと聞きたいことがあるのにゃけれども」

「んもう、こっちは重くて困っているっていうのにぃ……。一体なによん?」

「狭界から脱出する方法を知っているのにゃら、是非、教えて欲しいのにゃけれども」

「あのね……」

『相手を見てモノを聴け』といった顔つきにゃ。

「アッチは、生まれて、生きて、あと滅びるまで、ここからは一歩も出ないの。いうなればだよ。ここがアッチの全世界。知らないし、知る必要もないね」

(ふぅ。やっぱりにゃ。ミロネにゃんのいう通りにゃ)

 一応、知りたいことは知ったのにゃけれども、話のついでにゃ、と思い、今しばらく質問をぶつけてみることに。

「も一つ、聞きたいのにゃ。狭界が滅びたら、ウチらの村はどうにゃるのにゃん?」

「だから、ここ以外のことなんて知らないってばぁ。

 それとさ。なんか誤解しているみたいだからいうけど、狭界は滅びないよ。

 土台の、たとえば惑星とか要塞自体がさ。ぶっ壊れちゃえば、そりゃあ話は別だけどね」

(ふにゃ? ミロネにゃんから聴いたのとは少し違うようにゃ……)

「にゃら、あんたはにゃんでこんにゃ真似を?」

「この狭界がアッチを生んだんだ。

 だからね。ここが滅びれば、アッチも滅びるってわけ」

(はて? にゃんか、つじつまの合わにゃいことを喋っているのにゃ)

 ネコが理解するには、ちと難しいかもにゃ。

「どうしたの? 頭なんか抱えて」

「今、『狭界は滅びにゃい』っていわにゃかった?」

「そうだよ」

「にゃのに、どうしてここが滅びるのにゃん? ここも狭界にゃろう?」

「ああ、それでかぁ。説明が足りなかったんだね。

 滅びないのは『狭界』。滅びるのは『この狭界』だよ」

「というと?」

「狭界はね。たとえ壊れ始めたとしても、その壊れた先から、直ぐに新しい狭界が創られるんだ。新旧くっついた感じかな。完全に入れ替わるのって、古い狭界が全部壊れた瞬間なの。判ったかなぁ?」

「にゃあるほど。そういう意味にゃの。

 にゃら、ニャンポにゃん。あんたも、ずうぅっ、と」

 ニャンポにゃんは倒れたまま、ぶんぶん、と頭を横に振ったのにゃ。

「ううん。それは違うよ。狭界ってのはねぇ。一つの狭界に対し、ひとりのメノオラが生み出される仕組みになっているの。

 と、ここまでいえば判るよね? 新旧入れ替わる瞬間、古いほうのメノオラは滅び、新しいほうのメノオラが生まれるんだ」

「にゃら、あんたがこんにゃことをしたのも」

「そう。狭界の為、というよりは、自分の為だね。

 こういうのって、いけないのかなぁ。『自分を守る』って罪なのかなぁ」

「いいと思うのにゃよ。……誰にも迷惑をかけにゃいのであれば」

「そういうことかぁ。でもそれって案外、難しいんじゃないの? アッチのケースにかぎらずさ。時と場合、それに当事者。さまざまな要因が絡み合ってくるから。

 誰かが得をすれば、必ず誰かが損をする。『幸せ』と感じる者のそばにも、『不幸』と感じる者は居る。勝つ者が居るのは、そこに負ける者が居るから。光を浴びて喜ぶ者の後ろには、影に閉ざされて泣く者が居る。灯りの元に身を置く者が居れば、闇に蠢く者も居る。とまぁこんな風にさ。明と暗。相反する二つの存在を量る天秤はね。いつだってバランスがとれている。水平に保たれているんだ。

 もし、それを恣意的に傾けようとしたなら……、

『無理』が生まれ、『乱』となっちゃう。

 つまりだよ。誰かが『自分を守る』を追求しようとすれば、自ずと誰かに迷惑をかけないではいられない。犠牲を強いずにはいられなくなる。違うかなぁ?」

「うぅぅん。かもしれにゃいにゃあ」

「古い狭界の記憶ってね。新しい狭界に受け継がれるんだ。そしてそれはメノオラ、つまり、アッチも共有している。記憶の中にはメノオラの誕生もあってね。それに依れば、狭界が移行する際、たくさんの命が生まれるんだって。でもね。その命の物心がついた時、すなわち、新旧の狭界が完全に入れ替わった瞬間、ひとりだけが生き残るの。これがメノオラ。狭界という環境についていけなかったのか、霊力の問題か、それとも命と命の間で闘いが行なわれていたのか、ここら辺の情報が欠落しているから、なんともいえないんだけどね。アッチがメノオラに成る為に、たくさんの命が犠牲になったのは間違いない。それだけの数が居なきゃ、天秤が釣り合わなかったんだね。

 今もいったように物心がつく前の話だから、もちろん、自覚してやったわけじゃない。でも、これもまた『自分を守る』を追求した一つの結果、じゃないかと思うんだ」

(たんたんと喋ってはいるけど……。

 重いにゃあ。重すぎるのにゃ。ネコのウチが聴く話の内容とは到底思えにゃい)

 いっていることは判る気がしにゃいでもにゃい。でもにゃからといって、うなずくことには、少にゃからず抵抗を感じてしまう。

「にゃあんか話を聴いていたら、『自分を守る』はしにゃいほうがいい、っていっているようにゃ気が……。それもどうかと思うのにゃけれども」

「違う違う。アッチがいいたいのはね。『自分を守る』なら、誰かに迷惑をかけるのは覚悟しなきゃ、ってことなの。でもって実際に行動を起こしたとしてだよ。本当に迷惑をかけた者がなんにんか出た時にはね。『自分を守る』のは、その数に匹敵する以上の価値があったってこと。あったって信じなきゃ、ってことなの。でないと……、

 あと、なにも出来なくなってしまうもの」

「見上げた信念、といいたいところにゃのにゃけれども……、

 迷惑をかけられるほうにしてみればにゃあ。たまったもんじゃにゃい。相手が覚悟していようがしていまいが関係にゃいもん。

 まぁこれが勝負の結果っていうのにゃら、双方が納得ずくにゃのにゃろうけれども。今回のように、にゃんの関係もにゃいもんが、そのとばっちりを食らうのはどうもにゃ。

 にゃあ、ニャンポにゃん。あんたはどうにゃん?」

「どうって、なにが?」

「誰かが『自分を守る』をやったことで被害を被ったとしたら?

 自分とは無縁のことでにゃ。それでも笑って済ませられるのにゃ?」

「それは……無理だね。徹底的に仕返しちゃう」

「あっ。『自分を守る』に理解のあるニャンポにゃんでも、やっぱり、そう思うのにゃ?」

「当ったり前よ。立場が違えば、考え方も変わるもの」

「にゃらこれも判るにゃろう? どんにゃに理屈をつけて自分のやったことを正当化しようとしてもダメにゃものはダメ。やって許されることと、許されにゃいことはあるのにゃ」

「……そうだね。うん。認めるよ。

 でもさ。それだったらどうすれば良かったの? ここに居るのはアッチひとり。どうしたらいいかなんて、アッチはおろか、狭界の記憶にだってないんだ。

 そうはいっても手をこまねいてはいられない。黙って自分の狭界が壊れていくのを、自分が滅びるのを指をくわえて見ているだけなんて出来っこない。だからやったんだ。どう非難されようが、アッチにはこれしか方法がなかったんだよ」

(これしかにゃっかった……か)

「いんにゃ。あったと思うにゃ」

「へぇ。どんな?」

「それをいう前に一つ聞いておきたいことがあるのにゃ。

 にゃあ、ニャンポにゃん。あんたはウチらが霊体と知って、それでここへ引きずり込んにゃのにゃろう?」

「当然だよ。じゃなきゃ、ここに来さす意味がないもん」

「にゃんの為に?」

「知っているじゃない。霊力を奪おうと思ったからだよ」

「他にはにゃにも考えにゃかったの?」

「他に?」

「外の世界から霊体が入ってきた時点で、あんたはもうひとりぽっちじゃにゃくにゃっていたのにゃよ。

 相談すれば、外との繋がりが出来るかもしれにゃい。

 窮状を訴え、知恵を借りることが出来るかもしれにゃい。

 にゃんとかこの事態に対応することが出来るかもしれにゃい。

 にゃんて考えにゃかったのにゃ?」

「あっ!

 ……それは……そうかも……」

(やっぱりにゃ)

『あっ!』と短く叫んにゃ時の大きく見開いた目が、全てを物語っていたのにゃん。

「ニャンポにゃんって実は、棲み家が歪んでパニクっていたにゃけじゃにゃいの? にゃから、アホのウチでも気がつくようにゃことに気がつかにゃかった。違うのにゃん?」

「そんな……ことは……」

「ウチらを引きずり込んにゃのにゃって、もうとにかく無我夢中で、『これはどうかな』と、ふっ、と頭に浮かんにゃことを、あとさき顧みずにやっちゃった。そんにゃところじゃにゃいの?」

「そ、それは……」

「いっちゃいにゃよ。全然恥ずかしいことじゃにゃい。誰しも強いところがあれば、弱いところもある。パニクることもにゃ。

 にゃあ、ニャンポにゃん。ウチらがここから居にゃくにゃれば、もう打ち明けたくても打ち明けられにゃいのにゃよ。こっちにしたってそうにゃ。聴いてあげたくても聴いてあげられにゃい。ずうぅっ、とにゃ。でも今にゃら……。

 にゃから心を聴かせて。ウチに。思いをぶつけ合った仲じゃにゃいの」

「思いを……………………そうだね。

 実のところさ。『考える』なんてことが出来るほど、心に余裕はなかったよ。ただただ狭界を持ちこたえるのに必要な霊力を確保したくて、それで…………ごめんなさい」

 ちょっと感動。初めてニャンポにゃんから、『謝罪』の言葉をもらえたのにゃん。


 気がついてみたら、ニャンポにゃんに同情していた。実は出逢った最初から、『立場が違えば、友にゃちににゃったかも』と思っていたのにゃ。闘いでは相当、ひどい目に遭ったのにゃけれども、話をしているうちに、それも許そうと思うようににゃった。『ごめんなさい』を聴いた時には、逆に、にゃにかしてあげられたら、とまで考えるようににゃっていたのにゃ。にゃもんで知らず知らずのうちに、こんにゃ言葉が、ぽろっ、と口から零れていたのにゃ。

「しばらくすれば、その重みも消えるのにゃ。心配は要らにゃい。

 あとにゃ。外では大精霊らが霊波の偏りをにゃくそうと懸命に尽力しているはずにゃ。

 にゃもんで、『いつ』とまではいえにゃいのにゃけれども、遠からず、歪みは消えると思うのにゃよ」

 ニャンポにゃんを滅ぼすつもりは、毛頭にゃかった。たにゃ脱出までおとなしくしてもらいたかったのにゃ。ウチらをここに閉じ込めたことを反省してもらいたかったのにゃ。

 とまぁそんにゃこんにゃの理由から、軽めのダメージで済ませることにしたのにゃ。霊技発動の際のアクションをユルめることで、光輪を出来るにゃけ弱いものにしたつもり。

 でもにゃ……。予想したよりも、重めにゃったのかもしれにゃい。それが証拠ににゃ。

「そうなのっ! ばんざぁい! ……って、お、お、重いぃっ!」

 喜んにゃり、のたうち回ったり、とニャンポにゃんは忙しそうにゃん。


 お別れの時が来たのにゃ。倒れたままではあるものの、ニャンポにゃんから漂っていた毒気は、今はもう少しも感じられにゃい。それどころか、親愛の情みたいにゃもんさえ伝わってくるのにゃ。

「いつか遊びに来て欲しいな。だから、『また逢おうね』っていいたいところだけど……、

 でも多分、もう無理だね。しょうがない。別な言葉をいうよ。

 じゃあ……、さよなら」

「うんにゃ、さよにゃら」


 水面へと泳いでいくも、にゃんとにゃく心残りがして振り返ってみたのにゃ。

 倒れたまま、再生半ばの右手を振って、にゃあまん様を見送るニャンポにゃん。笑顔ではあったものの、どこか、さみしげにゃ影が浮かんでいるようにも思える。

 と、霊覚を通して心に声が届く。『さよならぁっ!』って。泣き叫んでいるようにゃ、強い思いが感じられる。

(そうかぁ……。ここには他に誰も居にゃい。またひとりぽっちにゃのにゃ)

 ウチも言葉を送らずにはいられにゃくにゃった。『さよにゃらぁっ!』って。ニャンポにゃんに負けにゃいくらいの、別れの悲しみを心に抱いて。


 にゃあまん様として、やるべきことは終わったようにゃ。湧湖の水から飛び出したウチは、真ん丸オモチの身体から離脱。みんにゃのいるスタセミへと向かったのにゃん。

 途中まで、にゃあまん様と並んで飛んでいたのにゃけれども、やがて右と左に分かれたのにゃ。今ではもう、元のように石像の殻に覆われている戦神。パンにゃんの話では、このまま放って置いても、勝手に『にゃあまん神社』まで戻ってくれるというのにゃ。

(後始末を考えにゃくていいのが『にゃあまん様』のいいところにゃ)

『どうせにゃら、一緒に連れていってくれれば』と思うのにゃけれども……、それは叶わにゃいようにゃ。戦神とウチらでは存在そのものが違う。仕方のにゃいことにゃん。



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